Richard Wright - Wet Dream (R.I.P)


「リチャード・ライト氏 死去」だけだったらどこか「?」って感じだったろう。「ピンク・フロイドの」があったからわかったが。やっぱり「リック・ライト」という呼び方が古くからのファンの親しみある呼び名じゃないか?まぁ、そういったニュースに本名で書かれるのは当たり前だが…。65歳で、ガンだったって?う~ん、ライブ8のピンク・フロイド再結成が最後の勇姿だったか…。いや、ギルモアのツアーに参加したりしたのは知ってたけど、やっぱり残念。故に凄く久々にリック・ライトのソロアルバム「Wet Dream」を引っ張り出して聴いてみた。改めて、というかやっぱり久々に聴いた今も思う。
「これ、フロイドじゃねぇか」と。
まぁ、なんつうか、毒気のないピンク・フロイドなんだよね。ホワ~ンとしたイメージの作風で、もちろんソロ作品だからピアノが良いアクセントで弾かれていたり、結構籠もって音を鳴らしたんだろうなぁという感じの作品になってて、全然疲れないアルバム。ちょっと暗い感じはもちろんあるけど、切羽詰まった悲愴感が突出しているもんでもないし、絶望でもない。アルバムリリースが1978年だから多分前年に録音されていると思うんだよね。そうするとピンク・フロイドでロジャー・ウォーターズが絶対権限を握ってしまった頃、もしかしたら既にクビを宣告されつつあった頃だと思う。だから凄く生々しい音に聞こえてくるし、決して売れようとかアーティスティックにとかそういうのはなくって、そのままの姿。でもこれって…。
「ピンク・フロイドの音だよなぁ…」と。
サックスにはメル・コリンズが参加していて、これがまた強烈な音で音色を響かせてくれる。出しゃばりすぎないギターで程よく心地良く、更にアコースティックでも上手に弾きこなして仮想フロイドの手助けをしてくれているのがスノーウィー・ホワイト。今現在はスノーウィー・ホワイトはロジャー・ウォーターズと一緒に演奏しているし、1977年頃はと言えばピンク・フロイドのセカンドギタリストとして参加していた頃なのだ。後にシン・リジィに加入するという劇的なバンド遍歴を持つことになるが、ソロアルバム「Snowy White」でも聴かせてくれているように職人気質で綺麗な音を奏でる人なので、毒気のないこのアルバムにはピッタリ。ボーカルはリック・ライト自身がとっているが、巧いとかヘタっつう以前に音に溶け込んでいて全くよろしい感じなので問題なし。それでも「Pink Song」という意味深な曲ではその頃の心境を語っている歌詞のようだ。



逝去のニュースを聞いて、何か形にしておこうと思ったもののどのアルバムがいいかな…とか色々思ったけどね。ソロアルバムはソロアルバムだけど彼自身からしたらやっぱりピンク・フロイドこそが自分の場所って思っていたのもあるだろうしさ。「原子心母」「おせっかい」などリック・ライトの鍵盤があってこそのアルバムだってあるし、「Live At Ponpei」という素晴らしい映像もある。それに「対」というギルモアフロイドの作品だってある。強烈な個性を放つ二人を前にしているだけに目立たない鍵盤奏者ではあったが、その実ピンク・フロイドの音そのものを出していた人。
昨年ソロアルバムを制作中というウワサが流れたがこれもまた誰かが完成させて世に送り出してくれるのだろうか。ギルモアさんならやってくれるだろう。
「合掌」
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