Queen + Paul Rodgers - The Cosmos Rocks
クイーンというバンド名のもたらす効果は非常に大きなモノだ。それを本人達もしっかりと知っているところが憎い。ポール・ロジャースを迎えてQueen + Paul Rodgers としてニューアルバムをレコーディングしているというニュースは知っていたものの実際に録音されたアルバムがこうして形に出てくるとどこか複雑な気持ちが生じるのはなぜだろう? このレベルのアルバムならポール・ロジャースのソロ作としても出来上がるだろうし、別にクイーンとのコラボが必要なワケでもない。しかもクイーンというよりもスマイル…、もしくはブライアン・メイ名義でも同じだと思うのだが、そこがクイーン名義の強さか。ポール・ロジャース的にはどちらでも良い話で歌が歌えて稼げればよろしいってことだと思うので、何となく距離感があるのはわかる。ロジャー・テイラーとブライアン・メイ側はやはりこのチャンスを何かモノにしておきたいと思うところだろうか。
そんな勝手な解釈や思惑というものはともかく、出来上がってきたアルバム「The Cosmos Rocks」を聴いてみよう。まず、全曲三人で演奏してプロデュースしました、と書かれているように本当に三人で創り上げたのだろう。その意気込みは凄い。そして全曲Queen + Paul Rodgers の作詞作曲クレジットとなっているのもこれまた大したモノだ。もう誰がどうとかカネの話はどっちでも良い、っていうことか。5曲目に収録の「Warboys」ってポール・ロジャースの「Live in Glasgow (Dol Dts)」に自らの曲として歌われているんだが、それすらもQueen + Paul Rodgers名義になっているのだ。ま、意気込みの問題だろうな。
最初から聴くとどことなくスペイシーな効果音からブライアンらしいギターにポール・ロジャースが絡む。ポール・ロジャースはもういつも通りマイペースな歌い方とブルースに根ざしたソウルフルな歌で全く遜色なくいつも通りの歌。やはり彼は何も変わらない。これがクイーン作品と云われても全然ピンと来ないのはこの存在感の大きさだ。しかもブライアンが気を遣っているのかそもそもの趣味なのか、ロックンロールやブルースに根ざしたリズムやコード進行を用いた楽曲が多くを占めていて、かつてのクイーンらしい音ではない。もっともその辺はポール・ロジャース作曲の楽曲かもしれないが。ブライアンの好みで行けば確かにハードなロック、メタルっぽいのも多くなるだろうし、それは顕著に出てきている。クイーンらしいサウンドと言えば、重厚なコーラスワークがそこかしこで聴かれる点で、それはさすがにポール・ロジャースのソロ作品としては出てこないので、クイーンらしい。そして無意識か意識的か不明だけど、往年の楽曲を彷彿させるドラム音やリズム、コーラスなんてのも聴かれる…、例えば3曲目の「Still Burnin'」なんてのはリズムからして「We Will Rock You」だけど途中のドラムパターンなどはそのまま使われているし、コーラスワークもそれを彷彿させるものなので面白い。
そうだなぁ…、クイーンとしての音をイメージして聴くからおかしくなるワケで、ポール・ロジャースの作品として聴けばかなり幅広いサウンドを用いた作品として聴けるし、ハードな曲からオーソドックスなアコースティック中心の曲、見事に歌唱力を聴かせる曲など面白かったんじゃないか、と。そこに今まで経験することのなかった大掛かりなコーラスワークが入ってくるんだから新鮮な刺激だったろう。楽曲レベル的には突出した曲があるワケじゃないけど、どれもクォリティは当然高いものばかり。ただ、インパクトのあるロックナンバーがちと足りない気がする。ま、それはポール・ロジャースという歌を聴かせるシンガーがいるからかもしれんが。違った意味では「Call Me」っつう曲のコメディさは面白い。冒頭からクイーン節出しまくり、曲は軽快なノリのオールドタイムな歌だしね。
そういえばブライアン・メイが珍しくワウワウを使ったソロを聴かせるっつうのもあったり、スライドを聴かせるっつうのがあったりと割と色々なことにもチャレンジしているのも新鮮な一面。そして最後の「Small Reprise」はアルバム一枚を終えたことによるエンディングテーマでもあるが、この手法は昔のクイーンでよく使っていたパターンの踏襲か?う~ん、ファンにはその意気込みが評価されるアルバムだが、果たしていかなる評価に落ち着くか見物だね。
10月にリリースされる限定版「ザ・コスモス・ロックス スペシャル・エディション【初回生産限定盤】」では2005年のさいたまスーパーアリーナ公演から抜粋されたライブディスクが付くらしいが、早く聴きたい人はもう既にCDが出てます♪
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