
ニューヨークの詩人と言えばもう一人・・・ルー・リードということになるだろう。ヴェルヴェッツ時代からその特異性を発揮していたが、ヴェルヴェッツの三枚目
「The Velvet Underground」
でグループを離れ、ソロシンガーとしてキャリアを築き上げていくこととなる。どこからどう見てもゲイにしか見えない彼の風貌は、やっぱり異端だと納得するが、往々にしてこのような人達は完成が鋭く、そして物の見方が大きく異なっているので面白い。あまりロックを歌詞の面から眺めることは多くないけど、タイトルからしてヘンなのでやっぱり内容が気になるはヴェルヴェッツの頃からのこと。
ソロ時代に突入する頃は丁度デヴィッド・ボウイのジギー期とタイミングがぴったりと合い、国を跨いだ交流が盛んに語られた時期でもある。もっともボウイがヴェルヴェッツのファンだったからというのも大きいのかな。ルー・リードの作品中で一番刺激的だったのは
「Metal Machine Music」
だけど、もちろん音楽として語れるレベルではなく、ただ単にこんなの商業ベースのアルバムとしてリリースできちゃうの?っていうアヴァンギャルド性に驚いたものだ。ロジャー・ウォーターズの
「The Body」
なんてのも同じようなものだけど。ルー・リードの作品を取り上げるならば、普通はこの流れで行くと
「Transformer」
ってなるけど、個人的に好きなのは
「Berlin」
なのでした。一曲づつの楽曲の良さとかは他の作品、例えば有名な「ワイルドサイドを歩け」なんてのもあるけど(これはこれでかっこいい)、アルバム単位で聴くリスナーとしては
「Berlin」
です。コンセプトアルバムとしてフーの
「Tommy」
とかフロイドの
「The Wall」
なんかと一緒に語られることはあまりないが、初めて聴いた時のインパクトはそれに近いものがあった。深みという面ではさすがにブリティッシュ勢ほどではないけど、独特の世界観があってヴェルヴェッツっていうバンドはどちらかというとロックのアート性が重視されていたバンドだったので、個々人の技量にはそれほど注目していなかったんだよね。もちろんジョン・ケイルっていう天才がいたのも事実だけど、ルー・リードに関してはそれほど、っていうイメージだった。それがこの作品でガラリと見直したっつうか、甘かった自分を発見した、って感じ。もう少しジャケットにこだわってくれればっていうのはあるけど、まあ好みの問題だから良しとして、アルバム全体を包む暗いトーン、正にベルリンってイメージをきちんと表している作品で、それでいて割と聴きやすい。
1997年、ボウイの50歳誕生日イベントのライブで何十年ぶりかにステージで共演した姿を見た時にはリアルタイムでこそ知らなかった当時の二人だけど、妙に二人の距離感が気になって、微笑ましく見ていた記憶がある。新しめの作品はあんまり聴いていないけど、やっぱり70年代のニューヨークを反映したサウンドはルー・リードならではのものなんだろうね。パティ・スミスと一緒にステージとかやったことあるのかな、結構凄そうなんだけど。
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