Sabaton - Carolus Rex

Sabaton - Carolus Rex (2012)
カロルス・レックス〜ウィズ・スウェディッシュ・ヴァージョン【CD2枚組/歌詞対訳付/日本語解説書封入】

 デバイスが多くなると管理が面倒だ。クラウドで同期しとけって話だけど、それはそれで同期されてもしょうがない、別IDで使ってるし、とかいろいろあって全部が全部クラウド同期してもしょうがないのだな。だからデバイス毎である程度分かれてるんだが、一方で一緒にしとけよ、なんてのもあるが、ま、しょうがない。昔のiPodとか今でも使えるんで、たまに取り出して聴いてたりすると意外や意外ってのが入ったままだったり、あの頃そんなん聴いてハマってたな、とかそんなのも思い出すんでガジェットが多数あってもそれはそれで楽しい。売れるモンじゃないし、中身消すまでもしてないし、そうそう壊れないし。

 漢、Sabatonの2012年リリースの「Carolus Rex」。自国スウェーデン王カールのお話ってこともあって英語版とスウェーデン語版と両方録音したアルバムだ。どうしたってスウェーデン語の方が普段使っている言葉なんだから歌いやすいだろ、って思うワケで、そっちのバージョンを聴いていた。ライブパフォーマンスでのあの男臭さをイメージしているものの、Rammsteinなんかもそうだけど、アルバムで聴かれるバンドの音はそのルックスに反して実に優雅で気品溢れるヨーロッパ的な荘厳さを醸し出した上品な作品に仕上がっているというギャップ。それこそがヨーロッパなんだよな。粗雑な部分がほとんどなく、細部まで練られて出来上がっている傑作。ややダレるかなって部分はあるけど、その男意気具合が実に心地よい。

 コンセプトを決めてバンドを動かし、アルバムを作り、ステージを創る、そこまでのこだわりってのも結構大変だろうし、歌にしてもセットにしてもそうそう簡単に変えられないと言うか、今の調子で何でも無理やり覚えるというスタイルではしんどくなるんじゃないか、と思う。それでも仕事だからやり切るんだろうね。聴く側はそんなこと気にしないで存分に楽しむっていうエンターティンメント、しっかりと演じられている。そして演じていながらも楽しんでいる、はずだ。このアルバムはもちろんいつものサバトン節そのまま全開で目立ってここがどうのとか他のアルバムと比べて云々なんてのはない。いつものサバトンだ。だから安心して聴けるし、期待通りにノレる。素晴らしい。




Powerwolf - Blood of the Saints

Powerwolf - Blood of the Saints (2011)
Blood of the Saints

 定額サービスの音楽配信っていくつかの種類があるがやっぱりそれぞれ特徴があるんだろうか?調べたことないな。どっかはメタルが強いとかブルースが強いとか古いのがたくさんあるとか…、普通に今どきのがたくさんあるなんて売りにもならないじゃない?差をつけるならそういうニッチさだと思うのだが、まだまだコンテンツの豊富さで差をつけるしかないのか、それとも複合サービスで展開するか、それだとアマゾン圧倒的にお得だけど、実際そうでもなくてSpotifyが一人頭抜けて走ってる感あるもんな。自分がそこに参加することって今の時点ではあまり考えてない。ただ、中身が面白かったり価値あるなら入るかな。とは言ってもこんだけライブラリ持ってる時点でそういうサービスが必要なのか、って話だが。

 ドイツ&ルーマニアの混成軍による吸血鬼と狼伝説で展開してはや15年以上のバンド、Powerwolfの2011年作品「Blood of the Saints」。ここでもやっぱりきっちりと物語路線を睨んでキャラ設定しての作品とバンド作りを売りにしてのバンドがいて、それが見事に貫かれているという素晴らしさ。更にキャッチーな楽曲が広く受け入れられてしっかりとステータスを築き上げてるところが見事に音楽商売を把握している。こういうプロによる売り方が主流になってきてるのは事実だし、そうじゃなきゃ簡単には売れないってのは当たり前ですでにこの産業は成熟しきってるが故、どうやって差別化して長寿命化していくか、みたいな所なんだろうね。まずそういうスタンスにあるバンドながらも当然ながら激しくメロディックでパワフルでキャッチーなサウンドを作り上げてるんで実に聴きやすい、というか自分はこういうの好みなんだよな。サバトンとかバトル・ビーストとか同じ感じのサウンドや歌声、パワフル感とかね、でしょ?アホさ加減もなんか似てるしさ、こういうバンド好きなんだよ(笑)。

 この「Blood of the Saints」というアルバムで結構一皮剥けた感あったらしくバンドにとってのターニングポイントになってるようだ。そう言われるだけあってオープニングの期待感からキャッチーに騒げる楽曲がひたすら立ち並ぶ。しかも単語が超単純なので世界中で叫べるというワールドワイドな狙いもしっかりしてて実に愛らしい。更にコープスペイントによる役者ぶりもユニークでキワモノながらも路線はしっかりど真ん中メロディアスポップ路線。多分どのアルバム聴いても同じ路線だろうからどこからどう入っても良いんじゃないかな。ライブからにしようかと思ったがまずは評判の良いコイツから楽しめた。


Lordi - Sexorcism

Lordi - Sexorcism (2018)
Sexorcism

 貪欲に音楽を聴く人はSpotfyとかApple Musicとか入ってるんだろうな。Amazon MusicやPrimeもあるか…、月額いくらで聴き放題、コンテンツはたいてい揃ってます、的なものだからそりゃ安いだろうしそうなるのも一般的には分かる。んでも古いロック好きだったりする人はそういうところに欲しいコンテンツが揃ってるのかな。いや、そもそも時代の流れで入ってるからそこで探してみると案外いろいろあるよ、ってな話なのかも。探しまくってまで聴くワケじゃないから、こんなのあるんだ、的に聴いてみるという感じなのかな。そりゃま、どこまで自分が求めるか、だけで本来娯楽なんだからそこまで追求するとか不要だもんな。そりゃ定額サービスはありがたいハズだ。そうなるとウチは何が出来るんだ?う〜ん…と考える今日この頃。

 適当にアマゾン徘徊してておや?と見つけたことで初めてしったフィンランドのLordiの新作「Sexorcism」リリース。いつ出るんだろ?って見たら丁度出たばかりだった…って気づくの遅くね?ま、いいか、知ることができたんだから、と早速DLして聴く。いつもながらのアルバムジャケットだけど、今回は結構強烈なインパクトを放つジャケットで、相変わらずの妙なセンスに感心してしまった。ある意味音の中身は想像出来ちゃうし、何か異なるともあまり思えないんで金太郎飴状態だろうからコンセプトとかストーリー性とか衣装とか何が変わったんだろ?っていう見方になっちゃってるキライはあって、良くないのだけど、その意味でアルバムジャケットはなかなか響いた。何なんだろ?ってのがあってさ、いろいろと不思議な状況なんだもん。そこまで見てなくても良いけど。

 さて、中身、もちろん何時も通りのローディの歌声にマイルドなギターの音色、安定のフォンランド節メロディというまさに金太郎飴そのものの安心感。国民的バンドと言われて久しいが今でもそうなのだろうか。それが故に大きな変化の方向に向けないとかかも?でもそんなに国民的とも思えないんだがなぁ…、しかし「ロミヲがジュリエットを食った」ってすごいタイトル(笑)。そういう発想力がこの人のすごいところ。完璧主義者の変態趣味、普通に言ったら何だそれ?ってくらいアングラなモノなのにこんだけメジャーになっちゃうのも世の中終わってる。そんだけみんないろいろ楽しんでるってのもハッピーなお話か。そんなくだらないことを考えながら単純に楽しめるアルバム。


Fruup - Seven Seconds

Fruup - Seven Seconds (1974)
七不思議

 しかし音楽って売れない。CDが売れない、は騒がれて久しいが、右肩下がりの状況は変わらず、どころか廃止に向かってるのは間違いない。レコードと同じくアイテムとしての価値が存在意義のひとつだ、というくらいにしかCDという媒体は価値がなくなった。高音質感も当然デジタル高ビットレートがあるからどうしようもないしね。昔から言われているようにCDってそのものがあるから安心するというのは相変わらずかもしれないけど、もうこんだけクラウドとかデジタルDLの時代になるとそれもどこでもあるんじゃね?って感じにはなってきてるしね。ただそれでも自分のライブラリはそのヘンには無い、ってのは思うけど。…と言ってる自分だってほぼデジタルライブラリになってるんだからそりゃCDは売れない。更にiTunesとかの単品販売ももう時代遅れ、今どきはやはり月いくらのパッケージもの。う〜ん、そうなんだけどさぁ…、って感じだよな。

 アイルランドのプログレバンドとして70年代に出てきて今でも希少価値の高いバンド、Fruupの1974年セカンド・アルバム「Seven Seconds」。冒頭からしてケルト好きならニヤリとしてしまう音色と旋律でしっかりとその手のリスナーを抑えてしまうしたたかさ。これは良いわ。今自分が聴きたいなぁって思ってる雰囲気をすべて持っててくれた。ケルトだけでなくってやっぱりロック的エッセンスが必要でそれでも繊細感はあって躍動感ももちろん、そして前向き感があって必殺フレーズを決めてくれるっていう…。いや、そのまんまです。このセカンドアルバムまでは当時から全然知名度もなく売れなかったらしいんで、いろいろと変わってきている頃のようだが、この後からようやくシーンに認められたという苦労したバンド、普通とも言えば普通なんだろうけど、それでも今聴くとこんだけ面白い音だったのになかなか認められないものなんだなと。そりゃさ、何でも出てきて人々が好みで選んでいくんだからどんだけ良い作品でも売れないのはあっただろう。そのヘンが70年代の面白いところ。

 フループはいわゆる普通のロックバンドで、そういうスタイルだ。ただ旋律がケルティックラインありで、しかも柔らかめに入ってくるのでどうしても尖った入り方になるケルト旋律に違う光を与えている。そしてプログレと言われるところはもちろんあるけど、それよりもどこか牧歌的なフュージョンとも言える感じかな、インストばかりだし演奏を聞かせる方が主旨として高いアルバムだし、その分しっかり聴いちゃう、聴いちゃうってことはそんだけ聴かせる楽しさ引き込むポイントを持ってるってことで、それが何なのか…、やっぱり聞き慣れない旋律の面白さと土着的なギターの安定感だろうか。このままフォーク行ってもできたんだろうなと思うくらいに安定しているプレイはやっぱり落ち着いて聴ける。そしてやっぱりどこか幻想的な雰囲気も聞かせてくれるので馴染める世界だな。フループの作品はどれも聴き応えある楽しめる作品です。



U2 - Zooropa

U2 - Zooropa (1993)
Zooropa

 1993年問題作と大いに世間を騒がせたU2のアルバム「Zooropa」。もっと世間を騒がせたのはこの後の「POP」なのだろうが、こっちでも大いに話題になってた。時代はバブリー時代末期、なんでも騒がれまくって何でもできて売れまくってまさに豊穣な世界だったと今でも再認識できるレベルのお祭り時代。そこにこのアルバムの到来で、デジタルへの接近があちこちで取り沙汰されてたし、それはU2に限らずどのバンドも、そして新しく出てくるバンドもチャンスが物凄くあったとも言える。一方そんなお祭りな世間に馴染みきれない陰鬱な世界からのグランジも出てきていたという両極端な世界観。思い出してみてもこの頃に自分が思ってた、そして想像していた世界や価値観みたいなのは概ねその方向を辿っているように思う。素人でもそれくらいに想像出来ちゃうくらいにデジタルやPCの波による生活周囲への革新性は高かった。自分が想像していたよりは時間がかかってるという気はするけどさ。

 さて、このU2の問題作「Zooropa」。何が問題ってボノが歌ってないだろ、ってのがあったりボノが裏声で歌ってどうすんだ?ってのとか、デジタルビートに傾倒した曲が多くあって、昔からのU2サウンドはどこへ行ったんだ?ってな怒りのぶつけ方、が問題作なんだろう。当時を思い起こしてみるとロック少年バリバリの自分からしたらそもそもU2ってまだまだ青い新人バンドで、大して聴くこともないな、やっぱ70年代だよ、なんて粋がってた頃だからそもそも音楽性の変化ってのを認めてなかった部分あるもん。懐古主義ってのか、そっちの方が自分的に新鮮だった、というか探究心ってかね。だからこういうデジタルなのって全部排除。ロックじゃねぇ、って感じ(笑)。だからそんだけ世間を裏切るようなスタイルを出してってること自体はロックだな、って思ってたけど音は特に興味なしってね。だからこの時期のU2聴いたのはその後しばらくしてから。それでもまともに聴かなかったか。

 とは言ってもそれなりにU2は好きだからやっぱ聴くんだよね。ライブとか見てて知らないのあると何だろ?ってなるから、それがそのヘンにあるとアルバム単位で聴くし。んで思ったのは無茶苦茶U2なアルバムだな、って感想。アレンジや音作りはそりゃ違うけど、本質は当然U2そのまま。だからライブでも出来ちゃうんだな、ってのは納得。こういう音作りによる挑戦ってアリだな、と。ただ音楽的なインパクトでリスナーを感動させるというものではないので、そこはちょいと残念なアルバムではある。昔のU2は古く感じないけど、この時期のU2は時代遅れ感を感じるのでやっぱり普遍的なロックとポップスは違うんだな、という自分なりの勝手な解釈。だから聴いててそのヘンはあれども本質的にそのままU2だしあまり構えなくても良いのかも。これからU2漁る人…ってそんなに多くないと思うけど、あんまり偏見なく聴いても受け入れられると思う。好き嫌いは出るだろうけどさ。あぁ、そういえばなんでU2になったんだっけ?って思ったもともとのケルト風味はゼロ。




The Corrs - Talk on Corners

The Corrs - Talk on Corners (1998)
Talk on Corners

 同じニュースを知ってても人によって解釈が異なるからいろいろな人と会話してモメない程度には刺激を受けるのは良いことなんだろうと。ある程度他の人の意見を尊重するという前提がないと成り立たないのだろうが。これはもう音楽でも宗教でも同じ話だろうし、政治でもニュースでもそうだ。自分的にはほとんどそのヘンって会話することなくて、というか何が起きてるのか、ってのも情報として耳に入ってこないことの方が多いから世間知らずなのかも。間違いなく情報足らずではある。ニュースってのは音楽で言えばポップスと同じで残ることなくさっさと時間とともに古くなっていくものだっていう捉え方。まぁ、自分を正論とした場合だけで、実際はその流れるニュースが世間との関わりに重要な要素を占めるということなのだろうけど。

 アイルランドの妖精達によるThe Corrsの1998年リリースセカンド・アルバム「Talk on Corners」。このヘンでThe Corrsを知って聞き始めたのを覚えてる。もともとアイルランドの旋律は好きだったし、民族音楽の方もすでに着手していたからそれでいて割と名が出てきたこのバンドってどんなんだろ、って期待して聴いたら予想以上に自分的に大好きでいつしかハマってた。ウリ文句の美人三姉妹ってのももちろんあるけど、やっぱりケルトタッチのメロディにポップスの軽やかなメロディの融合というあまり言われることないけど、結構な革命者だったはず。本人達の努力も凄かったのだろうけど、世界を制するアイルランドを代表するバンドにまで成り上がっているし、それはもうU2の次くらいに位置するレベル…、だけど再結成してからはちょいとおとなしいかね。

 このセカンド・アルバム「Talk on Corners」は物凄く充実した作品で、捨て曲は当然無いし、どれもこれもがライブでも皆に愛される曲になってて恐らく最高傑作にになると思う。セールス面考慮するとそうでもないけど、アルバムの充実ぶりは一番じゃないかな。堅苦しくもなく惰性もなく、意欲満々で世界に打って出る、みたいなのも含めて素晴らしいアルバム。何だろね、肌に合ったんだろうな。何か困るとコレ聞いてたもん。今改めて聞き直すとアイリッシュぶりはそこまで強くもなかったんだなぁ…とか思うんで単にキャッチーなの聴きたかった時期だったのかもしれない。でも、良いバンドに出会えて楽しませてもらったし、こういう音楽って年取っても聴けるし、良いアルバムだ。ジミヘンの「Little Wing」なんてのもあったりさ、必殺のケルト旋律インストも健在だし、挙げ句夢の実現を描いた歌詞も応援したくなるし、とにかくアグレッシブな作品のくせに繊細で、キャッチー。必殺のフィドルによるケルティック旋律で一線を画したバンドの個性を出していく、見事なアルバム。






Dolores O'Riordan - No Baggage

Dolores O'Riordan - No Baggage (2009)
No Baggage

 ここで挙げられるバンドや歌手以外にも色々と候補になるアルバムがあって、そういうのも聴いたりするんだけど、やっぱり好みじゃないなぁとか、面白味がないなぁなんてのは聴いてても書けてない。そのまま書けば良いのだろうけど、好きじゃないのに書くのも気が乗らない、っつうか何でそんなこと書かなきゃいけないんだ?ってのもあるから割と無かったことにすることも多い。敢えてそれでも書いてるのもあるんで全部が全部じゃないんだが、何となくそこまでして聴いてもしょうがないし…やっぱり聞く以上は面白いトコロを見つけたいし楽しみたいワケで、無理してそれを探すのはもっと後だったり他の人にやってもらえれば良いかと。だからまぁ、ここは自分の忘備録的要素が強いのと良けりゃそのヘンで思い出してくれれば、とかそんなノリになってきてる。ただ、それでも自分で思い出したり新しいのに出会えたりするのは面白いからね。

 Dolores O'Riordanの2009年リリースのソロ名義二枚目の作品「No Baggage」。ご存知The Cranberriesのフロントボーカル女史として名高いドロレス・オリオーダンですね。残念ながら2018年1月に他界してしまったのはつい最近の話でまだまだ生々しい訃報として記憶に残っている。その時からまたじっくりクランベリーズの時代のから全部聴き直したいな、って思ってたんだけどなかなかそれも出来てなかった。ココに来てようやくソロアルバムに着手してて、このアルバムだ。今回が初トライだったんで良い機会…と思ったらさ、これがまた無茶苦茶良いアルバムで、もっと早く聴いておきたかった、って思った作品。好きなんだろうね、こういうケルティックエッセンスありながらもポップでキャッチーでちょいとロック的なサウンドながらも優しく歌ってくれている、ってのが。The Corrsなんかもそうだけどこういうの聴きやすいしスッと耳に入ってくる。多分それはもう多くの人がそう思うポップさだから当然なんだろうが、ここのトコロそういうの聴いてなかったから余計にすんなり聞こえてきてね。

 何と言うのか、随分贅沢と言うか豊かな、ゴージャスな、余裕のあるゆとりのある作品という感触で、だからこその愛のあふれる作品に仕上がっているというのか、なかなか出会うことの少ないこの雰囲気が堪らなく愛おしい。どうやったらこういうのが出来上がるのかって不思議に思うんだが、そこが見事。アルバムを何度も聴きたいって思わせる作品だもん。捨て曲なしの充実したアルバムで満足度が高い作品。素晴らしい。




Dolores Keane & John Faulkner - Broken Hearted I'll Wander

Dolores Keane & John Faulkner - Broken Hearted I'll Wander (1978)
Broken Hearted I'll Wander

 英国で言うトラッドフォークとアイルランドのケルトミュージックに根ざしたケルティックフォーク、似て非なるもの、と言うモンでもないのだろうけど、やっぱり近いからその源流は同じトコロにあるだろうし伝承音楽としても似た部類になる。そりゃ国が違うとか関係なく密着しているものなんだからそりゃそうだ。今になってみればケルトの方が独特の戦慄が鋭いというのはあるのだろうけど、歴史を通じて、だからこそのアイリッシュ、みたいなのもあるし音楽だけではないトコロからの影響が反映されている気もする。ただ、素直に聴いていると似て非なるモノながらそこに根差すものへの敬意みたいなのもあるから、そういうのも含めて楽しむのが一番なのだろう。

 De Dannanの初代ボーカリストながら翌年には脱退してそこでダンナ見つけてソロ活動、と言うと聞こえは良くないが、結果論そうなったDolores Keaneの1978年セカンドソロ名義アルバム「Broken Hearted I'll Wander」ながらもクレジットからしてジョン・フォークナーの名前も入っているんで二人のアルバム、と言う方が正しいか。デ・ダナンでいきなりアイルランド国内では人気を博してさっさと脱退しているからか人気は結構あったらしい。この後もまたヒットを放っているので実力のある歌唱力は既に国民には知られているワケだ。この時期はそんな記憶がある方々にもかなりの好評を博したと言うアルバムで、モロにギターとフルート程度の楽器がバックに入っている中での歌モノあるばむ。しかもドロレス・ケーンがメインというのでもなく、二人の歌声が半々くらいに出てくるというアルバムに仕上がってる、正しく二人のアルバム。

 幸せに溢れまくっている時期にケルトってのはなかなかその鋭さが出ないし、英国の暗さみたいなのもあまり当てはまらないというトコロで形はもちろん英国トラッドに近いのだが、ややフワフワしている。多分二人共英国にいたからなんだろうなぁ。ただやっぱりドロレス・ケーンの歌声は美しい。生楽器だけで歌っているからその歌声が物凄く伝わってくる。大抵のこの手の作品は割と研ぎ澄まされた感あるんだけど、このアルバムはどこかほのぼのしてるみたい。


June Tabor - Ashes and Diamonds

June Tabor - Ashes and Diamonds (1977)
Ashes and Diamonds

 1977年ってパンクロックが出てきたのとディスコブームもこの頃からで、少年たちが野球やキャンディーズに夢中になっていた時代、高度経済成長期がまだまだ続いていた頃だしマクドナルドが上陸した、、みたいなのがまだこないだ的な頃で日本の未来ってまだ希望に満ちていた頃。そんな時代に英国でこんだけフォークのアルバムとかリリースされていたってのはやっぱり根強い土着音楽のひとつなんだろう。若くて綺麗な女性でも普通にその世界にいるんだから日本の若手の新人女性演歌歌手、みたいなもの好きと同類なのかもしれない。最近はそういうのからジャンルをはみ出て出て来る方が多いから新たな領域へのチャレンジという楽しみ方もあるのだろうが。

 June Taborの1977年セカンド・アルバム「Ashes and Diamonds」。1976年にスティーライ・スパンのマディ・プライアに見出されてデュエット作品「Silly Sisters」で初めてシーンに出てきて見事な歌を聞かせてくれた事から彼女のプロキャリアは始まったようで、同年には既に自身のソロアルバムが制作されてファーストアルバム「Airs and Graces」が出されているから、そういう見方したら何かの宣伝効果もあったのかと疑うが、それはともかく、この年に二枚のアルバム制作して出てきたってことだ。その翌年にリリースされたセカンドアルバム「Ashes and Diamonds」は今度は何とニック・ジョーンズも数曲でゲストに迎えて強烈なインパクトを与えてくれる作品になってて、一気にトラッドシーンに登場した歌姫という風に見られたのかな。それともごく普通に馴染んできたのかもしれない。勝手な見方ではあるけど、アルバムジャケットなどで見られるジューン・テイバーは結構クールそうには見えるし、歌声も冷たい感あるからそういう怖さがあるようには見えるんだよね。

 それはともかく、このアルバム、スタンダードにフォークから始まってニック・ジョーンズのフィドルが強烈に印象にの頃作品から始まっているからアルバム的には掴みがある。ニック・ジョーンズが参加していない曲ではきちんとジューン・テイバーの歌声にフォーカスした作風にもなっているし、その意味ではかもなく不可もなくと言った作品なのだが、やっぱりニック・ジョーンズのインパクトが大きい。彼女自体にはまだこの頃にこうしていく、みたいな意思があったようには思えないし、素朴に歌っているだけ、とも思える。もちろんそれでもやや哀愁漂う冷たさを持つ歌声は魅力的ではあるが、あと一捻り、みたいなとこか。




Steeleye Span - Parcel of Rogues

Steeleye Span - Parcel of Rogues (1973)
Parcel of Rogues

 音楽を青春の1ページとして捉えてそのまま人生を過ごす、ってのが一般的な音楽やポップシーンとの繋がりなのかな。多少その時期そのシーンなんかで耳にした音楽をまたどこかで聴くこともあるのだろうし、結局は人生のページの脇を流れるBGMの位置付けにあるものだろう。歳を取ると何かで見つけて懐かしいなぁという理由だけで売れたりもするんだから面白い。そりゃン十年前のCDを今更聴けないだろうし、ましてやアナログレコードなんてあり得ない。それが手軽に出来ちゃうのがデジタルDLなんだよね。まぁ、探してまで買うのかってのはあるんでそこに行く前のYouTubeだったりしちゃうんだろう。まぁ、何が言いたかったかってぇとだ、売れないんだよ、音楽って、最近は、って話。

 Steeleye Spanの1973年リリースの5枚目のアルバム「Parcel of Rogues」。メンバーチェンジを重ねた事で最初期の重苦しい雰囲気は全く感じることのなく、トラッドをエレクトリック楽器で演奏してドラムレスというバンドのスタンスはそのまま守られている不思議。どういうワケだろうかね、これ。トラッドのアレンジの解釈の違いが大きいのだろうけど、霧が晴れたかのような軽快なノリになってるし、もちろんマディ・プライヤーの歌声が更に突き抜けてるのもあるが、だからとココまで垢抜けるとは…って感じ。自分的には最初期作品の重苦しさって好きだからこのヘンってさらりと流して聴いてしまっていた作品なんだが、改めてこうやって聴いているともうちょっと商業的な成功を狙いたかったんだろうかな、とも。でもバンドのスタンスは守り続けての作品だから、このままでは最初期のバンドの姿を超えられないという自己認識だったのかもしれない。逆に見ればこのメンツでやっている音の流れからするともっとドラムを入れてポップに進むべきだと悟ったのかも。

 いずれにしてもその意味では初期のおもりを引き摺っての作品だけどこの後にドラムを入れて大きくポップバンドに近い方向性にシフトする直前の自分たちの試験石にもなったアルバムか。その意味でテンションは高いし、迷いもなくこれでやり切ったくらいの思い切りの良さもあるから聴いてて心地良いのは変わらない。ドラムレスなんて気になることはないし、それどころかリズムってのが物凄く躍動しているってのが面白い。ドラムがない事で躍動感が出て来るって…、人間のグルーブって面白いな。


Spirogyra - Old Boot Wine

Spirogyra - Old Boot Wine (1972)
Old Boot Wine

 若い頃に結構無茶して海外旅行に何度も行ったりしてて、当然ロック好きな流れだから本場に行ってみたい、見てみたい体感したいってのが強かったから行ってみたんだけど、やっぱり何十年経っても鮮明にその記憶が蘇ってくるし景色や風景も記憶にしっかりと留まっているからやっぱり良かったなと思う。今じゃ風景景色が変わっているのかもしれないけど、どっちにしても古いロックって、こういうトコロで産まれたんだとかこういう町で出来上がったんだという無形なものを探しに行ってるんだからさほど影響はない(笑)。それよりもこの季節の緑々しい風景を見るとユーレイルに乗っている時の移動時間で散々みた風景も同じように緑だったなぁとか思っただけです。そんな事をふと思い起こしたのもこのアルバム聴いたからかもな。

 Spirogyraの1972年リリースセカンド・アルバム「Old Boot Wine」。英国フォークロックの三種の神器と言われるバンドで唯一複数枚のアルバムをリリースしていたバンドで、カンタベリー一派とも繋がる実に不思議なバンド。そもそも英国フォークの、と言われるけどこの「Old Boot Wine」は一体どこが英国フォークなんだ?ってくらいにはキャッチーでポップで普通にロックなアルバムとして良いだろう。自分でも今回コレ引っ張ってきて聴いてて、こんなに軽快なアルバムだっけ?って思い直したくらいにはフォークではない。スタックリッジとかELOとかそういう類の系統の音に近いんじゃないだろうか。カンタベリーってもそこまでカンタベリーらしいサウンドは出てこないし。ただ、ところどころのメロディセンスやふわっとした雰囲気はやっぱりそうかもなぁ…という程度には味わえる。そして何と言ってもバーバラ・ガスキンの歌声の印象がとっても強いですね。ここも世間で言われるお話だとクローズアップされている事が多いんだけど、このバンドは基本的に男女ツインボーカルがメインで、バーバラ・ガスキンは割と脇役。でも妙にクローズアップされて書かれてる事も多いので聴いた時とイメージが合致しないのが多く感じる。

 さて、そんな印象でアルバムはスタートするものの、しっかりとトラッド系統の作風ももちろん出てくる、けどそれもまたかなりスタンダードからは逸脱したムードでの作風で、やっぱりアルバム全体としてはキャッチーなポップ・ロックに分類されるサウンドが多い。この路線だけでもイケたんじゃない?ってレベルの作品が多いのも面白いな。キンクスとかおなじようなモンあるよな、とかさこういう雰囲気、好きだね。だから何となく英国の田園風景らしきものを想像してしまって冒頭の旅行時の緑々しい景色を思い返してしまったという次第か。音から想像する風景、というよりは音から思い出した記憶、か。やっぱり良いな、こういうの。

Pentangle - Solomon's Seal

Pentangle - Solomon's Seal (1972)
ソロモンの封印(紙ジャケット仕様)

 旅には良い季節になってきた。少々肌寒い夜でもあるかもしれないが日中は気温も高く動きやすいし、梅雨にはまだ早いし大型連休で動いた人達はさほど大きな動きをしないだろうから無茶苦茶混む事もないだろうし、ってことで問題は、じゃどこ行く?何しに?ってトコロだろう。ある意味日常から切り離れたいって事になると海山に加えての日本から離れた国内端っことか少々文化圏が異なるエリアへの旅が良いな。普段街中である分街中から離れたい、けど文明的じゃないトコロでは不便だから、適当なトコロで…となると無難な場所になるから面白くない。故にちょっと僻地まで足を伸ばしたいとは思うが今度は行きにくいみたいなのもあって旅好き、計画好きな人が羨ましく思える。なかなかそこには向かないんで、やっぱりラクなインドア趣味が増えてしまうもんだ。

 Pentangleの1972年オリジナルメンバーでの最終作「Solomon's Seal 」。ボーカルのジャッキー・マクシーを中心に90年代かな、にペンタングル名義でのアルバムもリリースされてて、そういうのもあるのかって思ったが、ペンタングルってバンドを誰のスタイルと見るかで変わるのかな。ジャッキー・マクシーの歌声があればって人はそれもペンタングルだし、両翼のギタリストこそが、って思う人はジャッキー・マクシーのプロジェクトの方はあまり興味を持たないだろう。そしてこの「Spirogyra Old Boot Wine」だが、もちろんまだ両翼の二人は健在、とは言え普通に言うメンバー仲はよろしくなかったようで、一時期親密に音楽的方向性が一致した、または模索して創っていった時期は実に熱を帯びる濃密なプレイが聴けたのだが、そこから個々人での探究心に走っていくと当然プレイヤー毎に異なってて、ソロアルバムも並行してリリースしていってることでそれはもっと顕著に出てきてしまったのかもしれない。そんな背景からこの時点ではマジックは生まれてうあいなそうだ。

 それでもこの作品のレベルの高さ、ペンタングルというバンドのクォリティ、当然ながらそれもで個々人ではチャレンジやアプローチを取り入れててやっぱり進化している音を創っている。単にアコースティックというだけでなく、様々な楽器を持ち込み、更に硬質な印象のあったバンドの音からかなり親しみのあるメロディに変わっている気がする。英国やアイルランドに住んでいればこういう音が自然に聴けるものなのかな。トラッドっていうからにはそうなんだろうと勝手に思ってるけど、実際どうなんだろうか?日本の演歌と同じ立ち位置だとすると今の日本の若者って演歌聞く事ないでしょ?テレビ見ないだろうし。で、英国のトラッドもそうなってるのかな…。

Sandy Denny - I’ve Always Kept A Unicorn

Sandy Denny - I’ve Always Kept A Unicorn
I've Always Kept A Uni

 完成された作品ではなくてその手前の曲が出来上がったばかりのデモ音源なんかが重宝がられるのはもちろん完成形が知られ渡ったが故の原曲の功罪であろう。そこにはダイヤの原石とも言える元々の素のままの音が記録されているのだから、アレンジだってさほどされていないしもちろん楽器による色付けもほとんどされていない事が多い。ホントにねぇ、アコギ一本とかピアノだけのデモって美しいんだよ。どんな曲でもさ、そうやって作ってあるのはしっかりしててどんなアレンジでも良いものは良いっていうのか、そういう風に聞こえる。

 Sandy Dennyの編集盤で「I’ve Always Kept A Unicorn」ってのが出てた。その前にボックスセットでは搭乗していたらしいけど、そこまで聴けてなかったから自分的には未聴のままでいたデモ音源中心の発掘音源がコンパクトに聴けたのは嬉しい。ストローブスと一緒にやり始めた頃の名曲「Who Knows Where The Time Goes」のアコースティックデモから始まるのだが、これがまたバンドバージョンとはちょいと味わいが違っていてついつい引き込まれてしまう。そのまま全楽曲がそんなアコースティックでのデモ音源調で収録されているので、ひとつのアンプラグド作品として成り立ってしまっているのだが、そこで聴けるサンディ・デニーの歌声はデモだからと言って手抜きになることはなく、もしくはデモで軽く歌っていたとしてもそのレベルなのか、ってくらいには本気で美しく聴ける意気込みの入った歌だ。この人はもうどういう時に歌ってもしっかりとサンディ・デニーになっちゃうんだろうね。著名な歌手は皆そうなんだが、それこそ天性のものだ。

 チープな音で収録されているアルバムで、歴史と時代を感じさせるものだが、それこそ自分の部屋でオープンリールを目の前にギター一本で歌った曲と言わんばかりのピュアな空気が詰め込まれているので実に生々しく雰囲気を楽しめる。それでこの完成度の高さなんだからやっぱりホントにミュージシャンだったんだなと。天才的だもん。ここまで作り上げて自分で吹き込んで、歌い上げて昇華させて…、そんな過程を垣間見れる興味深いCD2枚組。




Melody Gardot - Live In Europe

Melody Gardot - Live In Europe (2017)
ライヴ・イン・ヨーロッパ

 先日CDコレクションを全て売り払う、というか自分の部屋からは全て無くしてしまう、売るとか譲るとかしてもう無くしちゃおうみたいな事を決めた記事を見かけた。それなりの枚数があったようなのでコレクターと言うか幅の広い趣味だったんだろうけど、見事に全て切り離してしまったみたいだ。自分はどうかな、と思うとそれもありだなぁ…というのが本音。ただ、悩ましいのは月額いくらのサービス形態の中に自分が聴きたいのが見当たらないという場合も結構多いだろうから、そういうのはやっぱりデータ持っとくんだろうなと。そうするとローカルでしか持っていない音楽とネットワークで聴けるものという識別をしておかないと肝心の自分のコレクションが消え去るという事にも成り兼ねない。それが怖くてまだコレクションを残しているのだが、大多数は要らないんだろうなぁ…。

 Melody Gardotの活動集大成ライブアルバム「Live In Europe」がCD2枚組でリリースされ、その内容の良さとジャケットの赤裸々な宣言が多くのリスナーの目を奪っているようだ。確かにミュージシャンでありながら自分のアルバムジャケットでこういう姿を見せてくれる人も多くはない。ロック系だとそりゃいくらでもあるけど、ジャズボーカルで官能系ですからねぇ…、官能を飛び越えてしまってはいかんのですよ、本当は。ただ面白いのは肥えてるんだけど、官能的な写真には見えなくて、やはり赤裸々なメロディ・ガルドー自身のファンやリスナーに対する宣言というか、意思の表れ、心の表現みたいに見えるのは多分アチコチの情報を漁っているからだろう。それでも確かにそのスタンスはヒシヒシと感じるジャケットだと思う。しかも美しいしさ…。

 さて、中味は4年間程録り溜めた中からもうセンスで選び抜いたと言われているが、見事なまでに戦慄を呼び起こす歌と演奏、正にライブでしか成り立たない緊迫した瞬間が収められていて、その迫力とテンションの高さに驚く。たかがジャズボーカルでここまで緊迫させるってのはなかなか無いのでは?ってか往年の女性ボーカルの作品はそういうの多かったから当たり前だったけど、近年のではそこまでのは見当たらなかったし、ああいうのはもう出来上がらないと思ってたからここでメロディ・ガルドーのライブでこんだけのテンションのが聴けるのに驚いた。これ一枚をじっくり聴いて心に何か響いた人、音楽って良いですよね。ホント。目の前で演奏しているかのような、しかも最高のシーンばかりが目の前で繰り広げられるんです。そんな見事なものがここで聴ける…、いやはや、自分が聞いたライブ・アルバム、ロックも含めてだけど、その中でも相当上位に位置するライブ・アルバムにガツンと上がりました。素晴らしい。






Tarja - From Spirits & Ghosts

Tarja - From Spirits & Ghosts (2017)
From Spirits & Ghosts

 実力のある、歌の巧い女性ボーカリストさんって大抵皆しばらくバンド活動した後に休息に入って、復活してくる時にはポップシンガーになっている事が多い、というか割と見かける。バンドという枠組みから外れてせっかく歌えるんだったら、そもそも自分がメタルしか歌わないぜって決めてないなら色々なタイプの歌、自分がチャレンジ出来るなら歌ってみたいという欲望の方が大きいんじゃないかな。しかもそれなりに優秀なプロデューサー達とも出会ってるからその人の能力を活かした楽曲も用意されるだろうし。そんだけ伸びしろ大きく持ってる方が良いんだろうね。

 Within Temptationのシャロンの対極にあるとも言えるTarjaも2017年に新作「From Spirits & Ghosts」をリリースしていて、結構攻撃的なジャケットだったからこれは面白いかも、と思って聴いてみると完全なクラシックシンガーの作品でバンドの音なんざ皆無、歪んだ音なんてないどころか普通のロックバンドフォームの音は一切なく、ストリングスとかティンパニーとかそういうクラシックオーケストラの音色ばかりでこれはまた大胆ないわゆるソプラノ歌手の歌もの作品をリリースしている。はて、それをこのジャケットで…ってなるほど、とちょっと紐解いてみたらクリスマスシーズンに向けたアルバムで、ヨーローッパらしく、ダークサイドなクリスマスでゴシカルな雰囲気でのクリスマスアルバムだったらしい。それをこの季節の良い今の時期に聴いているんだからそりゃ違和感あるわな。ただ、こんだけ繊細な作品はそうそう作れないだろう。ターヤも様々なアプローチを試みているが、元々がクラシック畑なのだから、逆に言えばこの手のはお手の物なのかもしれない。しかしいつもながら独特の歌唱と歌声の活かし方を知っている人で、どの曲も素晴らしく、聴いているとうっとりしてしまう声色を聞かせてくれる。

 こんだけマルチに歌いこなせるボーカリストってそうそう居ないんじゃないか?デス声やらないくらいで、他はもう何でも歌えるだろうし、その幅も広いしホントの歌い手なんだろう。ちょこっとYouTube覗いていても割と色々なセッションもやってたりカバーを歌ってたりもするのでその幅の広さはいくつも実感できる。教会でアカペラでRammstein歌ってるのとかびっくりしたもん。今回のアルバムでは勿論クリスマスソングも歌ってるしさ、見事な歌手です。




My Indigo - My Indigo

My Indigo - My Indigo (2017)
My Indigo

 先日iPadをようやく入手したのだが、しばらくしてみてやっぱりiPadでやることがないってことを再認識した(笑)。本を読む、くらいでしか使わないのだが、肝心のその本がデジタルでない場合も多いから結局見れなくて、じゃ他にどうするかってえぇとそりゃあればiPadで見れるってのはあるし、画面が大きいってのはやっぱりいいな、とは思うよね。ただ、指でいじっていくガジェットだから大きいと動かす範囲も大きくなって疲れる。それもどうなんだろ、ってのはiPhoneで親指レベルでいじってるからこの大きさ故の作業効率の悪さが気になるのかもしれん。それでも世の中では売れているし、Apple信者でもある自分的にはだからどうってものでもなく、使っていくのだろう…か?どこかで役立つかな。

 Within Temptationのフロントシンガーにして紅一点のシャロン・アン・オデルがバンド用に書き溜めていた曲だろうと思われるのだが、バンド活動がちょいと暗唱に乗り上げているからなのか、ソロプロジェクトであるMy Indigoでアルバム「My Indigo」をリリースしている。昨年シングルで聴いた時は特にそういうもんかって思ったけどしっかりアルバムまで制作しちゃってる辺り、Within Temptationの方はどうすんだろ?ダンナの方が頑張れば良いんだろうが…。ま、こういう形でちょいと違う取り組みで魅力を発揮するのは良い試みだし、作品を聴く限りでは実に見事に成功している事は一発で分かる。Within Temptationで鳴っている歪んだ音やメタルへのアプローチは一切排除されてて、純粋にシャロンの歌声をクローズアップした普通のポップスの枠内に収めている。それであの歌声なのだからそりゃ良作になるでしょ。ただ、こうして聴くとシャロンの個性でもあると思っていたクラシックの声楽のような歌声はメタルシーンだからこそ映えたワケで、こういう形で歌われてしまうと単に歌の上手い歌手、になっている程度だ。曲によってはケイト・ブッシュを彷彿させるものもあるんでもちろん普通のボーカルじゃないけどね。ただ、バンドでやってるのよりもとんがり感はない。もっとも歳のせいかもしれないけど。

 作品の出来映えは褒め称える事しか出来ないし、どこにもケチ付けられるモノじゃないし、多分こういうプロジェクトで自身の再発見を出来たのも良かったと思う。が、残念ながら自分的にはこれを何度も聴く、ってことは…ないなぁ…、多分。引っかからないんだもん。好みのお話なんだけどね。




Circa Waves - Different Creatures

Circa Waves - Different Creatures (2017)
Different Creatures

 若さに溢れた音に触れるとやっぱりそのエネルギーに惹かれるし、ロックってのはいつの時代もパワフルで尖ったモノなので、若狭という武器は確実に必要。やってる本人達は当然そんな事意識して無くて普通にそうなる。後で聴くとその若さ故の溢れるエネルギーが音に詰め込まれている事に気づくだろう。それは大抵ファーストアルバムとセカンド・アルバムの違いだったり、それ以降のアルバムとの差だったりして顕著に作品に現れるものだ。それも面白い。だから数年した後からバンドってのはどうなっていくのか、ってのが面白くなるし、もしかしたらそこまでのモノかもしれないなんて事もある。

 Circa Wavesという英国の新鋭バンドの二枚目の作品「Different Creatures」を耳にした。特に意識したワケじゃないけど、やっぱり新しい音で若い音を聴くとエネルギッシュさが気になるし、それ以上に当然どこか新鮮さ、斬新さ、そしてロックらしさみたいなのも気になる。いくつかこの辺りのバンドを聞いてたんだけど、そんなに自分が面白いかも、って思うのが無くて、もちろん何度も聞いてれば違うのかもしれないけど、ざっと聴いてて何となく、ってのでこのCirca Wavesってバンドだ。アルバムは2017年リリースの作品で、どうやらファーストとは割と異なる音楽性になってきてのエネルギッシュな作品ということで、だからこそ面白いと思ったのかもしれない。やってる音は勢いのあるガレージロック、だろう。どことなくスタイリッシュな作風でもあるし、今まで自分的にはここまでのはあんまり聴いてないからか面白いと思ったのかも。

 リバプール出身なんだ…、メロディセンスがなかなか絶妙でもあり、その一方でギター中心のガレージサウンドでもあるし、その辺がユニークなんだろうね。そしてどこかオシャレで繊細な音色やフレーズも出てくるし、不思議な感覚のするバンド。古いロックでは出てこない感性かな。だからこそロックは面白い。そんなバンドで、ちょこちょことこういう新しいのは耳にして気にしていかないとね。




Greta Van Fleet - From the Fires

Greta Van Fleet - From the Fires (2017)
From the Fires

 ツェッペリンの再来、と聞いても、またか、そりゃもういくらでも出てくるもんな…、毎回それなりに楽しませてもらうけど、今度はどうなんんだろ?なんてのもひとつの楽しみ方か。あの雄叫びなボーカルに日を吹くようなブルースハードギターにドスドスしたドラミングに職人芸のベース&鍵盤、それで重い重いロックを奏でてくれるサウンドでデビューしてきたツェッペリンが一番ツェッペリンらしい印象だろう。その後のアコースティック調や民族系の音や実験的な幻想音楽なんてのもツェッペリンらしさなんだが、一般的にはそのヘンでもなくやっぱり最初期のイメージが強いだろう。そこを切り取ってツェッペリンらしいバンド、と言われる事が多い。

 Greta Van Fleetなるアメリカのミシガン州から出てきた3人兄弟(双子&弟)が占める若干19歳くらいのバンドで、アルバム「From the Fires」で出てきている。まぁ、聞いてみれば分かるようにロバート・プラントそのままの歌声だ。ギターにしてもジミー・ペイジをかなり意識した部分は分かるフレージングや音色だったりするし、ドラムもまた然り、そもそも曲調も見事なまでにツェッペリンしていて確かに業界が騒ぐ理由が分かる。かと言ってもちろんそれだけでもなく、しっかりと音楽的バックグラウンドもあってのサウンド作りになっているのか、きちんと深みもある。アコースティック調がしっかりしてるのは今後のバンド活動においてもかなり重要度を占めるだろう。何と言ってもこの若気の至りとも言えるパワー溢れるサウンドと歌声に艶やかなサウンド、生き生きした躍動感溢れるバンドの音はとてもミシガン出身の若者とは思えないブリティッシュ風味を出している。何なんだろな、これ。

 プラントの歌声風だけでもなくってどこかやっぱりアメリカ的なワイルド感もあったりするんだけど、作りて側がしっかりと現代のツェッペリンを意識しているのは確実。オルガンありアコギ有り、雰囲気はツェッペリンファーストを狙ってるのは間違いないし、またその勢いをしっかり出せているバンドも見事。曲もまたしっかりと出来上がっていて、ただ単に似てるね、じゃなくて良い曲、良いリフ、良い展開が作られててアルバム一枚を短いからかしっかりと楽しめる。何度も聴けてしまうサイズがこれまた心地よくって、やっぱりこの歌声に痺れる。いやはやどこまで伸びていくか、それとも…か、楽しみではあるが、まずはこんだけの作品に出会えた事に乾杯!












Judas Priest - Turbo

Judas Priest - Turbo (1986)
Turbo


 問題作と言われる作品をリリース出来ないバンドは大成しない、とは言い過ぎだが、常にチャレンジの姿勢こそがロックでもあるしミュージシャンの本質でもあろうと。面白いのは英国ロックではそれが普通の事なのだが、アメリカのロックへ行くと案外チャレンジはなく、売れたらその路線を着実に継承して確実に売っていく、故に10年一日的なバンドも多数存在するという事実。商業的に見ればそりゃそうだろうし、どっちも有りなんだろうとは思うけど、やっぱり新しいことにどんどんチャレンジしていく姿勢ってのは後から思えば面白いし、刺激的だ。だからと言って売れるかどうかってのは分からないトコロが難しくさせるのだが…。一回り二回りしちゃえばどうでも良かった話になるんだけど、やっぱりきちんと現役で商売している時はそうもいかないだろうよ。

 Judas Priestの1986年リリースのそれこそ当時問題作と言われた「Turbo」なんてのもその部類に入るのだが、オープニングから明らかに誰もが「何じゃこりゃ?」って思ったに違いないほどのシンセ色がたっぷりするヘヴィメタルの重鎮。あり得ん。ということでジューダス・プリーストの問題作として挙げられたものだが、その実じっくりと作品を聴いていくと、さすがに全盛期のジューダス・プリーストならではの楽曲のレベルの高さ、演奏力、ロブの歌声にしても絶頂期だから悪いはずもなく、ギターシンセ的な音色なんてのは単なる色付けでしかなくって本質的な音楽の部分では明らかに昔ながらのヘヴィメタルを保ってるし、何ら異色作として取り上げられる作品ではなかった。まだまだリスナーの耳が肥えていなくてピュアに聴いてしまっていたんだろうなというのが今から思えばのお話。

 と言っても実際シンセサウンドは耳につくし、軽やかでキャッチーな作風に聞こえるのも事実で、その意味ではどこか魂売ってるだろ、ってのがある。それを払拭するかのような意味合いもあっての次作ライブアルバム「プリースト・・・ライヴ!」を聴いてみろ、ってのもジューダス・プリーストの問題作としての払拭の意図もあったんだろうな。今30周年記念盤としてリリースされた3CDのライブでも正に絶頂期のライブを収録していて、アルバムそのものはライブだとこんだけ化けるんだ、ってのを示していて音作りの上手さに騙されるなと言わんばかりの記念盤に仕上がっている。相変わらずのツインギターのメタリックさ、ロブの歌声の充実度、どこを取ってもさすがジューダス・プリーストってのが堂々と感じられる傑作。


Wishbone Ash - Just Testing

Wishbone Ash - Just Testing (1980)
Just Testing

 どのバンドでもキャリアが長くなって来れば来るほど初期のアルバムが名盤として崇められることが多く、中期以降に出した力作なんかでもあまり万人に正当な評価を受ける事が多くなくなる。もちろんバンドとしてのインパクトが強烈だったりすれば尚の事初期作品に注目が集まり、それこそが何とかの傑作だ、みたいになる。ところがミュージシャン的成長が進むもので、中期以降や近年の、なんてのも若さ故の力作ではないが、音楽的な意味での力作だったりして結構なアルバムが作られている事も多い。ただ、リスナー側がそこまでついていってないってのがある。しょうがないんだけどね、そこまでの大物になってなけりゃ余計にそうだ。だからと言って聴かないのも勿体無いし、聴いてみてなるほど、と分かる日がくればそれはそれで良いじゃないかと。

 Wishbone Ashの1980年の作品「Just Testing」はベースのマーティン・ターナーが第一回脱退直前のアルバムで、ご存知この次のアルバムではジョン・ウェットンまでもが参加しているが、本作「Just Testing」ではアメリカ制覇を目論んだWishbone Ashのメンバーそのままでのチャレンジとなった。実はここに至るまでで自分的にはウィッシュボーン・アッシュってのを割と見限っていて、何度か聴き直してから見直したというか聴き直した次第で、やっぱり初期作品の印象が強くてそっちばかりを聞いてた。とある時からローリー・ワイズフィールド期もきちんと聴くようになって、やっぱ面白いバンドだな、と認識してからは割とアレコレ聞くようにはなったんで、楽しめていたんだが、この「Just Testing」はその中でも多分相当充実したアルバムなのかもしれない。ややポップエッセンスが強くなってて大英帝国的というのとはちょいと違うんだけど、それでもやっぱりギターが奏でるメロディはさすがの代物で、これぞウィッシュボーン・アッシュと言わんばかりの旋律が炸裂してくれている。

 更にクレジット見てて、ん?って思ったのがクレア・ハミルの参加。この頃彼女自身はソロ活動でアルバムなんかもリリースしておらず低迷期、だったように思えるけどここで数曲参加している。どういう繋がりだったんだろ?アルバムの中ではそんなに目立ってないから分かりにくいんだけど、英国ロック好きならそれなりに知名度ある彼女がここで出て来るってのはなかなかユニークな出来事。そして、なぜここでマーティン・ターナーが抜けたのかなぁ…、やっぱり売れなくなったのがヤだったのだろうか。またグループに戻ってるトコロを見ると別の事情だったんだろうなとも推測できるが、そこはともかく、アナログ時代の各面の最後の曲達が奏でる強烈なインストパート、っつうかギターソロの力強さが実にウィッシュボーン・アッシュらしい。アルバム自体は確かにちょいと綺麗に出来すぎてて、ロックらしからぬ出来映えでもあるけど、それはもう昔からウィッシュボーン・アッシュの特異なトコロでもあるんだから良しとして、素直に楽曲で聴くと結構な名盤と言える作品。




Thin Lizzy - Live at the National Stadium Dublin 1975

Thin Lizzy - Live at the National Stadium Dublin 1975
Live at the National Stadium Dublin 1975 [DVD] [Import]

 録音が古いのってやっぱり迫力なかったり音がショボかったりして今時の音に慣れてしまっていると聞きにくいと思う。だからこそジミヘンやビートルズの作品みたいに最新の機材でリマスタリングしたりしてそのギャップを埋めて聞かせやすくしているってのもあるだろうし、実際それは聴きやすいなと思う。バンドやアーティストの意向がどうのって言われても、今の時代に合った聞かせ方ってなるとそうなるんだからそれはありだろってのもある。そういう意味ではもうほとんどの70年代の録音音源なんてそういう近代的な音に仕上げるってのやってほしいかも。迫力ある音にしてくれれば良いだけだけど。だってさ、勿体無いんだもん。スゲェのに聴かれないってのがさ、んで、それが音が古くて聞きづらいんで…ってのが理由だとしたらね。もっとも本人が損しているだけだからアレだけど…。

 Thin Lizzyの発掘作品「Live at the National Stadium Dublin 1975」なんてのがリリースされていたのは知らなかった。見どころは当然ながら1975年地元アイルランドはダブリンの小さな会場でのライブが見事なまでに完璧な映像と音で録られているライブ丸ごと。これがまたYouTubeで簡単に見れてしまうってんだからいいのかよ、って話だけど昔は凄い画質で出回っているのを知ってたけど見れる状況じゃなかったのが、こんだけ綺麗に素晴らしい作品としてリリースされてて、いや〜、Thin Lizzy聴くならコイツは絶対見るべき聴くべきライブでしょ。これが1975年で、あの「Live & Dangerous」が1978年で、正に脂の乗りまくってる時期ってのが見たり聴いたり出来るんだが、そのちょいと前。だから丁度二人のギタリストが参加して方向性が出てき始めた頃のツインギター体制なんだよ。それがきっちりと聴けるのが興味深いのと、更に言えば二人共レスポールなのに何ともマイルドな線の音でツインギターを華麗に奏でているという繊細な美しさ。これこそThin Lizzyの本質。フィル・リノットの美しき歌詞や情景、ビジョンにぴったりと合った繊細な音色によるツインフレーズが見事。音は結構ハードなのにソロスタイルがそんなんで良いんだ。そこにフィル・リノットの哀愁のメロディ…、天才的な楽曲の数々とも言えるし奇跡の瞬間とも言える。

 ツインギターのフレーズにしてもしっかりとメロディアスな路線を意識しているのは当然ながら、二人の息の合い方も見事だなぁ…、ブライアン・ダウニーのドラムもドタバタしてるけど妙に合ってるし、言うこと無いバンドじゃないか。どこか時代から残されてしまっている感じあるけど、もっともっと見直したり聴き直したりして発掘音源もどんどん出して歴史に残しておきたいバンドです。ちょいと残念なのがデラックス・エディションのCDとかちょいと弱いんだよな…ってことか。




AC/DC - Bonfire Box

AC/DC - Bonfire Box
Bonfire Box

 70年代から活躍していて80年代にメタルの神様的に崇められたバンドって大抵普通にR&Rバンドだったんだよな。時代的にそういう風に仕立てられてたし、バンドロゴなんかもそれなりに攻撃性の高いものだったから一緒に入れといても何ら違和感なかったし、そういうのある方がステータス高かったしね。そしてビッグネームだった、ってのもあるか。実際はビッグネームになっている過程だったんだが、多くは70年代になんらかの功績を既に上げていて80年代を迎えての一気に噴出したメタルブームとの融合、もっとも商業的にはそこを否定するものでもなかったんだろうけど、リスナー的には何か違うよなってのがあったのは確かだ。特に違和感があったのはAC/DCとmotorhead。この2つはメタルっても全然違うじゃないか、っていうくらいに違ってて、今みたいに分析できてないから何か本能的に違う、って思ってただけ。その辺キッスやジューダスなんてのはメタルに寄ってきたから同じ部類に入っちゃったんだろうけど、R&RバンドはやっぱりR&Rバンドだよ。

 AC/DCのボン・スコット追悼盤「Bonfire Box」ってのがリリースされて、ものの見事にボン・スコット特集的作品で、ライブが二種類とデモ・レアトラックス、更に何故か「Back In Black」が入っているという代物でこれはこれはと言わんばかりに充実しまくったセットもの。アトランティックスタジオのライブアルバムが目玉なんだろうけどね、もう一つのパリのライブが長尺版で丸ごと入ってて良い…、って思ったらこれ映画「Let There Be Rock」のそのままのライブだったんだ。いやはやぶっ飛ぶね、このボン・スコット時代のAC/DCのライブの躍動感。正にR&Rの発展系、メタルとの中間とも言えるのかもしれない。冷静に聴いてて思うのはある種motorheadと同じようなサウンドなのかもしれないな、なんてね。グルーブとか攻撃性とかさ、同じ方向見てるもん。発散の仕方もさ。あんまりそういう風に思ったことないけど…、もっともAC/DCにはパンクの要素は入ってないか。

 どこからどう斬ってもAC/DCな楽曲ばかりのライブで、レコードとして残されているどのライブ盤よりも最高のライブがここで聴ける。何でまたこういうのを早く蔵出ししなかったのかね。勿体無いなぁ…っても他のライブアルバムもリリースされてるからそれで評判が変わる事もなかったんだろうけどさ。1979年の12月、正にボン・スコットが無くなる2ヶ月くらい前のライブショウでこれだ。何とも惜しいボーカルを亡くしたものだ…。それでも今でも愛されるボン・スコットのライブ、そしてAC/DCのショウ、こんなの生で見てたらホント感激でぶっ飛ぶよなぁ…、凄いのが作品として残されてて良かった。






Van Halen - In The Club 1976

Van Halen - In The Club 1976
IN THE CLUB

 どんな大物バンドでも若かりし頃にはそれこそ誰かに憧れてバンド始めたりしてるワケで、そりゃもう誰だって一緒でしょ。元々がミュージシャンになるんだ、っていう英才教育を受けてきたヒトなら別だけど、あんまりそういう人もロックの世界には多くないだろうし、やっぱりテレビ見て衝撃受けたとか何かで聴いてぶっ飛んでハマったとかそういう人多いでしょ。そこからどんだけ追求するとかセンスがあるとか天才だったとかそういうのが人生を分けて行くことになるんだが、そもそも天才がそういう衝撃を受けてやり始めると歴史が開かれていくのだな。今でもギタリストという歴史の中では圧倒的な輝きを放っているエディ・バン・ヘイレン、この人もそういう閃きから天才を活かしてきた人だ。

 Van Halenももちろんバンド組んでから当面は偉大なるバンド達の曲をひたすらカバーしてクラブ周りをしていたってことで知られてて、その数ざっと300曲などと言われたものだ。実際どうなのか知らないけど、あの才能からシてそれくらいは軽くコピーして弾けただろうし、バンドもそんくらい出来たんだろうな。そんな逸話の一部が確かめられるのがどういうわけだがバッチリのFMラジオソースレベルで残されている1976年の、とあるライブのワンシーン。どういうワケだがアマゾンでもこのアングラソースが「In The Club 1976」で手に入るので聴いてみるとこれがまたやっぱり天才のカバーなワケで驚く発見ばかり。キッスにZZトップ、ツェッペリンにエアロスミスなどで、当時流行していたのを続々とカバーしてやってたようなモノで、そこはやっぱり熱いウチに熱いものをオーディエンスに届けることのショウマンシップか、見事な選曲だなと思うと同時に凄いなって思わせられるのはデイヴの歌声の幅の広さと余裕のパフォーマンス。この人、こんなに歌声の幅広かったんだ?全部どの曲も余裕でこなしてるじゃないか、っていうボーカリストとしての凄さが印象的。まだまだ上手いワケじゃないが、それでもあのパフォーマンスはもうこの時点で健在だし、それでいてこの歌だから驚く。

 そしてやっぱり圧巻なのはエディのギタープレイ。どんな曲だろうときちんとコピーされているのは当然なんだけど、それでももうあのエディのギターの音になってるし、更にはLed Zeppelinの「Hots On Nowhere」なんてヘンな曲をカバーしてるんだけど、これもレコード出てすぐくらいのコピーでさ、それでもこんだけライブでやっちゃうワケ?ってくらいな変拍子にも聞こえるヘンなリフをいともやすやすとアレンジしながら弾いてて更にはデイヴもあんなヘンなトコロでしっかり歌が入ってくるというぶっ飛びなカバー、しかもそれを軽くやってるのが凄い。他の曲はそんなにヘンでもないんだけど、この曲は相当ヘンなのにこんだけやっちゃってるんだから驚くばかり。やっぱり時代を変えたバンドだったんだなぁ…とつくづく。このCDだとカバーだけでなくってファーストやセカンドに入ってくる曲もプレイされてて、そっちの方はもちろん自分たちの曲だからか最初期のVan Halenのライブとしてものすごい勢いを見せつけられるかのような演奏で、どこを斬ってもスゲェや、っていう単語しか出てこない。音の多少の悪さはどうでもいいや、って思えるパフォーマンス力の勝利、そりゃ世界を制するわ。

Kiss - Creatures of the Nignt

Kiss - Creatures of the Nignt (1982)
クリチャーズ・オブ・ザ・ナイト(暗黒の神話)

 何となくロックってのはどこか社会的には反抗心があったり反骨心があったり、社会体制に不満を持っていたり、そこまでじゃないにしても若者の怒りを発散しているみたいなのがあって、それこそが原動力みたいなイメージを持っている。それは多分日本のロックがそういう歴史的背景から強く出てきているからだろうけど、当然プレスリーから出てきたロックのスタンスってのはやっぱり親からは嫌われるものだったワケで、若者のモノだったんだよな。そこから出発して、それが産業となり、もちろんそこにはプロ集団がいて、しっかりと商売になり音楽的レベルも高まり、みたいな図式を辿っていくのだが、しっかりとその先を見据えてのバンド事業を進めていった数少ないバンドのひとるがキッスになるだろう。

 Kissの1982年リリース作品「Creatures of the Nignt」。ご存知ドラムはエリック・カーに交代してて、実はギタリストもエースは脱退していて、ヴィニー・ヴィンセントやボブ・キューリック、ロベン・フォードなんてのが参加してて、曲作りではブライアン・アダムスまで参加しているというある種一大セッションアルバムでもあるのだが、そのくせこれまでのキッスのキャッチーでポップなハードロックからは大きくヘヴィメタルにシフトしていて、そりゃ時代的にはそっち行くしかなかったんだろうが、あまりにも一般的なメタルチックなサウンドに進んでいて驚いたもんだ。このアルバム聴いてからはこれまでのキッスの完全にオリジナルなキャッチー路線ってのが本当に貴重なバンドのスタンスだったんだなと気づいたもん。あんなキャッチーなの何でやってるんだろ、って思ったけどこういうヘヴィなのやっちゃうと普通のバンドレベルになっちゃったしさ。それじゃ面白くないだろ、ってのが単純にこのアルバムの感想。

 もっとも面白くないと言ってもキッスらしからぬという意味で、世間的なメタルバンドのレベルから見たらどうなのかはよくわからん。多分キャッチーだね、って感じはあると思う。それでもキッス史からしたらヘヴィってだけか。ただ、本人たちがどう思っていたかはともかく、時代の波に迎合した作品だと思うし、それで正解だったんじゃないかと。ある程度は狙ってたと思うが、正にこの跡の歴史を今見ていけばこれは正解だったでしょ。オールタイムなキッスファンからしたら好まれないアルバムとは思うけど、大きな変化をこういう形で示した意気込みを見せた作品。まぁ、自分的に好きかってなるとそんなこたないけどさ(笑)。


Cheap Trick - Raising Hell: the 1970s

Cheap Trick - Raising Hell: the 1970s
Raising Hell: the 1970s

 それにしても胡散臭いCDがいくらでもアマゾンに堂々と売っているのは慣れてしまったとは言っても見苦しい。アーティストやレコード会社自身はこういうの見ないのか、見てても何も出来ないからそのままなのか分からんけど、聴けるウチに聴いとけっていう解釈で良いか。そこまで無茶苦茶なのが出てくるってのは人気のバロメーターでもあるし、それくらいでどうのってんでも今更ないだろうし、って勝手に思ってるが、販促だと割り切るくらいじゃないとやってらんないかもね。なので当然ながらオフィシャルアイテムは概ね普通に入手しているというビッグネームばかりのものを漁る羽目になるのだった。

 Cheap Trickでも「Raising Hell: the 1970s」なんていう胡散臭い4枚組のライブCDがリリースされていて、何かと思いきや、1977年の地元ロックフォードのライブがFM放送されたことがあって、そこからの録音音源が元ネタになっているライブと79年のシカゴのショウも同じく、なのだが、どういうワケだから条件揃ってるのに無茶苦茶音がよろしくないという代物で、FMラジオからの録音という如何にもキレイな録音そうに見えるキャッチコピーには騙されてはいけない。古くからアングラでも有名な音源だが、ホントにFMソースか?なんてくらいにはチープで音の割れた音源なのでご注意。それでもライブそのものは精力的にライブ活動を繰り広げているデビューした年のチープ・トリックの熱き姿で、二枚目のアルバム「蒼ざめたハイウェイ」まではともかくながら、まだ未発表だったけど録音済みだったであろう「天国の罠」からの曲もいくつか演奏されていてなかなか興味深い資料的価値がある。

 ハードロックバンドにしてはやけに軽いサウンドが売り文句でもあるし、イマイチロックファンからは好まれないトコロでもあるが、リアルタイムなロック好き連中からは割と人気を誇っていたし、聴いてみれば曲ももちろんキャッチーで独特の解釈によるサウンドで嫌われる要素はあまり見当たらない。強いて言えばフロント二人のルックスが甘すぎたってところくらいだが、他の二人のオチャメさがその一方向のバンドのスタンスに走らせなくて良かった。ここで聴けるライブはやっぱり熱く演奏してて、畳み掛けるように楽曲が並んでいて聴いてても圧巻だからその場に居たらかなりハイテンションになっちゃっただろうね。




Aerosmith - King Biscuit Flower Hour

Aerosmith - King Biscuit Flower Hour
King Biscuit Flower Hour(2CD)

 今じゃほとんどのバンドがどこかしらに残された良質なソースはオフィシャルでリリースしているんじゃないだろうか。以前だったらそのバンドのディスコグラフィー見てるとスタジオ盤と幾つかのライブアルバム、ベストアルバム程度だったのが、アマゾン見てそういうの知ろうと思ったらそこかしこで色々なジャケットに遭遇する。もちろんオフィシャルじゃないのもあったりするからその辺を差っ引いてみても幾つかはBBC音源やラジオソースみたいなのが残る。これがどうなんだ、と言われてもどっちでもいいや、簡単に買えるしって発想になってきて、そもそも聞けりゃ良いかって感じになっちゃうもんな。実際アーティスト側からもリリースインフォ出ているのだけがオフィシャルなんだろうけど、音源が古ければ古いほど著作権的なものが曖昧になったりしてて何か堂々とあったりする。これもまたYouTubeで聴けるからいいか、みたいになるんだろうが、その前に買ってもバンド側には収益にならないんじゃ?とか色々…。んな綺麗事言ったって結局聞いちゃうし、気に入れば買うし、そんなもんだ。

 Aerosmithの「King Biscuit Flower Hour」なんてのが出たばかりだったんで、どの辺のだろ?って思ってね。再結成後の破竹の快進撃時代とは違う、最初期のとかボロボロのエアロの方が聴いてみたかったんで、こりゃ丁度良いな、って事で聴いていたんだけど、これがまたカッチョ良い。めちゃめちゃカッコよいってくらいにカッコよい。やっぱりエアロはそういうバンドだ。そもそもが好きなバンドだったんで70年代のアルバムの曲は結構聴いてて大抵刷り込まれているから知らない曲ってのが無いんだが、そういえば初期のライブソースなんてほとんど聴いたことない、って事にも気づいてみると、この1975年のライブ音源って凄まじくカッコよいんです。バンド下手くそなんだけど、物凄く艷やかで尖ってて熱い魂ぶつけてくるってのが伝わってくるんだよ。バンドらしいライブでホント良い。まだ3枚目のアルバム「TOYS IN THE ATTIC」リリースした辺りだから曲も少ないし、それでもカッコよい曲のオンパレード、今と変わらないって言えば変わらないんだけど、ひたむきでいいなぁ…。ロックってのはこういう姿なんだよ。初期のエアロのライブってこんなかっこよかったんだ。

 もう一枚入ってて、今度は面白いことにジョー・ペリー脱退後のエアロスミスの1980年6月のライブで、同じくラジオ音源だからそこは問題ないんだけど、面白いよな、しっかりとギターが変わっちゃうと毒気が薄くなる、っつうか…、それでも自分的には「ナイト・イン・ザ・ラッツ」ってアルバムも好きだから許せるんで、その時期のライブもこれまたほぼ聴いたことがなかったからここで聴けて嬉しいね。ああだこうだと当時は色々と言われたのは当然だし、バンドが崩壊していったのも当然だったんだけど、ライブ音源と楽曲聴いている限りはまだまだイケるんじゃね?なんて思えるんだがそうでもなかったんだな。これもまた珍しい時期のライブで、何ともお得な二枚組のCDで役に立つ。好きだったくせに案外深くライブなんかは追求したことのないバンドで、それは多分そんなに変化しないからだろうな、カッコよいってのはあるがライブごとにそんなに演奏が違うんでもないだろうし。でも、久々にこういうの聴くと血が沸々としてくるね。エアロいいね。

Queen - Rock You From Rio

Queen - Rock You From Rio
Rock You From Rio by Queen (2009) Audio CD

 以前はビデオでリリースされていたが今のDVDやBru-Rayではリリースされていないアイテムなんてのも多数存在する。画質が耐えられないものだったからとか、そもそもライブがあまり良くなかったから、とかリリース当時とは権利関係が変わっているからリリース出来なくなったとか様々な理由があるようだが、アーティストやバンドのディスコグラフィとして存在していたならきちんと今のメディアでもリリースしてもらいたいとは思う。これからの時代になるとCDやDVDってメディアもほぼ消えていくんだろうから、映像にしても器は何でも良くってオンライン上できちんと過去のも含むアイテムが手に入るようになると良いな。そこら辺って全然整備されていなくて見れないモノばっかりなんだよな。その分YouTubeなんかで見れるだろ、って話なのだろうが、それはそれでクォリティが著しく低いものも多いし、作品としてはどうなんだ?ってのもね。そうは言ってもそこで楽しんでしまっているのも事実、か。

 Queenの1985年のリオでのライブは以前ビデオやLDでリリースされていたがオフィシャルな所からDVDなどは今のところリリースされていないようだ。一応CD「Rock You From Rio」やDVD「Rock in Rio」なんてのがアマゾンにはあるが、どうだろうなぁ、オフィシャルからじゃないんだろうと思う。何でこのライブをリリースしないんだろ?Queenのライブ映像って何だかんだとリリースが結構遅かったりするんで忘れ去られているのかもしれないが、思い切り全盛期のライブで南米なんだから超盛り上がってるし良いライブだと思うけどな。1981年のブラジルでのライブもスゲェ勢いと迫力があって好きなんだが、こっちの1985年のはもっと完成度が高くて見事なライブをいつものQueen節で続々と歌い上げてくれるし、この疾走感なんかは見事なものだ。こういうライブもリマスターされたきちんとしたアイテム化を望みたい。

 Queenの場合はジワジワと年代別にライブ音源や映像がオフィシャルでリリースされていて、74、75年あたりも出てるし、81年以降も結構あるから後は76年から79年頃のかな。77年のEarl's Courtなんか出てくる可能性は高いし、多分そのうち出て来るとは思うが格好良いんだろうな。昔はこういうのちゃんと追いかけてたからちょこちょこ聞いたり見てたりしたけど、もう最近はすっかり忘れ去ってきているからリリースニュースでもあれば久々にそれが見れる、聴けるってな喜びになってて、本来のファンである様子になってきてるからね、楽しみなんです。いつでも見れるし聴けるけど、そうしない、っていう贅沢(笑)

Rock in Rio [DVD] [Import]


King Crimson - Live At The Marquee, London, July 6th, 1969

King Crimson - Live At The Marquee, London, July 6th, 1969
Live At The Marquee, London, July 6th, 1969

 アングラ音源として出て来るものは大きくライブ録音ものとアウトテイク系のものと2種類に分けられるだろう。ライブ録音ものはラジオやテレビでの放送音源が元になってればしっかりとした音だけど会場録音モノなんかだと千差万別。大抵オフィシャルでリリースしてくるのはまともな音質のものが多いけど、中にはぶっ飛んだソースを堂々と出してくる時もあるんだから恐ろしい。アウトテイクやデモ音源ってのは基本的に卓録モノになるんだけど、この手のは相当まともなモノじゃなきゃオフィシャルでは出てこない。何せアーティスト側がそんな出来損ない音源なんて世に出したくないよ、って声が大きいらしい。創作過程なんて知られたくないってのは分かるわな。もっとも完璧なデモテープを作っている奇特な方々の場合はオフィシャルで堂々と出してくるけどね。そういうのも含めて全てその人達がどういう過程で、とかライブをやってたんだ、なんてのを知りたいという欲がこの市場を形成しているワケだ。いわゆるニッチな世界、ですな。

 King Crimsonのロバート・フリップ卿はその手のソースをとにかく目の敵にしている人で知られていたが、まさかこういう形で報復攻撃に打って出るとは思わなかった。おかげでリスナーは実に迷うこと無く、また思う存分にキング・クリムゾンという化物のライブ音源を聞きまくる事が出来る。そう、キング・クリムゾン・コレクターズ・クラブなどを筆頭にとにかく残されている音源を一応聴きやすくしてオフィシャルで全てリリースしている。それが例えファンの誰かが奮発した機材で録音したソースであろうともマスターに近いソースを入手していじりまくってリリースしてくるのだ。正に無法なアングラ市場に対してオフィシャルにやり返しているという逆手に取った商売。おかげでアングラ市場からクリムゾン絡みのソースはほぼ消えた。これがフリップ卿の望みだったんだから見事に大成したと言えるだろう。

 そのコレクターズクラブの最初のソースとして名高いのが「Live At The Marquee, London, July 6th, 1969」。もっともクリムゾンの場合はそれ以前に「Earthbound」っつうとんでもないライブアルバムがあるんで、この手の音源については大いにあり、なんだろう。「Live At The Marquee, London, July 6th, 1969」の方は前日がストーンズのハイドパーク公演の前座で出演していて、その翌日のマーキーでのライブソースなのだが、とにかくデビューしたばかりのクリムゾンの恐るべき演奏と破壊力、だけでもなくしっかりとソフトに歌い上げるメロウなサウンドもありのライブ、それでもこのバンドがとんでもないポテンシャルを誇る大英帝国を代表するバンドになるだろうという予感があるというのは凄い。このぶっ飛びライブソースを聴いて決して幻滅することもなく、今後の期待に胸を膨らましながら聴けるのだから頼もしい。実際ここから74年頃までのライブ音源はひたすら聞いてたしなぁ…、今やオフィシャルでボックスにもなってほぼ全公演聴けちゃうでしょ?それでもこの最初期の1969年のライブは貴重ですよ。しかもマーキーだから近さも実感できる狭さだし、その分バンドの一体感も凄い。

COLLECTORS’ KING CRIMSON [BOX1]-1969

Pink Floyd - 1969 Dramatis/ation : The Man And The Journey

Pink Floyd - 1969 Dramatis/ation : The Man And The Journey
1969 Dramatis/ation

 ライブを実験の場、と考えるか完成した楽曲の発表の場、と考えるかでそのバンドのライブに対する取り組みは大きく異る。前者は自分たちのためにライブを行い数々のチャレンジを行うことで見えてくるべきものを見据えていくというものだから観客側は恐らくその場では圧倒されるだけで、到底理解するなんてことはあまり多くなかったんだろうと思われる。後者は当然ながら皆で楽しもう的にリスナーが知っている曲を披露するだけなので、観客側もさほど混乱を強いられる事はないだろう。ただ、それでもアレンジが著しく変化しているなんていうパターンもあるが、それは恐らく実験精神がある状況での既存の曲のプレイとなるのだ。さて、常に実験的な野心を持ちながらライブ活動をひたすら続けていたバンドといえばフロイドかクリムゾンか、みたいなもんだが、両者ともその実験精神から産まれたものは大きい。

 Pink Floydの「The Man & The Journey」はライブという実験の場でしか組曲として構成されておらず、オフィシャル盤をどんだけひたすらに集めてもその実態は掴めなかっただろう。アングラ音源で始めてその実態が判明するというものだ。以前はそれこそがフロイドマニアの楽しみでもあったのだが、今じゃ驚くことにその未完成組曲がオフィシャルでリリースされている。「1969 Dramatis/ation」のDisc 2にアムステルダムのライブの「The Man And The Journey」ライブそのものが丸ごと収録されているおかげでこれまでアングラ音源でしか出回っていなかったものが浮上した。もっとも、それでも相当のピンク・フロイド好きな人しかこんなセットのバラ売りアイテムなんて購入しないような気がするんで、やっぱり一般的じゃないんだろうな。ただ、聴くきっかけにはなるだろうし、時代的には1969年のライブってことで明らかにまだまだサイケデリックな実験音楽をやっている時代のフロイドのサウンドなんだから後の完成されたコンセプトアルバムほどではなく、「Echoes」的な解釈での組曲だろうことは想像に難くなかろう、事実概ねホワ〜ンとしたサイケサウンドのようなものだから。

 それでもほとんどの楽曲は「More」や「Ummagumma」、「Relics」あたりにきちんと収録されたりしているので単曲としては知られているだろう。既存曲もこの組曲に入れ込んだってこともあって大成しなかったのだろうか。それよりも多分、コンセプトは面白いんだけどどこをどう聞いたら良いのか、ポップさが見当たらなかった要素もあるかもしれない。またはこの実験をしている時に「More」への楽曲提供の時期が迫りやむなくここからリリースしていった、とか…。諸説あるんだろうけど、こうしてまとめて現時点で聴けるようになったのは面白い。そしてこのライブを聴いていると確かにふたつの大きな物語が展開されている様相も実感できることだろう。アングラソースがなけりゃこんなのも知らないまま、もしくは聴ける音源なしに推測だけしていたものだろうが、アングラ音源があったおかげで水面下でのリスナーの下支えが大きくなりオフィシャル化していった、と思いたい。もっとも突然こんなのが出てきても大いにありがたがるものではあるが。バンドによってはそういう作品も数多く存在するし、音源がない、ってのもあるんだからまだラッキーな話だ。


Led Zeppelin - How The West Was Won : 2018 Remaster Version

Led Zeppelin - How The West Was Won : 2018 Remaster Version
伝説のライヴ ─HOW THE WEST WAS WON─ <2018リマスター>【3CD】

 2003年にリリースされた1972年のライブアルバムのリマスター盤が2018年にリリース、ってのはどうなんだろ?確かにそのリリース年のズレが15年もあればデジタル技術も進歩していて、より素晴らしい音になるというのもあるのだろうけど、ほとんど意味ないよな、って思ってた。んでも、やっぱり気になるから聴いてしまうワケで、そうするとその音質の違いが結構あるのかなぁって思ってしまって、以前リリースのバージョンをまた聴いてみたりして、結局結構な三昧になってしまうという悪循環。悪循環ってことはないけど、やっぱりそういう聴き方したくなっちゃうと思うんだよね。挙句トータルタイムが違うとかカットがあるとかないとか色々と気づく部分もあって、それこそそういうのもしっかりと分析されていたりすればウェブ見てフムフムって思ってれば良いのに、なかなか見つからないからと言って自分で並べて色々と聴いてしまうのもね…。

 Led Zeppelinの1972年6月25日のLAと27日ロングビーチでのライブショウをミックスして編集しているライブアルバム「How The West Was Won」の2018年リマスターバージョンの登場。端的に書けば以前のバージョンは如何にもデジタル時代のイコライジングで中音域に全て音を集めてとんでもなく分厚い音を実現していたんだが、如何せん聞きにくいという音質に仕上がってて、その中味は皆が皆感動してはいたものの音質面でのデメリットが大きかった。今回のリマスターバージョンはそんな風潮やファンからの反応もあって、またジミー・ペイジ自身もきっと昨今のナチュラルな音質の方が好ましいと判断したのだろうか、恐ろしいほどの音質の変貌を見せた。全く耳に刺さらない透明感のある自然な音色が復活しててもちろん演奏はそのままだからよりライブ感が溢れるサウンドになったと言えるのかな。ドラムの音だけはもうちょっと何とかならなかったんかな、とも思うけどそれでも随分聴きやすくなった。

 その代償なのか「Whole Lotta Love」のメドレー中の「Hello Mery Lou」がカットされてしまっていて今更なんでそこだけ?みたいには思うけどBBCセッションの時も一部だけカットしたりしていて著作権絡みの関係でカットしたんかなぁと邪推しているが…。Zeppelinの場合アングラ音源でフルスペックのライブを聴いている事も多いので、そのツアー毎のライブのセットというかバージョン、アレンジなんかも耳に染み付いていて、そこからちょいと逸脱すると割とすぐわかってしまうというのはあまりにも聴きすぎたせいだろう。もっとも毎回演奏が異なっているのは当然なので、日によってはそういう演奏だったんだ、ってなこともあるけど、大抵はそこまで大幅に変わらない。そう言えばその手の話で書けば、最近はこのアングラ熱もかなり面白い方向になってて、同日音源の別ソース、バージョン違いみたいなのまで整理されてマニア間では浸透しつつあるようだ。例えば日本公演929なら既に3ソース以上発掘されているし6ソースくらいあるとも言われている。多分もっとあるだろうし、928のサウンドボード音源も昔からウワサはあったものの聴いた人間は結構限られていたのだろうが、ココのトコロちょこっと流出してきたとか、この1972年のLAのソースでも2つくらいは発掘されているとか色々、そこまで入るのも大変だが、いつしかいうのも整理シちゃうのかな。あんだけのライブであんだけの人数がライブに行ってたんだからある程度の数が録音していたのも不思議じゃないからこうして今のネットワーク時代になってその懐かしき録音テープが出てきたりするのだが、これもまた面白い時代だ。

 さて、この「How The West Was Won : 2018 Remaster Version」、Led Zeppelinのひとつの全盛期を完全に捉え切ったライブアルバムで、ハードな一面ばかりがクローズアップレされることの多いバンドがライブでも実はアコースティックセットをしっかりと実践していて、英国フォークらしさをも持ち合わせた姿を知らしめている。更にブルースは当然ながら多様なサウンドを既に展開している時期、そして何よりもロバート・プラントの歌声が絶頂期のままで、この跡からはハイトーンを抑え気味になった歌い回しになっていくことからすればこの時期までが若気の至りでの歌が聴けるライブ。その分ひとつの輝きを放っている。アルバム的には5枚目録音中くらいなのかな、「Over The Hills And Far Away」の歌詞が異なるのとかは有名なお話。などなど既にデビュー3年強くらいでしかないのにこんだけのバラエティと迫力と実力を見せているLed Zeppelin、やっぱりモンスターバンドだと言わざるをえないだろうよ。素晴らしい。ちょこっとどんなんだろ?って聴いたらアレコレで半日このアルバムに関わってしまって、更にLed Zepplin熱も下がらずにアレコレと聴いている始末。Record Store Day限定での7インチシングルによる未発表バージョン2曲のリリースも頼もしいし、もっともっと話題を振りまいてもらいたいです。




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物心付いた時からロックが好きでいつぞや何でも聴き漁るようになり、多趣味な生活を過ごしているロックマニア。


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