Michael Des Barres - Somebody Up There Likes Me

Michael Des Barres - Somebody Up There Likes Me (1986)
虚構のアウトロー

 英国ハードロッカー達は80年代が近づく頃にはスタれ気味になってきていたハードロックからちょっと距離を開けてやっぱり食うために何するか?みたいなことを考える人達も出てきてて、かと言ってエイドリアン・ガービッツほど音楽性をガラリと替えるなんて器用な人も多くはなく、そういう意味ではロッド・スチュワートなんてのはしっかりと上手く路線を変えて生き続けていった人なんだろうと思うが、大部分はそう上手くは進まなかったのだな。もっともロックが一番野心的な時代を生きてきたワケだからそうそう浮気できる心境でもなかったハズだし、ディスコブームの時代ってのは全く相容れないものだしね。そんなアーティストが多数いる中、皆ソロアルバムを出すものの成功には程遠く、どうしたもんか、と言った所に舞い込んできた美味しいお話、そんなストーリーが掛けてしまう我らがマイケル・デ・バレス。もうじきシルバーヘッド再結成で来日公演しますねぇ~、ダンディな姿になったマイケル・デ・バレスさん、どんなん見せてくれるんでしょ?

 リリースは1986年なのかな、パワーステーションのライブツアーで歌ったことから広がった新たな交流、ご存知デュラン・デュランのアンディ・テイラーとセックス・ピストルズのスティーブ・ジョーンズの全面協力のもと実現したセカンドソロアルバム「虚構のアウトロー」。ま、メンツ見ただけでバックの音はモロにその辺の方々のソロアルバムに近しいものがあって、正しく3兄弟アルバムとも言えるんだよな、と今並べて聞いてみると思うワケです。クールに進むちょっとおしゃれに聴こえるハードロックテイスト。イマイチ抜け切らないセンスがアンディ・テイラー、スティーブ・ジョーンズとも共通のセンス、今回はマイケル・デ・バレスが歌っているのだが、もちろん彼の歌も抜け切らないのが個性なので結果はそこそこの作品が出来上がったと言うところか。ただ、聴きやすくてロックっぽいからお洒落で流れていると心地良くあるし、80年代半ばのちょい売れ線な音だから余計にね。売れてもおかしくなかったんだが、随分昔から100円コーナーに陣取っていたレコードという認識だったなぁ。

 エッジの立ったギターとソリッドなスタイルの楽曲をバックに歌うマイケル・デ・バレスはもちろん悪くもないがイマイチ個性も見られない感じなのが残念、元々そんなに歌唱力で聴かせるタイプではないのでしょうがないのだが、よく出来た無難なアルバムという言い方くらいしかできないかなぁ。この人好きなんだけどな。そんな理由はレーベル側も周知しているのか今どき珍しく手に入らないCDと化している…。



Adrian Gurvitz - Sweet Vendetta

Adrian Gurvitz - Sweet Vendetta (1979)
スウィート・ヴェンデッタ(甘い復讐)(K2HD/紙ジャケット仕様) サイレント・シティ

 自分の中でほとんど聴かない音楽のスタイルのひとつにAORっつうのがある。今でもAORなんて通じるのかな…。Adult oriented Rock、のような略称だった気がするが、とにかく昔は日本もポップスもとにかくAOR一辺倒だった時期があってもちろん自分もまだ学生だったころなんだけど、周り中皆聴いてたり持ってたりして何だこりゃ?って状態だった。自分的には幼心にもあまり馴染まない音楽だな…なんて思っててほとんど聴かなかった。いわゆるTOTOとかエア・サプライとか日本だと大滝詠一とか松任谷由実とかそういう類のものだ。そりゃまぁ聴きやすいんだろうから売れたワケで、今でもビッグネームはたくさんいるんだが、これがまた全然受け付けなくてダメでさ(笑)。ま、ここのところ何か違う方向に進んでいるウチのブログの流れもあってちょっと面白い所にタッチしてみるかと思ってね、普通にAORは聴きたくないから進まないけどちょいとロックな流れから行ってみよう。

 1979年にリリースされたAdrian Gurvitzのファーストアルバム「スウィート・ヴェンデッタ(甘い復讐)」だが、これがまた完璧なAOR作品でしてね、どころかエイドリアン・ガービッツってのはAORの申し子だ、みたいな名の上がり方で過去の英国ハードロッカーとしての側面はあくまでも下積みの時代でしかないということで、ここを評価してもしょうがないんだみたいなね、そんな感じ。っつうかさ、誰もそんな所聴かないし、この「スウィート・ヴェンデッタ(甘い復讐)」以降のエイドリアン・ガービッツを聞くワケですよ、普通。なんつってもソロアルバムとシングルをいくつもヒットさせた後、裏方で作曲家になってバカ売れして大成功、そこからは自分のプロジェクトでプロデュースもしたり自身で音楽やったりもしてなかなか悠々自適な環境を手に入れたようだ。昔の英国ハードロックをやってたらそんな生活にはならなかっただろうから、人生の成功を手に入れるにはなかなか正しい道を選んだようで…。

 はて、その音だが、1979年の作品ってことでその前のグレアム・エッヂとのアルバムが1975年と1977年にリリースされているのでこの変身はその数年の間のお話。しかしグレアム・エッジのアルバムにはそのヒントとなるAOR紛いの曲が幾つか聴けるワケで、なるほどそんなセンスと方向は悪くないとも思えたのだろう。その聖歌がしっかりと開花したファーストアルバム「スウィート・ヴェンデッタ(甘い復讐)」だが、冒頭から驚くくらいの軽やかなAORサウンドとファルセットの優しく爽やかな歌声が聞こえてくる。歪んだギターなんて皆無なディスコ調のビートに軽やかなメロディが流れ、そのおしゃれなサウンドは耳あたりも良く番人の邪魔にならないサウンドとしては素晴らしいものだ。全く記憶に残らないサウンドってのも見事な出来栄えで、自分的にはやっぱり素通りしていく音楽になっていた。いや、これまでエイドリアン・ガービッツがAOR化したんだよ、ってのは知ってたけどほとんど聴いてなかったんです。だから今回真面目にアルバム通して聴いたの初めてで、ここまでイッてしまっていたのは知らなかった。見事な音楽センスに脱帽です。普通は嫌われない見事なサウンドです。





Leo Sayer - Just A Boy

Leo Sayer - Just A Boy (1974)
Just a Boy Silverbird
Greatest Hits Live! (Live) - Leo Sayer Greatest Hits Live! Leo Sayer…Past Seven - Leo Sayer Past Seven

 ロジャー・ダルトリーのソロアルバムを丸ごと制作して、さらにそれなりにヒットシングルともなった「Give It All Away」なる曲も産み出して一躍時の人…になったとは思わないが、作者であるレオ・レイヤーにはかなりの環境の変化が訪れたことだろう。そもそもソロアーティストとしてやっていくのが前提だっただろうが、手始めの仕事としてロジャー・ダルトリーの作品となったんだが、その翌年には自身のデビューアルバム「Silverbird」をリリース、同年秋には早くもセカンドアルバム「Just a Boy」をリリースすることとなった。今回はこのセカンドアルバムのお話なんだけど、もちろんロジャー・ダルトリーに楽曲提供してアルバムも制作したものの、自分でも気に入った曲はきちんと自分の作品の中に残したかったのか、このセカンドアルバム「Just a Boy」にはロジャー・ダルトリーに提供した曲がいくつか入っている。その辺からなるほど~と興味を持ったんだけどね。

 1974年リリースの「Just a Boy」、当時英国では結構売れた作品のようだし、そもそもレオ・セイヤーって人が割と売れた人のようで、日本人的には全然ピンと来ないけど、ちゃーとをそれなりに賑わすくらいのレベルのミュージシャンになっていったようだ。英国だけでの話のようだけど、そこからすればロジャー・ダルトリー的にはおかしくない話どころか育てた恩師として語られる部分も多いのかもしれない。実際レオ・セイヤーの経歴はどれもロジャー・ダルトリーのアルバム制作というところから始まってるし。

 さて、この「Just a Boy」という作品、ロジャーに提供した「One Man Band」や「Give It All Away」なんて何の変化もなくそのままの形で録音されている…ことからすればロジャーのアルバム作成時に自分自身である程度満足できるレベルまで仕上げてしまったが故に自分のアルバムに入れる時にもそんなにいじるところがなかったのだろうと思われる。確かにキャッチーな曲でこれ以上いじってもしょうがないかなという気がするのでこんなもんだろう。さて、他の楽曲…っつうかアルバムとしてなんだけど、自分的にはまるで好みではないのでマジメに聞くことすらないかも(笑)。流れ上漁ってみたんだけど…う~ん、こういうのってダメだね。じっくり聴けば聞き所はあると思うけど、何にも興味を抱かない…。





Roger Daltrey - Daltrey

Roger Daltrey - Daltrey (1973)
Daltrey One of the Boys

 ザ・フーのボーカリストのロジャー・ダルトリーはザ・フー全盛期の1973年から割とコンスタントにソロアルバムをリリースしている。当時現役のバンドのメンバーがそんなにソロ活動を活発にすることもあまり見られなかったので珍しいケースなんじゃないだろうか?ザ・フーの場合は全員がそんな感じでソロアルバムを出してて、しかもバンドとしては最高峰のレベルの作品をリリースしまくっているという恐ろしい集団だったということだ。もっとも、バンドのザ・フー=ピート・タウンジェンドという図式はあったのだが、その分他のメンバーはもう少し普通レベルでのソロ活動を楽しんでいたようだ。楽しんでたかどうかわからんが、少なくともロジャー・ダルトリーに関しては自身のキャリア形成を意識していた節はかなり見られる。

 1973年にリリースされた最初のソロアルバム「Daltrey」はジャケットを見ての通り、映画「Tommy」とかなり被るイメージを打ち出している。これはもうアルバム「Tommy」の頃からイメージが付いてしまったロジャー・ダルトリーの性でもあって、特にイメージを替えるんではなくてそのまま売っていこうということからだろう。その分音はある意味実験的でもありある意味無難とも言える作風に仕上がっている気がするな。普段ピートの楽曲でロジャー・ダルトリーが歌っているのはマッチョでパワフルな歌声でもあり、これこそザ・フーと言わんばかりの歌だが、その声を持ってして、外部ソングライター達の作品を自身の意向をほとんど打ち出すことなく歌っただけ、ではないかとも思えるアルバム。実質は作詞作曲編曲=デヴィッド・コートニー+レオ・セイヤーのユニットによるアルバムで、ロジャーは歌っただけ。故に演奏陣もその人脈で固められているのでそれこそラス・バラードは単にギタリストとして参加していて、その類まれなる作曲能力は発揮されていないところが残念。そしてアージェント人脈からドラムにボブ・ヘンリットが参加している…すなわちここで後のザ・キンクスとザ・フーがくっつくのだ。う~ん、意味はないけど感慨深い(笑)。それにロジャー側からなのかバイオリン奏者としてデイヴ・アーバス、すなわちEast of Edenのメンバーなのだが、それよりもザ・フーの「Baba O'riley」で聴けるバイオリンを弾いた人、ですな。そんな面々が参加しているようだが、やっぱりロジャーは歌っただけなハズなんだよな。ロジャー・ダルトリーって音楽的にあーだこーだってあんまりない人だと思ってて、何でも歌えば自分流になっちゃうからさ。ただ、小難しいのとかは合わないってのを知ってるし、多分ピート以外のソングライターの楽曲って歌ってみるとどうなるんだろっていう興味も合っただろうと推測してるけどね。

 さて、その「Daltrey」というアルバム、可もなく不可もない、ロジャーが歌ったからといって素晴らしい作品になったという訳でもなく、楽曲の良さが引き出されたというものでもない。普通にロックとか音楽とか歌ってのがあって、そりゃプロの作品だから悪くないさ。でも別に何か殊更今の時代まで聴くべき作品か?ってもんでもない。ただ、思ったのはロジャーってやっぱり普通のロックを歌うくらいじゃ物足りない人なんだ、ってくらい。やっぱピートの作品が合うよ。当の本人はこのソロ活動をきっかけにコンスタントにソロアルバム出していくけどさ、まぁ、小遣い稼ぎってことにしとこうじゃないか。作品としては悪くないし、まずまずの英国ロックが聴けるけど、期待値高すぎたからちょいと満足できない感じ。



Russ Ballard - Winning

Russ Ballard - Winning (1976)
ウィニング(紙ジャケット仕様) ラス・バラード(紙ジャケット仕様)
Winning - Russ Ballard Winning Anthology - Russ Ballard Anthology

 英国ロックの深みを散策しているととんでもないものにぶち当たることがある。ラス・バラードと言うソングライターにしてもそうなんだが、60年代から地道に活躍し続けていた人で、メジャーブレイクしたのはやっぱりアージェントの時代からで、ポップでキャッチーな側面の強い楽曲を次々にヒットさせ、アージェント時代の楽曲にしてもいろいろなバンドがカバーをしていたりするのだが、大体がラス・バラードの楽曲をカバーしているワケで、器としてアージェントがあったというようなもんだ。1974年にすったもんだの音楽性の方向性の違いでアージェントを脱退してからはソロ活動を行うことになったが、多分既に作曲家としての才能は各方面に知られていたんだろうな。それでも作曲家として人に曲を差し上げるという行為はまだまだ考えていなかったのか、自身でソロアルバムを作ってリリースすることで才能を世に広めていったようだ。

 1976年のセカンドソロアルバム「ウィニング」が有名なんじゃないかな、ってか有名なハズだ。後々に取り上げられる楽曲の数からしても「ウィニング」が一番多いし、もちろん彼の全作品を聴いたわけじゃないけど、かなり良質のポップチューンが並んでいる傑作で、なるほど様々な人に気に入られるハズだよな、と。まずは冒頭のタイトル曲「ウィニング」はサンタナが歌入りのまま取り上げているし、ご存知「Since You Been Gone」はレインボウ他グラハム・ボネット関連ではいつも出てくるレインボウ最大のヒット曲だし、「Cuckoo」はベイ・シティ・ローラーズに取り上げられている。その他でも「A Song For Call」なんてワムみたいなキャッチーでキュートなバラードだし、どの曲もシングルヒットの可能性を持った曲が並んでいる。多分失敗したのはジャケットのダサさと売り方かな。他人にどんどん歌わせていけばもっと面白くなったんだろうなと思う。

 「ウィニング」に参加した面々を見てもスペンサー・デイヴィス・グループからの面々や鍵盤奏者として名を馳せているラビット、面白い組み合わせとしてはフェアポート・コンベンションのドラマー、デイブ・マタックスも参加しているようで、この人脈の幅の広さも才能開花のヒントだし、以降はハードロック人脈も当然増えていくワケで、何とも素晴らしいことだ。ザ・フーのロジャー・ダルトリーのソロ作品には何かしら関与しているし、プロデュース業や作曲業など正に音楽業界人。騙されたと思って聴いてみるとその才能の深さに驚くだろう、そして足りない何かも気づくんだが、かなりの良作ですなこの「ウィニング」はさすがにプロミュージシャンに敬愛されるだけある作品です。





Argent - In Deep

Argent - In Deep (1973)
イン・ディープ(紙ジャケット仕様) オール・トゥゲザー・ナウ(紙ジャケット仕様)

 なんだろう、ふと何かの誰かのつながり調べをしていた時に出てきたんだよな、アージェントって。んで、そっか、と気になって自分のHDDに置いてあるんだが、これがまた何でだろ?って気になって聴いてみると結構気になる音でさ。特別に凄いインパクトがある音というわけでもないし妙に聞きにくいワケでもないし、至って普通に英国ロックなバンドで、そういう意味ではキンクスやアニマルズなんてのと同じ部類に入ってくるのかも、と思ったり。もっともそういう意味ではバンドの来歴からしたらゾンビーズを挙げるほうが適切なんだろう。ゾンビーズもよくわかんなかったな。サイケでキャッチーだったのまでは記憶にあるけどその後消滅して各方面にメンバーが分散、そこからの派生として出来上がったのがこのアージェントでもある。どういうコンセプトと方向性で出来たのかとかよくわかんないけど、時代の流れに合わせて出してきたアルバム各種はそれなりに評判が上がってて、1972年にリリースされた「オール・トゥゲザー・ナウ」が一番売れた作品として知られている、か?

 今回はその後の1973年にリリースされたジャケットが印象深い「イン・ディープ」で。見て分かる人には分かるヒプノシスのジャケットで深さと鮮明さとインパクトを与えているが、音の方は、まぁ、ジャケに負けていないと言ったら嘘になるかもしれないが、かなり頑張ってるサウンドでパンチは足りないが聴き応えはある音、と言った所だ。冒頭の「God Save Rock'n Roll To You」は1990年代にキッスがカバーした事で知られているみたいだけど、もちろん当時にアージェント達もヒットさせているロックンロール讃歌と言ったところ。雰囲気的にはモット・ザ・フープルの「All The Young Dudes」みたいな讃歌だな、と勝手に思ってるんだけどこういうのは英国からじゃなきゃ出てこないだろうな。いつ聴いてもこの讃歌は心地良く壮大で美しいものだ。英国ロック好きならちょいと知っておいて良い曲ですな。そして驚くのが次の「It's Only Money, Part.1」だ。何がって、これ、Zeppelinの「Whole Lotta Love」と同じ雰囲気出してるんだもん。曲とか真似てるワケじゃないし、多分そんなの意識してないだろうけど出てくる音がよく似ているし、歌も心なしかロバート・プラント的だしギターリフもそんな感じ。でもオリジナルってのはよくわかる。その辺のラス・バラードのセンスって見事なものだと感じる。

 アージェントってそんなに自分的には深く聴いたことのないバンドなんだけどメンバー全員の名前と経歴なんかも割と知ってたりするのでやっぱりそれなりにメジャー度の高いバンドだったんだと感心する。ロッド・アージェント、ラス・バラード、ボブ・ヘンリット、ジム・ロッドフォード…。リズム隊はキンクスで知られてたりするし、ラス・バラードは各作曲方面で有名…レインボウの「I Surrender」や「Since You Been Gone」なんてのがあるからね。

 さて、この「イン・ディープ」という作品、冒頭に数曲の放つインパクトは結構なものでアルバム全体の評価が上がるんだけど、以降は割と曲によるバラつきがあって、妙につまらない曲と楽しくなるのがある…後にこの辺のセンスの違いは大きく出てくるんだが、結局はロッド・アージェントの曲とラス・バラードの曲のセンスの違いなワケだ。まあ、ラス・バラードはこの後脱退することで成功するんだが…。しかし本人達はそんなにハードロックな要素を持ったバンドだとは思ってなかったと思うのだが、結局は後々のハドロックバンドに支持されるというユニークな存在のアージェント、また全アルバム聴き直してみるのも良いか?



Doris Troy - Doris Troy

Doris Troy - Doris Troy (1970)
Doris Troy アイル・ドゥ・エニシング:アンソロジー1960-1996
Doris Troy (Remastered) - Doris Troy Doris Troy (Remastered) Sings Just One Look and Other Memorable Selections - Doris Troy Sings Just One Look and Other Memorable Selections

 ケヴィン・エアーズのアルバムクレジットと冒頭曲で発見したドリス・トロイという女性、ビートルズマニアならお馴染みの歌手のようで、自分的にはそんなに印象なかったんだけど、ちょいと調べてみて興味を持った。ストーンズやビートルズはともかく、フロイド、Andwella's Dream、Atomic Rooster、Edgar Broughton Band、Ann OdelやThree Man Armyなんかのコーラスもやってるということで、何とも英国アンダーグラウンド系のロックとの絡みの多さ。これまで聴かなかった自分が失敗、って感じです。ん?あぁ、普通はアレか、このドリス・トロイの「Doris Troy」というアルバムそのものに興味を持つんだろうな…。

 1970年にアップル・レーベルからリリースされた「Doris Troy」では何とも驚くことにジョー・ジ・ハリソンとリンゴ・スターが前面参加、もちろんその周辺も曲作りや演奏で参加しているワケで、クラプトン、クラウス・ヴォアマン、レオン・ラッセル、デラニー&ボニー、ビリー・プレストンなどなど…、こりゃもう錚々たるメンツのアルバムで、それぞれが持ち味をしっかりと出しているので面白さが増す。自分的にはそっちからの聞き方ではなくてドリス・トロイという女性の英国ロック達との絡みから聴いてるから歌中心で聴くんだけどさ、やっぱ可愛さある歌声でパンチがあるってほどでもないんだな。音的にはバックの面々などの趣味嗜好が出ているからか、スワンプ的なものが多くて全然好みじゃないんだけど、歌は生きてる。だからこういう音なのかもしれないと思えばさすがプロの仕事、と思える。

 元がアメリカ人なのでこういうのは上手いハズなんだけど、見よう見真似の英国人達による南部への憧れの情景と遺伝子的にR&B的なソウルを持っているドリス・トロイという本物の歌とはなかなかユニークな絡みで、良く言えば余裕で歌いこなしている。その分面白味にはちょいと欠けてる感じがするのは多分バックが豪華すぎるから。アルバムとしてはかなり良い出来だし、キャッチーさも実力もメンツも見事な作品なので楽しめるのは間違いない。これからはコーラスのクレジットを気にしながら英国ロックを聴いていくことにしよう…。



Kevin Ayers - Confessions of Doctor Dream & Other Stories

Kevin Ayers - Confessions of Doctor Dream & Other Stories (1974)
Confessions of Doctor Dream & Other Stories June 1st 1974
The Confessions of Doctor Dream and Other Stories (Bonus Track Version) [Remastered] - Kevin Ayers The Confessions of Doctor Dream and Other Stories (Bonus Track Version) [Remastered] Shooting At the Moon - Kevin Ayers & The Whole WorldShooting At the Moon

 オリー・ハルソールのもう一人の相棒として知られている…いや、実際には多分逆なんだが、ケヴィン・エアーズの相棒として知られているオリー・ハルソールという人もいるってことだが、そのケヴィン・エアーズの名作とも誉れ高い「Confessions of Doctor Dream & Other Stories」っつうアルバムも1974年にリリースされているので、オリー・ハルソールとしてはこのヘンは結構忙しくて環境が目まぐるしく変わっていったと時期なんだろうと。たしかこの「Confessions of Doctor Dream & Other Stories」という作品がケヴィン・エアーズと一緒にやり始めた最初の作品だったので、そのヘンの変化もあったんだろうし以降そんなに続く関係になるとも思わなかっただろうし、まぁ、面白い所以です。

 1974年にリリースされたケヴィン・エアーズとしては5枚目のソロ作品になるのか?「Confessions of Doctor Dream & Other Stories」だが、完全に独自路線で展開していくオリジナルな世界感が本作でも炸裂していて、そこに見事なまでのゲスト陣が大活躍という図式。果たしてここまでのゲスト陣を集められるのは何故に?カネじゃなかったのは確かだからやっぱり人徳人脈なんだろうけど、凄いんですこれが。メジャーな人たちは対して見つからないんだけど英国アンダーグラウンド系の筋で言えばホントに見事な面々が揃っている。Wikiから抜いてみるとざっとこんな感じ。

• Kevin Ayers - Guitar, Vocals
• Mark Warner - Guitar
• Cal Batchelor - Guitar
• Rupert Hine - Keyboards, Producer
• Mike Moran - Piano
• Steve Nye - Organ
• John Perry / Bass
• John Gustafson - Bass
• Michael Giles - Drums
• Mike Oldfield - Guitar
• Nico - Vocals on "Irreversible Neural Damage"
• Geoff Richardson - Viola
• Mike Ratledge - Organ
• Ray Cooper - Percussion
• Lol Coxhill - Alto Saxophone
• Henry Crallan - Piano
• Ollie Halsall - Guitar
• Rosetta Hightower - Vocals
• Hulloo Choir - Vocals
• Trevor Jones - Bass
• Sean Milligan - Vocals
• Sam Mitchell - Guitar
• Doris Troy - Vocals
• Joanne Williams - Vocals
• The G'Deevy Ensemble - Percussion


 凄いんです。冒頭の「Day By Day」からしてドリス・トロイのファンキーな歌声とベースがブイブイしてて、これ誰だよ?って思うとジョン・G・ペリーでさ、そう、キャラバンとかカーブド・エアーとかのあの人で、そういえばこの人が入るといつも音が黒くなったと言われるのだが、なるほど、と思うものだ。そしてドラムも軽やかに良い感じ~と思うと元クリムゾンのマイケル・ジャイルズだしさ。なんかもう皆でやりたい放題だけどそこをケヴィン・エアーズは上手く歌ってるっつうのか…、この人のサウンドは基本的にヒッピー精神旺盛なので明るい…っつうか冗談みたいにふわふわしてるからシリアスさがなくて掴み所もない。かと言って軽いワケじゃないからこれまた不思議でさどうやってこういう曲をコンポーズしているんだろ?とかそっちが気になってくるもん。一転して雰囲気がまるで異なる曲ってのがニコが参加している「It Begins With A Blessing」あたりで、シンセから始まるこのパターンは完全にニコの世界で、何故にケヴィン・エアーズのこのアルバムに入れる必要があるのか?と思うくらいのものだが、実際にケヴィン・エアーズの歌声が入ってくるとこれがまた不思議に優しくハマってくるという…、結構ウマが合ったんだろうなぁ、この人達。だからあの悪魔のライブアルバム「悪魔の申し子たち」てのが実現してしまうんだろうけど。それと気になってるのがジョン・グスタフソンのベースプレイ。っつうかこの人が参加しているのが面白いなぁと言うことでして、いろいろなバンドがあるんだろうけどどうしても自分ではQUatermass~Hard Stuffの人なんですよねぇ。どんな人脈でこんなところに参加するハメに?とか思うと面白いものです。



Patto - Monkey's Bum

Patto - Monkey's Bum (1973)
Monkey's Bum Roll 'em, Smoke 'em, Put...
Monkey's Bum - Patto Monkey's Bum Patto - Patto Patto

 マイク・パトゥーとオリー・ハルソール、この二人はまるで無名ながらもそれなりにグリマートゥインズ並のプレイとチームワークを実現していた二人なのだが、もちろん誰もそんなこと思ってないハズ…(笑)。どこのバンドでも誰かと誰かが一緒にやってたらそれが心地良くなって何となく「相棒」って感じになるんだよな。アマチュアでもあるし自分でもそう思うのはあるしもちろんプロでもあるだろう。認識されるかどうかの話なのだから、プロの世界はちょいと違うけど。ギタリストとしてのオリー・ハルソールは割とニッチなファンが多いのは面白くて、それは多分ケヴィン・エアーズとのセッションだったりこのパトゥーでのセッションだったりするんだろうなと。そしてPattoというバンドの最後の作品となった4枚目のオリジナルアルバム「Monkey's Bum」が正式に作品化していることをしったのがつい最近…、1995年に初リリースされていたらしいが、16年くらい知らなかったことになる自分(笑)。情けないですねぇ、こういう発掘モノって今じゃいっぱい出ているだろうからチェックしないといけないんだろうけど、そんなチェックしないしね、それもあってブログ書いてて発見するとか他のブログで発見するとかいうのは有意義なことなのだった。

 1973年に録音されたPattoの4枚目の作品「Monkey's Bum」は当時はお蔵入りになってしまって未発表のままだったらしい。それが1995年にリリースされたらしいが…、やや眉唾で聴き始めたんだけど…、これは名盤だった。これまでの三作も名盤として静かに人気のあるバンドなのだが、この「Monkey's Bum」は過去三作よりも名盤なのでは?と思えるくらいにパトゥーらしさが出ているしオリー・ハルソール節も絶品状態で正にジャジーなフレーズとロックとを織り交ぜた職人芸の成せる業とも言える音世界が繰り広げられる。ムーディな曲からロックからこれジャズじゃね?みたいなのとか美しいのからかなり高尚なレベルにある作品だってがわかる。コレ、結構ハマるよな…。またPattoのアルバム全部聞き直さないといけない…。

 しかしカッコ良いです。何で未発表のままで置いておいたのかがわからないくらいに完全に出来上がった作品群でして、ホーンセクションも入ってきたりジャジーに攻めたり白熱した歌を聴かせてくれたり、途中ではドアーズのジャズハードロックバージョンととも呼べるオリジナルな楽曲「Get Up And Do It」なんてのがあって、最高にカッコ良い。このヘンの音の豊富さがパトゥーの面白いところなんだけど、如何せん歌が英国的すぎて弱いと感じるかもしれない。後はアルバム全体のミックス感かな、もちっと迫力あるミックス感で聴かせてくれたら更に素晴らしくなるのだが、それでもこんな作品が陽の目を見た事自体を喜ぶべきであって、まだまだ出会ったばかりだからこれから満喫していこうと思うアルバムです♪



Boxer - Bloodletting

Boxer - Bloodletting (1979)
Bloodletting Below The Belt

 職人トニー・ニューマンとして知られているもののその仕事を見ると結構選ばないで色々とやってる欲のない人だったのかななんて思ってしまう。思い切りメジャーな人達との仕事ってのもそんなに多くないので、純粋に音と人脈で仕事を選んでいたのか、そもそもそういう仕事ばかりが舞い込んできたのか…。あまり深く突っ込んでないけど、Three Man ArmyからBoxer、その前後ではBowieやMick Ronsonなどなど…。もっとも始めがDonovanとかBeckとかだからねぇ…。そんな中、1975年から参加しているBoxerにスポットを…、そうThree Man Army解体後ガーヴィッツ兄弟はジンジャー・ベイカーと組んでしまったので、一方のトニー・ニューマンはこれもまた強力なメンツと組んだバンドなのだな、ボクサーってのは。オリー・ハルソールとマイク・パトゥーによるバンドだもんね。ちょいと器用な人たちのハードロックバンド、だな。

 アルバム自体は1975年に「Below the Belt」をリリースしているけど、その後バンドの勢いそのままに?かどうかはわからんけど、セカンドアルバムを作ったもののお蔵入り、一般的にはここでメンバーが大幅離脱していって1977年に「Absolutel」がリリースされてBoxerの歴史が閉じるというものだった。ところが1979年に主役のマイク・パトゥーが亡くなってしまったので追悼の意を込めてこの未発表だったアルバム「Bloodletting」をリリースしたってところで陽の目を見たもの。録音は1976年頃だったようで、メンバーもファーストのメンツがそのまま参加しているので純粋にセカンドアルバムとして捉えても良いのではないかと。ただ、バンドメンバー的には紆余曲折あったのか、オリー・ハルソールの曲がなくてカバー曲多数。忙しかったのか人間関係の問題なのかわからんけど、実質マイク・パトゥーの曲によるBoxerのアルバムになる。そのためかカバー曲4曲もあって、冒頭からビートルズの「Hey Bulldog」なんだが、これがまた圧倒的なオリジナリティに溢れるカバーで、自分たちの作品と並べていても全然遜色ないクオリティでのサウンドなのが面白い。

 …っつうか「Bloodletting」ってかなりビートルズ的な音してるかも。ちょいとギターがハードになっている部分はあるけど、オリー・ハルソールだからメタル的なプレイじゃなくってさ、ちょいと歪んだギターで旋律を弾くというのかな、単なるバックのギターの音じゃないからさ。そのヘンはキース・エリスのベースの方が余程ヘヴィーだったりする。通して聴いていると、「Bloodletting」ってかなりレベルの高いアルバムだったんだが、何でお蔵入りにしたんだろ?もうちょっとヒネりたかったというバンド側の要望か、それともバンド崩壊していったからリリースしなかったとか?ここでのトニー・ニューマンのドラムはかもなく不可もなく無難に叩いているような感じでロック魂炸裂ドラムではないのが残念。もっともそういうバンドじゃないけどね。Patto時代から好きな人はやっぱりハマる音だろうし意外とブリットポップ的なの好きな人は好むかな。ハードロックを期待していると結構肩透かしです。



May Blitz - The 2nd of May

May Blitz - The 2nd of May (1971)
2nd of May May Blitz

 70年代英国アングラハードロック伝説、もうちょっと続きます(笑)。Three Man Armyあたりからどうにも人脈関係が広がってしまって収集つかなくなってるんで色々と聴いてしまったんです。面白くて。まぁ、考えてみればクラッシュもボウイもムーディ・ブルースもベックも何も全部繋がってしまう人脈図になっちゃうんだよね、英国ロックの歴史ってのは。もちろん個人名で全部は覚え切れないので資料漁りが必要になるんだが、今じゃネットで簡単に調べられるし便利なもんだ。そんなことを常日頃から行いながら、ほほぉ~、そういう繋がりの人だったのか!とか驚きながら聴いている今日この頃、いつまで経ってもやってること変わらない自分にややうんざりしながら子供のようにはしゃいでいる自分もいたりする。男の子は無邪気なものだ(笑)。

 1971年一部では英国最高峰のハードロックバンドとして名を馳せている?かもしれないメイ・ブリッツのセカンド「2nd of May」がリリース。それはもう世間に知れ渡って…なんてことはまるでなく、ひっそりとVertigoからリリースされたのでした。Three Man Armyとの辛みはもちろんドラムのトニー・ニューマンですね。元ジェフ・ベック・グループという肩書きを最初に持ったので以降の活動がやりやすくなったことは間違いないトニー・ニューマン、ならばいっそメジャーシーンの連中と組んで稼げば良かったのに、そちらには行かずに感性と人脈でバンドを組み続けていったウチの最初がこのメイ・ブリッツ。元Bakerlooというこれまたマイナーなバンドの連中と組んで16歳くらいのギタリスト入れて作ったバンドで、そのセカンドアルバムなんだからそれなりに評価されていたとは思うけど、さすがにパンチが足りなかったか、本作にて終了。

 ただねぇ、音は確かにトリオ編成とは思えないほどにカッコ良いんです。Three Man Armyとかに比べたら全然洗練されているし、メジャーシーンに出れる音作りにもなっているからもうちょっと売れても良かったと思うんだけどあと一歩の個性の無さの問題かな。ギター、ベース、ドラムのトリオで演奏するハードロックってのはもう他にもいくつもあったし、出来る音楽性にも限りがあっただろうし、ってことか。それにしてこの「2nd of May」で聴ける音のカッコ良さはユニークだ。ベースがグイグイドライブしていてドラムはもう圧倒的に曲を引っ張っていくので、問題はギターなんだが、いや、ヘタじゃないよ、もちろん。ただ、まだまだフレーズの多様さが足りないからかやや冗長な感じが出てきたりする時があって残念。それでもアドリブパートの思いきりの良いギターはやっぱり見事。このジェームス・ブラックって若者がどういう人生を生きているのかちょっと調べた程度ではわからなかったんだけど、シーンでは名前聴かないからどうなんだろうな。

 それはともかく、B級とメジャーのボーダーライン際にあるようなメイ・ブリッツの「2nd of May」、ルーツがまるでわからないハードロックという意味でかなりオリジナルではある、が…と思うものの、やはり聴きたくなるしつこさっつうのがあって好きな人のみ楽しむ音、ですな(笑)。



Baker Gurvitz Army - Baker Gurvitz Army

Baker Gurvitz Army - Baker Gurvitz Army (1974)
Baker Gurvitz Army Live in Derby 75

 さて、そのBaker Gurvitz Armyのお披露目アルバムとなった1974年リリースの「Baker Gurvitz Army」がまだ本ブログで登場していなかったので、ここは丁度良いでしょ、ってことで出しておきます。先日のGream Edge Bandとかなり活動が被ってたハズなんだけど、恐らくコチラが先で…ってのもThree Man Armyの活動休止期にAdrian Gurvitzがバディ・マイルス・バンドに参加していてその時にジンジャー・ベイカーと出会ったようでして、そのまま意気投合したような話を聞くので人脈には事欠かなかったんだろう。そのヘンは人柄の良さだったりするのだろうか。ガーヴィッツ兄弟ってドラマーには凄く恵まれてるもんね。Three Man Armyを続けること数年、見事に解体して念願のジンジャー・ベイカーとバンドを組み、バンドの編成と知名度からしてThree Man Armyをそのまま名乗っても良かったのだろうが、やっぱりジンジャー・ベイカーの元クリームの名前の方が知名度が高いと言う判断からかバンド名はBaker Gurvitz Armyだったのだ。そういう所こだわりない人なんだろう。

 その「Baker Gurvitz Army」というファーストアルバムはもう明らかにジンジャー・ベイカーを意識したプッシュしたクローズアップした作品になっていて、Three Man Armyでのドタバタ感からはかなり洗練された感じがあるものの、そこはジンジャー・ベイカー、俺様の作品だとばかりにドラムを叩きまくり。それで楽曲を成り立たせるってのも凄いが、かなりうるさい。曲のレベルもそれに合わせてか、キメやテンポチェンジなども流暢に進むものが多くなっていて、骨子からジンジャー・ベイカーが組み立て直したものなのか、所々でアフリカンなリズムらしきものも出てくるのはエア・フォースからの流れ。その分エイドリアン・ガーヴィッツの本領発揮となるはずのギターとかがあまり前面に出てこなくてちょいと残念。ジャケットのパワフルな印象とは裏腹に結構メロウでドラマー向けな作風に仕上がっている。Baker Gurvitz Armyのアルバムを挙げる際には大体このファーストアルバム「Baker Gurvitz Army」が出てくるんだが、どっちかっつうとこの後のボーカルにスニップスを加えた時期の方が面白い気がするんだがな。

 そんなバンド編成は実は「Baker Gurvitz Army」リリース後に早速行われていて、1975年には元Sharksのスニップスを加えた編成でライブを行なっている。最近Baker Gurvitz Armyのライブ音源が続々とリリースされているのでいくつかで聴けるのだが、「Live in Derby 75」なんてのを手に入れて聴いてみたら、これがまた…って感じで(笑)。もちょっとハードにドライブしてるかと思ったけどちょいと迫力不足…多分ミックス次第な気がしているけど。それとクリームの「White Room」があってさ、凄く期待して聴いてたんだけどギターソロ前で終了してしまってかなり肩透かしだったり…、ま、その辺はまたいずれ…。







Graeme Edge Band - Kick off Your Muddy Boots

Graeme Edge Band - Kick off Your Muddy Boots (1975)
Kick off Your Muddy Boots Paradise Ballroom

 ガーヴィッツ兄弟の偉業…とまでは言わないが、英国ロックシーンに於いてガーヴィッツ兄弟の果たした役割と言うか出してきた作品群の面白さは傑出している、というくらいに自分では評価していると言うか好きなんですよね。ただ、コピーしてギターを弾くとかエイドリアン・ガーヴィッツのギターフレーズを研究したり手癖を研究するってのまでには至らないので単に聴いてて好きな人たちなんです。多分音の個性が好きなんだろう。そんなガーヴィッツ兄弟がThree Man Armyの解体後すぐに次の仕事にとりかかる。多分本来は単なるセッションの意味合いが強かったのではないだろうかと思うのだが、グレアム・エッジのソロアルバム製作支援、だ。

 1975年にリリースされた「Kick off Your Muddy Boots」はガーヴィッツ兄弟とジンジャー・ベイカーが参加している…そうBaker Gurvitz Armyの面々がバックを務めているワケで、そこにミック・ギャラガーという鍵盤奏者が加わってムーディ・ブルースのグレアム・エッジが率いているという構図だ。Baker Gurvitz Armyの方は1974年にアルバムリリースしているので、多分同時期に仕事が進行していたんじゃないかと思うのだが、一方ではジンジャー・ベイカーと、一方ではグレアム・エッジと、と言う仕事の幅とメジャーアーティストからの信頼感が見事で、実力の高さを物語っているだろう。Baker Gurvitz Armyの話は後ほどとして、このグレアム・エッジのソロ作、否、The Gream Edge Bandというバンド名義になってしまった最初のアルバム「Kick off Your Muddy Boots」は正にバンド名義にして然るべき楽曲群とガーヴィッツ兄弟の才能が開花しているし、そこに確かにガーヴィッツ兄弟やジンジャー・ベイカーでは出せないクラシカルな旋律=ムーディ・ブルースの雰囲気を加えたグレアム・エッジによるバンドであるのは確かだ。もちろん後にクラッシュに参加することになるミック・ギャラガーの才能も加わっているだろうが、多分アルバム取りまとめはグレアム・エッジだろうからそんな雰囲気。ジンジャー・ベイカーもドラムで参加してます、最もゲスト扱いであはあるけど。

 何といっても「Kick off Your Muddy Boots」で驚くのはさすがメジャーシーンのアーティストと組んだ音ってのはこうだよなと思うくらいに洗練されている独自の世界観だと言うこと。ガーヴィッツ兄弟のドタバタ感がまるでなくなり、見事に音とバンドに昇華されて融合して、本意ではなかったかもしれないが、ひとりのプレイヤーとして才能を発揮する事になった作品だ。多分この後のエイドリアン・ガーヴィッツのAORへの接近を考えれば、ここでひとつのハードルを超えて新たな世界が開けたに違いない。それでもジンジャー・ベイカーと昔ながらのスタイルのバンドを続けていくというのはかなり考えただろうなぁ…と思いを馳せるね。そんな人間的感覚はともかく、この「Kick off Your Muddy Boots」はかなりの名盤、メジャーグラウンドでの名盤です。エイドリアン・ガーヴィッツのギターが独特のものから更に飛躍して泣きのメロディをメロディアスに奏でるソロへと変わっていて、ピアノやオーケストラと絡んで何倍にも美しさが増している。この辺の繊細さってのがトリオハードロックバンドでは出せない味だったワケで。コーラスワークを駆使したり、隠し味のピアノが聴いていて聴きやすくなってるとか、予想しないオーケストラが出てくるとかかなりカラフルで飽きずに楽しめる一枚。だんだんガーヴィッツ兄弟ってのを忘れてくるくらいに作品完成度が高いのだが、面白いのはそれらの曲そのものを作っているのはエイドリアン・ガーヴィッツだったりするので、自分の作品がこんな風になるのか、という驚きもあっただろうな。

 ちょっとだけ歴史的な話すると…、いくつかの曲、例えば「The Tunnel」なんてのとかでは明らかに後のAORに向かう曲のアレンジが聴かれていて、全然本人はギターをどうやって入れていこうか、みたいな雰囲気を感じるんだけど、それよりもこういうビートと雰囲気に圧倒されているようで、曲が本人を超えてしまっている。そこでエイドリアン・ガーヴィッツはAORへの接近を面白いと感じたんじゃないかな。そして栄光のサクセスロードを一瞬だけ登っていくような…。







Three Man Army - Mahesha

Three Man Army - Mahesha (1973)

Three Man Army Three Man Army

 過小評価、過大評価色々な反応があるんだけどアーティストやバンドが偉大だとかクズだとかってのは果たしてどの基準で決められるものなのか?なんてふと考えた。セールス面もある程度あるだろうけど、音楽的な分析をしてみるとこういう使い方だからとかあるのかもしれないが、多分音楽の評価とあまりリンクしないだろう。そういう知識があるかないかの判断でしかない。やっぱりどれだけ多くの人が感動したか、凄い感動したからアルバムなりを買うという行為に出る=売れるものには良いという要因があるって図式になるのか。ただ、知られなかったが故に感動する人が少なかったものもあるワケで、そういうのが隠れた名盤などと言われるのだろう。さて、B級バンドってのは?ある程度の人が聴いたけど、感動とまでは行かなかった、でもある種の評価が得られているというもの、なのだろうか。なかなか言葉で書くのもしんどい世界観なんだな、やっぱ(笑) なんでそんな話かっつうと、Three Man ArmyってWebで見るとどこでも凄い評価高くて、自分でも好きなんだけどやっぱりB級っつうか売れてるワケじゃないんだよな。それでそんなことを思いました。

 1973年にリリースされたThree Man armyのセカンドアルバム「Three Man Army」ってか、結構ややこしくて、確か英国ではこのアルバムはリリースされていないんじゃなかったかな。ドイツでは「Mahesha」ってタイトルでリリースされて、アメリカでは「Three Man Army」ってデビューアルバムみたいにして出されていたようで。とするとアメリカでの「Third of a Lifetime」は無視されていたってことか?それも残念な話だが、それはともかく、ややこしいのはこの次の作品が「TWO」というタイトルだったことで、とするならばやはり本作「Three Man Army」が「1」の役割を果たしていることになる。それはアメリカ市場においてのやり直しってことも意味するのとドラマーがトニー・ニューマンに変わってからのバンドとしての1枚目という意味もあるだろう。本国の英国では「1」に当たるのは「Third of a Lifetime」で、この「Three Man Army」はなかったこととしているのか。ま、何れにしても単に音楽を作るだけのバンドではなくてきちんと戦略を考えていたバンド、少なくともプロダクションだったようだ。

 そして「Three Man Army」の中身、Three Man Armyの歴代アルバムの中ではどうしても一歩引いてしまう音ではあるけど、もちろん相変わらずのハードロックが聴けて楽しめる。王道になれない理由は聴けば聴くほどわかってくるもので、細々としたフレーズや旋律が多すぎるとかこれと言ったメジャーなヒット曲らしくなる要素の曲がまるでなく、どれも秀逸な作品が並ぶというもので、まぁ悪い言い方すれ洗練されていないってことだが(笑)、それはもう70年代には普通のことで、その辺の境目が歴史に残るか否かの分かれ目だったようだ。プログレ的なややこしさを持っていたのもあるけど、根本的にハードロック野郎達なのでリマスターとかして綺麗になっていたらもっと再評価されるんじゃないか?とは言え、この「Mahesha_もしくは「Three Man Army」というアルバムは今CDが手に入らないのか。残念だな。もっとも3枚のアルバム+未発表曲をまとめた「Soldiers of Rock」というCDが激安で手に入るからまずはそれで十分ていうことなのかもしれないが。

 しかしガービッツ兄弟のバンドはどれも本当に面白くて自分好みな音が出てくる。もうちょっと洗練されてくれれば…ってしつこい(笑)。そのB級さ加減が良いんだよね。中でもThree Man Armyがキャリア上で一番カッコ良いんじゃないだろうか。Gunはまだまだ発展途上だったり、Baker Gurvitz Aryはジンジャー・ベイカーに気を使ったような部分もあるし、以降はもう…だし(笑)。ブルースベースのハードロックだったり哀愁のメロディを持つギターフレーズが泣ける曲だったり、どのバンドとも似つかないオリジナルなハードロックセンスがそこにはありますな。カッコ良いバンドです、ほんとに。Three Ma Army。





Steamhammer - Speech

Steamhammer - Speech (1972)
Speech (Dig) Mountains
Speech - Steamhammer Speech Mountains - Steamhammer Mountains

 いや~、この辺のバンドのあれこれを見ていたり聴いていたりすると面白いことがいつまで経っても発見されてきてキリがない。その辺が英国ロックの深い霧とも言われる所以で、超王道メジャーバンドから超マイナーな無名のアーティストまで多分全部繋がってしまうのだ。人脈的な、という意味だったり音楽的という意味だったりするのだろうけど、とにかく人脈でバンド組んでた、とか面白そうだから何かやってみるか、ってな具合に人が集まってたりするので、スーパーバンドってのも後で言われてみれば、みたいな時もある。だからそれは必ずしも成功するとは限らないってのがある。最初から明確な音世界があってバンド組んだ訳じゃないからだろうね。まぁ、超メジャーな所ではスーパーバンドってのは成功しないものだったんだけど、ちょいとB級に入ってくるとそれはもうアチコチのバンドからの猛者が集まってくっついたり離れたりしてて、その系譜が大変。魑魅魍魎とした世界が広がります。そこにプロデューサーやエンジニアやレーベルなどが絡むから更に複雑怪奇な世界が出来上がる。

 …なんでこんな話なんだ?あ、Steamhammerの来歴見てたらそんなことを思ってしまったからです。イリュージョンや初期ルネッサンスに絡むルイス・セナモが参加したってことと、アルバム「Speech」でのプロデュースがキース・レルフだったってことで。このアルバムが出会いだったんじゃないかな、多分。んで、SteamhammerはZeppelinとかジョイントでライブやってたりするんだからまた深い世界。英国ロックは面白い。特に70年前後は最も活気溢れていた時代だろう。

 そのSteamhammerの1972年リリースの最終作「Speech」は何とハードロックバンド、と定義して良いにも拘らず、3曲しかアルバムに入っていない。A面1曲、B面2曲だ。今の時代にしてみればそれでもアルバムとしては短いのだろうけど、アルバム片面が一曲って凄いことだよ。昔はそんな長いの聴けないだろ~って思ってたけどいつしか、そんだけ長いならきっと何かやってくれてるに違いない、と確信して聞くようになっていた(笑)。得てして何かしら面白いことやってくれてるんでね。この「Speech」の場合は…、オープニングからして奇妙なチェロの硬くて冷たいちょっと硬派な音が出てきて、まるでZeppelinの「幻惑されて」のライブのアドリブ途中から始まるようなもんだ。なんだそりゃ?となり結構長く続いてから始まるのが無茶苦茶チープな歪んだギターでのリフ。このリフは後に「Armageddon」の一曲目「Bazzard」として更に洗練されて使われることとなるリフの原型なのだが、とにかくチープ、笑っちゃうくらい。B級さ丸出しでカッチョヨイ。キース・レルフもこのリフに痺れたんだろうな。それとさ、ドラムのミック・ブラッドリーって人、かな?が、凄く良いドラムを叩いてて、これぞ英国ロックドラマー!って感じの自分的には凄く好きなドラミングなんです。小技が効いててロールしてて、それでもドタバタ感あって…っつう。うん。この人この年に死んじゃうんだよね。んで、様々なバンドを集めてトリビュートライブをやったりしてたんだが、結局翌年解散となったバンド。そこからアルマゲドンに移行していくみたいだけど、まずはこの「Speech」という作品…ってかファーストのブルースロックバンドから始まり、前作「Mountains」ではプログレッシブな方向性を持ったハードロックバンドとして実験的なライブレコーディングをまずまずの出来に仕上げて意気揚々と製作した最も熟成したアルバムが「Speech」だと思っていて、充実度は実に高い。長い曲でも単に鍵盤で長引かせているとかではなくて構成がしっかりと組まれていて、でもフリー部分もあったりしてプログレではないハードロックバンドな音です。チープだけど(笑)。

Armageddon
Armageddon
posted with amazlet at 12.01.12
Armageddon
Repertoire (2009-10-20)
売り上げランキング: 225107






The Long Hello - The Long Hello

The Long Hello - The Long Hello (1973)
Long Hello 1 Vol. 2-Long Hello

 VdGGが1972年頃に解散した時、それはバンドのメンバーにとってみれば失業という事を指す訳なのだが、それぞれが何かをして食っていくにはどうするか、と考えるのはもちろん、それでもバンドのメンバーとしてはお互いの呼吸もわかっているし、まだまだやり足りない事もたくさんあったのだろう。そんな事からか、VdGGでピーター・ハミルを覗いたほかのメンバー達は仲良く新しいバンドを作りましたとさ、ってのがThe Long Helloというバンド=プロジェクトの始まりで、以降現時点までで4枚のThe Long Hello名義の作品がリリースされているが、もちろんメンバーは流動的に参加する人もいるんだが、デヴィッド・ジャクソンやガイ・エヴァンスのプロジェクトになってるのかな。最初期はまんまVdGG人脈のみに近くてヒュー・バントンやニック・ポーターなども参加していたが、途中ではピーター・ハミルまで参加してたりするのも面白い。

 1973年にリリースされた最初の作品「Long Hello 1」も既に廃盤のようで、一度CDで再発されているみたいだけどそりゃもちろんセールスを記録するようなものじゃないからなかなか入手しづらい作品になっている。こういうのをどうしても、って手に入れる人もどんだけいるのかわかんないが、何か気になるんじゃない?そんな人はコレクター気質あります(笑)。同じ事をアナログで20年くらい前にはやってたからなぁ…。

 そして手に入れて聴けた「Long Hello 1」というアルバム、VdGGの残党達の音ってことで結構期待して聴いたんだが、やっぱりど真ん中のピーター・ハミルが不在=音楽性に主張性が欠ける、と言うもので、インストバンドなのはともかくとしてかなり垂れ流し要素の強いバンドという位置付けになってしまっている。何かが突出しているでもなく、ドラマティックでもなく曲が優れているワケでもなく演奏が巧すぎるわけでもなく、ただ単に音が詰め込まれているというのか、クラシックをベースに組み立てているのだろうけど、そこまでのモノもなく、フュージョンみたいなインストでもなく、何だろうな、これ、どこが聞き所なんだよ?って感じの音だ。B級独特の面白さも特に見当たらず。メジャーなメンツによる「垂れ流し作」でしかないんじゃないかと。VdGGマニアには貴重な存在かもしれんけど…。それでもこのプロジェクトで4枚までリリースされているんだから何かしらの評価が成されているのだろうとは思う。自分にはよくわからんな。まぁ、いいか。

 そんな人達の作品があるよ、ってことの紹介でしてね、その辺の話っていくつか転がっていて、Mott The Hoopleの残党たちによるBritish LionsとかTasteの残党によるStudとか…。



Peter Hammill - Over

Peter Hammill - Over (1976)
Over (Reis) Fool's Mate
Over - Peter Hammill Over Fool's Mate - Peter Hammill Fool's Mate

 ロックを聴いて泣ける人、音楽を聞いて感動できる人、その数が多ければ多いほど繊細でアーティスティックな感性が豊かなのだろう。もしくはナイーブな感性の持ち主なのだろうと。ま、ロックってのはそういう側面と熱くなる騒ぎ立てるすっきるするみたいなのあるんだけど、ジョン・レノンを代表とするような泣けてくる、みたいな感性もこれまたロックの一部でね、ただ、そういう側面を出せるアーティストってのが多くはない。そのヘンがひとつの境目っつうかハードルっつうか、もっともそういう側面を出さないっていう人もいるんで、そんなこと基準にするなって話もあるんだが、それでもね、見え隠れしますよね、そういう感性で奏でている所ってさ。ギターで訴えてくる人も鍵盤で訴えてくる人も歌で訴えてくる人もいるし、手法は様々だけどそういう魅力がないのはやっぱり一過性の音楽でしかないものになることが多いし、アーティストと言うよりもミュージシャンなワケだ。そんな事を思い知らされたのも久々に聴いたピーター・ハミルの作品からです。

 1976年録音のピーター・ハミルのソロ名義作品となる「Over」。実質はVan Der Graaf Generatorの作品なんじゃないか?っつう意見はあるのだが…。何せバンドのメンバーを使って録音されているワケで、デヴィッド・ジャクソンは参加していないだけで、ニック・ポーターもガイ・エバンスも参加しててもちろんピーター・ハミルだしさ。ただ、ちょいと異なるのはデヴィッド・ジャクソンがいないことでサックスやフルートと言った情感的な音色を奏でる楽器がなくなるので、その分をString Driven Thingに在籍していたグラハム・スミスを配置してバイオリンという楽器でエモーショナルな世界を音色として出せるように配している、それがピーター・ハミルのソロ作品とVdGGとの違いだ、ということのようだ。もっともその甲斐あってかVdGGとはかなり音世界が異なるのは面白いものだ。

 どうも「Over」という作品、様々は破滅が元になって作られているようで、バンドの崩壊劇だったりお別れだったりとアーティスティックになる要素が多分にあって、それらを吐き出しているようなのだな、歌詞の世界では。このヘンの歌詞ってのがピーター・ハミル独特の世界で、もっと理解しないといけない所なんだけどなかなか…。んで、音楽だけで追いかけてみてもかなりネガティブな指向性が強い、そして情感的な音色を奏でるヴァイオリンが美しい「Autumn」なんて涙出てくるもん。そんな女性の名前ではないだろうが多分代名詞にしているであろう「Alice」なんてアコギ一本での弾き語りだけど曲だけで聴けばピンク・フロイド的ですらある。一方冒頭の「Crying Wolf」では思い切り歪んだギターでハードにアグレッシブにロックしているが、かなり悲しい感覚は否めない。その辺正直なアーティストなのかもしれない。

 そんな様相で、やっぱり暗い印象を持ってしまうアルバム。VdGGではここまで生々しい感触はないので、やっぱり個人的要素が強いソロアルバムということになるのだろう。昔聴いてた時はここまでの感情を持たずに流してたんだけど今回聴いていて、その繊細さとかを凄く実感してしまって、ピーター・ハミルのアルバムでは「Over」が一番の名作だ、と言う声にも納得できた。ただ、自分的にはあまりこういう作品を求めたくないなという反発はあるね(笑)。



Van Der Graaf Generator - Godbluff

Van Der Graaf Generator - Godbluff (1975)
Godbluff Still Life
Godbluff - Van Der Graaf Generator Godbluff Still Life - Van Der Graaf Generator Still Life

 ここの所プログレをたくさん聴いてて、20代の頃を思い出すな…。10代後半から20代ってコレクター的にも充実していたし刺激も一番受けてたし、思い入れがあったりするのも多かったんで、別にリアルタイムじゃないから後追いで聴いてたんだけどそれでも自分的にあの頃の音楽、という感じで思えてくるのも面白い。普通はリアルタイムに流れている音楽が青春のBGMなのにな。リアルタイムの音楽を無視して古い音楽ばかりを集めて聴いていたからそうなっちゃったんだが、今の世代でも更にそういうことが起きるんだろう。そんな中、王道プログレからちょいと進んでみればすぐに出てくるVan Der Graaf Generatorというバンド、これがプログレなのか?っつう側面もありながら思い切りプログレでしょ、ってバンドで面白くて深いバンド。1968年にアルバムデビューして1972年に解散。その後1975年に再結成してしばらくやっててフェイドアウト。21世紀になって突如再結成して来日公演まで行なって今でもやってるのか?そんなバンド。いわゆるプログレ黄金期には解散していたワケで、その分損してるとは思うが音の主張は最初期よりも再結成後の方が圧倒的にレベル高い。そんな再結成第一発目のアルバムが「Godbluff」だ。

 1975年にリリースなんだけど、その前にリーダーのピーター・ハミルのソロ名義アルバム「Nadir's Big Chance」でバンド全員の邂逅とプレイが叶っていて、再結成のきっかけになったか、再結成を狙ってのアルバム製作だったようだ。この「Nadir's Big Chance」はソロ名義なのでストーリー展開が詰め込まれたソロ志向が強い作品に仕上がっているが、「Godbluff」はやはりVdGGと言わんばかりの力強いサウンドと優しく激しい歌声が聴ける。解散前のVdGGはここまで主張性が強いバンドという印象でもなかったが、「Godbluff」以降は孤高の存在になるほどに主張が強くなっていて実に好ましいサウンド。何せ一曲も口づさめるような軽やかな曲がないのだから(笑)。

 「Godbluff」のオリジナルは4曲しか入っていない。面白い事にその一曲づつがまるで異なっているし、一曲の中でもテンションが高いせいなのかまるで長い曲に感じることなく聴けてしまうのだ。「Scorched Earth」なんてピーター・ハミルの吐き捨てるような叫びが楽曲を支配しているし、それでもバックは無茶苦茶熱くなるワケでもなく演奏を忠実にこなしているというギャップ感が不思議なテンション。「Arrow」や「The Undercover Man」の始まりは実にソフトで感情的な激しさを訴えかけるような曲調にはまるで思えないところにハミルのボーカルが炸裂する。この人の発散振りがVdGGの明らかなる個性。バンドの音としてはフルートの優しさや鍵盤による幅の広がりなどがサウンドの広がりを効かせているんで単調にはならない見事な音楽集団なんだな。そのバランスが面白くて一方ではクリムゾンほどの硬派でもあり一方では浮遊感溢れる夢見心地な世界観が同居している不思議な世界。数回聴いたくらいではまるでよくわからない世界なのは確かだな…。

 しかしこのライブDVDってどんなんなんだ?知らなかったが、Classic Rockc Legendシリーズか…、期待できないけど動いてる姿ってのは貴重でしょう。YouTube探してみるか。

Godbluff: Live 1975 [DVD] [Import]
Classic Rock Legends (2003-07-15)
売り上げランキング: 150485








String Driven Thing - Please Mind Your Head

String Driven Thing - Please Mind Your Head (1974)
プリーズ・マインド・ユア・へッド Machine That Cried

 その昔、何かの雑誌を読んでいる時にLed Zeppelinの何枚目かのアルバムのジャケットを選考する際にヒプノシスのチームに依頼して、出てきたのがテニスのラケットを持った人物のアートワークであまりにも面白味に欠けたので即却下したよ、というジミー・ペイジの言葉があって、へぇ~って思った程度だったんだが、何年かして英国ロックにハマっていき、実に色々なバンドを漁るようになってからヒプノシスのジャケットもわかってきて、あくせく集めていた時に見つけたのがこのジャケットで、これこそヒプノシスがジミー・ペイジに断られたジャケットの再利用だったんじゃないか?と。これがZeppelinのジャケットだったら、と思うとかなり悲しい気がするのでジミー・ペイジの判断は正しかったのだろう。ま、誰でもそう思うか。しかしそれを採用したバンドもあったってことで、それがString Driven Thingというバンド。

 1974年にリリースされたバンドとしては4枚目の作品「プリーズ・マインド・ユア・へッド」だが、その実情はバンドのメンバーがほぼ入れ替わってしまったようで、前作「Machine That Cried」の素晴らしいプログレッシブ感からは大きくかけ離れたどこか泥臭いスワンプにも近いサウンドに変貌している。バイオリンのグラハム・スミスは健在なのでバイオリンが頑張っているのだが、その他はどうしてそうなる?みたいに濃い音になってて曲調もかなり普通に近い。そこまでしてアルバムを出す理由ってのあったんか?とも思うけど大人の事情かね。かなりマンネリな曲調がひたすら並んでいるのがアルバムを単調にしてしまっている。アレンジなどはそれなりに面白い部分も多いんだけど、歌かな、一本調子なのでイマイチ。まぁ、このキム・ビーコンという歌い手も英国らしいと言えばそうなんだが、ロッドを崩してポール・ロジャースやロジャー・チャップマンまで行かないというような感じか。後にThe Korgisを結成するので先のStackridgeと絡む人ではあるんだけど、かなりセンス異なる二人だったんだというのがわかるだろう。

 そしてString Driven Thingというバンドは多分グラハム・スミスというバイオリン奏者のVDGGの参加によって知られることとなった要素が大きいんだろうな。確かに本作「プリーズ・マインド・ユア・へッド」でも優れた楽曲はさほど見当たらないけど、バイオリンの音色が要所要所でサウンドを煌びやかに彩っていて、ロックにおけるバイオリンの使い方のひとつを知らしめているとも言えるもんね。自分的にはバイオリンやフルートってのがロックに入ってくるのは好きなので、前作「Machine That Cried」で気に入ってちょいと集めてみたバンドなんだよね、String Driven Thingってさ。



Stackridge - Stackridge

Stackridge - Stackridge (1971)
Stackridge The Man In A Bowler Hat
Stackridge - Stackridge Stackridge The Man In the Bowler Hat - Stackridge The Man In the Bowler Hat

 どっぷりと大好きな70年代英国ロックの世界を堪能しているここ最近の日々です♪やっぱり親しみのある音ばかりでそりゃもちろん曲を全部覚えてるワケでもないし、音聴いたからってバンド名までわかるほどに熟練はしてないけど、音と雰囲気と空気感で70年代英国だな~ってのはわかるし特徴的だし、自分の原点でもあるし、何か居心地が良い。とんがって聴かなくて良いっつうか、まぁ、付き合いが長いから気兼ねしなくても構えなくても良いってな所だろう。たとえそれがプログレであろうともフォークであろうとも自分的には70年代英国ロックなのだ。そんなことでふと、取り出してみたのはスタックリッジってバンド。これもまた無名…なんだろうな、もちろん(笑)。せいぜいメジャーな絡みを書いてみるならば、ギターのアンディ・デイヴィスって人がジョン・レノンの「イマジン」に参加していたことがあるってくらいだ。それだからというワケでもないだろうが、このスタックリッジというバンド、俗称は「田舎のビートルズ」ってなってるような音です(笑)。

 デビューアルバム「Stackridge」は1971年のリリースで鍵盤を含むバンド編成だけどフルートやらバイオリンやらも鳴っているので、牧歌的という言葉が良く似合うアルバムで、アコギの使い方が…ってかアコギ中心なのでソフトタッチになるのは当然か。そこにフルートの優しい音色やコーラスワークが絡み、更にキャッチーでポップな歌メロが入るという音で、決して単なる英国ロックの範疇で片付けられてはいけない価値のあるバンドの音だとは思うが、如何せん光るべき個性ってのが見当たらなかった。ELOみたいに突出したものも無ければ10ccみたいなユーモアセンスもなく、ただ音楽を作るのが上手かったというバンドで、聴いてしまえば割とハマれる音を持っているんだけど、売り出すネタがなかったってことだ。得てして良いものが売れるとは限らないという典型的な例。言い方を変えると、音楽好きには全くツボにハマる音であることに違いはなく特に英国ロック系が好きな人なら間違いなく好む音であるってことだ。バンドとしては途中でメンバーを変えながらも5枚の作品をリリースしていて、どれもが良質なポップアルバムなので何から手を出しても大丈夫だろう。ウチのブログでも後3作くらいは既に書かれているし、結構聴いてるんだ、自分、と(笑)。

 しかしどの曲もキャッチーだなぁ…。よくプログレ畑のレビューに載っかってて、そういう聞き方から入るとかなり肩透かし食らうんだよな。フォークタッチの云々…だから。それよりもポップバンドでフォークの使い方が英国的で、ほのぼのとした音を奏でる回転木馬のようなバンドとして書いてもらいたいものだ。決してプログレじゃないですし、フォークでもない。これぞ英国の音のバンド、良質ポップスでヒットチャートは無縁だけどキャッチーで受けるのだ。カンタベリーのポップとはちょいと違うけど、そんなポップさだ。明るいしね。

 しかしYouTube探してたらどうにも昨年のライブ映像があった?ホント?





Strawbs - Bursting at the Seams

Strawbs - Bursting at the Seams (1973)
Bursting at the Seams オール・アワ・オウン・ワーク
Bursting at the Seams (Remastered) - The Strawbs Bursting at the Seams (Remastered) All Our Own Work - Sandy Denny & The Strawbs All Our Own Work - Sandy Denny & The Strawbs

 ヤードバーズというバンドが3大ギタリストを輩出したバンドであるならばストローブスというバンドは2大女性ボーカリストを輩出したバンド+有名鍵盤奏者までも輩出したバンド、であるべきなのだ。…これじゃキャッチにならない(笑)。多分ね、一般にはまるで親しみのないバンド名だろうなと思うワケで、うん、Strawbsと言うバンドでして、英国の70年前後から活躍してて、今でも活動してるハズな長寿バンドのひとつ。ロックのカテゴライズに入ってくるんだろうけど、フォークと言うかプログレと言うか何とも言えない英国然とした音を出しているバンドで、その煌びやかさ加減は絶品モノで、これこそ英国らしい音、とも言えるので自分が英国の音が好きかどうかってのが測れるバンドかもしれない。フォーク系の音を出すバンドって英国産であってもカントリーやバーズ、ディランに似た雰囲気の曲をやってたりするんだけどそれでも何故かああいう垢抜けたサウンドに仕上がらないという不思議があるんだが、ストローブスも同じで、そんな所もまた面白味のある所以。

 1973年にリリースされたキャリア史上最大のヒットソングを含むアルバム「Bursting at the Seams」。まぁ、あまり名作だと言われることもないようだけど、実は「Bursting at the Seams」が一番の名作なんじゃない?ってくらいのレベルの高さとバリエーションの豊かさなのだ。ちなみにストローブスはアルバムデビュー前後のキャリア形成時代にサンディ・デニーをボーカルに迎えていた時期があって、その音源は「Sandy Denny & Strawbs」としてリリースされているので知られている所もあるが、自分的に気になってるのは何と言ってもカーブド・エアーのソーニャ・クリスティーナも参加していた時期があるということで、これがねぇ、まぁ、普通なんだろうけど面白い組み合わせだなと。もちろんソーニャその人にこだわりの音楽性があったとは思えないので歌えれば良かったというものかもしれないけど、カーヴド・エアーはかなり意欲的なバンドだったからともかく、後のソーニャを聴いてみればそのフォーク性への取り組みは頷けるもので、だからこそソーニャ時代ってなるほどとも思えるのだが…。そして鍵盤奏者は言わずもがなのリック・ウェイクマンですな。イエス加入前に参加していたってことですが、これはもうトニー・ヴィスコンティ絡みの人脈操作なのだろうと言うのは裏側を見れば一目瞭然。同じような時期にトニー・ヴィスコンティはボウイもプロデュースしていてそこでもリック・ウェイクマンを使っているしね。ま、そんなもんだ。

 さて、この「Bursting at the Seams」というアルバム、冒頭から数曲、美しくも儚い正に憂いのある英国然としたフォーク調な曲が流れてきて、その美しさに心奪われる代物で、ロックとはかなり離れたサウンドで、かと行って別に変拍子バリバリのプログレではなく、繊細な音をひたすら紡いでいく音で彩られたフォーク調な、メロトロンなども入ってくるサウンドなのだな。そこからカントリータッチの紅翼となるが、これが先に挙げたように全然アメリカ的な脳天気さがなく、それでもスライドがあったりしてカントリータッチになっている。そしていきなりハードなディストーションギターに彩られたアップな曲が登場してきて驚く。こんなことするんか?と。そういえば、本作「Bursting at the Seams」からギタリストが交代しているのでその影響も大きいのだろう、これまでのストローブスには聴かれなかったサウンドのひとつでもあるんだが、でもね、この「Down By The Sea」って曲、しっかりと展開を持っていてオーケストラと共にどんどんと曲が展開されていく面白です。そして当時ストローブスで売れたヒットソング「Part of the Union」というナンバー、これもまたちょいとアメリカなタッチを含むコーラスワーク重視の軽めのロック調で、普通にストローブス好きな人からは結構敬遠されるんじゃない?って思うような曲な気がするが、世間では売れたようだ。これがバンドの本質かと思われるとちょいと大変だろうなという気がするが…。そんな徴して実に豊富な曲調を織り交ぜた充実の一作。別に有名なメンバーがいなくてもアルバムの質としてこれだけのものが仕上がっているし、しっかりとバンドも継続していてこういう深みに入って行けるってのが面白い世界だと思うよね。それにしてもこのベースラインってどの曲も凄く主張していて楽曲を豊かにしているし、曲を大切にしているし、今の時期に聴くには丁度良い湿っぽさがあるね。



Fairfield Parlour - From Home to Home

Fairfield Parlour - From Home to Home (1970)
From Home to Home ホワイト・フェイスド・レディ

 こういうブログを書いていると忘れた頃に忘れた音にまた出会えるってのが嬉しい。それは自分で見つけるものもあればブログ仲間やTwitter仲間であったりリアルな友人だったりするんだけど、そういえば…ってのが多いのだ。アルバム見て音が浮かんでくるならそれはそれで聴きたくなるし音が鳴ってこないのはどんなんだっけ?ってなるからまた聴くし、結局聴くきっかけがあれば聴くんだろう。特に70年代英国の音ってのはそういう傾向値が強い。一時期に圧倒的に集めて聴きまくってたから記憶が錯綜しているものもあるし強烈だったのもあるからさ。そんなことで最近Twitterで呟いていた方がいらっしゃったので自分が書いてないことに気づいてまた聴き直した次第のアルバムの登場です。

 1970年リリースのFairfield Parlourというバンドの「From Home to Home」というファーストアルバム、ってかこれ一枚しかリリースしてないんじゃないかな。ホントはこの後に幻の傑作「ホワイト・フェイスド・レディ」っつうのを作ってるんだけど、Kaleidoscope名義でリリースされているので、結局Fairfield Parlourは一作だけってことだ。うん、この2つ、同じメンバーによるバンドなので名前はリリース時の違いだけ。ただ、カレイドスコープはサイケチックな雰囲気を出していた60年代末期のバンドっつう印象が強かったからFairfield Parlourというバンドにしてヴァーティゴからちょいとフォークタッチを強くした雰囲気で出直しましたと言うようなものだ。まぁ、それはそれでVertigoからの名盤として歴史に残っているし、ジャケットもキーフのものなのでアーティスティックに良い感じだしね。フォークタッチと言えども同じメンツによる作品なのでやっぱりサイケ調なメロディや楽曲やアレンジってのはアチコチで出てくるし、そうそう簡単に切り替えられるものでもないのは一目瞭然。ただ、アプローチが面白くて実験精神旺盛な楽曲が詰め込まれている。基本大人しい落ち着いた秋色という雰囲気の作品ではあるんだが、音楽的には相当ハイレベルな取り組みなんだろうな、ってのがわかる。ポップさも持っているしアレンジも70年という時代で聴けばかなり意欲的でもあるし。

 この後にリリースされている「ホワイト・フェイスド・レディ」が絶品でねぇ…、そっちはもうリアルタイムではリリースされなくて結局お蔵入りだったんだけど、後年ピーター・ダルトレーが権利獲得して自分でリリースしたみたいなんだけど、それが凄い。こんなのお蔵入りさせちゃうワケ?みたいなトータルコンセプトアルバムでさ。カレイドスコープの方向からはかなり逸脱しているけど、それこそバンドが生まれ変わった瞬間とでも言うような傑作なんだよな。そういう狭間にあってのFairfield Parlour「From Home to Home」でもあるのでやはり忘れてはいけないアルバムです。





Illusion - Out Of The Mist

Illusion - Out Of The Mist (1977)
醒めた炎(紙ジャケット仕様) Illusion

 あちこちのブログを見たりTwitterで色々な人の呟きを見たりしている中で、おぉ~、いいの聴いてるな、とかあ、コレ聴いてみたいと思うものはいくつもある。んで自分のブログを見てみると書いているのもあったり書いてないものもあったりして意外とまだまだ書いてないものも多いんだな~と改めて音楽の広さ、深さを思う。到底制覇できるものではないのだが、別に制覇したって偉いもんでもないし、気持ち良く聴けるかってのが肝心で、何度も聴く作品もあればその時気持ちよければ良いか、ってものもあるし、BGMとして最適ってのもある。何が良いなんてのはその時の気分だ。そういう意味ではいろいろな音楽を聴いたことがあると選ぶという選択肢が広がるのでそれはそれで良いかなとも思う。そんな中、ルネッサンスの系譜って…と思ってふとイリュージョンってあったっけ?と自分で確認するとまだ出て来ていないようなので、そうか~、まだこれ書いてなかったのか…と好きなアルバムなのでまたしても聴いてみることに♪

 1977年にリリースされたIllusionというバンドのファーストアルバム「醒めた炎」。まぁ、知る人ぞ知る世界でして、こないだのルネッサンスのオリジナルなバンドが名前を変えて時代遅れながらも出しました、みたいなもんです。その実、あのヤードバーズのボーカリストだったキース・レルフが様々なバンドをやった後に再度オリジナル・ルネッサンスを再編してみたいということでメンバーが集められていた所での感電死、その意思を実の妹であるオリジナル・ルネッサンスのボーカリストでもあったジェーン・レルフがきちんと形にしたのがイリュージョンというバンド。なのでメンバーは元々のオリジナル・ルネッサンスに二人ほど加わった形で結成されている。そして音楽性もそもそもオリジナル・ルネッサンスが目指したであろう世界観を継承しているので、ルネッサンス系が好きな人にはぜひ忘れずにいてもらいたい作品のひとつ。比べてもしょうがないけど、アニー・ハズラムのルネッサンスが煌びやかに輝いた世界だとするならば、イリュージョンはちょっと翳りのある突き抜けられない感触が漂うクラシックからポップへの橋を架けたバンドとでも言うべきか。もともとキース・レルフはフォークとクラシックをくっつけたようなバンドを目指していたフシがあるので、本来論はそういう方向性だったんだろうけど、本人が不在なのでどうしたってクラシック寄りになっていく。でも、メジャー路線への復帰というのはあるようで、心地良く聴ける、そして何か守ってあげたくなるような病弱感があるが故に日本人としては好む音世界。

 ジャケットもジェーン・レルフだし、まるで喪に服す女神のように描かれているのでそれだけでソソられるものではあるけど中身もかなり湿っぽくてよろしい。そして一曲目からジェーン・レルフの歌声を…と思って聴くと、それは実はジム・マッカーティーのリードボーカルだったりするワケで、やや肩透かし。いや、この二人がそれぞれボーカルを務めることでバンドの音のバリエーションは広がっているんだけど、その辺がさ、もっと突き抜けてジェーン・レルフを出せば良かったのにとも思うのだが。時代はパンク以降、それでこのクラシカルな音世界を出してきて、それもかなりレベルの高い世界観なのに中途半端になってしまっているのが残念。今でこそ再評価されるのはわかるけどリアルじゃこれは難しいだろうなぁ…と。ま、そんな評価はともかく、今じゃきっちりとその来歴付きで聴けるのだから相当の名盤です。多分イリュージョンの音世界を継承できている英国然としたバンドって出てきていないんじゃないかな?商業路線に乗らないからってだけじゃなくて、この魅力って出せないんだろうと。それでいて「醒めた炎」は美しく素晴らしい作品なので正に萌えます(笑)。

 ちなみに一曲、オリジナル・ルネッサンスでやってた曲を再収録しているのでそれもまた聞き所。キース・レルフに捧げたそうな…。



Renaissance - Prologue

Renaissance - Prologue (1972)
Prologue Ashes Are Burning
Prologue - Renaissance Prologue Ashes Are Burning - Renaissance Ashes Are Burning

 自分がプログレッシブロックと言うものを意識して聴き始めた時には当然大物メジャー系のクリムゾンとかEL&Pなりフロイドなりから入っていくんだけど、すぐに出てくるのがソフツとかムーディー・ブルースとかプロコル・ハルムとかのあたりで、同じようにルネッサンスというバンドも出てきてね、他のバンドは何となく聞いたことのあるバンド名だったし、そりゃ60年代から活躍してたりしたんだから何かと名前くらいは見たことあるバンドだった。ところがルネッサンスってのは純粋にプログレッシブロックの世界から出てきているバンドで、その時に初めて名前を知ったり来歴を知ったりするのだった。それがまさかヤードバーズからの流れっつうのは全然よくわからなかった。まるで異なるバンドだし、結びつかなかったな。しかもルネッサンスってアルバム2枚出してほぼ解散して異なるメンバーで同じバンド名で復活するワケで、引き継いでいるのは音楽性っつう珍しいパターンなので理解するのに時間かかった。今みたいにネットで全部すぐにわかる時代じゃなかったから様々な情報の断片を読むしかないワケで…、しかもルネッサンスの来歴を書いた文献なんて目に付く所にはそんなにないしさ。そんな思い出のあるバンドのひとつですね。

 1972年にリリースされたアニー・ハズラムの入ったルネッサンスのファーストアルバム「Prologue」、バンドとしては3枚目になるのか?このヘンのカウント自体がややこしいが、自分的にはこれがルネッサンスのファーストになるんだろうな、と思ってる。初めてこのアルバムを聴いた時にはかなり衝撃を受けたもんな。純粋なピアノ音にドラムが絡み、コーラスワークが入ってバンドの音になっていく、それでもピアノが圧倒的に前面に出て曲を引っ張っていくアルバムタイトル曲ともなった「Prologue」。この躍動感は中途半端にロックに鍵盤を持ち込みましたというものではなく、クラシック畑の人間がクラシックの定石通りにピアノを弾いているというもので、明らかにバンドの音が後付になっている感じなのでかなり新鮮だった。それはアルバム全編に渡って言える話で、明らかにクラシカルなピアノ演奏をメインとしたロックバンド?というスタンスでEL&Pなどがあったにせよ、明らかに方向性の異なる新種のロックバンドだったことは言うまでもないか。そこにアニー・ハスラムという稀代のクリスタルボイスの歌声が入ってくるのだから唯一無二の存在になったのも頷ける話。そんな後々の活躍が図れるほどのクォリティとレベルの高さとバンドのスタンスがきちんと示された佳作のファーストアルバム「Prologue」なのだった。ま、全6曲というのも時代に合わせたプログレバンドのスタイルではある。

 しかし美しい曲が多いなぁ…。「Kiev」はクラシカルピアノのスタイルを思い切り前面に出してて夢現の状態にしてくれるし続く「Sounds of the Sea」では並とカモメの音にピアノが被さり、更にアニー・ハズラムの美しい歌声が遠くから入り込み、そこに多重コーラスがハーモニーを聴かせてくれ更に突き抜けたハイトーンボイスが無限の世界へと誘ってくれる…、英国ロック広しと言えどもここまでの夢幻郷を聴かせてくれる曲はそうそう多くはない。これこそがルネッサンスというバンドの示してくれた方向性の一つであろう。まぁ、ロックなのか?と言われるとちょっと違う気もするけど(笑)。そんな流れがたっぷりと詰め込まれた傑作アルバム「Prologue」、黄金期ルネッサンスの名盤群と比較してもかなりユニークな位置付けにある作品として試みるのもアリかな。



Yes - Tales from Topographic Oceans

Yes - Tales from Topographic Oceans (1974)
海洋地形学の物語 イエスソングス
Tales from Topographic Oceans (Remastered) - Yes Tales from Topographic Oceans (Remastered) Yessongs - Yes Yessongs

 プログレッシブロックバンドとして名高い割にはウチではほとんど聴かれる事のないバンドがイエスだったりする。まぁ、EL&Pやジェネシスもそんなに数多く聴かないバンドなので、極端に言えばプログレ好きじゃないんじゃね?みたいな所があるかもしれんが(笑)。音楽力や演奏力が高いバンド程ロックから離れた感覚になってしまう場合にはあまり聴かなくなる傾向が自分にはあるんだなってのは何となく気づいていて、いやEL&Pだって凄くロックだったりするんだからそこはギターがないからっていうのが納得してて、ま、それなりにいろいろなバンドに対して思い切り好きだって部分と聴かないな~、響かないな~ってのがあって当然だしね、いいでしょ。それでも先日ジェントル・ジャイアントを聴いていて、この冷たさって久々だなぁ~、んでこの上手さも凄いな~って思っててさ、イエスもそういう側面が強いからあんまり聴かないのかもしれないと。どこかロックから離れてもっと高尚な部分に存在している感じなんだよね、イエスってさ。スティーブ・ハウのギターテクや音楽の指向性だったりリック・ウェイクマンの恐るべし才能だったり…、もっともリック・ウェイクマンの場合は宇宙人的衣装がロックっぽいのだろうが(笑)、一番ロックしてるのは多分クリス・スクワイヤだろうというのはよくわかるのだが、そこら辺の絡みで出てくる音がどうしても洗練されたものになってしまっていると。

 1974年にリリースされた多分イエスのアルバムの中でもここまでやるか的な評論も強かったであろう「海洋地形学の物語」。LP二枚組に片面1曲づつの4曲収録、そしてそれらがどれもこれもスティーブ・ハウとジョン・アンダーソンの作曲作詞によるもので、即ちハウのエッセンスたっぷりなワケだ。それをイエスでやるもんだからイエスらしくなるんだろうが、どうにも盛り上がりに欠ける冗長な楽曲が多い気がしてて「海洋地形学の物語」を聞くのはかなり気合が必要だったものだ。今となっては聴かなくても良いんじゃね?っつうアルバムのひとつになっているんだけど多分時代の成せる業で、リアルタイムな人は一生懸命理解しようとして聴いたんだろうなぁと。後追いでももちろん聴くんだけど、何かね、どっか行っちゃった感じで(笑)。やっぱりバンドってメンバー全員が一つの方向に向かってプレイしているのが一番カッコ良いもん。多分「海洋地形学の物語」ってイエスというバンドの作品の中にあってかなり敬遠度合いの高いアルバムな気がする。二枚組で長いから自分的にはまだまだ全然聴き込めてないから何かを言えないっつう人が多かったり、でも実はイマイチ面白みを感じないからイエスが悪いんじゃなくて自分の聴き込みが足りないんだ…みたいなさ。そこまで付き合えないので、自分ではもう挫折したアルバムなんだけどね。

 もちっとストレートに出してくれれば良かったんだけど、ちょいと受け入れ難いアルバムでした。演奏者からしてみて面白いフレーズとか音の使い方とかエフェクトとかあるのかな?「海洋地形学の物語」って酷評されているのもこれまたあんまり見たことないので、どこか評価されているんだろうとは思うんですが…自分では全然聴けてない作品です。



Gentle Giant - Octopus

Gentle Giant - Octopus (1973)
オクトパス Octopus
Octopus - Gentle Giant Octopus Live In Stockholm '75 - Gentle Giant Live In Stockholm '75

 掴み所のないバンドが続々と…、何かさ、ライブラリを整理しているとやっぱりこのヘンってのがたくさんあって昔よく聴いてたよなぁ~って思ったワケで、次々と現れてくるんだよね。70年代の英国バンド、特にプログレと呼ばれていたバンドはひとまとめにしてあるので、おぉ~、こんなんあった~とか楽しんでるんだけどさ。iTunesにひたすらライブラリをぶち込んでも到底全部入らないワケで、徐々に入れてるけどそんなライブラリまで入れるか?みたいなのあって、まぁ、ライブラリだから入れておけば良いんだけどなかなか聴かないものまで入れておくと動きが遅くなるし…とか考えちゃうんでね。ただ、どこかの時点で聴きたいモードに入るとその類のものがライブラリにどんどん入っていくので面白い、自分のライブラリながらも発見が多くて面白いのだった。そんな中からこの名盤…と思ってブログ確認したらまだ書いてなかったんだ、という事に気づいてしまって、おぉ…そうか、と改めて聴くことにして楽しんでるのでした。

 1973年にリリースされたジェントル・ジャイアントの傑作「オクトパス」。ご存知のように英国オリジナルはVertigo 6360 080です…って何で型番まで出てくるんだって?いや~、Vertigoだけは特別ですよ。その昔のブログ仲間にもそういうのがいたりして今懐かしんでますが、元気でしょうか?Vertigoってのは今はどうか知らないけどレコード好きな輩には堪らない魅力があったんでCDでは面白みに欠けるというレーベルです。ジャケにしろ音にしろね。今じゃこんなの絶対世に出てこれないだろって言うバンドが山のようにあって、それがまたVertigoってレーベルで包まれていると魅力を発揮していしまうのだから凄いのだな。もっとも欠片の才能もないバンドはそれでも光らなかったけど、その辺を発掘してくるVertigoのセンスは一味違いました。ちなみにBlack SabbathやUriah HeepもVertigo出身だしね。

 そして奇跡のバンドGentle Giantによる名盤の誉れ高い傑作「オクトパス」、アメリカ盤では瓶詰めのジャケット、英国盤ではロジャー・ディーンのタコジャケ、有名ですね。ダブルジャケットで見るとこれがまたやっぱりアートワークだな~と感心するものなのですが、そんな思いを抱きながらレコードに針を落とすのだが、これがまた不思議な空気が流れてきます。もちろんビートの効いたロックなんて思ってはいないですがね、それでも普通にバンドの形態だろうとは想像しているワケですよ。ところが流れでてくる音は曲によるけどコーラスワークだけで出来上がってる感じのするのとかひたすら中世音楽の室内楽みたいなものだったりバイオリンが美しく流れているのとかちっともロックという香りがない音楽ばかりで、何曲かハードなのはあるものの果たしてこれは?って思うのが多い。そして昔からジェントル・ジャイアントというバンドに思うことはとにかく音が冷たい。あまりにも冷たい感触のする音で、それは一体どういう部分なのかってのはあるんだけど、演奏が巧すぎるってことによる完璧さだろうか。美人で聡明でスタイルも良い女性がいたら中々近寄れないとかお高くとまってるように思うのと同じかもしれん…要するにコンプレックスか(笑)。そんな印象さえ抱いてしまうジェントル・ジャイアントの「オクトパス」、普通に流していればすぐに終わってしまうアルバムだけど、じっくり聴くとその多様さとテクニックと知的さが伝わってくる、それはこれまでの作品のプログレッシブさとは変化した短い曲の中でポップさを持ちながらも前衛的なスタイルがどこまで通じるのかみたいなところに挑戦している姿のような気もする。



Jethro Tull - A Passion Play

Jethro Tull - A Passion Play (1973)
Passion Play Thick As a Brick (Mlps)

 英国プログレッシブロックの世界は今ではかなり解明されてきているしまた再評価も著しく、それはアルバムやCDの再発、発掘盤、ボーナストラックの発掘などなど見事なまでに丸裸+αにされているのは市場を見ていてわかることなのだが、まだ、取っ付き易い、と思う。それよりもハードルが高々と立ちはだかっているのが自分的にはジェスロ・タルなんだよなぁ。アルバムもほぼ揃えてアナログ時代から聴いてたりしてそれなりに理解に努めようとしたんだが、あまりにもアヴァンギャルド…っつうか変幻自在すぎてよく掴めない。アルバム単位で何となく掴むことができるものもあるけど、ファーストアルバム「Aqualung」からず~っと理解して聴けたものはほとんどない。それだけ自分に知識がないということなのかもしれない。何せジェスロ・タルの作品ってのは音楽もさながら、歌詞の世界観も共有しないとわかりにくいと言われているし、更にその歌詞も普通に英語がわかるとか聴けると言うレベルではしょうがなくて、その言い回しや宗教感なども深く英国の文化を理解していないと日本人が聴いて分かるものでもない、らしい。自分的には到底そこまで進むこともなく、入り口のアルバムの音を聴いて多少のバンドの知識というレベルでしか聞けていないから理解できなくて当然ではあるのだが…。

 その昔マーキーから出ていた「ブリティッシュロック集成」という本があって、これがまたかなり英国ロック好きには訴えるものがあり役に立った名著だと思うのだが、そこにジェスロ・タルの「A Passion Play」だけが大々的にその難解さを説明するページが割かれていて、結局のところよくわからなかった…っつうかあまりにも文学的すぎて文字の一つ一つを理解するに至らなかったのだが、そんなに取り上げられるアルバムってどんなん?ってのが興味を持ったきっかけのひとつでもある。だから「A Passion Play」に取り組んだのはかなり遅い方なのだが、きちんと日本盤を探して聴いていた割にその世界観はよく理解できていない、ってかまるで理解できていない。

 さて、それでは音楽の方はわかるだろう、という話だが、それがまた「A Passion Play」では全一曲という作り方なのでもちろん組曲単位での楽曲はあるのだが基本的に全部繋がっていて物語が進行していく架空演劇が45分間展開されているので、本当に目の前でその劇をやっていてくれればまだわかるのかもしれないけど、音楽だけでその劇を理解は到底できないので、結果「何か凄いんだけどよくわからん」という図式になってしまうのだな。これをプログレっつう呼び方にするものなのかどうか…、演奏力や構成などは完全にプログレだけど、そういう音を出したくて演奏しているんじゃなくて、演劇という性格上そういう展開や音になっていっただけであって、プログレを作るという感じで出来上がっている訳じゃない、そういう意味ではザッパの音楽をプログレと呼ぶか?というのと似ているかも。ま、ジャンルやカテゴライズの話はどっちでも良いんだけど、そんな性格のアルバムだから演奏がどうのとか名曲云々と言うのはナンセンスで、この「A Passion Play」というアルバムってどうなんだ?という所だ。自分的にはまるで何を言っていてどう捉えれば良いかもわからないアルバムではあるけど、そこに存在しているであろう物語に大しての音楽であるならばここまで豊富なアプローチを行なって演劇を作り上げているという音としてはとんでもない代物だと思う。ロック的に面白くてハマれるかと言われればまるでそんなことはない。ただ、そういうアプローチがある、できる、というのはロック界はやはり広いし英国ロックの宝物でもあるワケで、そんな着眼点の持ち主イアン・アンダーソンのセンスはとんでもないものだろう。そんな聴き方を新年からやってみた一日、とんでもなく英国感が漂っていることに満足しました♪

Moody Blues - A Question of Balance

Moody Blues - A Question of Balance (1970)
Question of Balance (Reis) Every Good Boy Deserves Favour
A Question of Balance (Bonus Track Version) - ムーディー・ブルース A Question of Balance (Bonus Track Version) Every Good Boy Deserves Favour - ムーディー・ブルース Every Good Boy Deserves Favour

 叙情的な音を奏でるバンドってのは割と日本のプログレファンには受ける音で、評価も高いようだ。世界的に見るとどうなのかはよくわかんないけど、ヨーロッパではウケが良い感じ。ただし、国によって仰々しさが異なるので一概に、でもないけど自分の好きな英国ではその加減が実に難しくて、叙情性だけじゃ全然評価されて来なかったし、かと言ってロックンロールでもそれだけじゃなかなか難しくて、何ともジャンル分け出来ないバンドってのが多数輩出されているのはそんな英国人特有のセンスによるものが大きいはずだ。そのセンスが面白いから英国ロックって錆びないんだが…。さて、そんな中でもこれほど一般の評価と実態がかけ離れているバンドもあんまりないんじゃないの?っていうのがムーディ・ブルース。まぁ、聞く人によりけりなんだけど普通はプログレッシブバンドという位置付けの認識が高いはず。あのジミー・ペイジをして「真のプログレッシブバンド」と言わせたのだから、ということだが英国人の言うプログレバンドと日本人が思うプログレバンドってのはやや趣が異なるのでそのまま受け入れるのはどうかと…。簡単に言えば英国人=ネイティブの人間が「プログレッシブ」と言うからには本当に「進化していく」という意味が強いだろうから、カテゴライズの意味ではなくて「発展、進化する」バンドという意味で挙げたんじゃないかと。まだカテゴライズとしてのプログレッシブロックなんて言葉が無かった頃の話だしね。一方の日本ではもちろんカテゴライズとしてのプログレッシブロック、なのでその辺の狭間に挟まれてしまったバンド、なのでは。ま、英国B級路線聴いてるとそんなバンドが多数あるんだけどその中でも思い切り市民権を得てしまった代表格とも捉えればわかりやすいのかもしれない。それにしては傑出しすぎているんだが。

 「Question of Balance」は1970年にして既にバンドとしてのアルバムは6作目ともなり、圧倒的に音楽キャリアの長さが際立つバンドで、70年代を担うどころか60年代を走り抜けて正に最先端の音楽を奏で始めたバンドでもあることが時代を並べてみるだけでわかるだろう。この前までの作品、「To Our Children's Children's Children」や「On the Threshold of a Dream」、「In Search of the Lost Chord」ではまだ60年代後半にも関わらずあの出来映えのプログレッシブロックを奏でていた、それはクリムゾンやイエスという代表格が出てくる以前の話で、既に人気も博していたのだから驚くばかり。ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が丁度良い比較になる程度ではないか?それくらいに優れたセンスの良い音楽集団だったワケだ。まぁ、背景ってのはそんなバンドでしてね、この「Question of Balance」では既にトータルコンセプトアルバムというアルバム一枚を物語で繋いだメロトロンの洪水という作風から脱却してて、重厚なコーラスポップバンドという感じではある。相変わらずメロトロンが活躍してフルートが軽やかな空気感を出しているしコーラスワークの美しさも完璧なのだが、どこか軽やかな雰囲気が漂っているのは組曲に束縛されていないからか。オープニングの「Question」なんてガットギターから始まるというもので、聴いた瞬間に「アルバム間違えた?」と思ったくらいだ。大概が仰々しいオープニングのテーマだったバンドだからさ。その時点で何かを吹っ切ったのかなっつう感触があった「Question of Balance」です。

 アルバム通して暗さと言うか重々しさは影を潜め上方気流に乗った気分でアルバムが聴けるのはムーディ・ブルースにしては珍しい感覚。一般的なプログレッシブロック黄金期には既にバンドの活動を休止していたが、歴史的にはプログレッシブロックの走りとしてのバンドとして功績を残し、後の世代から見ればほぼ同じレベルでプログレッシブバンドの中に挙げられることが多い、それくらいに完成されていたバンド。その技量と作品とバンドの存在感はもっともっと評価されて然るべきだとも思うんだが、ここは本人達の売る気の問題か。そういう純朴さも音に表れていてわかりやすいのかもしれない。最後の「Balance」の素晴らしいエンディングを聴いているとクイーンですらムーディ・ブルースを意識していたに違いないと思えるし、しかしムーディ・ブルースは既にコーラスワークを完成させていることでクイーンは敵わなかったとも言えるし、全てを表現し切っているバンドの一つな気がする。そして本作「Question of Balance」ではその姿が一番聴けるアルバムだという感じもあるね。



A Happy New Year!

A Happy New Year!

2012年、ロック好きの行き着く先は…、まだまだ行きます(笑)。

本年もよろしくお願いします。

Chinatown Futuristic Dragon (Dlx)

Camel - Camel

Camel - Camel (1973)
Camel Snow Goose (w/ bonus track)
The Snow Goose (Remastered) - キャメル The Snow Goose (Remastered) A Live Record (Remastered) - キャメル A Live Record (Remastered)

 浮遊系のプログレッシブバンド、そしてイマイチ掴み所の難しさが恐らくここ最近のファン層の獲得という意味では割と少ないんじゃないだろうかと踏んでいるキャメル。70年代のバンドって90年以降に再評価される場合が多くてそこから既に20年が経過しているのだから今じゃもう皆同じように横一線に並べられてああだこうだと言われるバンドは限られてきている気がするんだよな。その評価軸の一つが何周年記念盤だったりボートラ付き再発盤だったりするような気がしててね。日本の紙ジャケ盤ってのもその評価軸の一つかと思ってたけど、実際にはもうある程度の数量ってのは見込めているみたいなんだよね。要するに紙ジャケで揃え直している人たちの数ってのがあってさ、聴く聴かないじゃなくて紙ジャケを揃えるっつうか、そういう層に加えて本来のリスナー達が買うみたいなので決まってくるようだ。大体そんなもん紙ジャケにして誰が買うんだ?みたいなのがあったりするじゃない?それはそれでひとつの人気を博していくのだろうが…、代表的に不思議なのがアフィニティーの「」っつう作品。これでもかっつうくらいに何度も再発されてて今度もまた何かリリースされるみたいだけど元々はアルバム一枚で消えたグループ。不思議なものだ。

 そして今回はその微妙なラインで生き続けている、と思いたいキャメルの最初のアルバム「Camel」、1973年の作品。ん?1973年にアルバムデヴューだったのか?とちょいとびっくりした。そんなに後だとは思ってなくて、もうちょっと前といういんしょうだったからさ。ま、そんなに大差はないんだけどこの頃の1年の差とかって結構激しかったハズだし。それはともかく、キャメルの作品もファーストアルバムはあまり聴かなかくて、やっぱり「Snow Goose」とか「Mirage」とかをよく聴いてたし、その分ちょっとフュージョンっぽい部分もあってロック的にはハマり切れなかったのもあった。ただ、まぁ、叙情的な音ってのは好きだから全然良かったんだけどロックと言うよりも音楽作品として聴いていて好きだったというのかな、そんな印象。もっともギターソロの美しさとかは印象に残ってたのはあるが。レコードはほとんど持っていたので何となく流して聴いてはいたんだろうが、そう言えば終盤の方は何となくあったが、ファーストアルバム「Camel」ってあんまり記憶にない…ってことで登場。

 ファーストアルバムなだけあってまだまだ後に聴ける繊細な作り込みという部分は強くなくてもっとストレートなロックバンドに近い音を出してる。ビートも良いし、音も生々しいし、何と言ってもアンディ・ワードのドラムの軽やかさは個人的にはアンディ・マッカロック的な感覚で結構好みですね。演奏力はもちろん高いバンドなのでこの後も成功してるけど、そうかこんなロックバンドだったんだというのがどの曲にも出ていて面白い。インストものもあって、それがまたグイグイ来るし名曲「Never Let Go」は中でもダントツの出来映え。アルバム中ではここまでメロトロンを前面に出した曲ってのが多くないから余計に目立つのはあるが、彼ら自身も間違いなく自信の一曲として演奏しているのもわかるもんな。最後のラティマーのギターソロだってもうちょっと長く聴かせてくれ~って思うくらいだけど、感情あふれる見事なソロで良いよね。全体的な音がちょっと古臭くなっている感じなのでそれこそリミックス、リマスター音源だとかなり表情の変わるアルバムなんだろうな、と古いレコードを聴いている自分は思うのだった。だからそういうCDも売れるんだな…。



 | HOME |  »

プロフィール

フレ

Author:フレ
物心付いた時からロックが好きでいつぞや何でも聴き漁るようになり、多趣味な生活を過ごしているロックマニア。


ロック好きの…別館リンク


ブログ検索


最新記事


カテゴリー


最新コメント


最近のトラックバック


カレンダー

12 | 2012/01 | 02
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

過去ログ+

2017年 10月 【22件】
2017年 09月 【30件】
2017年 08月 【31件】
2017年 07月 【31件】
2017年 06月 【30件】
2017年 05月 【31件】
2017年 04月 【30件】
2017年 03月 【31件】
2017年 02月 【28件】
2017年 01月 【32件】
2016年 12月 【32件】
2016年 11月 【30件】
2016年 10月 【31件】
2016年 09月 【30件】
2016年 08月 【31件】
2016年 07月 【31件】
2016年 06月 【30件】
2016年 05月 【31件】
2016年 04月 【30件】
2016年 03月 【31件】
2016年 02月 【29件】
2016年 01月 【32件】
2015年 12月 【32件】
2015年 11月 【30件】
2015年 10月 【31件】
2015年 09月 【30件】
2015年 08月 【31件】
2015年 07月 【31件】
2015年 06月 【30件】
2015年 05月 【31件】
2015年 04月 【30件】
2015年 03月 【31件】
2015年 02月 【28件】
2015年 01月 【32件】
2014年 12月 【31件】
2014年 11月 【30件】
2014年 10月 【31件】
2014年 09月 【30件】
2014年 08月 【31件】
2014年 07月 【31件】
2014年 06月 【30件】
2014年 05月 【31件】
2014年 04月 【30件】
2014年 03月 【31件】
2014年 02月 【28件】
2014年 01月 【32件】
2013年 12月 【32件】
2013年 11月 【30件】
2013年 10月 【32件】
2013年 09月 【30件】
2013年 08月 【31件】
2013年 07月 【31件】
2013年 06月 【30件】
2013年 05月 【31件】
2013年 04月 【30件】
2013年 03月 【31件】
2013年 02月 【28件】
2013年 01月 【32件】
2012年 12月 【32件】
2012年 11月 【30件】
2012年 10月 【31件】
2012年 09月 【30件】
2012年 08月 【31件】
2012年 07月 【31件】
2012年 06月 【30件】
2012年 05月 【31件】
2012年 04月 【30件】
2012年 03月 【31件】
2012年 02月 【29件】
2012年 01月 【32件】
2011年 12月 【31件】
2011年 11月 【30件】
2011年 10月 【31件】
2011年 09月 【30件】
2011年 08月 【31件】
2011年 07月 【31件】
2011年 06月 【30件】
2011年 05月 【31件】
2011年 04月 【30件】
2011年 03月 【31件】
2011年 02月 【28件】
2011年 01月 【32件】
2010年 12月 【32件】
2010年 11月 【30件】
2010年 10月 【31件】
2010年 09月 【30件】
2010年 08月 【31件】
2010年 07月 【31件】
2010年 06月 【30件】
2010年 05月 【31件】
2010年 04月 【30件】
2010年 03月 【31件】
2010年 02月 【28件】
2010年 01月 【32件】
2009年 12月 【32件】
2009年 11月 【30件】
2009年 10月 【31件】
2009年 09月 【30件】
2009年 08月 【31件】
2009年 07月 【31件】
2009年 06月 【30件】
2009年 05月 【31件】
2009年 04月 【30件】
2009年 03月 【31件】
2009年 02月 【28件】
2009年 01月 【32件】
2008年 12月 【32件】
2008年 11月 【30件】
2008年 10月 【31件】
2008年 09月 【29件】
2008年 08月 【30件】
2008年 07月 【30件】
2008年 06月 【30件】
2008年 05月 【31件】
2008年 04月 【30件】
2008年 03月 【31件】
2008年 02月 【29件】
2008年 01月 【31件】
2007年 12月 【29件】
2007年 11月 【30件】
2007年 10月 【29件】
2007年 09月 【28件】
2007年 08月 【31件】
2007年 07月 【30件】
2007年 06月 【29件】
2007年 05月 【30件】
2007年 04月 【30件】
2007年 03月 【26件】
2007年 02月 【27件】
2007年 01月 【20件】
2006年 12月 【31件】
2006年 11月 【30件】
2006年 10月 【31件】
2006年 09月 【30件】
2006年 08月 【31件】
2006年 07月 【31件】
2006年 06月 【30件】
2006年 05月 【31件】
2006年 04月 【30件】
2006年 03月 【31件】
2006年 02月 【28件】
2006年 01月 【31件】
2005年 12月 【31件】
2005年 11月 【30件】
2005年 10月 【20件】


リンク


RSSフィード


全記事表示リンク

全ての記事を表示する


QRコード

QR

Click! Click!


楽天市場
HMVジャパン

Amazon