Tangerine Dream - Phaedra


 ドイツの有名なヘンなバンドとしてこちらも名高いタンジェリン・ドリーム。驚くことにバンドが解散したことはなく今でもエドガー・フローゼだけがオリジナルメンバーとして参加している現役バンド…もちろん70年代当時と比べてはいけないが、その息の長さは大したものだろう。

 で、有名な作品…と云うか、多分この辺聴く人って好きなのは「Phaedra」「Rubycon」「Ricochet」くらいしかないんじゃないかな。もちろん「好き」っていう度合いの問題は大きくあるんだと思うけど、聴いたことのない人のために書いておくとはっきり言ってしまえば環境音楽。ヒーリングとは違って別にリラックスはしないんだけど、音を聴いているとイメージが浮かぶ、そんな曲調ばかり。シンセサイザーを全面に出したなんつうんだろうな、アンビエントミュージックって云われるんだけど、雰囲気をそのまま音にしたもので映画のサントラ的に使われるようなものって思ってもらえれば良い。で、1974年の「Phaedra」が英国のバージンレコードからリリースされたのがきっかけで世界に知名度を上げたワケで、この作品が最も名高い。サウンドはもちろん環境音楽系(笑)。いや、マジメに聴くとホントにゾクゾクする瞬間もいっぱいあるし、目を閉じて聴いているとホントに風景が目に浮かんだりするのでそれは凄いセンスだし、楽器も当然良く練られて使われている。

 嫌いではないけど別にハマりまくって聴くか?っていうのはあるんでそこらへんの音楽的発想がドイツなんだよな(笑)。前衛的ではあったけど、音楽世界としてはかなり確立しているのでアンビエントなんだろう。心地良く聴く分にはものすごくBGMとして効果があるような気がするが、やっぱロックとは云えないよなぁ…。

Faust - Faust


 一体ドイツが誇るメジャーなバンドっつうのはどうしてこういうヘンなのが多いのだろう?多い…と云うと語弊を招くのかもしれないのだが、得てしてこういう音の表現手法はドイツ人だからこそできるものなのだろうか?だから故に超前衛音楽バンドばかりがドイツが世界に誇る音楽集団として名高くなってしまうのかねぇ…。もちろんドイツ国内にはもっともっと普通のバンドがいっぱい存在しているし、しっかりとヒットチャートなんぞは普通のポップスで占められているのだけれど、それでは世界には通用しないのだろうなぁ。我が日本に於いても決してメジャーな人が世界に通じるわけでなく、灰野敬二裸のラリーズなんかの方がよっぽど世界に知られているワケだから同じようなものなんだろうな。

 …と云うことで、今日もまた、決して普通の人が興味を持って聴くはずのないドイツの誇る超前衛音楽集団ファウストなのだ。そしてそんなヘンな音楽にも目覚めてしまっている自分がコワイのだが(笑)、やっぱり何と云ってもファーストアルバム「Faust」がそのジャケットの美しさと恐怖感を煽り、購買意欲をそそるってのがまず良い。そして中味…聴いて驚くなかれ…、いわゆる音のコラージュばかりをかき集めていて、もちろんピアノやらベースらや何やらと楽器が使われているのだが、ホントに音の断片ばかりがアルバム全編に渡って鳴り響いているだけ…、「だけ」ってわけじゃなくて、もちろんそれらが恐るべき緊張感を醸し出していて、中にはホントにノイズだけしか鳴っていない部分があったり、ともすれば子供のお遊び音じゃんってのもあったりするが、断片的に聞こえるバンドとしての演奏シーンでの各楽器の際立った音ってのは凄く硬質な音でドイツらしいサウンド。いわゆるアヴァンギャルドな音楽っていう部類に入るんだと思うけど、こういうので音楽を形成しているセンスっていうのは凄いと思う。普通センスがなかったらやっぱり単なるノイズと自己満足で終わってしまうだろうから、それを超越したコラージュサウンドでこれだけ世界を聴かせる、そして世界に通じるってのはやっぱりどこか相通じるモノがあるんだよな。大人じゃなきゃ聴けない音楽かもしれない。この音世界に美を感じるとかなりヤバい。これも静かにひとりでヘッドフォンで聴いている、とかなり異空間に飛び込んだ気分になれるので心地良い…。ん?おかしいかも…。

 このバンドって凄く不思議で、セカンドアルバム「So Far」ではやけにポップに…っつっても普通のポップではなくってあくまでも多少まとまった曲らしき形態を取っているんだけど、ガラリと変わったサウンドを…ってよく考えたら普通に楽器は巧いんで、普通に近いことやろうと思ったらできるに決まってるんだけど、それがまとまった演奏を…なんて云われてしまうんだから如何にファーストアルバム「Faust」がインパクト絶大だったかってことなんだが(笑)、こういう歌も入ったポップ調ってのがユニーク。ドイツってヘンだよ。

 そういえばこれも紙ジャケ出たばっかで、オリジナルアナログ盤のスーパーレア度も何の其の、見事なパッケージで手に入るウチに入手すべし。ん?いや、万人にオススメはしません。ある種の狂気です、これ。

Can - Future Days


 ドイツのバンドと云うと、やはりかなり硬質なプログレッシヴロックのイメージが強い。これは一体どこからやってくる幻想なのだろうか?実際にドイツのプログレバンドで知っているバンドなどそれほど多くはないので、その理由を未だに知らないでいるのも事実だ。多分、ファウストのアナログジャケットの美しさの中にそれは存在していたのだろう。また、幼少期に刷り込まれたドイツ軍の戦車=鋼鉄の棺桶のようなイメージからドイツ=硬質という印象が根付いているのかもしれない…。が、多分、もっと印象深いのは実際のフランクフルト空港に降り立った時に全てが金属で作られていた空港の印象が一番強烈なのかもしれんなぁ…。あ、もうひとつ…「エロイカより愛をこめて」っていう漫画を知っている方にはお馴染みのエーベルバッハ少佐の印象も手伝っている(笑)。

 で、ある意味そのままの硬い…と云うとかなり語弊を招くのだが、一体何なんだこのバンドは?って思うくらいのサウンドなのにもの凄くメジャーなバンドとして名高いのがCanだ。ボーカルが日本人という特異なバンド編成が日本での人気を後押ししていることは否めないが、それでもドイツでこんな前衛音楽が市民権を得て遠い島国日本にまで波及するその斬新性ってのはバンドの凄さだろう。断言しておくが、いわゆるプログレッシヴロックの音楽ではない。前衛音楽であり、ミニマルミュージックであり、ガレージサウンドであり、地を這うようなダモ鈴木の歌声がこれも心地良いが、音のひとつひとつに生命の息吹が与えられていて、その生命は一体どこに向かって宙を彷徨っているのだろうと思うような浮遊感と心の中を浮遊する旋律が現実を忘れさせてくれる…そんなサウンドで、決してまかり間違っても一般人が聴ける音楽ではない。が、ロック、しかも英国の湿っぽさが好きな方なら聴けるのかもしれない…。

 そんなサウンドを顕著に認識させてくれたのがカンの6作目、ダモ鈴木の最後の参加作品となった「Future Days」である。その筋からも最高傑作のひとつと呼ばれるようだが、普通のロック好きである自分が聴いてもコレは凄い、と認識し、何気に聴き始めるともの凄く心地良くなってしまうのがこの作品♪ 静かなトコロで一人で大音量で、それか一人でヘッドフォンの世界で、多分目の前にぐるぐる回るライトでも光らせておいたら恐ろしく心地良いんだろうなぁと思うサウンド。素晴らしい…。

 他にも「Tago Mago」「Ege Bamyasi」などジャケットも面白いしもちろん中味のサウンドも印象的な作品があるのでハマってみるとドイツの前衛サウンドが世界を制する姿を見れるね。紙ジャケでも出たばっかだったような気がするのでまだまだ手に入れられるチャンスは十分にあるし、実際昔のアナログ時代では全然手に入らなかったのを考えれば良い時代になったもんだ。

Rammstein - Rosenrot



 衝撃的なステージングで観る者を魅了する旧東ドイツ出身のコメディーバンド、否ハード&ヘヴィーバンド、ラムシュタイン。前作「Reise Reise」から一年でリリースされた「Rosenrot」ではイギリス盤限定でDVDが付けられているのだが、このDVDの中に先の日本公演での「Mein Teil」が映像で収録されているという感動。もちろんUK限定盤を手に入れないと見れないのだが、2005年6月3日、忘れもしないラムシュタインのクラブチッタ川崎でのワンナイト来日公演が行われたのだ。ライブに行った時からMTVあたりで放送してくれないかな~なんて願っていて、実際プチドイツ特集時に何秒間づつくらいチッタでのライブの模様が放送されたので、是非にでも日本限定でいいのでDVDリリースしろよ~って思ってました。そしたら一曲だけがこのボーナスDVDに収録されたのはまずまず嬉しいことでしょ。ステージングは相変わらず火炎ショウが繰り広げられていて凄いんだな。これを受けてサマソニ2005に来日するはずだったのが、急遽ステージ上で怪我をしてしまい来日キャンセル(涙)。幻の公演になってしまったのだが、終わった事は何を言ってもしょうがない、次回のチャンスを待とう。それまではこの「Rosenrot」をたっぷりと楽しもう。

 冒頭から「ベンジーーーンッ」で、とってもラムシュタインらしい曲。初期の超鋼鉄サウンドからはかなり変化してきた今のラムシュタインではあるが、より深いサウンドを奏でるようになってきた。今作の面白いところはスペイン語での「Te Quiero Puta!」でまたもや女性ボーカルと掛け合ってる。で、その延長なのか「Stirb nicht vor mir // Don't Die Before I Do Feat. Sharleen Spiteri」でも女性ボーカルが参加していて、昔の「Engel」で突出していた女性の歌声が前作ではt.A.T.uが参加か?と話題になり(実際は違うが)、今回は更に大々的にクローズアップされている。う~ん、ラムシュタインに女って似合わない(笑)。奴隷なら似合うんだが。で、そのt.A.T.uとのジョイントはオフィシャルでリリースされたのかな?どこかでラムシュタイン+t.A.T.uってのを聴いたことがあるんだけど、冗談みたいなアレンジだったもんな。あ~、しかしどの曲聴いてもライブでのパイロの上がるポイントとか、冗談みたいなプロモビデオが出来そうだなとか想像できるところがラムシュタインの面白いところ。

 前作「Reise Reise」の1曲目からCDを巻き戻すと事故機のフライトレコーダーの音声がシークレット収録されているんだけど、これが日本人なら忘れられない御巣鷹山でのボーイングの事故時のフライトレコーダーの音声のため、凄く生々しい日本語が入っていたのだ。それで日本盤をリリースする際にこの部分をカットし、ついでに昔からよくある手段だった日本独自アルバムジャケットを採用して発売されたのだが、そのジャケットが今回の「Rosenrot」とほとんど同じなワケだ。つまり日本盤「Rosenrot」をそのままのジャケットでリリースするとなると、「Reise Reise」と「Rosenrot」が同じアルバムジャケットになってしまうのだ(笑)。
 んなこともあまり考えられないので、日本盤が出るとしたらどんなジャケットになるのかな、とちょっと楽しみ。あ、ということはもう一枚買わないといけないってことか?しょうがないなぁ…。

 しかしこのバンド、絶対DVDで映像を見ることをオススメしたいし、その炎のパワーたるやヨーロッパを制するステージングなワケだ。う~ん、凄い。

Goblin - Roller


 イタリアのバンドでサントラのプロと云えばゴブリンを於いて他にない。映画「サスペリア2」でのサントラがバンドとしてのアルバムデビューと云うことだが、既に超絶テクニック集団による完璧に作られたサウンドのため、同じ恐怖映画のテーマとして一躍有名になった「エクソシスト」とは意味合いが大きく異なり、恐怖感を煽るにはこういう曲調がベストと認識して作っているワケだ。もっとも「チューブラー・ベルズ」で用いられた同じ音を繰り返し使うミニマル演奏は恐怖心を煽るには適当だと証明されているので、それっぽい作品にはほとんど使われているのは「エクソシスト」音楽担当チームの功罪だろう。

 そして1976年にはサントラではなく彼等のオリジナルアルバム「Roller」をリリースしているが、一般的に云われているほどプログレッシヴロックのサウンドではないよね。小曲が多くて時代背景もあるんだけど、ダラダラしたものは一切排除されているし、それでもシャープな展開がそこかしこで行われていたり、ギターにしてもえらくヘヴィなサウンドで効果的なメロディーを聴かせてくれたりするし、結構ジャジーなフレーズが使われていたりと爽やかに楽しめるのがポイント。そしてイタリアらしいしつこさというものが皆無に等しく、英国的サウンドとして聴ける洗練された音というのも良い。サントラで鍛えられた情景と音楽の融合はこのオリジナルアルバムでもふんだんに発揮されていて、音を聴いているとなんとなく情景が目に浮かぶという面白さが本作の楽しみ方のひとつだね。ミニマル的曲調ももちろん展開されていて、「チューブラー・ベルズ」に似た感触だなぁと思うのもあるし、なんとなくフワフワした感じの楽曲から次第に恐怖というものがイメージされてくるのもあったりする。またえらくポップだなぁっつうのもしっかりと提示されていたりするのでなかなか何度も聴きやすい作風は見事なモノ。

 この後1977年には「サスペリア」(1と2の順序が逆なんだけど、合ってるんだってさ)のサントラも担当しており、相変わらずミニマル曲調でのテーマ曲展開やら様々な楽器を用いての音楽作りとなっているみたい。1978年には再度オリジナルアルバム二作目をリリースしていて、初めてボーカルを採り入れたコンセプトアルバムに仕上げた野心作になっている。

Osanna - Milano Calibro 9

ミラノ・カリブロ9(紙ジャケット仕様) パレポリ(紙)

 イタリアンプログレッシヴロックの醍醐味を象徴するバンドのひとつにオザンナと呼ばれるバンドが存在している。一般的には1973年発表の三作目「パレポリ」が傑作と云われ、実際にもの凄いアルバムではあるんだが、今回は1972年発表の二作目「ミラノ・カリブロ9」にハマってみた♪

 やっぱりイタリア的なストリングスによる美しい盛り上げ方を得意としていて、ドラマティックな静から動への曲構成は素晴らしく美的なバロック音楽。こういうトコがイタリアだよなぁ。ギターもしっかりと自己主張していて、この時期のイタリア独特のエグい音で切り込んでくるサウンドが特徴的と云えば特徴的。あ、フルートの狂乱ぶりもなかなか派手なので結構ゴッタ煮的なんだけど、美しさという点に於いては一貫した見事なアンバランス的構築美(笑)。ニュートロルスなんかと一緒に聴いていると面白いかも。

 で、この「ミラノ・カリブロ9」というアルバムはどうやら同名映画のサントラとして作られたらしいが、これがサントラで通じるのか?ってなくらいやりまくっているので一体この映画ってどんなん?って思ってしまうんだが…、そのせいか叙情性に長けた曲から派手に作られたドラマ的展開を見せる曲、フルートが効果的な印象を与え、且つ英語で歌い上げるイタリア的熱唱法はカンツォーネロックバラードとして最高級の出来映えだろう。曲構成がプレリュードからテーマへと渡る組曲形式になっているのでアルバム全体は30分強しかないが、世界を堪能するには十分なくらい中身の詰まった作品。

 こうなってくると俄然三作目「パレポリ」への期待が高まるでしょ?これがまた凄いんだけどね(笑)。

Il Balletto di Bronzo - Ys


 イタリアンプログレッシヴロックの中で際立った才能を放つ驚異的なバンドで挙げられるのは何と云っても Il Balletto di Bronzoだろう。美しき知性と暴力的なまでの狂気を同居させているこのバンドはテクニカルな面でも申し分なく、またイタリアン独特のしつこさからも離脱した驚異的なバンドである。

 そのイルバレの圧倒的な代表作としては1972年にリリースされたアルバム「YS」を於いて他にない。いわゆるプログレッシヴバンドとしての神器をほぼ全て使い、更にはハードロックの代名詞である歪んだギターも採り入れた独特の世界であることは間違いなく、この魔力に取り付かれた英国ロックファンは多いはずだ。冒頭から荘厳な女性コーラスによる幕開けにより、アルバム全体の重みを伝えている。正に研ぎ澄まされた感性の全てを音にしたとしか云いようのないくらいに細部の音ひとつひとつが作り込まれている、そんな印象で、この手のバンドには外せない軽快且つ手さばきの美しいドラムも好み♪多分このバンドの好みが分かれるところはクセのあるボーカルの声質だろうなと思う。バックの演奏があまりにも高度なため、また曲構成上ボーカルラインが非常に乗せにくい中で歌が乗せてあるため少々「うたごころ」が浮いてしまっている面も否めない。しかし、アルバム全体からしたらそれも些細な問題にしか映らないってトコがコワイ(笑)。荘厳なシンフォニックロックでテクニカルなプログレッシヴロックってのはこうまで凄いかって思うね。曲展開を追いかけていても実にスリリングで飽きることがなく、次には何が来るのか?という緊張感が全編に渡って貫かれており、突出して美しい音色を引き立たせる…例えば冒頭からピアノの使い方などはかなりアバンギャルドな楽器として用いられており、際立ったサウンドを聴かせているが、もちろんこの鍵盤洪水の中にあるブーストされたエグいギターの音色も際立った存在を主張している、などとにかく集中して聴かざるを得ないくらいのサウンド構築美が素晴らしい。

 1972年にこんなアルバムを発表していたIl Balletto di Bronzoだが、本作でバンドが解散しているというイタリアンロックにありがちな一発屋に近い状態ってのがもったいない。もっともこの後にはオザンナというこれまた素晴らしいバンドが結成されていくのだが、本作ほどの構築美を誇るアルバムはそうそうないのでもう少し作品を残してもらいたかったものだ。この「YS」に比べて圧倒的に存在価値が低く捉えられているファーストにでも目を向けてみようか…。

P.F.M - World Became The World


 イタリアンロック及びイタリアのプログレッシブバンドを世界に知らしめたバンドとして名高く、更にその地位をしてさも当然とも云える強烈な演奏技術とアレンジ力、そして曲構成の素晴らしさと洗練されたサウンド作りのどれもが世界レベルに相応しい「Premiata Forneria Marconi」、通称P.F.Mと呼ばれるバンドだ。キング・クリムゾンを離脱したピート・シンフィールドがイタリア国内で既にデビューを飾っていたこのバンドのアルバムに英語詞を提供し、編集してリリースされたアルバムが有名な「幻の映像」で、供給元となったレーベルはEL&Pの設立したマンティコアレーベルだったというのも世界デビューの話題を手伝っている。

 その後1974年、世界デビューして好評を博しているP.F.Mの次なる作品となった「甦る世界」と呼ばれるアルバムがとにかく最高に格好良い。もちろん以降も別の意味でのかっこよさは持っているのだが、このアルバムは美しさも激しさもテクニックもハートも構築美も野性味も全て持ち合わせているので面白いのだ。もちろん世界デビューした後なのでそもそもは英語バージョンでアルバムリリースされていたみたいなんだけど、やはりイタリア国内をナメてはいけないってことかどうかは知らないが、しっかりとイタリア語バージョンも同じアルバムでリリースされている。面白いのは英語版は青いジャケでイタリア語バージョンは緑色のジャケになっているところ。わかりやすくて良い(笑)。しかし、この二つは収録されている曲は英語バージョンの方が一曲多くって、しかも曲順が異なっているのでちょっと厄介だ。…アルバムっつうのは、しかもこういうサウンドを奏でるバンドのアルバムっつうのはやっぱり曲順に意図があると思っているので、どっちが正当なんだろうなぁとか考えてしまうワケさ。まぁ、英語版の方が自然な気もするので、…というか、英語バージョンの方が親しみがあるからってのもあるんだけど、どうしてもしっくりくるんだな。あ、イタリア語のP.F.Mの良さってのも比較論で聞くとなるほど、とは思うんだけど、やっぱり根が英国ロック好きなのでやっぱり英語版の方が聴きやすい(笑)。イタリア語の響きが好きだって人がいるのもわかるけどね。

 しかしこのアルバム、ホントにカラフル且つ音色がとっても艶やかで聴いていて楽しくなる作品でいいよね。いわゆるおどろおどろしいトコロが全然なくって、サラッと美しく楽しくロマンティックに聴けるんだよ。こういうのはイタリアン聴いててもあんまりない…と云うかさすがP.F.Mの世界って感じで、他の国にはこういうの出てこないってのもあるな。いわゆるプログレって思ってる人もいると思うけど、どっちかっつうとポップス…ん?おかしい?ま、そうかもしれん(笑)。しかしマウロ・パガーニのバイオリンと元アレアのベーシストの味は凄いな…。

Il Volo - Il Volo


 フォルムラ・トレのメンバーが新たに結成したバンドとしてデビュー作品から注目を集めたイル・ヴォーロと云うバンド、フォルムラ・トレ以上にテクニカル且つ重厚でポップ(?)なサウンドを送り届けてくれているが、作品的には二枚のアルバムのみのリリースに留まっているようだ。

 フォルムラ・トレの最終作となった「神秘なる館」のリリースが1974年だったが、同じ年にイル・ヴォーロのファーストアルバムもリリースされている。そしてこのファーストアルバムはイタリアンロック名盤史を飾るに相応しい作品に仕上がっており、ファーストアルバムながら素晴らしい完成度を誇る。アルバム全体を通してベースラインが歌っているトコロが面白く、またギター的にはかなり効果音的にメロディーを鳴らしている側面が強く、ともすればフュージョン的なサウンドとして捉えることもできてしまうサウンドかな。個人的にはハイハットの効いたドラミングが好きなのでこのバンドは面白く聴ける要素になってる♪ 普通に聴いてしまえば多分イタリア的にはあまり聞こえない曲調が多く、より英国的なサウンドに以下付いているというか、洗練されていると言うべきか…、それでいて効果的な楽器の使い方が上手いためにちょっとヨーロッパ的な雰囲気はしっかり持ち合わせているという不思議なサウンド。歌モノとして聴けばいいのかな。

 1975年にリリースされたセカンドアルバム「エッセレ」は打って変わってインスト中心の軽快なサウンド…、プログレではなくってどっちかというとジャズ・フュージョン的なんだけど、なんつうか、リズムが凄く細かくてロック的なのでその辺の真ん中的な音に仕上がっていて面白い。もともとテクニカルなバンドなので演奏そのものは上手いから聴いていても全然苦にならないんだけど、ファーストとの違いは凄いね。同じバンドとは思えないもん。

 そういえば自分の持っているキングから出た最初のCDではこの二枚のアルバムが1CDにセットされていて一気に聴けるお得なものだったんだけど、今はちゃんとアルバム通りでしか手に入らないのかな?そりゃ当たり前っちゃ当たり前なんだけど…。ま、ユーロ的なサウンドを持つバンドではあるが、いわゆるイタリアンプログレ的なバンドではないので聴きやすいんじゃない?

Formula 3 - La Grande Casa


 英国ロックが最も変革に富んでいた時期の60年代末にバンドが結成され、70年にあるばむデビューを果たしたフォルムラ・トレだが、さすがに英国のブームの波を数年遅れで受けており、ある意味英国ロックムーヴメントの代弁者とも云えるアルバムを発表していく…と云う意味は元々がビートバンドでスタートしており、サイケデリックの風味をたっぷりと聞かせたセカンドアルバムまでの後、三作目の「夢のまた夢」で一気にバンドとしての才能を開花させることとなった。

 一般的にはこの三枚目「夢のまた夢」と四作目「神秘なる館」の評価が高く、もちろん自分もその辺を聴くことが多かったんだけど、以前はどちらかというと「夢のまた夢」の方が好みだった。プログレ的な要素ではなくってもっとハードロック的な要素が強かったからかもしれない。音楽としての効果的なムーグやピアノ、ハモンドなどの使い方ってのはあるんだけど、元々がトリオバンドなのでバンド的なサウンドが強くて良かったな。…とは云え、アルバムの曲構成はテーマに基づいた小曲構成になっているので、しっかりとプログレッシブ的作品ではあるんだが…。

 で、今はと云うと、「神秘なる館」の方が好みなんだなぁ。全6曲30分強という短いアルバムなんだけど、イタリア的なしつこさっつうか粘っこさがもの凄く薄れていて、英国ロック好きには非常に聴きやすい洗練されたサウンドに仕上がっている。あ、ギターの音色以外は、だね(笑)。冒頭のアコギの音からそういう洗練されたサウンドはピンと来るから面白いね。ま、とは云えども叙情性はしっかりと残っているのでコチラの作品の方がよりオリジナリティを出している、っていうところかな。アルバムリリースは1974年だから、英国ロックの風潮と同じ進み方でリリースされた作品なんだね。楽曲の変化もアコギで展開されるというのが英国ロック的で、メロディーもしっかりしてるし、いわゆるプログレッシブなサウンドだよ。B級じゃなくってね(笑)。でも楽曲そのものはそんなに偏見を持つようなプログレ系じゃなくって、ヨーロッパのポップさをしっかり持っている…。面白いな、これ。ハードロックもしっかり出てるし…、聴いていて相当面白い。うん。ヨーロッパ的でいいなぁ。アコギの使い方が滅茶苦茶美しいんだよ、ホントに。イタリア語なんかまるでわからないんだけど、聴いているとやっぱりノスタルジックというかロマンティックな気分になれるんだから面白い。こういうトコロに美学を求めてくるとスペインのプログレバンドとか面白いんだろうなぁと思う。熱い魂の国が出してくる優しいサウンドってやっぱ凄い。

Maxophone - Maxophone


 イタリアンロックに求める美しさ=ドラマティックでクサイほどの叙情性と構築美、更にカンタトゥーレの流れと美しい楽器なら何でも入れて盛り上げるが、更にハードなギターがあれば最高。曲調は当然ながら美しく激しい展開が組み込まれ静と動が綺麗に存在していることなどなど色々と云えることは多いのだが、中でもこのマクソフォーネと云うバンドはそれら全てを兼ね添えており、更に重苦しくならないという軽快さをも持っているので初心者が手を出すには非常に取っ付きやすい作品をリリースしている。

 時は1973年、唯一のアルバム「Maxophone」をリリースしているが、以降シングル二枚程度しか発表していないので現行CDではこのシングルも含めて全曲収録の一枚物CDが入手可能(だと思う)。まずクレジット見て驚くことに6人編成のバンドに加えて5人程度のゲスト陣参加ってことなので、簡単に言えばありとあらゆる楽器の音が聴けるってことです。一曲目からその効果はしっかりと現れており、実に多彩でカラフルな音色が飛び交って聴いていると次々と出てくる音色に惑わされてしまう、そして曲そのものの美しさも手伝い、その音空間に惚れ込んでしまうという(笑)。いや、最初の幻想的なピアノの音色からして「ん?」って引き込まれるんだけど、続いて出てくるハードに歪んだギターってのとドラムがさ、ロックなんだよね。こういう展開は後のヘヴィメタに顕著なんだけど、凄く格好良いんよ、ホント。でもって歌もイタリアのいやらしさはなくてかなりすっきりとした爽やかな歌声なので好感が持てる。多分、英語盤聴いてるからってのが大きいと思うんだけど(笑)。

 書き漏れてたけどこのバンドのこのアルバムはイタリア語バージョンと英語バージョンがリリースされていて、自分が聴いているのは英語バージョンなので結構違うんだろうなぁと思ってます。実際曲順そのものも違うワケで、それはもう別のアルバムっても過言じゃないよなぁ…。イタリア語バージョンだともっとしつこくなるのかな?多分この声質とエフェクトだったらそんなでもないんだろうなと推測してますが…。イタリア語バージョン聴かないとダメっぽいな…突っ込まれそうだし(笑)。

 しかしこのバンドは英国ロックファンでも多分すんなりと取っつけるサウンドだろうなぁと思う。クィーンのセカンドみたいなのもあるし、音の作りが凄く英国的なところが見え隠れするって感じるけどな。質感的にはWishbone Ashな感じなんだよ…。曲が違うんだけど。やっぱり多種多様の楽器を上手く使ったカラフルな音色と荘厳なるコーラスとエグイギターがこのバンドの特性だし、一枚しかリリースされてないからそれを聴きまくるしかないってのもファンが多い理由だろうね(笑)。

New Trolls - Concerto Grosso N. 1

コンチェルト・グロッソ(紙ジャケット仕様) コンチェルト・グロッソ1&2 コンチェルト・グロッソ・ライヴ
 ユーロロックと一括りに語られることも多いし、実際自分でもユーロ系ってことでまとめたジャンルとして聴いている傾向もあって、改めてそうではないんだなぁと思い知らされながら最近はイタリアものをよく聴いているのだが、ともすればハードロックバンド、しかも様式美、叙情性たっぷりなイタリアンサウンドを持ったバンドがオーケストラとの融合を果たした結集として世界中に知れ渡るほどの名盤を生み出したのが「コンチェルト・グロッソ1」。最初に聴いた時からこれも結構インパクトあって、イタリアの連中はホントに自己満足のエゴの塊でロマンチストなんだなぁと思ったんだが(笑)。

 「コンチェルト・グロッソ1」と題された彼等の三枚目の作品は見事にオーケストラとの融合を果たした傑作で、コレでこのバンドに一気にハマるだろう。ちょっと露出過多という気がしないでもないんだけどね。オープニングからストリングスが鳴り響き、格式ある宮殿音楽でも聴くかのような厳かなバイオリンの旋律から始まるが、それはすぐにロックバンドサウンドと融合してしまい、フルートとの掛け合いから気持ちの良い中音域をブーストして歪みまくったギターがサウンドの要となり、以降更に美しく正にバロック風の旋律から場を盛り上げていく…オープニング2分半にしては強力な、リスナーを惹き付けて止まない素晴らしい曲。打って変わって静かに始められるアダージョでは美しいコーラスから歌が奏でられ、優しくも美しい旋律に乗せ、ストリングスの音と共に泣きのフレーズが連発されるが、ここでもギターソロが自己主張しており、ロックバンドの音を聴いていることを思い出させる結構エグイ音。曲の構成的には静→動→静→動というドラマティックな終わり方はかなり好み♪ 即座にまたバイオリンによる旋律が奏でられ、曲中で主要な役割を占めることとなるが、そこへオーケストラサウンドが重なり、荘厳なそして叙情性を強調した旋律が繰り広げられる素晴らしい展開だ。そこでもギターが自己主張している部分が聞こえるトコロがギタリスト的にすごく好き(笑)。4曲目では「Shadows (per Jimi Hendrix)」と題されているが、オープニングこそフリーインプロっぽいものの、即座に今度は乾いたサウンドのギターが独自のフレーズなんだが、フレーズの出所は「Hey Joe」あたりのジミのフレーズが聴かれるので意識して弾いたんじゃないかな。曲そのものは美しいバラード調の曲で、「Little Wing」を意識したかのようなものなんだが、フルートの調べがこういう曲にはよく似合っていて感情を動かされるね。もちろん最後のギターソロについては的なジミそのもののフレーズが連呼されて収束を迎えるが、ちょっと粗雑かなぁ…。宇宙に行くようなサウンドはわかるんだが(笑)。

 で、A面終了。クラシカルなサウンドを中心にオーケストラと創り上げた見事な音楽でやりすぎ感もあるけど良いよね。

 B面?一曲で20分半なワケで、即興性の効いたニュー・トロルスというバンドの本来持っている特性を出した曲なんじゃないかな。ギターがねぇ、金属的っつうか割れ気味の音で滅茶苦茶ロックしてるってのが良い(笑)。オルガンやらフルートやらも凄く味を出していて、特にフルートの使い方が良いね。演奏そのものはクラッシック系からジャズ系、そしてロック系って感じでかなりアバンギャルドで面白くってA面の構築美とは全然異なったかっこよさがあるんだけど、アルバムそのものの評価は一般的にはA面のオーケストラサウンドとの融合性に行き着く傾向が多いね。

 ちなみに5年後の1976年にメンバーも入れ替わっていたんだけど続編となるコンチェルト・グロッソ2というものをリリースしていて、もちろんかなりの秀作なんだけど、ちょっとポップ…と云う言い方も変なんだけど、メジャー路線的になりすぎているかな。その分聴きやすいし、作品としても実に良くできているんだけど、緊張感ってのがないんだよな。コレ重要だからさ。ま、お得なのは「N.1」と「N.2」が1CDに入ってるのを入手することかな(笑)。

Museo Rosenbach - Zarathustra


 ハード&インテリジェンス且つドラマティックな美しさを持つ世界となるとやはりイタリアが一番と言うことになる。70年代のイタリアンロックはそれこそある面ではブリティッシュ・ロックに負けないくらいの技術とサウンドを持ったバンドがゴロゴロと出てきたものだ。英国的サウンドとは一線を画す、…とは云えどももちろんその叙情性に於いては英国ならではのものもあるのだが、イタリアの叙情性というのはやはり元々がカンツォーネの国、且つ暑苦しい…否、熱い国なのでその情熱がモロに音楽に反映されているとは言い過ぎだろうか。

 そんなイタリアンロックの中でも自分が最初に触れたアルバムがムゼオ・ローゼンバッハというバンドの当時は唯一だったアルバム「Zarathustra:ツアトゥストラ組曲」だ。当時英国産ロックにどっぷりと浸かっていた時期だったんだけどマンティコアレーベルあたりからPFMがチラつき、レコード屋のプログレコーナーの続きには必ずユーロロックコーナーがあって(笑)。で、結局どんなのが名盤なんだ?っていうのは気になるのでいつの間にかあれこれ覚えてしまっていたという、でもこのアルバムはクリムゾンの叙情性が好きだったから最初に手に取ってみたアルバムってことだね。もちろんその後のコレクションがどうなったかは言うまでもないことでしょう…。

 ムゼオって何で一枚で終わってしまったんだろ?勿体ない…。しかし、この唯一だった作品はもうクラシカルで自己満足型の叙情性たっぷりの美しいメロトロンが堪らなかったな。軽快なドラムのフィルインも凄く感情を呼び覚ますきっかけになるし何と云っても歌がさぁ、イタリア語なワケで、巻き舌且つあの発音でロックなのでそれだけでもうご満悦よ(笑)。しかし、この作品は実に音楽的に凄くて、ドラマティックな美しさがあるし、嬉しいことにメロトロン+ムーグはともかく、しっかりと歪んだギターってのが入っているのがよりロックらしさを増しているね。曲展開も実はいきなり曲調が変わるという繋ぎ方も多くて、これは組曲という特性なのかもしれないけど、へぇ~、って感じなんだけど全体の構成美からすると全然問題なくって凄いんだよな。攻撃的で勢いのある、そして叙情的で泣きのメロディーたっぷりってのが良い。

 ん~、それほど詳しくはないけど多分凄い名盤のハズ。日本盤がリリースされる程のイタリアンロックってのはそもそもがそのレベルなハズなんだけど、その中でもかなり上位に位置する名盤だよ。…ま、自分でその時聴いてすげぇな~ってず~っと覚えてるんだからインパクトあったんだよね。で、久々に聴いたらやっぱり面白くてつい聴き込んでしまったんだが(笑)。しかし1999年になって突如の再結成によるアルバムリリースには驚いた。もちろん聴いてません(笑)。

Island - Pictures


 落ち着いた静かな味のある英国牧歌的トラッドフォークから急転直下、突如としてハード&インテリジェンスなサウンドが聴きたくなったので小耳に挟むことの多かったスイスのアイランドというバンドを聴くことに。バンド自体は1976年に解散しているみたいだが、唯一のアルバム…と云ってもメジャー配給ではなかったようなので再発も大変だったことだろうと推測されるのだが、解散後の1977年に「Pictures」というタイトルでリリースされている。

 これがまたよく出来たアルバムで、時代遅れだったためにメジャー配給されなかったものの数年前だったら英国でもイタリアでも余裕でリリースできてそれなりに売れた音だろうなぁと思うくらいハイレベルのサウンドを奏でるバンド。オープニングはそのまま「Introduction」なんだけど、これがまた「これから何かが始まるぞ」的な音楽でダースベイダー登場、みたいに雰囲気をしっかり出したワクワクさせる音。たかが1分半くらいなんだけどゾクゾクしてくるね。そのオープニングに続くのが流れるような鍵盤の音が心地良いイントロで始まる「Zero」。もちろん変拍子、ドラムと鍵盤+ペダルベース、吹奏楽器もあるか…、まあ、音の洪水でよく練られているので絶対譜面がないと無理だろうと思われるんだけど、こういうバンドって実際譜面に起こすのかな?曲の構成の繋ぎとしてペダルベース一本になり雰囲気を変えるというトコロが少々プログレッシブ的ではなく組曲的というのか…、こういう音空間好きだけどね。で、続いての16分ものタイトル曲「Pictures」。チェンバーでリスナーを惹き付けておいてリフレイン、そしてまたしても「これから何かが始まるぞ」的な効果音から妙~な鍵盤に続いて驚くことに結構かわいい声した歌が入ってくるのだ。インストばっかかと思ってたので驚く瞬間だが、歌は上手くないなぁ。他の楽器が上手いだけ?しかし、侮ってはいけないのだ。この歌声=ボーカルがどんな効果を生むかと云うと…、「呪術的効果」。うん、これは巧い。ドラムのスネアの軽い音も結構好みでキメばっかりってのも男らしくて良い(笑)。

 続いては打って変わって荘厳なピアノと繊細なピアノの音色で美しく奏でられる「Herold and King」。イントロと以降は切り離して考えた組曲として聴いた方が正解なんだろうけど、エラク凝ってる…、このバンド、アルバムの終局に向かえば向かうほど楽曲レベルや実験レベルが上がり、更に緊張感も増すし、怖いことにその恐怖感が煽られてくるんだよな。テンパってるっていうのか…、ね。この辺になってくるともうギターがないとかどうとかっていうのが全く気にならなくて、ただただ楽曲の凄まじさにハマり込んでいくのみって感じ。この時代から既にサンプリングによる反復効果を使用していたりするのでタダモノではない…そりゃそうなんだが(笑)。で、オーラスを飾る「Here And Now」…冒頭の「ジョワ~~~~~ン」からしてもう何かあるよ。聴いてみると聴いている側を叩きのめすに十分なコーラスワーク…ボイスっつうのかな、効果が抜群で、しかもフランジャーなのかレスリースピーカーなのかな、グルグルと回ったような鍵盤の音が中枢神経を刺激するし、音の洪水は相変わらずのテンションで繰り広げられるので疲れる、ひたすら疲れる。が、この曲の構成とリスナーをぶちこわすたたみかけは凄い。更に現行入手可能なCDにはボーナストラックが付けられているんだけど、これが自主制作デモテープのようなチープな音なんだけど、23分以上あるんだよ、もちろん一曲で。いや、何が凄いって、この曲「Empty Bottles」っつうんだけど、コレが一番凄い。ブログ仲間のpapini嬢が徹底的に破壊されたってのはコレだ。多分。わかる。起承転結…いや、天地創造並みの構築美がある中で音の洪水による破壊力はまだまだ勢いづいているバンドの時期からするとかなりパワーのあるサウンドと展開…。

 初めてこのバンドを表現するに当たっては多分マグマが一番近いのかもしれないけど…、いや、独特だよコレ。今聴いても凄く新しい。正直言ってそんな凄いのあるのかねぇ~ってくらいにしか思ってなかったんだけど…、ナメてた。ぶっ飛んだ。しばらくコレ聴き続けよう、そう思うくらい衝撃的なかっこいいサウンド。プログレかどうかってのは問題ではないな、音に敏感なロック好きなら多分ぶっ飛ぶ。…アマゾンにないしタワーとかでも見かけたことないから手に入りにくいみたいなので、聴かない方が幸せかもしれんが…(笑)。

Richard & Linda Thompson - I Want To See The Bright Lights Tonight


 英国伝承音楽の道をメジャーにしたのがアシュリー・ハッチングスとするとその中でも更に磨きをかけた英国的ギターサウンドを一気に表現したスペシャリストと言えばリチャード・トンプソンを於いて他にいない。表立った活動として頭角を現してきたのはフェアポート・コンヴェンションに遡ることとなるが、サンディ・デニーとともにフェアポートのセカンドアルバムに参加し、そのギターセンスを披露してからというもの、フェアポートではサンディが脱退した後の「Full House」及び何度も名盤と書いてしまう「House Full Live」に残された名演奏がリチャード・トンプソンの名を決定的にする。

 その後はその世界では引っ張りだこで多分仕事に困ったことないんだろうなぁと言うくらいに実にアチコチでその名がクレジットされたレコードを目にするが、1972年ようやく初の自身のソロアルバム「Staring As Henry The Human Fly」を発表。冒頭のイントロからしてもうリチャード・トンプソン以外の何者でもないギターの音で、名盤とまでは言わないがもの凄く個性的な独自サウンドを全面に出した作品。まぁ、そういう意味では他人とのセッションの方が気楽にのびのびと弾いているような気もするが、どこからどう切っても英国的な香りしかしないギターの音色は真似できる人はいないくらいの独自性。コレにハマるとまっすぐ深みにハマります(笑)。もちろんアシュレー・ハッチングスも歌でゲスト参加していたりアコーディオンではジョン・カークパトリックが参加していたり、何と云ってもここでも全盛期のサンディ・デニーも参加しているので正に英国トラッド勢の集合アルバム的ニュアンスも強い。いや、久々に聴くけどこんなに良いアルバムだっけ?

 でもって、その後はリンダ姫と結婚してリチャード&リンダ・トンプソンとしてアルバムをリリースしていくが、中でも二人のセカンドアルバムとなる「I Want To See The Bright Lights Tonight」が一番好きかな。音色の豊かさはいつものことながら、何というのか音に幸せがいっぱい入っていて、しかもアコギとエレキが実にほど良いバランスで流れており、それでいてトラッドの色もあるんだけど、かなりオリジナリティのにじみ出ている作品でリンダの声もこうして聴いてしまうとなかなか悪くないのでやはりここも英国人なのだろうか。二曲目の「The Calvary Cross」なんてイントロのギターを聴いているとジミー・ペイジの「Black Mountain Side - White Summer」あたりと全くフィーリングが同じで、且つこちらの方が音色の艶めきがあるというのも素晴らしい。

 一般的にあまり知名度のある作品群でもないんだけど、Zepと同じルーツからまったく異なるサウンドに変化していったエレクトリックトラッドのギタリストとしてのサウンドは実に面白い。よくクラプトンあたりと比較されるが、全くリチャード・トンプソンの英国的ギターに関してクラプトンは比較にならない。もちろん彼はブルースというものを自身で昇華しているので比較論がナンセンスなんだけど、リチャード・トンプソンのサウンドの方が深みがあって良いよ~。最近キャリア集大成という意味でのボックスセットも出たらしいのでお得なセットが入手しやすいみたい。

Morris On - Ashley Hutchings etc


 ちょっと堅い話かもしれないんだけど、英国伝承音楽の歴史を紐解いて行くとえらく深いところに行き着いてしまって、アシュリー・ハッチングスもそこに行き当たることになる。英国では伝統的にダンス音楽というものが継承されてきていたが、もちろん口頭による伝承音楽であったため文化としての形が残っておらず半ば消えかかっていたと言う。それをセシル・シャープという人が1899年に発掘、再発見して以来きちんとした形、例えば譜面などで残しておくべきだということに落ち着いたが、それを更にロックバンドが演奏するということでメジャーな音楽に仕立て上げたのがアシュレー・ハッチングスということになるんだろう。そいつを実践したのは1972年、はたまた英国フォーク仲間を多数集めて制作されたのが「Morris On」と云う作品。

 参加メンバーは恒例リチャード・トンプソン、デイヴ・マタックス、ジョン・カークパトリックなどなどに加え、もちろんハッチングスの奥方シャーリー・コリンズなどこれまた多数でこの英国伝承ダンス音楽を再演したものだ。もちろん古楽器が中心になり、コーラスワークもさすがのものだが、曲の骨格がもちろんトラッドフォークとは大きく異なるのでその延長で聴いてしまうとちょっと「ん?」って感じではあるんだけど、フィドルやアコーディオンっつうのがやっぱりノリの良い演出を施していて、元来ジグサウンドの好きな自分としては問題なし♪ そんなウワサを聴いて最初にこのアルバムを聴いた時はいきなりフィドルの長いイントロからして驚いた…。その後に続くのはコーラスだけのアカペラで歌われる「Gleensleeves」だしさ(笑)。その次くらいからようやくそれらしいサウンドが聴けてくるので、ま、一枚でそれなりの物語展開らしく作っているんでしょう。小難しく解釈すると8分の6拍子調のジグに4拍子のリールが強烈に効いているみたいな感じが英国ダンス音楽の基本っつうことで以降どのバンドもこれに習ってダンス音楽を強調しているらしい。それにしてもこのアルバムジャケットのおちゃらけた格好のことと云ったらニューヨーク・ドールズも真っ青でしょ(笑)。ジョークの好きな英国人ならではの文化だね。

 またこの続編作品として1976年にはマーティン・カーシーやサイモン・ニコルやシャーリーなどで「Sons of Morris On」をリリースしているので、同じようなサウンドを楽しむことができるのもマニア的に嬉しいところかな。こういうのって別アーティストで探すのって結構大変だし。…と思ったら2002年には更に唐突に30周年記念てなことかどうか知らないが「Grandson of Morris On」というアルバムをリリース(笑)。ここまで来るとさすがだ、と思ってしまう。ハッチングスと言う人はピート・タウンジェンド以上にこだわりを見せる歴史の追随者なのだろう。ここまではさすがに聴いていないので実際のサウンドがどんな感じなのか知らないが、多分、そのままなんだろうなぁと(笑)。

 この辺まで漁っておくとさすがに英国ロックバンドがある程度変わったことやってても大体分かってくるんだよね。もっとも正当派のポップス路線ってのもあるので、ま、その辺はビートルズ当たりから入ってれば大丈夫だろうけど、こういうのはね、ビートルズからは漁れない。でも彼等はやってるんだよな…。で、Zepは面白い、実に面白い。こういうトコロまで行けるってのが良い。で、それを受け止めるだけのキャパが英国ロックにはあるんだなぁ。これが凄い。う~ん、まじまじと感動(笑)。

The Albion Dance Band - The Prospect Before Us


 アシュレー・ハッチングスの探求道はフェアポート・コンヴェンション、スティーライ・スパン、そしてアルビオン・バンドという大きなバンドを残したことに十分に価値が反映されており、フェアポートにしろ、スティーライにしろ様々な形態にはなったもののしっかりと歴史に名を残すに相応しい活動を行っている。そしてもっともハッチングスが気楽に自由にやれていたバンドが実はアルビオン・バンドだったんだろう。シャーリー・コリンズとのパートナーシップは「No Roses」だけでなく以降もことある毎に続けられているし、バンドそのものはアルビオン・カントリー・バンドやアルビオン・ダンス・バンドからアルビオン・バンドと名前がいくつか変わっていくが、根本的にやりたいこと自体にそれほど変化はない…と言うかバンド名通りのサウンドを狙って作っているワケで、バンドと云うよりもプロジェクト的にアルバムをリリースしているという感じ。

 中でも1973年制作となった…が、当時バンドが存続していない状態だったので後にリリースされて話題となったのだが、アルビオン・カントリー・バンド名義による「Battle of The Field」は正に英国的フォークサウンドの象徴で、どれを取っても焦った曲はなくしっかりと英国的なリズムと湿っぽさとアコースティック楽器によって後世されているし、やっぱ所々のフィドルの音だったり、フッと沸いて出てくるフォークギターの単音なんてのが印象に残る。この頃から英国に伝わるモリス・ダンスというダンス曲の音源化を意識していたハッチングスは本作で「Morris Medley: Mouresque/London Pride/So Selfish Runs the Hare/Maid Of」というモリス・ダンス曲を披露しており、この後の活躍のネタ元となるのだが、明らかに英国的なサウンドで益々英国の深さがにじみ出てくるという作品。普通に聴けばどれもラジオで流れているような落ち着いたポップス、大人のポップスと言った感じに聞こえる曲調ばかりだが、その実ハマってみるとひとつひとつの音が凄く気になる作品(笑)。

 その後1976年にアルビオン・ダンス・バンド名義で発表された「The Prospect Before Us」はその名の通り、先のモリス・ダンスを十分に吸収した後の作品になっていて、もう踊らずにはいられないっていう曲がいっぱい詰め込まれているので素直にロック好きでノリの良いのがやっぱり聴きやすいってことならばこっちの方が良いんだろうな。こういうノリもあるんだよって感じなので、オススメしておきたいね。アルバムとしての評価では先の「Battle of The Field」の方が良いと言われるけど「The Prospect Before Us」の方が軽快にノレる。アコーディオンが良いんだろうなぁ、きっと。アコースティック楽器というよりも古楽器をいっぱい使っているのでその辺が自然なのかな…、表現が難しいんだが(笑)。ただ、興味深いサウンドってことに変わりはないね。

 翌年リリースされた「Rise Up Like the Sun」はまた全然違うイメージで、言うならばアルビオン・ロックミックス・バンドって感じかな。また違う角度で書かないといけないかな、っていう複合性の高いサウンド。ん~、これはまた今度ちゃんと書こう。

Shirley Collins And The Albion Country Band


 アシュレー・ハッチングスの追求する純英国トラッド道に対する執着心はスティーライ・スパンでも途中で曲げられてしまったと感じたのか早々に離脱し、新たに自己の追求を行うことに徹している。この辺のミュージシャン魂によるこだわりは大したものだと痛感せざるを得ない。そしてシャーリー・コリンズという歌姫と出会い、その夢を全うすることになるのだが、その夢も単なる夢で終わらせずにそれまでに培った人間関係の全てを持ち出したと言っても過言ではないくらいに今やあり得ないくらい超豪華なメンツをゲスト陣として従え、トラッドフォークアルバムの傑作として語り継がれる作品を生み出した。

 1971年、当時…いや今でもその顔ぶれを見るだけで正にフォーク界の雄志が一同に介していることは一目瞭然だっただろう。ハッチングスが新たに命名したバンドはアルビオンカントリーバンド。それにシャーリーコリンズが参加したし、彼女自身は既にこれまでにソロ及びデュエット作品で名を成していたため、シャーリー・コリンズ&ジ・アルビオン・カントリー・バンドとして「No Roses」という名作を発表。メジャー所の人脈ではリチャード・トンプソン、ロル・コックスヒル、ニック・ジョーンズ、ドリー・コリンズ、ジョン・カークパリック、マディ・プライアー、サイモン・ニコルなどが挙げられるだろうか、簡単に参加しただけという人もいるし、思い切り演奏しまくってる人もいるので音を聴いてのお楽しみ的要素が強いのだが、純英国トラッドフォークなのでダンスチューンは姿を現さず、いわゆるまーダーソングに代表される英国産トラッドという落ち着いたサウンドとカラフルな音色に彩られた落ち着いた大人の音楽とも云える雰囲気がたっぷり。あちこちハッチングスの作品を聴いているとどこかで聴いたようなメロディやフレーズがそこかしこに出てくるのもユニーク。シャーリーの声はどこかしっとりとした中に抜けるようなトーンを持っていて、ピッタリと合っているんだけどその分アクが弱いという印象もあるが、好みの問題だろうね。

 それにしてもこのようなゲスト陣で構成され、しかも正に素晴らしき楽曲ばかりが羅列される作品はそうそうない、というかこの作品くらいでジャケットの醸し出す雰囲気と共に名盤の名を欲しいままにしているワケだな。重くもなく軽くもない、もちろんポップなわけではないけど優しい雰囲気で心に馴染んでくるこの作品の持つ音楽はやはり語り継がれるべきものだね。シャーリー・コリンズの作品も結構CD化されていて、あれこれと聴けるみたいなので今まで手に入らなかったレアなものも今なら簡単に手に入るってのも良い時代になったものだ。

Steeleye Span - Please To See The King


 イングランドの香りを求める求道者アシュリー・ハッチングスがフェアポートを離脱して自己の音楽性を追求したバンドがスティーライ・スパンで、その初期三部作はいつの時代にも語り継がれる名作として君臨している。時は1970年前後、ロックの世界では一番熱い時期に突入するが純然たる音楽、英国伝承音楽の世界ではどちらかと言うと楽器が発展してきて今までは口伝えとフォークギターやフィドルなどで伝えられてきた音楽がフォーマットが整い、更にエレクトリック楽器の発展に伴ってより大衆に訴えかけられる環境が出来上がってきたというもので、生まれたばかりのロックのフィールドとは大きく異なるアプローチだったわけだ。そんな中で、そのエレクトリック楽器を使ってトラッドを演奏したらどうなるんだろうという試みに重きを置いたバンドがスティーライ・スパンでもある。

 ファーストアルバムではかなりメンバー間にごたごたがあり、アルバムリリース時には既にバンドメンバーがいないという事態にまで陥っていたのでいくら人気がでてチャートにまで入る売れ行きを示してもどうにもならない状態だったようで、そのサウンドは後のモノとはいささか異なりある意味一番聴きやすいサウンドで、英国とアイルランドの混合編成によるバンド、音楽性の面白いバランスが聴ける作品。そしてやっぱり一番重くて…というかここまでくると重鎮という言葉にもなるし、多分どのロックバンドよりも重いサウンドを出しているアルバムが「Please To See The King」「Ten Man Mop」だと思う。それもドラムレスで、だ。荘厳さというのか何なのか、とにかく一枚聴いて非常に疲れを感じる音楽で重い。美しき歌姫マディ・プライヤーと共にメンバー全員によるコーラスワークが音の隙間全てに詰め込まれたようなイメージでとにかく逃げ道のないような壁が迫ってくるようなサウンドには驚かされる。それもフォークをエレキで演奏しただけで、だ。もちろん歪んだ音とかではなくそのままの音色で、だ。これはやはり元となる音楽の持つ重さ、ましてやトラッドフォークってのは大体が悲惨な物語だったり恨み辛みだったりするワケで、当然ながら軽い意味を持つようなものではないので、もろに出てくるということもあるんだろうなぁ。これから入手する人は何枚か国内訳詞付きのものを入手してみるとその残酷な歌詞の内容に気付くだろうね。スティーライ・スパンのだけでなくってどんなトラッドでも一緒だけど。

 しかしこのセカンドアルバム「Please To See The King」は三枚目「Ten Man Mop」に比べればまだ、いささか軽めに作られているのかもしれない。サードアルバムは心から重いと感じる、無駄なモノを一切取り払ったストレートに刺さってくる重さを持ったアルバムになっているからだ。…とは言うもののどちらのアルバムもどこからどう切っても英国的でロックの歴史にも大きく被さってくる面を持っているんだよなぁ。英国は本当に深い…。

 ちなみにこの三枚以降のアルバムからはどんどんと軽快なポップサウンドになっていき、その模様は初期のサウンドとは全く異なる英国を代表するバンドとなっていくので、祖国に深く根付いたバンドのスタイルはそれでも支持されているのだ。それはそれで好きなんだけどね。ビデオとか見ると面白いよ。

Fairport Convention - Liege & Lief

Unhalfbricking What We Did On Our Holidays

 英国最高の…いや、世界最高峰とも言われるサンディ・デニーの歌声を一躍有名にしたバンドが当然ながらフェアポート・コンヴェンション。…とは云え、実際にサンディ・デニーが参加したアルバムはセカンドアルバム「What We Did on Our Holidays」から「Unhalfbricking」「Liege & Lief」の三枚で、一旦脱退した後70年代中期にまた舞い戻ってきた時の作品がいくつかあるだけなので、実質彼女の名声は初期三枚で確立されたと云えるのだ。

 世間の名盤評など意識したくないのでフェアポートに関しては割とあらゆる作品を聴いているし、自分の耳で判断するようにしている…いや、アチコチでホントに多く評論されているし、そのどれもが「Liege & Lief」に集中する評論になっているので何で~?ってのもあって、サンディ・デニー脱退後の作品もよく聴く。ロック好きにとっては多分それ以降の「Full House」や「House Full : Live At The LA Troubadour」という作品の方が圧倒的にかっこいいハズ。で、その「Liege & Lief」なんだけど、このアルバムに出会った頃…即ちツェッペリンの「Battle of Evermore」での参加から辿り着いた頃には全然ロックに聞こえなくて、何かピンとこないアルバムという印象しかなく、サンディ・デニーってもなぁ…、くらいのイメージでまだまだロックに飢えていた時期だからなんだろうか、地味な印象しか残っていなかった。しかし、時を経てそれなりに色々と聴くようになるとこのアルバムがそこかしこでクローズアップされてくることを目にするようになるので、ん~、そうか?って何度も聴くんだが…、何かピンこなかったので、だからこれが絶対の名盤!っていう薦め方はできないね。だから何回か聴いてどこかで「あ~いいな~」って思える名盤なワケさ(笑)。深いよな、英国は。

 それよりもサンディ脱退後の「Full House」や「House Full : Live At The LA Troubadour」の方が圧倒的にかっこよくてそこからこのバンドを見直したのが事実。珍しいんじゃないかな、そういう人間も(笑)。でも初期作品はそれこそ何回か聴いてたんで、そりゃもちろん悪いっていう印象ではなく真剣に音を捉えて聴けなかったんだろうな。フォークって感じでロックじゃないじゃん、ってのもあって。で、特に「Live At The Troubadour」を聴いた後は衝撃的だったので収録曲を見直してそのオリジナルスタジオ作品を探して聴くんだけど、これがまた全然印象が違っていて、あぁ、サンディ・デニーが歌ってたのをデイヴ・スゥォーブリックが歌ってたんだ…、よくやるなぁ、なんて感じで聴いているとライブでの熱狂とは全く別物としてサンディの歌声と楽曲の作品の良さに改めて気付き、更にこのバンドがロックバンドだったってことに気付いたのである(笑)。

 「Liege & Lief」。エレクトリックトラッドフォークロックの捨て曲無しの名盤、コレ、やっぱホントだわ(笑)。サンディはともかくリチャード・トンプソンの超英国的ギターも最高だし、デイヴ・マタックスのドラムもフォークバンドには勿体ないくらいのもので、ボンゾ亡き後のZepに参加してもらいたかったくらい。そしてフィドルのデイヴ・スウォーブリック、この人の音色が躍動感を醸し出していて最高。「Matty Groves」におけるフェアポート流壮大な熱気ある、鬼気迫る楽器の応酬はそれだけで鳥肌ものだし、静かめな曲調ではサンディの歌声がしっとりと心に染み入る、そして何よりも好きなのがちょっと「The Lark In The Morning, Rakish Paddy, Fox-Hunter's Jig (Medley)」…というか、こういうジグサウンドって凄く好きで、デイヴの独壇場なんだけど、実に英国的で他では聴けないサウンドなんだよね。アイルランドはもちっと違うケルティックな方なのでこっちのは凄く英国的。後にこの辺が融合されてしまうので嫌気が差してアシュリー・ハッチングスが脱退してしまうんだけど、たまらんね、コレ。サンディの出番は全くないんだけど、最高のリズム。「Toss The Feathers」もあるし♪んでもって続く作品が「Tam Lin」。フェアポート史上最も難しい曲として現在に渡るまでフェアポートのイベントではこの曲を誰が見事に歌えるか、っていうのがひとつの基準にしている節もあり、今では毎年行われるイベントで多種多様の歌手を迎えてこの曲を演奏しているようだ。ま、どれも好評なんで、結局イベントの価値としては成功しているみたいで良いね。それくらいに歌うのが難しいと言われているこの曲はやはりひとつのハイライトなんだな。

 そうそう、サンディの中での永遠の名曲「Who knows where the time goes?」はサードアルバム「Unhalfbricking」に収録されているのでこいつも忘れちゃならないね。このアルバムは…、キリがないのでまた次回(笑)。

Fotheringay - Sandy Denny


 英国フォーク界には美しい声の持ち主がわんさかといて、女性ボーカルの美しさを持つ人というのも多数いるんだけど、その中でもペンタングルのジャッキー・マクシーよりも更に美しくそして心の籠もった、人の心を揺さぶる歌声でリスナーをノックアウトしてしまうのが何と云っても英国フォーク界の至宝サンディ・デニーです。普通はフェアポート・コンベンションあたりから書かれる方が多いんだろうけど、何となく流れでサンディ・デニーがフェアポート脱退後に夫のトレヴァー・ルーカスと共に結成したバンド、フォザリンゲイから書き始めてみようかな。

 フォザリンゲイは1970年にアルバム一枚しかリリースされなくて知名度的にもさほどないグループに終わったもののここで聴けるサンデイの歌声というのは正に絶頂期ではないかと思えるくらいに艶めいている。もちろん恋の要因というのが大きいのかもしれないが、それも芸の肥やし♪ 英国伝統音楽をベースにしっかりとエレクトリックも使いつつ、サンディの歌とトレヴァーの歌とが入り交じっている夫婦バンドで、単純に英国フォークの一バンドとして見ても男女の歌声のバランスも丁度良くて心地良い。トレーダー・ホーンをもう少し派手にしたような感じだろうか…、ってそっちの方がわかんないよな(笑)。そんな素敵なアルバムも紙ジャケ化されていたんですね。しかも今入手できるCDではボーナストラックとしてライブバージョンがいくつも収録されているようなのでお買い得かも。このボーナストラック聴いてみたいな…。

 その後すぐの1971年、ようやく待望のファーストソロアルバム「North Star Grassman and the Ravens 」がリリースされ、参加しているメンツもリチャード・トンプソンと元フォザリンゲイという状態なので何となくフェアポート勢の再結成みたいなもんだ。内容の方もしっかりとフェアポート時代に聴き慣れたデニーの歌い回しがそこかしこで聴くことが出来て、ちょっと音が派手になった感じはあるものの、やはり最高の時期の作品なので聴いているとハマる(笑)。そして驚くなかれ、ここでもまた「Black Waterside」を聴くことができるのだ。ジミー・ペイジのパクりっなんてのはここまでアチコチで聴けるとなると時代的には早かったもののしっかり響く人達には響くフォークの代表作だったんですね。そういえばサンディ・デニーってツェッペリンの歴史の中で唯一アルバムに参加したゲストなんだよな。アレも美しいもんなぁ…。

 そのサンディだが最後は実にあっけなく亡くなってしまったのが実に残念。1978年に亡くなったのでいわゆるラストライブとして語られる「Gold Dust: Live At The Royalty Theater」というアルバムが記念碑的にリリースされている。1977年11月27日に相変わらずの面々を従えてのライブを収録したもので涙なくして聴けないな、これも。もちろんフォザリンゲイの曲も歌われているし、何よりも「Who Knows Where the Time Goes?」が最後にしっかりと歌われているのが哀しいね。

 う~ん、やっぱりフォークには女性ボーカルが似合う、そしてこのサンディ・デニーと言う人の歌声には綺麗とか美しいというだけでなく、独特の歌い回しと味のある艶めいた歌声が良いんだろうなぁ。改めて聴くと、やっぱり紅茶を飲みながらしっとりと寒い部屋で静かに聴くのが一番似合ってる声質かな(笑)。

Pentangle - Cruel Sister


 バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンという英国フォーク界二人のギタリストが想いを込めて結成したグループがペンタングルで、その相乗効果は英国音楽に於いて見事に傷跡を残し、今でも語り継がれるバンドになっている。もちろん美しき歌声を聴かせるジャッキー・マクシーの引き込まれるような声が拍車をかけていることもわすれてはいけない。また音楽的にも変化に富んだバンドで、基本的にアコースティック楽器ばかりでの演奏なのだが、ジャズ風中近東風インド風もちろん英国伝承音楽風バロック風、そしてアレンジではモロなものからポップス調、ロック調とこれもまた多岐に渡る曲の数々を聴かせてくれるのもさすが。

 中でも名作と呼ばれるのは「Basket of Light」という作品で、非常に聴きやすく、且つ両巨頭のギターの音色の響き、ジャッキー・マクシーの歌声の美しさなどが顕著に出ていて、しかも曲調がかなりポップス寄りに仕上げられているので初心者でもオススメできるくらい華麗な作品。ジャケットは一見何かと思うんだけど大きくしてみるとなかなか面白い風景なのでこれもアナログだとよくわかっていいんだけどなぁ。ちょっと前に紙ジャケでリリースされたらしいけどCDサイズではちょっと面白くないアルバムジャケットだね。

 で、個人的にはこの翌年1970年にリリースされた「Cruel Sister」の方が好み。英国フォークのくせにアルバム収録曲が全部で5曲っつうのが良い(笑)。もちろん短いアルバムという意味ではないんだけど、サウンドが実に純然たる英国伝承音楽的なものに戻ってきており、そこには特に市場を意識した形跡があまり見られなくて素朴なトラッドの作品として聴けるからだ。ある種このバンドはジャズ・ブルースに根付いた作風が多かったのでここまで純粋にトラッドしてるのは本作だけかもしれない。ジョン・レンボーンのソロ作での同様の作風だったのできっとそういう方面にハマった時期なんだと思う。こちらも最初から美しいギターの音色とマクシーの声がマッチしていてやっぱりハマる(笑)。

 ペンタングルってギターとかだけでなくその周辺を彩る楽器がタブラだったりマンドリンっぽかったりして凄く賑やかなんだけど落ち着いて聴けるという面白さがあるね。女性ボーカルに対して聖歌のようなバリトンコーラスってのも凄く荘厳でかっこよいし、英国の伝統ってやっぱり凄い。バート・ヤンシュの「Jack Orion」がここで復活しているのも何となく馴染みやすい理由かな…。

John Renbourn - A Maid In Bedlam


 英国とは実に深い懐を持った文化的な国だと思う。バート・ヤンシュと共に時代を生き、早くから一緒に共演していたジョン・レンボーンもギターミュージックの先駆者であり、その方向性嗜好性もいつの間にか英国伝承音楽の探究者へと進むのである。

 もちろん全部の作品を聴いているわけではないのだが、よく聴いたのが「Maid in Bedlam」という1977年のジョン・レンボーン・グループになってからの作品で、最初の「Black Waterside」からバート・ヤンシュのそれとは異なるアプローチでの収録、そしてペンタングル時代からの友人となるジャッキー・マクシーがアルバム全編に渡り歌を歌っていることからとても美しく透明感溢れるサウンドに仕上がっている…、こういう曲を知っていながらも演奏して収録してしまうと言うのも英国的なヒネたセンスなのだろうか。それにしても全編に渡って透明感溢れるギターの音色とマクシーの歌声、更に低音バリトンの男性コーラスが絡み、フィドルの響きが淡々と曲を奏でていくタイトル曲の美しさは本作品の中で最も美しく英国的な音ではないだろうか。あぁ、英国の森に想いを馳せてしまうなぁ…。高貴で優雅なアルバムジャケットも収められているサウンドを表現するに相応しい、全く全てが美しい英国フォークの名作。

 もう一枚遡ってペンタングル時代に発表した名作と言われる「The Lady and the Unicorn」も重要な位置付けとされる作品で、元々好きだった音楽はペンタングルでプレイしていたためかここでのソロ作品では正に英国伝承音楽から中世音楽的なサウンドが中心になったギターミュージック作品。こちらもアルバムジャケットが美しくて素晴らしい…。後年になると多々セッション活動なども行ったらしいけど、ステファン・グロスマンとのセッションアルバムはどれもギタリスト同士の面白い会話が聴けるような作品でBGM的に聴くことが多い。ソロ作品の優雅さとは異なりイージーリスニング的に聴けるこちらのサウンドもなかなか味のあるものだ。う~ん、英国は深い。

Bert Jansch - Rosemary Lane


 1960年代、三大ギタリストと呼ばれるクラプトン、ベック、ペイジやストーンズの面々など多くの英国ギタリスト達がこぞって夢中になった音楽がアメリカ本場の黒人ブルースや英国内ではスキッフルと呼ばれる音楽だったことは既に有名で、ほとんどのギター少年はいずれかに夢中になってギターを一日中弾きまくっていたと云う。もちろんジミー・ペイジも同様だったが彼の面白いトコロはそれ以前にもちろんエルビス・プレスリーにも夢中だったようだが、その時にプレスリーだけではなくギターを弾いていたスコッティ・ムーアに大層興味を抱き、そのフレーズを散々コピーしまくったらしい。その後、皆が皆ブルースにどっぷりとハマっていく最中、一方では英国伝承音楽をギターで弾き語るバート・ヤンシュと云う孤高のギタリストに出会い、後のペイジのギタースタイルに大きな影響を及ぼすこととなるのであった…。

 バート・ヤンシュは1965年にデビューした英国フォーク伝承音楽を奏でるギタリストで当時は時代的にもボブ・ディランの対抗馬的に語られていたようだが、どちらも自国の伝承音楽に敬意を払い音楽を演奏していたという点では共通だろう。そしてその武器がフォークギターだったという点も似通っているが、やっていることには大きな隔たりがあった。バート・ヤンシュの奏でる素朴なサウンドは1966年リリースの三枚目の作品「Jack Orion」で後のペイジが偉大なるパクりとして作ることとなる「Blackwaterside」(=Zepでは「Black Mountain Side」だね)を収録していてその筋では有名だろう。このアルバムでは既にジョン・レンボーンを迎えて二作目となる作品でおりトラッドフォーク寄りの作風となりインストのギター曲が実に美しい。あぁ英国的だなぁ…。その後1967年には英国トラッドフォーク界きっての名バンドとなるペンタングルを結成し、多様なサウンドに占められたアルバムを発表していくが、この時期以降、ソロイストとして活躍する中での名作は「Rosemary Lane」 がよく挙げられる。自分も全作品を聞いているワケではないので何とも言えないんだけど、この作品での楽曲群はフォークの概念を取り払ってくれる優雅というのか崇高というのか、高貴な実に英国的気風を持ったアルバムでジャケットの美しさと共に好きな作品。

 キャリアが長いのでどれもこれもとなってしまいがちなんだけど、取り急ぎのトコロはこの「Rosemary Lane」ベスト盤くらいで良いんじゃないかなと思う。しかししっかりと日本にはマニアが存在していたらしく2004年には紙ジャケで初期の作品全てがリリースされているのだから驚く。故にまだ入手可能というところが良いね。

Led Zeppelin - Led Zeppelin II


 アメリカにとってベトナム戦争が最も激化していた1969年、正にロックの世界も激変していたが中でもベトナム遠征に行く兵士達の志気を上げる曲として、言い方を変えるとベトナム戦争に向かう兵士のファンファーレとして流される音楽のひとつにレッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」がある。ご存じ1969年にリリースされたセカンドアルバム最初に収録された、正にこれから行くぞ、と言う気にさせるリフで構成された永遠の名曲なワケだ。

 ファーストアルバムから一年足らずの間に、ツアー中のアチコチでレコーディングされた勢いのあるツェッペリンのサウンドが凝縮された素晴らしき作品、それでいて一曲一曲は丁寧に作られており今でも飽きさせない魅了あるサウンドに仕上げているところがプロフェッショナル。「Whole Lotta Love」はリフ一発で進むのかと思いきやしっかりと中間部分で各種エフェクトを使用してサイケデリック…と言うには高度すぎる空間を挟み込み、ボンゾのスネアロールから強烈なキメに導かれるギターソロのエグい音とフレーズは一瞬聴いただけでもそれとわかるくらいにインパクトのあるサウンド。もちろんギタリスト諸氏ならば全てをコピーしても物足りないと思わせる、そしてフレーズだけではなくあの音をどうやったら出せるのか、それだけでも研究材料になってしまう、そんな素晴らしいギターフレーズだ。これだけのエネルギーを叩きつけられた後、「And if I say to you tomorrow」とプラントのこれ以上ないくらい優しい歌声で始められる「強き二人の絆」。ここではジョンジーのベースラインが曲の輪郭を彩っており、そこへエモーショナルなボンゾの太鼓と先ほどの「胸いっぱいの愛を」とはまるで異なるトーンのギターが入ってきて曲を盛り上げる、スライドギターによる効果的なソロもエコーたっぷりで曲の雰囲気を更に心地良くしている。終盤では一転してハードなキメのリフがステレオ効果を利用して訴えかけてくるっていうプロデュースセンスも抜群。続いてはギタリストとしては大変興味深い「Lemon Song」で、初っ端のフレーズから少々変わっていて引き込まれる。もちろん全編を通してコードにこだわりがあって面白いんだけど、それはベースにしても見事に歌っているし、特に中間部に於いてはジョンジーの独擅場に等しいくらい歌うベースを聞かせてくれる。こういう聞かせ方ができるバンドはそうザラにはなく、やはり唯一無二のものだろう。主旋律を担うプラントも正に野獣のようなこれでもかとばかりに叫び上げ、時には優しく時には激しく…、これが古いブルースの曲なのかと思うくらいのアレンジ能力がそもそも抜群なのだが、レッド・ツェッペリンという融合体の凄さをたっぷりと楽しめる一曲。もちろんボンゾの効果的且つでかい音でのドラミングは全編に渡って強烈に印象を残す。続けて奏でられるのは美しきアコースティックギターによるツェッペリン史上最高に優しい曲とも思われる「Thank You」。ギターの音色とオルガンが綺麗にマッチして、ドラマティックな曲を見事に昇華させ、そこにプラントの優しい歌が重なり…これ以上はないというくらいのアコースティックギターソロ…これも美しく激しい瞬間を聴ける素晴らしさ。「 Happiness, no more to be said」、正にその通りに最後の最後のオルガンが美しく奏でられて終わりを迎える…フェイドアウトの後また戻ってくるという演出がこれもまた素晴らしい。

 アナログ時代はここまでがA面で、しっかりと片面が終わるという曲の並べ方もよく出来ている。そして次からはB面となるが、正直レコードの場合はどちらの面からかけても初っ端の曲がしっかりしているし、片面づつで完成された曲構成になっているのでその辺も狙いが深い。

 ギター小僧ならば必ずコピーしたことのあるお決まりのリフ「Heartbreaker」はコピーしてみるとその音遣いの単純さに気付くが、これまで誰一人としてこんなリフを考えついたヤツはいないワケで、しかもこのギターソロ…、単独でいきなり曲をぶった切ってのギターソロなんてあり得るか?そう思うくらいインパクトの強い曲のアレンジはペイジならではの才能で、このパターンをパクった後世のバンドは実に多い。そして流れるようなギターソロも…とにかくギター小僧にとってはたまらないこの曲、教科書中の教科書だろう(笑)。そしてこの曲が終わると誰もが脳裏に焼き付いているだろう「Living Loving Maid」の最初の歌詞「 With a purple umbrella and a fifty cent hat」が流れてくる…この辺の絶妙なアルバムとしての曲の繋ぎ方はもう最高。曲そのものは可愛いものだけど、実はギターの重ね方なんかも凄く凝ってるという侮れない一曲だが、これを聞いているとエアロスミスってのはこの曲の拡大解釈バンドなのかななどと思ってしまう(笑)。続いての「Ramble On」はまたしてもアコースティックギターと歌うベースの絡みとボンゾのパーカシッヴなサウンドでナマの美しさを魅せるツェッペリンの懐の深さ。今度はプラントはこの優しい曲調の中で最初から野獣のようにハードに歌い上げるギャップがこれもまた素晴らしく、一貫したジョンジーのベースラインが曲を引っ張っていてバンドのメンバー全員の才能がこれでもかとばかりに迸っている姿が聴いていて心地良い。ペイジはと言えば、細かいオブリガードフレーズや後半部においての美しい裏メロなどとかなり芸の細かい部分が聴いてとれるので気付かなかった方はお試しを…。ツェッペリンってバンドはでかい音で聴けば聴くほど色々な音が聞こえてくることが多くて何度聞いても新鮮みのある音があるのだ。極端に言えばボンゾのドラムのきしみ具合まで聞こえてくる程だったりする…。これは三枚目のアルバムでの話だけどね。そしてそのボンゾのテーマ曲「Moby Dick」だが、映画「狂熱のライブ」でその模様は印象付けられているんだけど、曲そのもののリフがかなり格好良くてそれだけで曲になるだろうっていうものをここでサラリと使ってしまうという贅沢さも才能の成せる業。ドロップチューニングで実はあのリフとソロを一緒に弾くってなかなか難しかったりするんだけどね。そしてアルバムの最後を飾るのはこれも古い曲からの流用だけど「Bring It On Home」だ。ここではプラントのハープが初っ端から流れ、その昔サニー・ボーイ・ウィリアムソンの楽屋に入り込んでハープを盗み出したブルース好きな小僧だっただけあって、味のあるハープを出し過ぎず適度に吹いているところが曲の第一部となっている。そしてペイジのあのリフが曲を引き裂き全く別の曲であるかのように展開していく、このセンスは凄いよなぁ。しかもこのギターの音…出ないよ、どういうトーンなんだよ、って思うくらいエグいっつうか強烈、何もかもが強烈な作品。

 1973年5月5日フロリダのタンパでライブを行ったが、その際には当時の単一公演としては過去最多となる56,800人を集めた歴史的記録更新したライブとなったようだ。今から遡ること33年。う~ん、凄いバンドだ。久々にこのセカンドアルバムを聴いたが、やはりこのGW中に聴いていたどのバンドよりも一線を画す素晴らしさを持っていることを改めて実感。恐るべしレッド・ツェッペリン。

Cream - Wheels of Fire


 1968年最も熱いライブをアメリカ国内で繰り広げていたのは実はアメリカのバンドではなくイギリスのバンドだったりする。その名をクリームと呼ぶ。サイケデリック・ムーヴメントすらも自分たちのレコードセールスの一因として利用してしまいその実アメリカ戦略のための策略として仕組まれた感が強く、大人になればなるほどに彼等のアメリカ侵略の上手さに舌を巻くことが多い。そしてその熱狂の様子を見事に収めてリリースされたアルバムが「クリームの素晴らしき世界」である。

 AB面は3枚目のスタジオアルバムとして収録しているけど、CD面はここで陽の目を見るものが多い1968年3月頃にフィルモアイーストで行われたライブの様子を収録。前作「カラフルクリーム」がモロにサイケデリックな様相を匂わせた作品だったことに対し、今回はジャケットにそのイメージを少し残しているものの、音楽的にはほとんど脱していてある意味独自性を打ち出している、3作目にしてようやく彼等の本質がスタジオアルバムでも打ち出されてきたのかなというように、言い方を変えるとベールを脱いできたっていう感じかな。もちろん当時はそういうスタンスではなくスタジオ盤はスタジオ盤、ライブはライブ、と割り切っていたようなのでナマでライブを体験できない人種にとってみると何故にそれほどクリームというバンドが騒がれるのかイマイチピンと来なかったんじゃないだろうか?なんて邪推してしまうんだけどね。で、そのスタジオ録音盤、初っ端の「White Room」は良いねぇ~、サイケって云えばそのままなんだけど、スタジオ盤のくせにアドリブ合戦的要素が深くてクリームらしいっつうか、良い曲だよ、これは。以降はまあ、結構聴いたんだけど…、ね。やっぱクリームはライブだよ、ってことでCD面。

 こっちもいきなりの「Crossroad」。ひぇ~ってなくらい強烈な曲とアドリブ合戦です。これぞクリームっていうのが良く表れた代表曲で、イントロのギターリフからしてもう定番、誰とセッションしたって出来るに決まってるってくらい定番でさ、ま、曲も、というか曲のアレンジも凄いセンスだけどギターソロだよな、やっぱ。曲そのものはロバジョンのものって云うんだけど、もちろんロバジョンのを聴いても全く同じ曲とは思えないので、この辺はクラプトンのアレンジなのかな、良いセンスしてるなぁ。で、そのギターソロなんだけど、ま、これも定番で、メジャースケールとマイナースケールが入り交じって綺麗にストーリーが描かれる綺麗な音で繋がるんだよな、上手いわ。知っててやってるんだと思うけど、こういうところがセンスっつうか試せるバンドだったのがクリーム。正直ジンジャー・ベイカーのドラムは凄いけど、曲に合わせて叩きまくってるって感じなのでそんなにそういう意味でのセンスってのは必要なかったし…、あ、もちろんアドリブに強いってのは重要だけどね。だからどっちかっつうとドラマーとしてのスタンスを確立した人で、それは「Toad」でも顕著に表れてるよね。で、ジャック・ブルースはもちろんベースマンとしてアドリブをあれだけできてドラムにもギターにも合わせていけるキーマンであるけど、楽曲アレンジ面でのセンスってのはクラプトンの方があったんだろうね。でもクラプトンもその辺、妙に自信なかったのか結局マウンテンのフェリックス・パッパラルディに全てを依存することになるってのも面白い。ま、そんなことでこの「Crossroad」はこれだけで究極の一曲。ちなみにフリーでも同じアレンジで演奏していて、こちらはもっと重いフリーのノリでのバージョンがあるので面白いよ。で、クリームの方は2曲目の「Spoonful」も定番でアドリブを楽しむには良いけど、曲そのものがちょっと単調でイマイチかな。クリームってそういうパターン多いけど(笑)。

 良い時代だなぁ、この頃は。こんなのがアメリカのあちこちでいくつも見れたんだから羨ましい。クリームのこの時期のライブビデオって存在してないんだろうか?解散ライブくらいしかないもんなぁ、どっかで発掘してDVDで出されても良いと思うけどな…。

The Doors - Live At The Hollywood Bowl


 60年代を代表するバンドでありながら60年代を代表するフェスティバルであるモンタレー、ウッドストック共に出演することのなかったザ・ドアーズだが、当然ながら質の高いライブを繰り広げていたことは最近の彼等のライブ盤などのリリース状況を見れば一目瞭然で、これでもかとばかりに、まるでジミヘン並みに当時のライブをオフィシャルサイト経由で流通させている。21世紀の新たな販売戦略のひとつであるネット購買が主であるが、もちろんファンはこれに享受して恐らく何でも揃えているに違いない。自分が一生懸命集めていた時のザ・ドアーズのライブ盤と言えば「Live At The Hollywood Bowl」「Absolutely Live」「Alive She Cried」くらいのもので、特に「Live At The Hollywood Bowl」のビデオには全く度肝を抜かれたものだ。これがドアーズかぁ、ジム・モリソンかぁ…って。

 時は1968年7月5日、モンタレーから一年後、ウッドストックから一年前、彼等はハリウッドボウルという巨大な会場で延々と内に籠もるインサイドなライブを繰り広げていたワケだ。時代はどちらかと言うと開放的な風潮にある中で、しかも西海岸のバンドとしては相当異色な存在だったことは全く想像に難くないが、それにしてもジム・モリソンのカリスマ性は今見ても惹かれてしまう面があり、知性を放っている。そんな存在や伝説ばかりに感化されていた時に昔懐かし「ベストヒットUSA」でこの「Live At The Hollywood Bowl」から一曲、って言って何かが流れたんだよね。それがもの凄い衝撃的でビデオを探し回って見た。何度も見た。辛かった(笑)。決してポップでキャッチーな、ベスト盤で聴けるような曲などをほとんどプレイすることなくバンド本来の持つブルースに根ざした演奏とアドリブが延々と続けられる彼等の楽曲ばかりが収録されており、一般的に簡単にドアーズ好きだよ、って言うファンを一気に遠のかせてしまうライブなのだ。今のバンドでは考えられないくらいにシニカルで媚びないロックを実践していたバンドでもある。

 冒頭から「When The Music Is Over」だ。冒頭から10分以上のアドリブをかます曲で始まるのだ。ありか、それ?しかもジムの第一声はいきなり叫び声だ。あの、叫び声から始まるのだ。これは惹き付けられるか離れるかしかないよ、ホント。しかも当時の機材だから16トラックの音と4カメしかないわけでほとんどがジムの左側面からのショット。続けて何曲かブルース定番の彼等の曲が延々と歌われ、そのカリスマ性を見せつけてくれるしバンドのアドリブなどもさすがだが、淡々と繰り広げられていくその様相はハマらないと結構キツイだろうね。しかし、ジムの真骨頂の物語のひとつでもあるオリジナルアルバムには未収録だがライブの定番曲で大変人気の高い「Celebration Of The Lizard」からの展開には目を覚ませられる。もちろん原曲らしきものは3枚目のアルバム「Waiting For The Sun」に「Not Touch To The Earth」として収録されているんだけど、やはりライブの「Celebration Of The Lizard」はやはり別格だ。何かに乗り移られたような仕草でパフォーマンスを演じる…、いやパフォーマンスではないのかもしれない、彼は多分本当にその気になって、すなわち蜥蜴になっているのかもしれない、そう思わせるほどの様相で曲を昇華させている。凄い。やはりタダモンじゃない、うん。目を閉じて一人語り続ける伝道師、他の何者も寄せ付けないカリスマ、それをたっぷりと楽しめる一幕でもある。そしてハッとするような「Spanish Caravan」の美しき旋律に彩られて現実の世界に戻りつつあるが、「Wake Up!」から語られるジムの朗読、そして唐突に始められる「Light My Fire」の光が差し込むような展開はあまりにも美しい。演奏も激しく熱を持ってプレイされ、更にライブ時にできあがりつつある詩がどんどんと繰り広げられ恐ろしいまでに美しき邪悪な詩として披露され、強烈なクライマックスを迎える…。そして「The Unknown Soldier」というこれまた長い曲が続き、銃殺隊を模倣したシーンはアメリカのバンドならではの展開だろうか、この一幕も衝撃的なシーンであり、それに併せた曲展開も見事なもの。他の誰にもできない、決して真似の出来ないライブは一発で印象に残る代物だ。最後はもちろん「The End」…。美しい終わりの詩、強烈なアドリブによる詩が狂気を垣間見る、そんな内容で間奏時では歌詞に合わせて虫を拾う仕草をしてみたり、本当にアーティスティックな表現者として存在しているジム・モリソン。全編を通してほとんど動かない彼の存在感は圧倒的。そうしてこの映像は終わりを迎えることとなるのだが、正直言って見るたびに精神を消耗し、中途半端に取り組もうものなら即座に見放される、そんな印象を持たせる重いライブ映像ではある。

 昔はレコードでもリリースされていたり初期はCDもリリースされていたんだけど、最近は出てないのかな。それにしてもいっぱいライブ盤が出ているなぁ。「Absolutely Live」もジャケットが変わってるし、「In Concert」ってのも出ているし、ボックスセットでは各種公演が入っているしDVDもいくつもリリースされているし、やはり世代を超えた人気があるんだろうね。一回ハマってみると抜けられないダークな世界がここにある。

The Who - Live At The Monterey Pop Festival


 ジミヘンと出番をモメて見事に恥さらしにならずに済んだ…と言ったら語弊を招くが、見事に希望通りの順番に出演することの出来たThe Who。モンタレーでのライブの模様は実際どうだったのだろうかと長年に渡り疑問ではあったが、DVD「Monterey Pop Festival」の3枚組がリリースされてようやくそのボーナスディスクであるディスク3に当日The Whoが演奏した3曲が新たに追加され、もともと発表されていた「My Generation」のライブと併せて4曲の映像が陽の目を見たこととなる。残りは「Pictures of Lily」と「Happy Jack」だけだが、まあこれ以上はリリースされないだろうからなぁ。音だけなら恒例の4CDで全て聴けるのだが…。

 で、そのライブを見てみると…、何と云ってもキース!キース・ムーンのドラミングが明らかにロジャーのボーカルを追い越しているし、ベースのジョン・エントウィッスルについては全くと言ってよいほどカメラにフォーカスされていない。音はブイブイ云っているのだが、ホントにカメラには映らないというあからさまなまでの映像(笑)。それよりもやっぱりキース。「Subsusitute」からスティックをバンバンと自分で叩いては飛ばし、信じられないほどの手さばきで隙さえあればどこかを叩いているという有様。アメリカ受けを狙っての(?)「Summertime Blues」もまだまだ可愛いバージョンで演奏されるんだけど、こいつもやっぱりキース。ピートも結構頑張ってるが美味しいところは全てキースが持っていってしまっているようだ。ミニロックオペラと題された「A Quick One While He's Away」では演奏ボロボロで、キメも何も合ってなくってピートが一人で引っ張っているんだが、そういうやり方ができるのもThe Whoというバンドの特性だろう、そして勢いだけで最後まで持っていくんだけどこういうのって凄くイギリス的だよなぁ。アメリカ受けするものばかりやることがない(笑)。絶対どこかにポリシーを持っているっていう面白さ。そして最後は「My Generation」。もうキースキースキース!!凄い、凄すぎる!ピートのギター破壊も圧倒的なパフォーマンスで観客はおろか、スタッフがあわてている様子が面白い。イソイソと壊されてたまるかとばかりに機材を戻すローディの姿がいっぱい映っていて、よくあれでピートに殴られなかったものだ(笑)。ここはピートの破壊力が勝っているな。しかし、最後の最後までジョンのベースは鳴り続け、そしてキース!最後にどっか~んとキック!。そういえば「Summertime Blues」か何かでスネアドラムの皮が破れたのか、スネアセットごと放り投げていたな…。もちろん曲中なんだけど、平気でそれが出来るキースはやはり凄い。

 ジミのセットが40分もあったにもかかわらずThe Whoのセットは30分弱。ま、それでも対面を守るためとバンドのインパクトからしたらこれが正解だろうね。ジミもその分頑張って歴史を作ったし、The Whoはこれで更に躍進することになったし。しかし凄いライブばかりだったんだな、このイベントは。改めて時代の凄さを感じますね。

Jimi Hendrix - Jimi Plays Monterey


 モンタレーの英雄と言えばこの人、ジミ・ヘンドリックス。本ブログ何回目の登場だろうか?今回はタイトル通り「Jimi Plays Monterey」というアルバムに焦点を当ててみよう。

 ご存じ1967年6月18日のフェスティバルに登場したジミだが、出番のことでThe Whoのピートとモメたことは周知の事実、ピートによればジミの後なんてとてもじゃないが太刀打ちできないから先にやらせろという素晴らしく男気のある発言だったらしい(笑)。ジミの方も楽器を破壊しまくるThe Whoの後ってのも分が悪いってことだったようだ。で、結果的にはコインで勝負してThe Whoが先にやることになったのだが、The Whoとジミは同じポリドールに所属するアーティストということでよく対バンすることになる。で、ジミはThe Whoに負けないステージをやるってことで、相当気合いを入れていたようだが、ビデオ「Jimi Plays Monterey」を見ればわかるように本気も本気、相当気合いの入った演奏が見れる。冒頭ブライアン・ジョーンズによって導かれるジミが唐突に演奏し始めるのが「Killing Floor」で、そのイントロからしてもうバリバリのロック、これ以上はないくらいのロックが聴けるし、アメリカの聴衆は間違いなくこいつ一発で驚いたことだろう。単純なスリーコードにリフを被せたものだが、ここまで疾走感と迫力を見せつけられるバンドはそうそういない。ジミのギターもさることながら、ミッチ・ミッチェルの小技の多いドラミングがそれを手伝っていることも重要。「Foxy Lady」にしてもイントロのアクションから最高にかっこよくて、しかも曲の作りがシンプルでキメを作れるため凄くインパクトが強いしプレイそのものも素晴らしいものだ。

 ディランの名曲「Like A Rolling Stone」にしてもジミ的解釈の上で原曲に忠実にプレイしているが、やっぱり魂の入り方がディランのそれとは大きく異なる。演奏に参加したマイク・ブルームフィールドは目の前でコレを聴いてどう思ったことだろう?そしてカバー曲が続くが「Rock Me Baby」…もはやカバー曲とは思えないほどジミ流ロックに仕上がっていてお得意のスリーコードにブレイクを挟み、自由奔放にギターの音が空を駆けめぐるようなプレイを施し、且つリズム隊は手数の多いフレーズでしっかりと地を固めてプレイしているというアンサンブルの巧さが光る。ジミはと言えばほとんど「Rock Me Baby Rock Me All Night Long」以外の歌詞を歌わないで進めているってのもロックらしい。そして静かな曲として始められた「Hey Joe」だが、こんな曲でも沸々とジミの魂が伝わってくるし、映像では表情が完全に曲と一体化していてもう最高にかっこよい。うん。背中でギター弾いたりするアクションも観客の度肝を抜いたに違いない。「Can You See Me」は映像がなくって音だけになるんだけど、激しくプレイしまくっていることは明かできっとそのまま熱気ムンムンでやっているんだろうなぁという姿が目に浮かぶ。そして意外と知られていないんだけど優れた名曲として名高いハズの「The Wind Cries Mary」…凄く好きな曲なんだよね、これ。ギターの半音進行のフレージングが気持ち良くてさ。曲進行的には「Like A Rolling Stone」何となく似ているってのは疑いすぎ?ジミってこういう曲でのギターソロの最初の一音の使い方がすごくて、インパクト絶大なんだよ。曲中のオブリギターも優しくて、激しいだけではないジミのプレイがよくわかる愛に溢れた演奏。

 そして終盤、「Purple Haze」で更に盛り上げてステージを展開し、最後には挑発的なフィードバックから奏でられる「Wild Thing」が始まるが、このワイルドなノリはアメリカを侵攻するに相応しい決定曲で、腕全体でギターを愛撫する姿から歯でギターを弾くシーン、ストラトを振り回すアクション、左手を挙げたまま右手だけで素ローを弾いてしまうシーンとどれを取ってもジミの破壊的側面が顕著に表れた素晴らしいステージングとなった。マーシャルアンプとギターを間に入れて交錯するシーンから最後の最後にはThe Whoに負けてたまるかとばかりにストラトにジッポのオイルをかけて燃やしてしまうシーンは永久に語り継がれるべき場面で、その恍惚とした姿はジミを神と呼ぶに相応しい一幕だろう。その後派手にノイズの嵐の中でギターを破壊してステージを去る場面まで、開いた口がふさがらない状態で映像を見てしまう。ナマで見ていた人はどれだけ衝撃的だったことだろう…、映像に映る観客の一部は正に信じられないと言った表情で呆然としているが、素直にそれ以外の反応は示せないだろう。素晴らしい。これぞ、ロックだ。

 しかしこれだけの貴重な映像にもかかわらず今現在では廃盤状態で、CDは「Live at the Monterey Pop」として入手できるようだが、映像は未だにDVD化されていない。少なくともビデオ時代の映像のDVD化だけでもしてもらいたいものだ。

Otis Redding - Live In Europe


 モンタレーから半年後、飛行機事故で26年という短い一生を終えてしまう不運なソウルマン、オーティス・レディング。ロックイベントとしてのモンタレーに出演し、ストーンズの「Satisfaction」なんかもカバーすることでその力量を見せつけたことからロックファンへのアピールは大いに反響を呼び、普段R&Bなど聴かない連中までをターゲットにした偉大なるソウルマン。墜落死した飛行機から死体を引き上げる写真が残っていることでその無惨な姿が目に焼き付いているのだが、モンタレーでの映像を見てわかるように非常に大柄な人で、ノドを真っ赤に膨れ上がらせながら歌うその姿はロックそのものとも云えよう。

 活動期間が1964年から1967年と短かった割には7枚ものオリジナルアルバムをリリースしていて、どれもこれも聴け、と言われるのが関の山だったんだけど、やっぱりスタンダードに「Live In Europe」(奇しくも生前最後のオリジナルアルバム…っつうかライブ盤だからなぁ…)が一番聴きやすい。もちろんロック好きにとって、だが。冒頭の「Respect」からして勢いアリアリのホーンセクションともうこれ以上はないってくらいのオーティスの歌、「Shake」あたりでは例によって「Gotta gotta gota it got it…」みたいなのがわんさか出てくるなど、実にノリノリのライブアルバムで、更にこういう人達の巧さを実感するのはやはりソウルバラード。名曲と言われる「I've Been Loving You」については正直言って何かを語る必要があるとは思えないくらいエモーショナルで魂を感じる曲。ジャニスが男だったらこういうの歌えたかもなぁ…。まぁ、「Satisfaction」にしたって「Day Tripper」にしたって客寄せ的な選曲なんだろうけど、見事に原曲を超えたソウルフルな歌声でロックもソウルも関係ないんだ、みたいな歌はやっぱり凄い。

 一方オリジナルアルバムではやっぱり「Dictionary Of Soul 」かな。「Otis Blue」も良いなぁ(笑)。確かにどのアルバムも聴かないといけない、みたいな言われ方するのは納得(笑)。「Otis Blue」はさ、ジャケットも素晴らしいので個人的にはこちらが好みではあるかな。うん。

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物心付いた時からロックが好きでいつぞや何でも聴き漁るようになり、多趣味な生活を過ごしているロックマニア。


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