King Crimson - Live At The Marquee, London, July 6th, 1969

King Crimson - Live At The Marquee, London, July 6th, 1969
Live At The Marquee, London, July 6th, 1969

 アングラ音源として出て来るものは大きくライブ録音ものとアウトテイク系のものと2種類に分けられるだろう。ライブ録音ものはラジオやテレビでの放送音源が元になってればしっかりとした音だけど会場録音モノなんかだと千差万別。大抵オフィシャルでリリースしてくるのはまともな音質のものが多いけど、中にはぶっ飛んだソースを堂々と出してくる時もあるんだから恐ろしい。アウトテイクやデモ音源ってのは基本的に卓録モノになるんだけど、この手のは相当まともなモノじゃなきゃオフィシャルでは出てこない。何せアーティスト側がそんな出来損ない音源なんて世に出したくないよ、って声が大きいらしい。創作過程なんて知られたくないってのは分かるわな。もっとも完璧なデモテープを作っている奇特な方々の場合はオフィシャルで堂々と出してくるけどね。そういうのも含めて全てその人達がどういう過程で、とかライブをやってたんだ、なんてのを知りたいという欲がこの市場を形成しているワケだ。いわゆるニッチな世界、ですな。

 King Crimsonのロバート・フリップ卿はその手のソースをとにかく目の敵にしている人で知られていたが、まさかこういう形で報復攻撃に打って出るとは思わなかった。おかげでリスナーは実に迷うこと無く、また思う存分にキング・クリムゾンという化物のライブ音源を聞きまくる事が出来る。そう、キング・クリムゾン・コレクターズ・クラブなどを筆頭にとにかく残されている音源を一応聴きやすくしてオフィシャルで全てリリースしている。それが例えファンの誰かが奮発した機材で録音したソースであろうともマスターに近いソースを入手していじりまくってリリースしてくるのだ。正に無法なアングラ市場に対してオフィシャルにやり返しているという逆手に取った商売。おかげでアングラ市場からクリムゾン絡みのソースはほぼ消えた。これがフリップ卿の望みだったんだから見事に大成したと言えるだろう。

 そのコレクターズクラブの最初のソースとして名高いのが「Live At The Marquee, London, July 6th, 1969」。もっともクリムゾンの場合はそれ以前に「Earthbound」っつうとんでもないライブアルバムがあるんで、この手の音源については大いにあり、なんだろう。「Live At The Marquee, London, July 6th, 1969」の方は前日がストーンズのハイドパーク公演の前座で出演していて、その翌日のマーキーでのライブソースなのだが、とにかくデビューしたばかりのクリムゾンの恐るべき演奏と破壊力、だけでもなくしっかりとソフトに歌い上げるメロウなサウンドもありのライブ、それでもこのバンドがとんでもないポテンシャルを誇る大英帝国を代表するバンドになるだろうという予感があるというのは凄い。このぶっ飛びライブソースを聴いて決して幻滅することもなく、今後の期待に胸を膨らましながら聴けるのだから頼もしい。実際ここから74年頃までのライブ音源はひたすら聞いてたしなぁ…、今やオフィシャルでボックスにもなってほぼ全公演聴けちゃうでしょ?それでもこの最初期の1969年のライブは貴重ですよ。しかもマーキーだから近さも実感できる狭さだし、その分バンドの一体感も凄い。

COLLECTORS’ KING CRIMSON [BOX1]-1969

Pink Floyd - 1969 Dramatis/ation : The Man And The Journey

Pink Floyd - 1969 Dramatis/ation : The Man And The Journey
1969 Dramatis/ation

 ライブを実験の場、と考えるか完成した楽曲の発表の場、と考えるかでそのバンドのライブに対する取り組みは大きく異る。前者は自分たちのためにライブを行い数々のチャレンジを行うことで見えてくるべきものを見据えていくというものだから観客側は恐らくその場では圧倒されるだけで、到底理解するなんてことはあまり多くなかったんだろうと思われる。後者は当然ながら皆で楽しもう的にリスナーが知っている曲を披露するだけなので、観客側もさほど混乱を強いられる事はないだろう。ただ、それでもアレンジが著しく変化しているなんていうパターンもあるが、それは恐らく実験精神がある状況での既存の曲のプレイとなるのだ。さて、常に実験的な野心を持ちながらライブ活動をひたすら続けていたバンドといえばフロイドかクリムゾンか、みたいなもんだが、両者ともその実験精神から産まれたものは大きい。

 Pink Floydの「The Man & The Journey」はライブという実験の場でしか組曲として構成されておらず、オフィシャル盤をどんだけひたすらに集めてもその実態は掴めなかっただろう。アングラ音源で始めてその実態が判明するというものだ。以前はそれこそがフロイドマニアの楽しみでもあったのだが、今じゃ驚くことにその未完成組曲がオフィシャルでリリースされている。「1969 Dramatis/ation」のDisc 2にアムステルダムのライブの「The Man And The Journey」ライブそのものが丸ごと収録されているおかげでこれまでアングラ音源でしか出回っていなかったものが浮上した。もっとも、それでも相当のピンク・フロイド好きな人しかこんなセットのバラ売りアイテムなんて購入しないような気がするんで、やっぱり一般的じゃないんだろうな。ただ、聴くきっかけにはなるだろうし、時代的には1969年のライブってことで明らかにまだまだサイケデリックな実験音楽をやっている時代のフロイドのサウンドなんだから後の完成されたコンセプトアルバムほどではなく、「Echoes」的な解釈での組曲だろうことは想像に難くなかろう、事実概ねホワ〜ンとしたサイケサウンドのようなものだから。

 それでもほとんどの楽曲は「More」や「Ummagumma」、「Relics」あたりにきちんと収録されたりしているので単曲としては知られているだろう。既存曲もこの組曲に入れ込んだってこともあって大成しなかったのだろうか。それよりも多分、コンセプトは面白いんだけどどこをどう聞いたら良いのか、ポップさが見当たらなかった要素もあるかもしれない。またはこの実験をしている時に「More」への楽曲提供の時期が迫りやむなくここからリリースしていった、とか…。諸説あるんだろうけど、こうしてまとめて現時点で聴けるようになったのは面白い。そしてこのライブを聴いていると確かにふたつの大きな物語が展開されている様相も実感できることだろう。アングラソースがなけりゃこんなのも知らないまま、もしくは聴ける音源なしに推測だけしていたものだろうが、アングラ音源があったおかげで水面下でのリスナーの下支えが大きくなりオフィシャル化していった、と思いたい。もっとも突然こんなのが出てきても大いにありがたがるものではあるが。バンドによってはそういう作品も数多く存在するし、音源がない、ってのもあるんだからまだラッキーな話だ。


King Crimson - Sailor's Tale (1970-72)

King Crimson - Sailor's Tale (1970-72)
SAILORS' TALES (1970-1972) [21CD+4BLU-RAY+2DVD BOXSET]

 King Crimson信者は一体どこまでロバート・フリップ卿のリリースラッシュに着いていってるんだろうか?自分もクリムゾンは結構好きでライブ音源なんかも相当集めて聴いてたりしていたし、企画ボックスのライブシリーズなんてのも追いかけたりしてて、楽しんでたモノだが、オフィシャルアルバムのリマスターの何回ものリリースやら怒涛のライブリリースやら挙句今では全てのソースの箱セットでのリリースに音源のBD化とやたら高音質やら何やらとまぜこぜにしたアイテムのリリース。そりゃもちろん、そのどれもに意味があって貴重さやら音質アップでマニアなら満足する内容になっているのだろうけど、もう着いてけないな〜ってのが正直なトコロ。そりゃもうそういう人達からはしっかりと搾取済みなんだから、フリップ卿ももういいよ、って言ってくれるのだろうけど、それでもあんだけ怒涛のリリースしているってのは、それでもまだまだあるよ、死ぬまでには全部リリースして誰にも商売させないからな、くらいの意気込みがあるんだろう。

 今回もポセイドン〜アイランドまでの集大成として「Sailor's Tale (1970-72)」って27枚組のハコがリリースされたばかりだ。内容はアチコチで目にしてくれれば良いんだが、目玉は1971年のツアーでのライブ音源に尽きる、と自分的には思う。いや、買ってないからアレだけど、そもそも昔から集めてた音源が大半なのでそれのリマスターっても所詮はオーディエンス音源が多数だろうし、音が良いのもそんなに多くなかったし、と思い出してるんだが、その中の幾つかを聴きながら、やっぱりこの頃のライブは無茶苦茶だ…と苦笑いしてるトコ。肉体派連中に囲まれた知性派のフリップ卿、周囲の迫力ある演奏と合っているかと言えば合ってるが、大きな方向としてはフリップ卿も不要?みたいなシーンも数多く出てきてしまうというユニークな時期。これはこれで面白いなぁと思うんですがね。有名なのはアルバム「」でのライブになるのだろうけど、あの雰囲気そのままのライブが多いです、即ち常にあんなブチ切れ感あるってのもこれまた凄いが。

 スタジオ盤はどんだけ高音質にしても元々がこの時期のモノなんだからどうなんだろ?ってのがずっとある。分離が良くなるとか色々あるんだけど、所詮は…ってさ。多分聞いたらぶっ飛ぶくらいの音質アップなのは分かってるんだけどさ、それでもやっぱり新しいのを発見していく時間の方を優先したいトコ。どっかで聞いたら分からんけど(笑)。ポセイドンのピアノとか凄いだろうな…。それにしてもこんだけのハコもの、どうすんだ?何度も聞かないの分かってるだろうし、困りモノだけどそれこそマニアが欲しがるもの、でもあるワケで…。

David Gilmour - Live At Pompeii

David Gilmour - Live At Pompeii
LIVE AT POMPEII [2CD]

 バンドが分裂するとこういう事にもなるのだなぁ、と言うのは他のバンドでも知ってたけど、ピンク・フロイドの両名に於ける分裂劇とその後の歩みは他のバンドのそれとは結構違う気がする。結果的に今となってはロジャー・ウォーターズの演じる世界観とデイヴ・ギルモアが演じている世界観が中味は異なれども出てくる音には大差ない状態になっている、即ち音楽的な面ではまったく分裂した意味がなかった、という事だ。もちろんそれは両名ともファンとも知っている事だろうし、ロジャー派だ、ギルモア派だ、などと睨み合っていた時期もあったが、今では時間さえ合えばライブへのゲスト出演すらするという間柄にもなっているようだ。何とも微笑ましい話だけど、もう再結成ってのはあり得ないからそのままの形で進むのだろう。それにしても同じような雰囲気を醸し出すライブを二人が別々の所でやってるってのが冒頭の文になるのだな。

 David Gilmour の2016年のポンペイでのライブの模様を収録した一大スペクトラムライブショウ作品「Live At Pompeii」がリリースされた。もちろんピンク・フロイド時代からの思い入れもあるし、時代を経ての文明の発展もある。そしてレーザー光線も多用した最先端のステージ作りとコンセプト、それにギルモアが築き上げてきた音世界によるスペクトラム、もちろんピンク・フロイド時代の曲が大きくショウを盛り上げているし、雰囲気を生み出しているのは当然だが、ここまで大きく成功させたのは素晴らしい。作品として見ていても長老となり果てているギルモアが気持ち良さそうに伸び伸びと歌い遊びギターを弾き、また他にも幾つかの楽器を遊んでショウを楽しんでいる。もちろんコロシアムの中はピンク・フロイド時代とは異なり、超満員の観客で埋まっている。素晴らしい。

 ピンク・フロイド時代の曲はピンク・フロイド以上に丹念に作り上げられているし、自身の曲にしてもそういう雰囲気に似合う形で演奏されているかのように見える。いや、もうそのままなんだろう、ギルモアの世界はこういう世界なんだという感じ。昔から聴いていると、この世界は虚構、ショウアップされている世界とも思えるけど、もうここにしか行かないんだろうな。対するロジャーは自身をそのまま持っていくとこういう世界観になる。中味はまるで違うけど、手法としてはギルモアと同じようなものになっちゃう。もちろんロジャーは俺のものだ、って言うだろうけど(笑)。どっちが演奏しても名曲郡は名曲だし、演奏だってプロ中のプロが演奏しているんだから遜色ないしさ。だからこの二人が一緒にやればもっと凄いのになぁ、なんてマジマジと思うんだが、そうはならない。ン十年経っても同じ世界観でのショウを続けているという…、変えられないか。もうね、とやかくも何もないんだけど、単純に凄い世界だなぁ…と浸れる。そういう作品。






John Wetton - Caught in the Crossfire

John Wetton - Caught in the Crossfire (1980)
コート・イン・ザ・クロスファイアー(紙ジャケット仕様)

 ロックの世界でもいつしか渡り鳥と呼ばれるくらいに様々なバンドに参加しては脱退し、それでいてキャリアはきちんと形成していった人々も多い。コージー・パウエルやドン・エイリー、ケン・ヘンズレーやジョン・ウェットンなんかもその類に入るのだろう。ブラッフォードやサイモン・フィリップスなんかもそんなトコロかな。こういう方々がソロ活動した時ってどういうのがやりたかったんだろう?って素朴に疑問を抱くのだが、大抵は大きく、かなり大きく期待を外される事が多い…。

 John Wettonの1980年リリースのソロ名義でのアルバム「Caught in the Crossfire」。何とメンツはフリー/バドカンのサイモン・カーク、ジェスロ・タルのマーティン・バレ、AWBのサックスメン、ジャケットはヒプノシスという揃いも揃ったメンツでの録音。誰がどう聴いても期待させるのだが、出てきた音は…、そう、Asiaで聴かれるあの音のプロトタイプとも言うべきサウンドで、全くの肩透かしを食らうのだ。Asiaがあんだけ成功しているからそこから入った輩は気にいる作品なのは間違いなかろう。しかしなんでそういう音が出て来るのかは全くわからん。こういうのなら簡単に作れるししかも売れたら好きな音楽を更に探求できるんだからこういう路線もハイレベルではあるし、やってみるか、なんてトコロだろうか?ソロ名義でやっちゃうんだからなぁ…。

 昔プログレにハマってた時にソロアルバムあたりまで手を出しててさ、しかもこの直前はU.K.だったんだからバリバリにベース弾いてたワケよ。んでソロアルバムのメンツ見てサイモン・カークでしょ?こりゃもしかしたらマーティン・バレもいるからブルースベースなのもあったりするんじゃね?なんて思ったりもしたけどね。ただ、全員カネは無かった人達だろうから、この路線へのチャレンジも見ておきたかったのかもしれない。売れはしなかったとは思うけど、Asiaで飛躍しちゃったからこの路線も悪くなかったのは確かだろう。それにしても…、だ。



King Crimson - Heroes (Tribute to David Bowie)

King Crimson - Heroes (Tribute to David Bowie)
ヒーローズ~トリビュート・トゥ・デヴィッド・ボウイ

 王道ロックを聴き漁るには実に贅沢な環境が揃っている現代、それに加えて現役で進行中のバンドも幾つかあるのだからジジイになったとは言えどもそれなりの作品や面白い試みってのもリリースされてくるし、もうライブアルバムとか怒涛のようにリリースするのも当たり前になってきて、一時期のアングラものなどでライブを一生懸命探して聴くなんてのも減ってきただろう。こんだけオフィシャルが色々出してくれればそりゃリスナーも満足だしね。そんな試みを先陣を切って進めてきたのがキング・クリムゾン、今回は意外と言えば意外、あると言えばある音源をリリースしてきた。

 King Crimson「Heroes (Tribute to David Bowie)」。もちろんライブでの演奏による収録だけどね、かのロバート・フリップ卿がボウイの「ヒーローズ」にイーノと共に参加していたのは有名な話だろうけど、クリムゾンのイメージからボウイってのはかなり異なった方向にあったからどんなんだろ?ってな興味は引いたと思う。その答えがあの「ヒーローズ」で、なるほど、と唸らされるものではあった。見事に三者三様のセンスが合体したヨーロッパ的な曲に仕上がり、その後名曲として演奏されてきた。ボウイ亡き後、この遺産をまさかロバート・フリップ卿がKing Crimsonというバンドで引き継ぐとは思わなかったが、それがここで実現。言われてみれば今のメンバーにはいないけどエイドリアン・ブリューだってボウイと絡んでたし、割と接点のあるバンドだったとも言えるか。まぁ、往年のリスナーにとってのクリムゾンってのはジョン・ウェットンとかブラッフォードだからちょいと異なるが…。

 そのクリムゾン版「Heroes (Tribute to David Bowie)」、恐ろしいほどに気合の入りまくったロバート・フリップ卿のレスポールでのロングトーンによるあの効果的なサウンドが強烈で、終盤になればなるほどにこの気迫が狂気とも思えるほどに暴走し、真髄を刺してくる。なんだこの気迫は。多分本人普通に弾いてるんだろうけど、曲として出てきた時には素晴らしい効果として発揮している。バンドの演奏の完璧さも確かだから故、そこにはボウイの「ヒーローズ」のカバーという概念よりは明らかにKing Crimsonの「Heroes」としてプレイされている姿が聴ける。恐るべし。このミニアルバムには他にも今のクリムゾンのライブ曲が入ってるのでもちろん聴くのだが、70年代のあの狂気の曲がここまで洗練された知的な音楽として演奏されていることに少々驚きを覚えるものの、なるほど知性あるメンバーで的確にプレイされており、十分に楽しめた。なかなかユニークなバンドの進化形態と言えるだろう。久々に接した近代クリムゾンの姿だが、実に高尚な世界へ入っているバンドになっているし、ロックというものもきちんと体現しているし、怖いものなしだろう。素晴らしい作品に感謝。







Roger Waters - Is This The Life We Really Want?

Roger Waters - Is This The Life We Really Want? (2017)
イズ・ディス・ザ・ライフ・ウィ・リアリー・ウォント?

 ピンク・フロイドがビートルズ並みの評価を得るとか万人に聴かれるバンドになるなんて想像もしなかった。当の本人達だってそうだろう。アルバムごとにそりゃカラーは違うけど決してポップス的に聴ける音楽じゃないし、実験精神旺盛なプログレッシブな代表バンドでもあるし、それがどうして世界各国で万人に聴かれるバンドになったのか。しかも年を追うごとにその評価は高まる一方で、世界レベルでの人気の高さは日本では考えられないほどに高い、だろう。クイーンとかZeppelinってのは分かるんだけどピンク・フロイドがそこに入るのはホント不思議。「Echoes」とかみんな聴いてられるんだ?とかね。

 Pink Floydの頭脳と言われるようになったのか…、Roger Watersの2017年期待の新作「Is This The Life We Really Want?」。正に「死滅遊戯」から25年、途中「サ・イラ」もあったし、「トゥ・キル・ザ・チャイルド」もあったけど、フルサイズでのオリジナルアルバムという意味では25年ぶりになるようだ。それでもその間どデカいツアーは何度も行っていて、ライブツアー収入No.1の座に上り詰めるほどに大きなツアーとセットリストを組み上げて活動している。CDが売れない時代にこれほどの大型のツアーでガツンと聴衆の度肝を抜くというショウは他のアーティストには真似出来ないレベルでもあり、それこそロジャー・ウォーターズの世界=すなわちピンク・フロイドの進化系、2017年の世界までを広げている。アナログ時代からデジタルになり、器材も技術も最先端のものを活用しての「The Wall」の再現などいつでも新鮮なショウを楽しめるんだから凄い。ノスタルジックにライブやってますってだけじゃそうは出来ないワケだから、そこにもこだわりがあり、その途中で幾つかの新曲が登場することもあり、それらも含めて本作「Is This The Life We Really Want?」には収録されている。しかもすんなりとアルバムのテーマに沿ってあるべき場所に落ち着いてしっかりとその存在感を出して鎮座しているものだ。

 アルバムに針を落として…って針じゃないけど…、アルバムを聴き始めてみれば分かるように、これはもういつものロジャー・ウォーターズの作風、世界そのままで音楽的な面からは大きな進化変化、実験意欲などはさほど見られることなく、淡々と歌詞とその重さの雰囲気を伝えていく作風そのままだ。とは言ってもロジャー・ウォーターズ以外でこういう作風を聴くことはあまりないので、独自路線ではあろう。ファンからしたらいつも通り安定のロジャー・ウォーターズ節で、最先端の何とか、みたいなのを取り入れた音楽という形にはなっていないので安心だ。効果音にアコースティック、オーケストラ、ドラマティックなアルバムの流れ、どギツイ風刺を込めた歌詞、相変わらずの戦争批判と権力批判、現実の世界への目の向け方と逆側からのものの見方による歌詞、以前にも増して文章から単語の羅列へと変化してきている歌詞の作り、それでいてきっちりと思いを伝えていく鋭い単語の選択。はっきり書けば、決して聴きやすい音楽ではないしアルバムでもない。ただひたすら重い雰囲気が歌詞と共に伝わってくるアルバムだ。「The Wall」の途中あたりと同じ雰囲気を持っていて、そこにはヒットソング的なチューンが存在していないため、流れとして重さが増してくる。

 いいね。好きです。これぞロジャー・ウォーターズの作品。全く裏切られることなく深みにハマれるアルバム。プログレッシブでもポップでもなく、ロックの重鎮が生み出した正にロック的なアルバム。迫りくる狂気と自身の不安さを同居させてリスナーに訴える、世間との距離感、ひとつの共同体、昔と違っってロックスターが何かを言ったトコロで世界が影響されることなないだろうけど、それでもロックというものが持っているアジテーションをして訴えたかった内容が詰め込まれている。間違いなく一人でじっくりと頭を項垂れて聴いていくべきアルバムです(笑)。





King Crimson - Discipline

King Crimson - Discipline (1981)
Discipline: 30th Anniversary Edition

 食わず嫌い、なバンドやアルバムってのが昔から多いと自分で認識してる。だって、ロックなんて見た目でカッコ良い!って思えるかどうかってのもひとつのロックらしさだから、見てくれがかっこ悪かったらありゃダメだ、ってなって聴かないってのもあるしさ。逆に好きでも見てくれがあんなんなの?ってのが分かると萎えたりする。マウンテンなんてのはそうだ。レスリー・ウェストのあの巨体を見たことなかった時は良かったけど、見たらありゃロックじゃねぇ、って感じ(笑)。仲間と飲んでて言われるのは「自分はポールが好きじゃない」ってぇと「何で?」ってなる。「うん、顔がキライ」って言うと「じゃ、しょうがない」って納得される。うん、ロックだろ?(笑)

 King Crimsonの1981年の再結成後初作品「Discipline」。クリムゾン聴き始めてからン十年以上経つけどこれ、最初からダメでさ、この頃の3部作なんてのは全部聴いてない、多分。聴いたかもしれないけどダメだった。何度か挑戦しようとした記憶もあるけど、歌とギターのトーンとクリムゾンらしからぬって所でダメだったんだよね。90年代に復活したクリムゾンは好きなんだけどさ、80年代のは全然ダメ、だから無かったことにしてた。今回ザッパの所でエイドリアン・ブリューが出てきて、そうかこの人もいたな、と思い出したので、ザッパの次の仕事として参加していたのがクリムゾンだったのか、と。んで、ブリューって、ザッパの所だと、歌手じゃなくて芸人なワケで、それもギター変態も含めての芸人で、それがクリムゾンで生かされるってのはクリムゾンに笑いの要素を持ち込んだって事なんだよな、と。それをフリップ卿が願ったかどうかわからないけど、ギターの芸人の方は明らかに絶妙なアンサンブルを形成しているから面白かったのだろう。その分芸風発揮の方はリスナーには好まれなかった、ある意味パンクだったワケだ。見事にその姿勢にうんざりした方でしたが…。

 んでね、ああいうのもありとして聴くならどうなのかと思って久々に手を出してみた次第。「Discipline」。冒頭、やっぱうんざりする。しかしこれを耐えると次は耳を引く音色とフレーズが満載で、おぉ〜、さすがじゃないですか、とちょっと取り戻す。んで、その次、「待ってください」じゃねぇと。待てねぇよ、これ、さっさと消えろ、くらいにしか思えなくてじっと耐える。そこまで耐えると次は往年のややゴツゴツしたハードなクリムゾンが出て来るので徐々にテンション挙がってくるのだが、歌が…、要らねぇ…、要らねぇよ…、ってな感じか。それでもギターやスティックを含めた鉄壁のリズムに囲まれたサウンドはこの頃では新しい音楽だったし、聴いたこともない世界だったことだろう。なるほど、一部のリスナーから名盤だと言われるのもわからんでもない。自分が好きかどうかってのは別だけど、でも、ちょっとそうなんだ、って思ったのはある。そりゃそうだよな、あんだけのミュージシャン達が集まって作っててつまらないもん目指すってことはないんだろうし、ポップスに魂売ってたワケでもないし、じっくり聞けば楽しめるトコはあるだろう。う〜ん、深いなぁ、クリムゾンは。





Pink Floyd - Cre/Ation - The Early Years 1967-1972

Pink Floyd - Cre/Ation - The Early Years 1967-1972
アーリー・イヤーズ・クリエイション

 Pink Floydってのは取っ付きにくいバンドのハズだ。ところがいつの間にか普通にロックファンなら聴いていておかしくないはずのバンドになっていて、英国や世界各国でもビートルズと同等扱いのレベルのバンドになってしまっているようだ。何でだ??そんなにみんな簡単にフロイドの世界って理解出来ちゃうのか?ってのがまず不思議。実はそこまで広く普及しているんじゃなくて好きだっていう人が増えてる、ってだけなのかもしれない。それでも不思議だけどさ。初期フロイドからサイケやってる頃までのなんてそんなに聴けるかね?分からんなぁ…、それでも27枚組なんていう化け物ボックスをリリースしちゃうんだからそれなりの商業的見込みがあるワケだし、何か凄い。

 んで、今回はその27枚組からの抜粋版2枚組の「Cre/Ation - The Early Years 1967-1972」なんてのを。先行リリースされてたんだけど、まぁ、今じゃ27枚組も手に入るし、どうせ買う人は両方買ってるだろうし。そもそも27枚組なんて買う人、マニアしかいないでしょ。だったらこっちも手軽に買えちゃうし、正に手軽だし。ちょいと収録曲が中途半端な感じあるから、プロモの意味も含めているのだろう。それでも結構な演奏が聴けるから重宝するんじゃない?BBCのはともかく、「原子心母」の70年のライブで4人のみでの演奏…、あのテーマメロディとか入ってないから新鮮さはあるけど、物足りなさ感倍増(笑)、それでもあのままだから凄い。やはりおかしい、この人達。続いての「Echoes」セッションの抜粋版で、これまた見事にあの世界観がこの時点からしっかりと映し出されている作品として緊張感も含めて聴き甲斐のある一曲で、このあたりからかな、さすがの蔵出し音源集、みたいに思えたのは。見事にミックスしたり音も作られてて聴きやすくなってるのは当たり前で、音の古さを感じさせないところも凄い。

 27枚組の方はどうなんだろ?もちろん聴き甲斐のあるソースが揃っているようで魅惑的ではあるけど、まだ手出ししてないでいる(笑)。まぁ、時間の問題だろうけど…。昔ほど真剣にアレがどうのとかいう感覚で聴いてないからコレクトしていく意欲もさほど強くはないし、それでも聴いてみて驚きはある方が嬉しいし、さてさてどうしたものか。それまではこの2枚組でもじっくり聴いている方がコンパクトでわかりやすくて良いのかも…、なんて負け惜しみ。





David Gilmour - Live in Gdansk

David Gilmour - Live in Gdansk
Live in Gdansk (Snyp)

 ピーガブとケイト・ブッシュがアーティスト的に割と近い関係にあって、幾つか共演したりしている。一方でケイト・ブッシュってのはピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアが発掘して育ててデビューさせているという経緯がある。しかしながら面白いことにピーガブとギルモアってのはオープンに共演してます的なのは写真程度しか見たことがないので、奇才二人の共演ってのはなかなか難しいのかもな、などと思っていながらそういえばこれ見たいんだった…。

 2006年のライブツアー千秋楽のポーランドのライブを収録したDavid Gilmourソロ名義の「Live in Gdansk」ライブアルバム。見ていると実際は半分Pink Floydをやってるようなモンだからそういう見方になっちゃうんだけどさ、映像の方ね、見かけはそりゃ年取ってるけどもう音は芸術的な域にまで達したギルモアフロイドサウンドの究極の姿かも、ってくらい完璧に仕上がってて、その圧倒的な完成度の高さに驚くばかり。こういうのが当たり前なのかもしれないけどさ、ロジャー・ウォーターズにしてもギルモアにしてもやはりピンク・フロイドっていう芸術集団を担っていた方々はステージや音、芸術性にこだわったスタイルってのが変わらないもんなんなだと。一時期はギルモアフロイド、ロジャー抜きのフロイドって…ってのあったけど、こうなってくるとそれももう超越してて芸術音楽としてのレベルの高さにただただ脱帽。狂気からダイアモンド、そしてエコーズなんてのはもうホント、圧巻です。

 盟友リック・ライトが鍵盤で参加していたツアーで、映像でも見れるけどちょいと感動的だったのはやはりふたりのコーラスワークで、しかも「Comfortably Numb」ではロジャーのパートをリックが歌っててさ、他の人が歌うより説得力あるもんね。明らかに二人フロイドを見せてるライブで、ギルモアのギターと歌をクローズアップしまくってて、ソロ曲は元よりやはりフロイド曲を聴いてしまうよね。当時は前衛的な音楽として知られていたフロイドサウンドが40年経過してもこういう形で芸術的な音楽として今でも脚光を浴びて演奏されるってのは凄いよな。実際聴いてて見てて惹き込まれるし、今の機材だともっと進化したフロイドサウンドなんてのも出来上がっちゃうし、そういうのも実験している感じはあって何気に今でもチャレンジしている姿が聴ける。

 ポーランドという国の雰囲気だろうか、このサウンドと硬質なポーランドの雰囲気と妙にマッチしていて拍車をかけてのライブの完成度を高めている感じだ。いやはや、それにしてもエコーズが凄い…。





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物心付いた時からロックが好きでいつぞや何でも聴き漁るようになり、多趣味な生活を過ごしているロックマニア。


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