Soft Machine - Third

カテゴリー: Canterburry

 どこか冷淡で複雑なサウンドというものを適当に流して聴くということはなかなかできなくて、大体そういう音楽ってのは流して聴くには非常に不快感なサウンドとして聞こえるだろうし、だからその手の音楽ってのは割とじっくりと聴くという時間が必要になる。ここのところの自分の時間のなさを考えるとどうしてもその手のサウンドから遠ざかってしまうんだよね。iPodで聴くのも不自然な音なのでやっぱり家でじっくりと聴くことになるので余計に、だ(笑)。でも頭の中ではそういうのを聴きたいなぁと思っていて、チャンスを伺っているのだが…。

3(紙ジャケット仕様) グライズ

 ソフト・マシーン1970年リリースの「Third」。ソフトマシーンはどれも好きなアルバムばかりで聴けば聴くほどにハマリ込んでいくバンドなのでどれを聴くかなぁと思ったんだけど、なんとなくゆっくりとハマり込みたかったので「Third」。アルバムはアナログ時代にはメンバー4人が片面づつ曲を受け持つってことで2枚組全4曲入り、という構想。凄いよな、なんで一人一曲でアルバム片面を埋めるんだ?完全にジャズロックに傾倒していった時代だから故の発想なんだろうけど、その分当時はC面に収録された3曲目の「Moon In June」のロバート・ワイアットの楽曲の美しさにほっとしたものだ。ちなみにこの時にメンバー編成はマイク・ラトリッジ、ヒュー・ホッパー、ロバート・ワイアットの三人にエルトン・ディーン他が加わった面子で、その他というのもバイオリン、フルート、サックス、トロンボーン、クラリネットという楽器なんだからそりゃヘンだわな(笑)。

 そうだなぁ、普通に聴けばジャズを聴いているような感覚なんだけど、やっぱりそこは何故かロックだったりする。一生懸命ジャズをやってるんだけど、何でだろうね。オープニングの静かな始まりからメインテーマが出てきていわゆるジャズと同じような感じでテーマから派生する即興音楽がメンバーの力量を示してくれるし、緊張感もたっぷりと醸し出しながらバランスよくぶつかりあって展開されていくというスタイルの曲ばかりで、いわゆるプログレの世界ではないね。中でも圧倒的に曲を引っ張っているのはヒュー・ホッパーのベース。ワイアットのドラミングも格段にスケールアップしているのはもちろんだけど、ヒュー・ホッパーのベースってこんなに自己主張してていいのか?ってなくらいに存在感たっぷりで面白い。

 そしてワイアットの「Moon In June」で初めて歌が聞こえてくるんだよね、それが凄く優しくて、それこそが後のマッチングモールへと繋がるんだなと思うんだけど、それでも楽曲的には正にカンタベリー的サウンドの象徴でもある感じで、浮游感のあるポップなメロディに複雑なバックの演奏とアレンジが絡み付くもので、最初の歌パートが終わってからはそのメロディの流れを汲んだ即興演奏が繰り広げられるんだから面白い。この路線でバンド一個できるもんな。歌メロも即興音楽のひとつの楽器として認識してメインパートを受け持つ、みたいな感じでね、不思議なんだな。だから同じ歌メロが出てくることが非常に少ない(笑)。そんな曲よく作れたなぁ、というか歌えたなぁ、と思ってしまうんだけどその辺の感覚がおかしい人達なんだろうね、このバンドは。

 ソフトマシーンってもちろん根強い人気があるからなんだろうけど、もの凄い数のライブアルバムがゾクゾクとリリースされていて、ほとんど追いつけていない(笑)。時期的に区切って聴けば良いんだろうけどなかなか全部制覇できないんだよねぇ。んでもこの「Third」の頃の面子では「グライズ」「バックワーズ」「Noisette」「Live at the Proms 1970」あたりかな。詳細データ不明だけど。しかしYouTube見て驚いた…、こんな映像あるんだ…。

Gilgamesh - Gilgamesh

カテゴリー: Canterburry

 カンタベリー系の音と言ってもそれなりに多様性はあるワケなのだが、一部非常〜に酷似しているバンドの音というものもある。それはメンバーが被っていたりするからだと思うのだけれど、それが故に割と音だけでは判別しにくいものというバンド群がギルガメッシュとナショナル・ヘルスやハットフィールド&ザ・ノースだったりする。多分それらのどれかの曲の途中だけを聴かされて、「どのバンドだったでしょうか?」と訊かれても正確に答えられる自信は全くない(笑)。

ギルガメッシュ(紙ジャケット仕様) Another Fine Tune You've Got Me Into

 ギルガメッシュ1975年リリースのアルバム「ギルガメッシュ」。音的にはアラン・ゴウエンの鍵盤とフィル・リーのギターがメロディを奏でる美しい音で、ここでのベースがニール・マーレイだったり歌、というかコーラス担当がアマンダ・パーソンズという女性なワケで、半分以上ナショナル・ヘルスなワケだ。もっとも楽曲と演奏のイニシアチヴを取る鍵盤奏者とメロディを奏でているギタリストが違うのでレベル差はもちろんあるんだけど、やっぱりカンタベリー独特の音を奏でているので何とも言えないねぇ。もちろんギルガメッシュの方がこのメンツでの演奏は先なのでナショナル・ヘルスがギルガメッシュだ、という言い方が正しいのだが(笑)。そしてもうひとつ決定的に似ている音の理由にこのアルバムのプロデューサーがデイヴ・スチュアートだった、ってことだろう。そりゃ似てくるわな、と。

 一応楽曲的にギルガメッシュの方は大曲というよりも組曲構成になっていて複数楽曲が展開されていくという様相なのでドラマ性はあるんだけど、インスト中心に変わりはないのでちと集中して聴かないとハマりきれないかも。そういえば自分もインストモノってそんなに好んで聴かないけどカンタベリー系のはいつしか普通に聴いている。よくジャズ寄りと言われたりするんだけど、別にジャズっぽいとは思わないし、かと言ってバリバリロックでもないので不思議なんだけど、まぁ、フュージョンを思い切り暗くしてもっと多様な音色を散りばめたような音、とでも言えば良いのかな。いやぁ、やっぱカンタベリーはカンタベリーとしてひとつのジャンルになってしまっているなぁ。

 そしてこのギルガメッシュなるバンド、ナショナル・ヘルスに吸収合併されていくのだけど、かろうじてその合併劇から外れたメンツにヒュー・ホッパーというこれまた強烈な助っ人を入れてセカンドアルバム「Another Fine Tune You've Got Me Into」を1979年にリリース。音的な構成は似ているけれどなんとなくファーストの方が良いかなぁとは思う。まぁ、よく理解していないで書いているんだけど(笑)。

National Heallth - National Heallth

カテゴリー: Canterburry

 カンタベリーロックという一大ジャンルを形成してしまったシーンの深さは現代に至るまで脈々と続けられていて、その誰も彼もが貧乏ミュージシャンっていうのもカンタベリーシーンでは当たり前の逸話(笑)。…かどうかは実際のところを知らないんだけれど、当然セールス的に芳しいものじゃないことは有名な事実で、決して売れているバンドがあるわけじゃないし、もちろんソフト・マシーンやキャラバンっつうくらいのところになればそれなり、かもしれないけど、それでもどうかわからん。ましてやそれ以外のバンドなどはシーンに興味のない人には全く知られていない名前ばかりなので必然的にアルバムリリースだけでは喰っていけないハズだろう。ま、いきなりそんな貧乏くさい話をしてもしょうがないのだが(笑)。

ナショナル・ヘルス(紙) オブ・キューズ・アンド・キュアーズ(紙ジャケット仕様)

 ナショナル・ヘルスの1978年リリースのファーストアルバム「ナショナル・ヘルス」だ。もちろんハットフィールド&ザ・ノースからの流れというものを知らないといけないのだが…、いや、結局カンタベリーシーンの連中ってのはメンバーがほとんど一緒でもバンド名をコロコロ変えているっていうのもあって、名前にこだわらないんだよ。こだわっていても今度は中身がまるで変わっているとか、とにかく友人同士でジャズのリーダー作のような感覚でアルバムを作っていたりセッションしていたりするので個人名で追いかけていかないとワケわかんなくなるのもユニークな集合体。

 まぁ、お馴染みのデイヴ・スチュワートとフィル・ミラーを中心にピプ・パイルのドラムと何とニール・マーレイがベースを弾いているのだ。そう、あのホワイトスネイクに参加していたニール・マーレイです。意外なところからシーンに参加してたんだなぁ。だからホワイトスネイクもカンタベリー一派なのだ(笑)。ま、そんな冗談はともかく、ロック界でも傑出した作品のひとつでもある本作「ナショナル・ヘルス」なのだが、まぁ、誰にでもお薦めというような代物ではない。ただ、このレベルのアルバムってなかなか見つからないぜ〜っていうくらいに素晴らしい作品なので、実感してもらいたいな、とは思うけど。

 大曲ばかり収録した全5曲の作品でもちろんほとんど歌無し。歌があってもそれは美しいコーラス=アマンダ・パーソンズという女性によるもので、最初の「Tenemos Roads」という曲では大活躍するが、その程度のモノだ。何と言っても強烈なのはやっぱりデイヴ・スチュワートとフィル・ミラーの鍵盤とギターによる主旋律と彩り。そこにピプ・パイルの軽やかなドラミング…、後にブラッフォードも参加することになるのだが、かなり近いタイプのドラミングで面白い。そしてゲスト陣にはジミー・ヘイスティングやアラン・ゴウエンなどが参加しているというもので、カンタベリー主力が結集しているアルバムでもあるので悪いはずがない。ただし、普通にプログレやロックを期待してはいけない(笑)。やっぱりカンタベリーの香りを楽しめる人にしか楽しめない作品だろうから。ジャケットの賑やかさもカンタベリーらしくて頼もしい。

Egg - The Polite Force

カテゴリー: Canterburry

 実験的音楽ってのはカンタベリーシーンでも行われていて、もちろんソフトマシーンやキャラバンの初期に代表されるようなサイケデリックさも挙げられるんだけど、1968年にはユリエルというバンドがあって、そこには後にゴングで有名になるスティーヴ・ヒレッジが在籍していたことで多少は有名、か?いまではアーザケルとして多少知名度があってもおかしくないが…。それはともかく、そのユリエルにはあのデイヴ・スチュワートとモント・キャンベルが在籍していたワケで、彼等はヒレッジの抜けたユリエルでは意味がないってことでギターレスのバンド=当時で言うナイスのイメージでバンドを再構築、それがエッグというバンドだ。

Polite Force Egg

 1970年デビューアルバム「Egg」をリリース、音を聴くと「は?」ってなモンだ(笑)。今回はそのファーストよりもバンドのやりたいことが明確になったセカンドアルバム「Polite Force」を取り上げてみよう〜。1970年11月発表だからファーストと同じ年にリリースされた作品でバンドに勢いがあったことがわかる。相変わらずクラシカルな楽曲を奏でてくれるのだ。

 が…、これ、正にプログレッシブロックとも云える変態且つ複雑かつ美しく淡々としていてテクニックも申し分ないという代物で、あまりにも高度すぎる音楽世界が広がる。これだからプログレは難しいのだ(笑)。最初の一曲目だけは歌が一応あって、変拍子なんだけどまだ聴きやすい性格を持ったものだけど以降はもう恐ろしいまでの変拍子の組み合わせだったり全くリズムの取れないサウンドだったり、また3曲目では思い切り実験的で、その特異性はドイツのクラウトロック連中の実験性にヒケを取らないくらいのミニマル性を持った曲で、なんだこりゃぁ〜ってくらいクールな世界。4曲目からの組曲はもう変態的な楽曲でマジメに聴いていたらとんでもなく複雑なことに気付くだろう。まぁ、普通に聴いてもヘンなんだが(笑)。

バンド編成が鍵盤、ドラム、ベース+その他楽器っていうトリオなのでもうちっとシンプルかと思いきや、とんでもなく多様な音が出てくるのも不思議で、何かと思えばトランペットとテナー・サックスにゲスト陣を迎えていた。その一人がボブ・ダウンズというブリティッシュ・ジャズ界でも割と著名な人。う〜む、難しい。ただ、ジェントル・ジャイアントのような冷たさとはチト違っていて、温かみのある音色ってんが面白い。もしかしたらもっともプログレッシヴロックらしいプログレッシヴロックを奏でているバンドかもしれない。

 バンドはここで一旦解散して、1974年にもう一度再結成してアルバム「The Civil Surface」をリリースしているが、こちらにはそれこそスティーヴ・ヒレッジやリンゼイ・クーパーの参加したセッションアルバムに近いが、それでもやっぱりとんでもなく複雑な作品…。う〜む、ホンモノのプログレッシヴミュージシャンなのだなぁ。

Camel - Mirage

カテゴリー: Canterburry

 やはり音楽の叙情詩というものは重要だ。これは残念ながらアメリカからは出てこれないサウンドだろうな、と決めつけてはいけないが、やはりやむを得ない事実ではないかと。まぁ、偏見とも言うのだが(笑)。いや、でもやっぱりヨーロッパならではの伝統的な側面だというのはあるはず。殊に英国の叙情性というものは他のヨーロッパ諸国のモロに露骨な、例えばイタリアのようなものとは異なり大げさにはならない。それでも深くしっとりと染み渡ってくる叙情性なのだ。そんな叙情詩を音にしているバンドの大代表がフロイドだったりするし、キャメルというバンドもその一角だ。

Mirage Camel

 1974年リリースの二枚目「Mirage」というアルバム。ファーストアルバム「Camel」と音楽的にそれほど変化があるワケじゃなく、センスが磨かれたっていう感じかな。音的なものだけで言えばピーター・バーデンスの鍵盤が全面に出ているのでどっちかっつうとピコピコ系なイメージもあるんだけど、そこはさすがにキャメルの雄であるアンディ・ラティマーのギターが鋭いところでロックファンの心を刺激してくれるのだ。普通に意識しないで聴いているとこの鍵盤とギターの音色の違いを意識しなくなるもん。うん、違うんだけど、多分ラティマーのギターの音がスペイシーでマイルドでおよそギターの感じがしないからでしょ。コードを掻き鳴らして、っていうシーンも多くはないのでかなり特殊かな。

 そうだねぇ、このバンドって凄いのはアルバム全体を通してってのもあるけど一曲ごとに情景が目に浮かぶような音を聴かせてくれるってとこかな。別に解説も知識もなくっても音を聴くとなんとなくこんな情景なのかなぁってのが浮かぶ。目を閉じて聴くとしっかりと自分だけのイメージが沸き上がってくるから面白い。このアルバムのコンセプトって何だろな。多分「指輪物語」だと思うけど、それを露骨に明言しないでもリスナーとしてはそういうのをイメージして聴ける。するとまるで映画音楽のように楽しめる。しかしラティマーのギターは面白い。こういうのを歌うギタリスト=ギターを歌わせることの出来るギタリスト、と呼ぶのだ。しかもバンドアンサンブルが抜群。

 この「Mirage」という作品、冒頭から優れた旋律とアンサンブルによって歌が少ないのにもかかわらずアルバムとしての印象が強いものになっているんだけど、一般の例に漏れず、キャメルの世界の最高傑作と呼んでも過言ではないであろう「Lady Fantasy」という稀代の作品を配しているアルバムなのだ。壮大な一大叙情詩が描かれている作品で美しいんだよ、これ。プログレが好きとかキライとかっていうのじゃなくって流れていると心地良くなるサウンドなので聴かない方が損じゃないか?なんて思う。まぁ、こういう雰囲気を望まない時は別に興味ないのだろうけど、ひとつひとつの音が染み渡ってきてねぇ〜、良い。ドラマティックな展開ももちろん素晴らしく12分を感じさせない物語♪この延長が後の「The Snow Goose」という素晴らしいコンセプトアルバムに繋がるんだろうな。

Gong - Gazeuse!

カテゴリー: Canterburry

Gazeuse! Expresso II Downwind


 カンタベリー系アヴァンギャルド路線にハメ込むには少々無理があるんだが、まぁ、流れ的によろしいとしようじゃないか(笑)。いや、ゴングの話。どっちかっつうとピエール・ムーランのゴングなんだけどさ。時期的にも1976年以降のジャズ・フュージョン化した頃の作品だったりするので少々カンタベリーのジャズロックとは違うんだけどさ、根がカンタベリーだったハズのバンドなので、逆にここまで変わるモノかと思うくらいの意味合いでは良いかな。ゴングの遍歴ってのはデヴィッド・アレンから始まってもの凄いことになってるんだよね。簡単に言うとデヴィッド・アレンが率いるゴングっつうのと、このピエール・ムーランが率いるゴングが同時期に活動していたりするのでややこしい。そしてジリ・スマイスの率いるマザー・ゴングっつうのも出てきているのでゴング・ファミリーの活動についてはちょっとマジメに取り組まないとワケのわからん世界になってしまう。故にどのアルバムが…なんてのも一口に言えないものなのだ。

 初期のゴングを代表するラジオノーム三部作も素晴らしいユートピア精神溢れる代物だが、ここではそれ以降のピエール・ムーランのゴングを代表する1977年リリースの「Gazeuse!」なんてのを書いてみよう。いやぁ、アラン・ホールズワースが参加しているアルバムでね、アラン・ホールズワースの流れの時に出そうと思ったんだけど音が見つからなくて飛ばしてしまったんだな。で、たまたま見つけたのでここで登場ってことだ(笑)。しかし、誤解してはいけない。このアルバムはアラン・ホールズワースのギターを聴くためにあるものではなく、高尚なアンサンブルと浮游感に覆われたジャジーな空間…というか、はっきり言って木琴とピアノのアンサンブルが美しくてねぇ、そこにパーカッショナブルなものも入り込んでくるという美しい音を奏でる作品なのだ。「Percolations : Part I & Part II」なんていう10分オーバーの曲聴いているとやっぱりテクニカルでカンタベリーチックな音だなぁと言うことがわかるんじゃないかな。あまりにもピエール・ムーランのパーカッションなセンスがよろし過ぎて、下手したらビル・ブラッフォード並みにアチコチのバンドを渡り歩けたくらいのセンスとテクニックを持ってるもん。ソフト・マシーンにビル・ブラッフォードが入ったら…こうなる、って感じかな(笑)。

 そんなゴングの多分傑作だと思う。昔からジャケットはよく見たけどフュージョンチックなのであまり聴かなかったんだよね。ところがまぁ、色々と聴いているうちにこういうのもありか、と聴くようになるものなのだ。以降の「Expresso II」も同様にかなり気合いの入った良い作品だし、その後の「Downwind」もモロに趣味が出た作品だね。ただ時代が遅すぎたかもしれん(笑)。

Caravan - Waterloo Lily

カテゴリー: Canterburry

 ソフト・マシーンと同じバンドをルートに持つCaravanも1972年には既に多様の変化をし始めていた頃で、こちらはキーパーソンでもあったデイヴ・シンクレアが脱退してしまうという事態に陥っていた頃だったのだが、カンタベリーバンドの常なのか、それでも大きなサウンド変化にはならないというか相変わらずカンタベリーらしい音を出したままと言うか、全くガラリと変わった面もあるのだが、バンドの歴史としては良い方向に変化していったというユニークな展開。それこそがCaravanの面白いところで、やっぱりこのポップさは侮れない。

Waterloo Lily グレイとピンクの地+5 夜ごと太る女のために+5

 「Waterloo Lily」1972年リリースの4作目、前作「グレイとピンクの地」が初期の傑作として名高く、そしてこの後にリリースされる「夜ごと太る女のために」がかなりの傑作だったためどこか埋もれがちなアルバムではある。まぁ、ジャケットからして少々地味なのは確かだが、サウンド的にはそんなこともないんだよね。もちろんデヴィッド・シンクレアのいなくなった穴をスティーヴ・ミラーが埋められたとは思えないんだけど、しっかりと埋められているところもあって、悪くないしさ。一応Caravanのアルバムの中では最もジャズ寄りのサウンドと言われているんだけど、それはスティーヴ・ミラーの特性のおかげではある。が、さすがにソフト・マシーンを聴いた後では全然そういう雰囲気を感じるものでもなくってもっと音楽的に昇華させるための鍵盤楽器の美しさを引き出しているというような感じで、一方まだパイ・ヘイスティングが全開とまではギターを弾き切っていない面がこの後を知っているともどかしいかな。しかし前作に比べると楽器の演奏レベルがグンと上がっているように感じるのは気のせいかな、二曲目の「Nothing At All」っつう曲ではあのロル・コックスヒルとフィル・ミラーがゲストで参加しているのでそのせいかもしれないけど(笑)。パイ・ヘイスティングの相変わらず美しい「Song By Signs」なんてのはモロにCaravanって感じの小曲で、あぁやっぱりカンタベリーっていいなぁって思う瞬間。

 なんだかんだでやっぱりこのアルバムも名作だと思うよなぁ。ポップなメロディの曲はないけど音的にはしっかりとCaravanの世界だし、デヴィッド・シンクレアが不在というのも相対的には大きな問題になってない、と思う。いたらいたで違うんだけど自分的には許せるなぁ、この世界をきちんと出してくれるんだったらね。そう思えるアルバム。

 ちなみに中ジャケはとんでもなく強烈なお姉ちゃんの絵なのが表ジャケットとギャップがあって面白い。こういうユーモアセンスも喜ばしいな(笑)。

Soft Machine - Fifth

カテゴリー: Canterburry

 アヴァンギャルドサウンドから遡ってみるとカンタベリーにまで行き着く、そしてカンタベリーの中でもやはり最前衛的な音を出していたのはやっぱりソフト・マシーンだよな、と思い出すのだ。ソフト・マシーンの遍歴はアルバム毎に見事にサウンドもメンバーも替わっていくもので、そういう意味ではキング・クリムゾン的かもしれない(笑)。が、サウンド的には全く正反対とも言えるもので激情的なシーンが全くと云って良いほど聴かれないのがソフト・マシーンで逆に激情的なアンサンブルを重要視していったのがキング・クリムゾンとも言える、かな。

Fifth Live in France <Just Us

 その長いバンド歴史の中でも真ん中に位置する、「Fifth」だが、全作品中最もジャズに近づいた作品と云われる。しかししっかりと根はロックなのだなぁ、聴いているとね、そう思うワケよ。確かに面子的にもエルトン・ディーンのサックスを筆頭にマイク・ラトリッジのオルガン、ヒュー・ホッパーのベース、ドラムはフィル・ハワードとジョン・マーシャルによるものでフリージャズ的な要素が強い…と括って言ってしまっては元も子もないので、フィル・ハワードの叩いているA面はかなりフリージャズのエッセンスが強くて、こちらはエルトン・ディーンの真骨頂とも云える一曲目の「All White」がもの凄く心地良い。かと思うと続いての「Drop」ではやはり聴き慣れたマイク・ラトリッジのオルガンが心地良く鳴ってミニマル的な要素も強い従来型ソフト・マシーンと言った音だ。…と言うか次作あたりまで続くソフト・マシーン的な音、だな。こういうの好きだからソフト・マシーンってなんだかんだで良く聴くんだよね。ヒュー・ホッパーとマイク・ラトリッジはどちらかと言えば展開を決めたジャジーな音が好きらしく、一方のエルトン・ディーンはあくまでもフリーフォームなスタイルが好きなようで、そのせめぎ合いがこの時期のバンドのバランスを危うくしているという見方もあるし緊張感を煽っているってのもあるか。しかしこの後ベーシストとして参加することとなるロイ・バビントンがダブルベースでゲスト参加した「As If」はかなり激しいバトルの繰り広げられるインプロ中心の曲でベースが見事に歌っているし、サックスも素晴らしい…、そしてソフト・マシーンらしいマイク・ラトリッジのオルガンが美しく冷たく淡々と鳴っていていいなぁ〜と思わせるよ、ホント。この時期のソフト・マシーンは結構好きだなぁ…。

 アルバム「Fifth」がレコーディングされたのが1971年から72年頃で1972年にはアルバムリリースされている。そして72年にフランスで行われたライブ「Live in France」が突如として1995年にリリースされて、驚きのあまり速攻で買ってしまったのだが…。これはドラムにジョン・マーシャルが参加しているヤツで、アルバムほどの鋭さはないけど「5」の曲中心でライブが丸ごと収められているのでマニア必聴のアイテムだね。ソフト・マシーンってのはホント時期時期で音が違うのでそれぞれのライブ音源ってのも聴けると面白いし、当時この頃のライブなんて他では聴けない代物だったからなぁ、刺激的だった。

 それとこの時期にエルトン・ディーンは自身のソロ作品「Just Us」もレコーディングしていてこちらもほぼ同じような面子で録音されているので兄弟作品として聴いておきたいね。こうなってくると全くジャズメンと同じようなセッションで誰がリーダーか、ってだけの違いになってくる(笑)。

Henry Cow - Unrest

カテゴリー: Canterburry

 70年代末、英国ではパンクムーヴメントが勃発し、更にニューウェイヴと呼ばれる波が到来してきたころ、かつてから活動していたバンドの影がどんどん薄くなっていった。しかし時代の流れとは全く相見えないところで活動していたバンドにとってはそれこそ何処吹く風、と言わんばかりに傑作を密かにリリースしていたりする。アヴァンギャルドな音世界にとってはそれは日常のことでもあり特段意識するようなことでもなかっただろうが刺激にはなっていたんだろうな。しかし古くからおなじような音楽手法を採り入れていたバンドはやはり存在しているモノで、その中のひとつにヘンリー・カウというバンドがあるのだな。

Unrest In Praise of Learning Leg End

 あのヴァージンからのリリースで、当時から前衛的と呼ばれていたハズ。ヴァージンレコードってのはえらくニッチなサウンドを奏でるバンドを発掘してリリースしていったレーベルだし、そもそもマイク・オールドフィールドの「Tubular Bells」だって売れたのが不思議なくらいのサウンドだしね。ま、そんなことでヘンリー・カウのアルバムデビューは1973年。活動歴は1978年頃までじゃないかな、多分。人脈的なところが結構複雑で、ドイツ人ボーカルのダグマー・クラウゼで有名なスラップ・ハッピーとほぼ混合編成のバンド形態になることもあって、また音楽的にもかなり近似していたところもあるので両者を切り分けるのは難しい時代もある。共作でリリースしているアルバムもあるし、ライブではお互い入り乱れていたみたいだし、なんかよくわかんない世界(笑)。

 で、このヘンリー・カウ、今じゃいくつも発掘アルバムが出てるけどシンプルに一作目から三作目までは靴下ジャケット。並べてみるとなかなか面白かったりするのでついつい音はともかく集めたくなるものだったのだ(笑)。その中でも一番傑作なのはセカンドの「Unrest」かなぁ。うん。でも、やっぱり相当のアヴァンギャルドな音なので一般的にオススメするものではない、と思う。This HeatやPop groupなんかとは違ってもっと温かみのあるコミカルな、そして不思議感と浮游感のあるカンタベリー系独特の雰囲気は持っている感じのアヴァンギャルド。プログレって言われる延長線上に位置してはいるんだけどこの発展性は面白くて、認識によるんだろうけど後に出てくるノイズ・アヴァンギャルド系のサウンドの走りでもある元祖じゃないかとも言えるしさ。しかし、まぁ、それらとは大きく異なってるのは使われる楽器の数々。ちょっと聴いているだけでもピアノやサックスやその他もろもろの音が聞こえてくるんだけど、やっぱりヴァイオリン、オーボエなんてのも使われているんだね。で、重要なのはリンゼイ・クーパーフレッド・フリスっつう奇才がいるってことだな。この人達って確かソロ作でも出していると思ったけどもう、現代音楽フリージャズの境目あたりの筆頭でね、よくわかんないけど奇人だよ、聴いてると。

 そんなヘンリー・カウの作品、ジャケも良いがライブも凄い。白熱っつうのとはちょっと違う、もっとクールな、という方が良いかな。リフレインに乗せたミニマルミュージック的志向を持つやっぱりカンタベリーの血が入っている浮游感はよろしい。

This Heat - This Heat

カテゴリー: Canterburry

 アヴァンギャルドサウンドってのはもの凄くマニアックな世界でどんな評論を見ても滅茶苦茶かっこよく「名盤」とか「世紀の傑作」とか書かれていて購買意欲をそそるんだよね。しかもそれが全然手に入らなかったりするから余計に聴いてみたくなるし。で、多くのモノを無理して入手するんだけど結局アヴァンギャルドな音だからさ、何回も聴けないワケで、正直それがかっこいいもの、かどうかもわからないんだけど探して苦労して手に入れたという思いの方が強いから「名盤」ということにして持っていることに満足する傾向にあるアルバムが多い(笑)。

This Heat Deceit Quiet Sun

 This Heat。このバンドもそんな類のひとつでアルバムは割と早めに入手したものの音を聴いて決してピンと来たバンドではないな。電子音のノイズから始まっていきなり二曲目、しかもよくわからん攻撃的というのか呪術的というのかアクの強いサウンドで迫ってくるもので始めて聴いた時はワケ分からなかったな(笑)。…とは言えども、だ、プログレやらなんやらと聴いていき、カンタベリーサウンドにも親しんでからその先を漁ろうとするとこのバンドの名前が出てくるんだよ。簡単に言えばケヴィン・エアーズとディス・ヒートは繋がってしまうという英国ロックの恐ろしい構図なワケ。キーポイントはドラムのチャールズ・ヘイワーズ。元Quiet Sun、即ちロキシー・ミュージックのフィル・マンザネラのセッションバンド、みたいなもんだけどかなり傑作というのかこれに近いような即興的ジャズ的アヴァンギャルド的要素を含んだアルバム「Quiet Sun」を一枚リリースしている。で、このバンドにはビル・マコーミックっつう元マッチング・モウルの人も参加しているワケさ。ね、繋がったでしょ(笑)。

 しかしこのディス・ヒートっつうのはいいアルバムだったんだろうか?一握りの人間にとっては相当な衝撃を与えたバンドであることは間違いない。俗に言われる言葉に「King CrimsonとSex Pistolsの間を埋めたバンド」として称されることがあるように言い得て妙な部分があってさ。ノイズ+混沌、そして攻撃性…、うん。悪くはない。が、一般的な音楽をいうのとは大きく異なる衝撃だということは書いておいた方がいいかな。