Roger Daltrey - As Long As I Have You

Roger Daltrey - As Long As I Have You (2018)
AS LONG AS I HAVE YOU

 ネームバリューのある人の作品が新しくリリースされるってのは気にはなるけど、やっぱりたいていそういうのはジジイどころかもう終わってるだろって人が多いんで無邪気に喜ぶワケでもない。その中でもバリバリの現役感を持ったアルバム、新作をリリースしてくる人もいれば、今の自分はこういうもんだ、っていう作品をリリースしてくる人もいる。そりゃ商売だしアーティストだから色々な表現があるのは当然だ。リスナー的にはそれも踏まえて聴くのは聴くんだろうね。んで、ああだこうだと思うワケだが、その作品がどういう風に評価されていくのかはもっと跡にならないと分からないかも。リリース当時、という話で言うならばそりゃ過去の栄光が大きければ大きいほどその差は大きいに決まってる。まだそこまでの回数をすべての人が聴けてないんだから。

 ご存知The Whoのフロントマン、Roger Daltreyが2018年にリリースした快心の作品「As Long As I Have You」。いや、快心のって書いたのはですね、冒頭の、そしてアルバムタイトルにもなっている「As Long As I Have You」って曲がさ、もうとんでもなくぶっ飛んでてこの親父、いやジジイ、スゲェ!って思ってしまったからですね。アルバム全体として古き良き音楽をカバーしているので、曲そのものの良さは50年代からずっと評価されてきているものだけど、それでもそんな楽曲群を取り上げて歌っているところで再度命を吹き込んでいると言うのか、アレンジにしても歌にしても見事に蘇っているし、実にパワフルに仕上がってる。されに言えば自身の独自の音楽性なんてのは基本的には持っていないロジャー・ダルトリーだと思っていたんだけど、それがしっかりとロジャー・ダルトリー節になってるという意外な個性。もっともそれはThe Who的、とも言う話になるのでそれがロジャー・ダルトリーの音楽性なのか、ってのはちょいと違うのだろうが、少なくともリスナーが一番聞き慣れているロジャー・ダルトリーのスタイルそのままのアレンジに仕上げている。だからはっきり言って名盤です。そりゃだって古き良きポップス…というかR&Bっつうかその手のはもう曲として折り紙付きだし、それをロジャー・ダルトリーが歌ってるんだもん。アレンジはThe Who的だし。

 んでさ、その「As Long As I Have You」ってLed Zeppelinが最初期のライブで毎回取り上げていた曲でね、それで良く聴いて知ってたから、ここでロジャー・ダルトリーが冒頭に持ってきて歌うって、どういうアレンジなんだろ、って興味津々だったんです。ところがこれがまた当然Zeppelinとは異なるアプローチとゴージャスなアレンジでしっかりと仕上げていて、新たに感動したんです。それが冒頭だから以降の曲も当然原曲知ってるワケじゃないけど、安心してロジャー・ダルトリーの、そしてThe WHoをイメージしながら聞けちゃうワケ。それでも何ら違和感なく、どこが70歳過ぎたジジイの歌なんだ?完全に現役のシンガーの迫力ある熱唱形ボーカリストの作品に仕上がっているじゃないかと。やっぱり侮ってはいけない、このヘンのジジイは。拍手喝采の名作です。






The Who - Live At The Fillmore East 1968

The Who - Live At The Fillmore East 1968
LIVE AT THE FILLMORE

 アンダーグラウンドで出回っていたソースがオフィシャルからリリースされるという事がいつからか割と行われるようになってきた。もちろんリスナーの一人としてはオフィシャルからアーティストなりプロデューサーなりがきちんとスタンスを理解してリミックスやリマスタリングを施して出してくるのだから生々しいアングラ音源とは異なり作品としての側面が強調されるものとなり、それは即ち商品価値を持つレベルのモノになるってことで期待しては購入していた。やっぱりね、どんだけアングラで知っててもオフィシャルになったら入手して聴き比べたりするんですよ。それによってマスターテープからいじってるんだ、とかやっぱりイコライジングレベルか、とか色々とオフィシャルでの苦労加減を知るっていうのも楽しみのひとつだし。

 The Whoのとても良く知られた1968年のフィルモア・イーストでのライブが今回「Live At The Fillmore East 1968」としてオフィシャルリリースされた。ソースそのものはアングラで古くから知られているもので、それなりに音の良いものも出てきていたので目新しさはさほどないが、その音の作り方ってのはやっぱり生々しいアングラモノとは一味違った、しかも今時の機材でのリマスタリングだからね、当然良くできてる、って思ってるけど、やっぱり時代が時代の代物だからここまでなんだろうなっていう音であるのも確か。んでもさ、ジョンのベースがこんだけ聴けるってやっぱりうるさかったんだろうなぁ…とかキースのドラムだってどんだけドタバタシャリシャリ鳴らしてたかってのもよく分かるし、そもそもThe Whoってのはとんでもなくうるさいバンドだったんだから音源として記録出来たってこと自体が奇跡なのかもしれない。だから物凄く音が割れないようにして全ての音を録ってたんだろうなぁ、と。まだ精々4トラックの時代で、ライブ録音なんて本気でやらなきゃ2トラックがいいところでしょ。それをどんだけの音に仕上げるか、だったんだもんな…、そりゃそうか。

 このライブ音源ってこの頃既にライブアルバムをリリースする構想があって、それ向けに録音してたから残ってたって話。何らかの理由でライブアルバムは見送られたらしいけど、多分ピートの作曲能力の高さからライブアルバム出すまでに新作まるごと出来上がるくらいの曲が仕上がったじゃないだろうか。まだまだ駆け出しの頃のThe Whoと勢い有りまくりの頃のピートだし、だからこそ「Tommy」だったワケで。うん、まだ「Tommy」なんて無かった頃のライブで、スタジオ盤だととってもおとなしく聞こえる楽曲郡がこんだけうるさく恐ろしいまでに暴れまくっている曲に変貌していて、どんだけのライブバンドなんだってのをマジマジと知ることになるだろうライブ。挙句アングラでも出てきたことのない長尺版の「My Generation」の30分以上のジャムセッション、いやはやどんだけThe Whoの事を知ってるとか好きだとか言っててもこんだけのライブを聴いちゃうと圧倒される。もちろんここで始めて初期The Whoのライブに接する人はライブ全編とにかく圧倒されまくること間違いないだろう。それくらいに世界を制するライブバンドと言われたThe Whoの凄さを味わえるぶっ飛びの一枚。スゲェ…。




Pete Townshend - Who Came First

Pete Townshend - Who Came First (1972)
WHO CAME FIRST

 外の世界ではスマホが活躍しているけど、実際モノを買うというシーンが発生するのは外なのだろうか?やっぱり家の中でのスマホ使用時なんじゃないだろうか?電車の中ってのは多いかもしれないな。でも、それくらいだろうなと想像してるが、いつも買うってなモノだったらちょっと待ち合わせ時間中に買っちゃう、はあるだろう。ウチのサイトのような感じだとそういうのは少ないだろうと。もっとも普通にアマゾンリンクへの一ステップにしてくれる方がありがたいのだが、アプリ全盛の今、それはなかなか難しいんだろうなぁ。いずれにしてもその辺ってスマホ対応画面の作り込みをどうするかになるんだけど、これがまたなかんか…ってな事でアレコレ思案中。

 久々にピート・タウンジェンドのザクザクで快活なギターを聞いたら実に気持ち良かったので、The Whoとはちょいと違うトコロのピート・タウンジェンドを聴いてみるかってことで、1972年リリースながらも70年前後のデモ作品の寄せ集めとも言える実質的ファーストソロアルバムとなった「Who Came First」を。基本デモテープ=ピート・タウンジェンドが全てを演奏しているというものがベースになってて、この人の場合The Whoの作品も全て自宅で全部自分で演奏して多重録音してメンバーにそれをやらせるというスタイルなので、大多数の完璧なデモテープがあるわけですね、そんなアルバムも出てることで知られているけど、その最初のリリースがこのアルバムかも。一曲ロニー・レインが参加しているんで、普通にこの頃には友人だったのだろう。それ以外は基本ピート・タウンジェンド一人モノ。それでこの出来栄えですが、って疑うくらいに見事。ドラムも自分で叩いてベースも、ピアノも自分で演奏しての独演だからね、機械使ってのデモじゃないからね、まだ。だからアレンジも完全にほぼそのままだし、歌までそのまま。画期的なアルバムリリースだったとも言えるが、興味は更にThe Whoで未使用となった楽曲の多数収録、とその後にThe Whoでリリースしたことでその差を楽しめるというあたり。

 ステージ上ではあんだけワイルド感ありながらもここで聴けるように繊細で丁寧な音作り、天才が故に一人で篭っての緻密な一音一音を作り上げて積み重ねていく作業が垣間見れるというあたりはマイク・オールドフィールドとの共通するオタク感。凄いなぁと思うのは出来上がる音が全部見えていてそれを着実に積み上げていくという作業が出来ること。曲って誰でも浮かぶと思うけど、それをそのまま再現できるか、ってのが難しくて頭の中にフラッシュした音がそのまま出てきたらどんだけ素人でも凄いことになるんだが、そうはならないのが現実、そこを積み重ねられるのが努力部分で、それを超えて初めて天才なんだもん。その意味でピート・タウンジェンドはやっぱり天才的だった。作品の善し悪しとは別にアーティストとしての試みみたいなトコロを測る最初のアルバムだったんじゃないだろうか。




The Kinks - Sleepwalker

The Kinks - Sleepwalker (1977)
スリープウォーカー+5(K2HD/紙ジャケット仕様)

 音楽的に天才だな、って人は割といるのかもしれないがその方向性ってのはそれぞれ異なっていると思ってて、当然ながら作詞作曲に長けた天才、メロディやフレーズやアレンジなんかも含めて作り上げるトコロの才能って意味での天才もいれば、音楽理論的なセンス、理論も全て熟知していながら音感もあってそれらも駆使して作り上げていける天才なんてのもある。もちろん各楽器を演奏するのにテクニック的に天才という人もいれば感覚的に音楽が全て理解できてしまう人もいるのだろう。多分そういう人達が集まっている中でバンドが組まれたりする場合ってのはそりゃもう基本から違うワケだから出て来るものが悪いはずがない。バンドの歴史を取ってみると、最初は友達バンドでしかないけど、そのうちその才能の差にきづいて辞めていく、んで後任はそういう世界の人だからある種の天才が入るってなるとバンドが一気にレベルアップしていく、なんてことがある。だからバンドは続くわけで、そういう反応がないとどうしてもうまく機能しなくて停滞する…。

 1977年のThe Kinksがアリスタレーベルからリリースした実にアメリカ市場向けな一枚が「Sleepwalker」だ。個人的には無茶苦茶好きなアルバムのひとつで捨て曲がない。ここに登場したのは一応アンディ・パイル繋がりってことでしてね、そう、この人キンクスにも参加してたんですな。ところがこのアルバムでもベース弾いてるのは一曲だけで、その前のアルバムは参加していないという事で、見事にアルバムとアルバムの間のツアーしか参加していないという始末。その前も後もジョン・ダルトンがベースを弾いているということで都合よく参加させられたのか、サポート的に入ったってことなのか、色々な仕事してればしょうがないですな、と。

 そういう側面はあるもののキンクスのアリスタレーベル一作目としてここまで洗練されて垢抜けたアルバムが仕上がるとは誰も思っていなかっただろうけど、実にシンプルで格好良いアルバムになっている。正に天才の作ったアルバム、と言わんばかりのメロディセンスに溢れた作品。アメリカ市場向け、と言いながらそのメロディや曲調は明らかに英国風味なマイナー節が多くてどこがアメリカ向けなんだ、って思う部分もあるけど、音の作り方なんだろうなぁ、どう聴いてもアメリカ向け。でも曲は英国そのもの、という面白さ。このアルバム聴いて泣けない人もいないんじゃないか?ってくらい。いや、思い切りロックなんだけどね、染み入るメロディってのがホントに心に染みてくるから困りモノなんです。それこそがキンクス=レイ・デイヴィスの真髄でさ、そんなのがそこかしこに仕込まれてる。それを支える弟も見事だし、メンバーもそりゃ素晴らしいです。隠れた傑作と思っている作品のひとつ。

R.I.P Jim Rodford






The Who - Maximum As & Bs

The Who - Maximum As & Bs
MAXIMUM AS & BS [5CD]

 大物バンドになるとマニアってのが勿論たくさんいて、こんな時代だからマニアの交流なんてのも世界中で行われているし、だからこそ誰かが気づいた疑問に対して数多くのマニアが意見を述べるみたいな構図にもなり、そこから新たな発見が数々行われる、それをレコード会社もある程度は参考にしてマニア向けのニッチなアイテムをリリースしてくるというのも割りとある気がしている。何がマニア?って話になるんだが、まぁ、一般的に自分も好きだし結構マニアだよ、なんて言っていられる人は多分マニアではない(笑)。まだまだ知らない事だらけなんだよ、って言ってるのが一番怖いかも。モノラル・ステレオバージョンのち外からミックス違い、バージョン違い、国ごとのプレスによる違いやプレスミス、左右反転からアルバムジャケットの色違いやロゴ違いや型番まで、マトリックスもあるしレーベルもある。オフィシャルだからと言ってもミスクレジットや収録された中味が異なっているとかオリジナル何とかって書いてあるのに異なってるとかそういうのを整理して認識しているのがマニアだ。いや、別にそれが良いというんじゃなくて、そういうのが聴いてると気になってくるもんなんだそうです。うん。

 The Whoの5CDセット「Maximum As & Bs」なんてのがリリースされていた。何かと思ったらハイ・ナンバーズ時代のデビューシングルからThe Who名義での最後、と思われるシングル「Be Luckey」までのすべてのA面B面が網羅されているボックスセットってことだ。曲だけ見れば普通にThe WHoを聴いているリスナーなら大抵持っているだろうし聴いているんだろうって話。シングル集「ザ・シングルス」や「Who's Missing」や「Two's Missing」「レアリティーズVOL.1&2」なんてのも出ているくらいだから特別に目新しいマニアが喜ぶような音源は入っているようには思えない。とは言え、最後の「I Can't Explain (2014 Stereo remix)」ってのが気になってね、1965年のシングルなのにステレオバージョンか…、元ソースが2chか4chで録音されてたんだろうけど、そこからのミックスできちんと出せてるってことはオーバーダビング時にギター被せたとかじゃなかったってことかな、なんて妄想を色々しながら聴くのだ。う〜ん、ステレオだ…、ってYouTube漁ってると色々な年代でのステレオリミックスバージョンがあったからあちこちで出てたのかな、自分的に知らなかっただけかも。それでもワクワクしながら聴けるってのは良いね。たかだシングルをまとめただけなのにこんだけ楽しめるのも面白い。こういうコンセプトで聴いたことがなかったというだけなんだが、それもアイディア次第か。

 改めてThe Whoの楽曲群とバンドの質の高さを認識した次第。どの曲もアイディアに溢れていて常に時代のちょっと先をやっているような感じで、そりゃ今聞けばアレだけど、それでも同時代のバンドとはひと味もふた味も違うセンスがガンガン出てくる。もちろん演奏のぶっ飛び具合もそれを助けていて、キース・ムーンとジョン・エントウィッスルのぶっ飛び感がものすごい。他のバンドじゃ絶対に出てこないもん、こういうの。それでいてピートのセンス…、いやはや同時代のバンドがかわいいブルースをカバーしているのに、彼らはコレだよ。まじまじと5枚をまとめて聴いてしまったのだった。



The Who - Tommy Live At The Royal Albert Hall

The Who - Tommy Live At The Royal Albert Hall
トミー ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール [Blu-ray]

 ジジイ共、スゲェなってののひとつがまたまたリリースされていた。もういい加減いいんじゃね?って思うんだけど、続々とライブをリリースしてくるのがThe Who。ストーンズなんかだと一応今でも新作をリリースしてのツアーだったりライブだったりするからセットリストやステージなんかも凝ってて現役的な活動というのはあるが、The Whoになるともう新作出してもしょうがないし、かと言ってベストヒットライブってのもうなかなかなので、「四重人格」と「Tommy」中心のライブというのがThe Whoの強みとなっていて、それも何度も何度も繰り返してツアーが組まれている。さすがにもういいんじゃね?ってつくづく思うけど、それごとに映像やCDがリリースされていて、どんどんジジイになっていくピートとロジャーがクローズアップされって、ドラムのザックだって90年代の頃はまだ若かったんだけど、今じゃ立派なオヤジ、それでもライブを見ているとぶっ飛ぶくらいのパフォーマンスとプレイを繰り広げてくれるんだから脱帽だ。

 The Whoの「Tommy Live At The Royal Albert Hall」。2017年春の、と言うか毎年春の恒例ティーンエイジカンサートラストライブで「Tommy」を繰り広げたってことでその模様を丸ごとパックしたライブショウの映像化だが、久々に見ても見かけも歌も演奏も対して変わってないな、ってのが最初印象。ベースがピノ・パラディーノじゃなくて若者ってのが少々似つかわしくないけど、さほどの影響はないか。それにつけても「Tommy」の楽曲のクォリティの高さは改めて聴いていてもハンパないな。全部耳タコくらいに聴いているんで全部分かるんだけど、それでもいちいち感動的なまでのプレイがあるもん。やっぱりライブパフォーマンスの強さだよね、ピートがどんどんと繊細なプレイになっていってそれでもワイルドに腕を振り回したりジャンプしようとしたりしてて、もう70歳半ばの爺さんがやることじゃないだろ、と。んでもロックスターなんだよ、やっぱりオーラが漂ってるし、ステージを仕切ってるし。この二人はもうアレだね、若い頃よりもジジイになってきてからの絆がものすごく強いよね。最後に二人で肩組むシーンってのは毎回泣ける。

 今回は鍵盤も入れて「Tommy」を再演しているんで補助的な音も幾つか出されているみたいで、弟のサイモン・タウンゼントの気合も含めてテンションはかなり高い。下手したら昔のトミーライブよりもテンション高いかも。このイベントももう17年続いているというからそれなりに成果はあるんだろうか。オアシスやフーが中心になってるから結構な金額が集まるんだろうし、毎年の収入源にもなっているのかも。そんな理由でもこうしてライブが見られるのはやっぱりありがたいわ。ジジイ共何してるんだ、ってのあるけど見るとやっぱカッコ良いんだもんな。また色々な「Tommy」を聴きたくなってきました(笑)。



John Entwistle Band - Left for Live

John Entwistle Band - Left for Live
Left for Live-Deluxe

 ベースの音は好きだ。いや、当たり前なんだけどバンドやってると自分がギター弾いてて、他はドラムと歌とベースなワケじゃない?んで、ドラムは叩くものだから音の変化ってのはあるけど、ちょいと違うし、歌は歌ってるだけだからもちろん別物で、ベースだけが弦楽器でギターと同じ類のモノだから何やってたって耳に入ってくるし、同じような部分だからいろいろわかっちゃうしさ。細かい音のトーンの違いとかピックアップ替えてるのとかも分かるし、まぁ、そういうモンだからCDとか聴いててもベースの音ってのは好きで勝手に耳に入ってくる。あぁ、そういう意味では歌が一番耳に入ってこないんで(笑)。

 John Entwistleのソロバンド名義でのライブアルバム「Left for Live」。1998年の自身のバンドのツアーからの作品で、唐突に何でまた、って話だけどさ、ベースの面白さとか凄さを実感してしまったトコロで、ジャック・ブルースってのもあったけど、ジョン・エントウィッスルの凄さってのはThe Whoだと1/3でしかなくって、それが実は普通のトコロ行って弾くとぶっ飛ぶくらいに凄い存在感があるという人ってのをライブで実感してたので、ソロバンドの方が派手にベース弾いてるだろ、って話。案の定自分のバンドでのライブだからそもそもあの音でブイブイ弾いている。ジャコパス的なああいうスタイルとは大きく違うけどさ、んで、こんだけ弾いてるってのはロックの世界でも珍しいし唯一無二なプレイヤー。それを普通の曲の中でずっとやってるんだからなぁ…、もちろん他にもそういうベーシストはいるけどこの音もどんだけメタリック?そして弦は金色だし、ホント変わった人なんだよな。

 トリオ編成のバンドで、歌もギターのひとに任せてるから自分はほとんどベース弾きっぱなしというスタイルで、もちろんThe Whoでの自分の曲は歌ってるみたいだけど、基本それも弾きっぱなし。やりたい放題のアルバムで面白い。掛け合いとかじゃなくてやりっぱなしなんだもん。それでもこういうフォーマットでプレイしてて、The Whoでは出し切れていないベースプレイヤーという部分をこういうトコロで発散していたんだろう。面白いのはこの人、The Whoのライブがあった日の夜中に自分のソロバンドのライブを同じ街でブッキングしてたりするんだよ。どんだけベース弾くんだ、って感じ(笑)。





The Who - The Who By Numbers

The Who - The Who By Numbers (1975)
The Who By Numbers

 70年代のロックバンドの作品の評価なんてもう今や大差ないシロモノだと認識すべきだろう。当時こうだったああだった、っても知ってる人の方が少なくなっていってるだろうし、これからの世代にとってそれはあまり意味を持たない戯言でもあろう。貴重な歴史の証言として知識的には入ってくるのだろうけど、それがそのまま今の時代に当てはまるワケじゃないし。でも、面白いことにそんな事言ってても、結局その時と大差ない程度の評価が付けられることも多いんじゃないかな、ってのもある。結局良い作品は良いと思われるし、イマイチなのはいつまでもイマイチと言われるのだ。時代を先取っていたりすると評価は変わるのかもしれないけど、そうそうあるもんじゃないしね。

 The Whoの1975年作品「The Who By Numbers」なんてのは当時から地味なアルバムとかイマイチとか言われつつ、好きなリスナーが隠れた傑作だとか色々と書かれたりしてるのを見ててね、どこか地味で佳作なんだ?って思いもするワケです。音の派手さやパワフルさがレコードの録音からは感じられないのは事実あるけどライブバージョンなんかを聴ける曲はとんでもなくぶっ飛びなパワーを出す曲だし、そっち聴いてからの月極として聴くとこのアルバム、凄く曲が揃っててThe Whoらしいアルバムじゃないか、なんて思いもする。まぁ、本質的には悩めるピートの作品ってのが正しいんだけどさ(笑)。この時点で既に方向性を見失うってのはあまりにも時代を速く生き抜き過ぎたのかもなって気がするが、言葉を変えると妙にノスタルジックな風味を感じるアルバムとも言える。今でもThe Whoってのはこれより前のアルバムまででライブをこなしていけるし代表曲はそっちの方が多いし、好まれてもいるからこのアルバム以降はどうにもパッとしなかった、ってのはホントだ。フラットに聴いててやっぱりそう聞こえるもん。

 このアルバムさ、歪んだギター中心で作ったら結構ハードにドライブしたんじゃないかな。ライブ聴いてるとそう思うけど、アルバムはほとんど全てがアコギとかクリアトーンで弾かれているんだからそりゃパワフルなロックとは離れてしまうわさ。だからアコースティックアルバムとして聴いてみれば何ともカントリータッチにアレンジしてみた作品にも聞こえるし、その分歌メロの良さを再確認出来るように作られているとも言える。あぁ、だから自分的にはあんまり好きじゃないんだ(笑)。こういう方向性でバンドが進んでいけるとは思ってなかったとは思うけど、ひとつの作品としてはあったんだろうね。次の「Who Are You」なんか聴いてると更にどこへ行きたいのかな、なんて思うから正に迷走、やっぱり生き急いだバンドだったんだろう。その犠牲者がキース・ムーンだったのかもね。

 などなど色々言いつつもやっぱりそこかしこでカッコ良さを実感するアルバム。この才能はさすがにピート・タウンジェントだし、ジョン・エントウィッスルのベースだし、ロジャーの歌だからこそだし、キースのドタバタ劇だって相変わらずだ。このクラスのバンドの作品はやっぱり凄いよ。一番凄いのはこのアルバムで最もハードなのがジョン・エントウィッスルの曲ってことかもな。







Ray Davies - Americana

Ray Davies - Americana (2017)
Americana

 本質的に自分が好きな音楽…に限らないのかな、好きなモノでも何でもそれはDNAレベルに刻まれているんじゃないかと思うくらいに、一瞬で引き戻される事がある。音楽でも食べ物でも風景でも、もしかしたら恋人なんかもそうなのかも(笑)。すっかりと風化してしまった印象すらあったThe Kinksのフロントマン、Ray Daviesが10年ぶりにフルオリジナルアルバムをリリース、なんてニュースにもならないし何かでちょこっと知っただけなんで、びっくりしたけどさ、まだやるんだ?って。すっかりライブもそこそこにして隠居生活だろ、ってな感じだったからあの歳になってのオリジナルアルバムなんて…嬉しい限りです。ただ、当初は70過ぎた爺さんのアルバムだからなぁ、なんてノスタルジックな気分だったのも確かだが…。

 Ray Davies「Americana」、2017年作品。凄い。タイトルが頂けないけど、それは音的なものではなくアメリカツアーの時にインスパイアされた事柄をトータルコンセプトアルバム的にしているテーマとしてのアメリカなだけで、もちろんカントリーなThe Jayhawksというバンドをバックに従えての録音だから乾いた感じのアメリカの空気感が漂う作品ではあるけど、中身はどっからどう聴いてもレイ・デイヴィスな作品で、ついついホロリとしてしまうこのメロディの天性の素晴らしさ。於いてもこのメロディセンスは健在でどんだけ良い曲を生み出せる人なんだ、とつくづく感心する素晴らしいアルバム。これぞレイ・デイヴィスですよ、正に。声だってそのままだし何と言うのかな…、情感の篭った歌のツボがしっかりと聴こえてきて上手い下手よりも響く、味わえる、刺さってくる、そういう情感の響きがヒシヒシとね、素晴らしい。バックバンドのスライドやカントリータッチな風味もレイ・デイヴィスの作風には似合ってて、元来湿っぽくなる英国風味を軽やかにしてくれている。もちろんレイ・デイヴィスの歌だけ聴いてればそれはそれは完璧な英国風味でしかないし、メロディラインだって流れだって全部英国的でしかない。パッと聴いただけだとカントリー・アルバムにしか聴こえないんだけどさ、その深さってのがあるんだよ、これ。

 もう何年もまともにThe KinksもRay Daviesもそのまま聴いてないけどさ、こうやって聴いてしまうと凄く自分に染み入るメロディで、あぁ、凄く好きなんだよな、こういうの…って思い出して、思い出してってか、好きという度合いの次元が違う事に気付かされる。圧倒的なんだよ、愛の深さが(笑)。しかも自分で意識してないのにそこにあるという困った好きってヤツだ。ゲストな女性ボーカルもアクセント的に良いかな…、まぁ、物足りなさ感が出てしまうんでまだまだだろ、ってのあるけど。あぁ、良いなぁ…、もう何枚もアルバム聴けないだろうけど、こんな素晴らしい作品をまた残してくれてホントにありがたい。何十回でも聴けてその深さに気付かされてまた追い続けるアルバムになるだろう。これまでのソロアルバムやThe Kinksの「マスウェル・ヒルビリーズ」あたりがカントリータッチで比較されるんだろうけど、2017年にコレだよ、作品のレベルが違うし次元も違うし余裕も違うし、やっぱりそういうのが全部詰め込まれててリラックスして生み出されてる。もう色々なことが吹っ切れててやりたい、やれる音がそこに出ているというだけ。2017年、これからどんな作品がリリースされても多分このアルバムが一番になるだろうな。この良さに痺れてほしいけど、でも、わからなくても嬉しいです。だってそれは自分だけが大事にしてるモノだから分かち合わなくても良いもん(笑)。





Pete Townshend - Scoop

Pete Townshend - Scoop (1983)
SCOOP(紙ジャケット仕様)

 自分でギター弾けるようになって色々と楽しみが出てきて、バンドなんかやったりするでしょ、そんで自分達の曲なんてのをやってみたくなるんだけど、誰が曲なんて作るんだ?って、その時点既に素人でしかないんだけど、そうなってくるとギター弾くヤツが普通は曲ってのを作るんだよ、ってなるし自分でもそうなんだろうなぁと思ってたし、果たしてどうやって曲なんて作るんだ?って所から始まるのだな。その時点でやっぱり才能ないんだけど(笑)、ま、曲らしきものを作る、ってかギターでかき鳴らすとかリフみたいなのを弾いてそれらしくしていくなんてのは出来たりすると思う。ただ、問題はどう作ってもバンドのメンバーにどうやって伝えるんだ、これ?って。テープ録音するってもギターだけだろ?仮歌メロなんて…ね、ヤだしさ(笑)。そもそも考えてないとも言えるが…、4trマルチとか知らない頃のお話でした。

 だからPete Townshendの「Scoop」ってアルバムは相当驚いた。1983年のリリースだからThe Whoが正式に解散してしばらくしてからこんなお宝物をリリースしたんだ…、ギタリストのソロアルバムなんてさほど面白いものが多くないんだが、こういうお宝モノなら受けただろう。一般的なファンの獲得じゃなくてThe Who好きだった人たちへのプレゼントでもあるか。内容はですね、シンプルに本当の意味でのソロアルバムとも言えるんだけど、ピート・タウンゼントが自宅で録音していたThe Whoの頃の楽曲とかのデモテープそのもの。ソロアルバムのもあるけど、どっちでもピートが自分で曲作ってリズムマシンや自分でドラム叩いたり、ベースもギターもピアノも効果音ですらも入れてしかもあのまま歌っている、完全にバンドのメンバーにはこれを聞かせて、やるか?くらいのもの。やるならそれはこのデモテープのコピーだからな、ってレベルだ。バンドメンバーはこの才能を凄いと思っていたんだろうけど、ここまでヤラれると単なるプレイヤーでしかない、っていう感覚でもあったんじゃないだろうか。もっとも単にその通りにやるだけではないし、あのメンバーがこのデモを独自の解釈で叩きつけてくるからこそのバンドのパワーになるのだが、それでもこのデモテープのクォリティの高さというかそのままリリースできるレベルであること自体、それを物語っているけど、ホント、ここまでしたら自分の音世界を他人に伝えるという意味では最強。ものすごい時間かかるだろうけど、もう楽曲が頭の中で全部鳴ってて完成しているんだろうな。それを再現するだけってのが中心で、そこでいじっているウチに新たにアイディアや流れが飛び出してくるっていう感じかな。機材オタでもあったようだけど、それでも凄いわ。ちゃんとミックスもしてたりエコーがかかってたりもするんだから、もうこういう雰囲気で作るんだ、ってのまで指示してる。プロデューサーにすらイメージを伝え切ってるのだ。

 自信のソロアルバムで使われている曲もあるしThe Whoのもあるし、これでしか聴けないのもあったりするんで、ピート・タウンゼント作曲の未発表曲をバンドで迫力増してやったら何か凄いかも、なんて思ったり(笑)。コレはピート・タウンゼントのホントにお宝の一角でしかなくって、このあと幾つかデモテープ系の作品がリリースされるし、果てはThe Who時代の「Lifehouse」や「Tommy」「四重人格」までもデモテープをリリースしてて、ホントに、コンセプトから歌詞から曲、ストーリーや諸々まで全てピート・タウンゼントが作って仕切っていたのがもう明らかで、それでいてあのライブパフォーマンスってのもまたギャップがあって分かりやすい。そんな事を実感するお宝アルバム、しかもアナログ時代は2枚組だからね。







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物心付いた時からロックが好きでいつぞや何でも聴き漁るようになり、多趣味な生活を過ごしているロックマニア。


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