De Danann - Ballroom

De Danann - Ballroom (1987)


 大抵ここの記事を書く時はそのアルバムを聴きながら、Webでアレコレとそのアルバムの情報を幾つも読んで、色々な人が何を感じてるのかとか漠然と書いているものを見ている。それはもう情報が少ないバンドなんかだと英語しかなかったりするからそれも含めてなんだけど、今回もね、昔から傑作と言われていたけど自分では良いなぁ、レベルでしかなくてそこまでなのかな、なんてのがあったアルバムでさ。んでも、こうして記事に書いてみるかと漁っていると面白いレビューがあって、なるほど、と納得した。

 De Danannの1987年リリースの最高傑作と名高い「Ballroom」。ドロレス・ケーンの歌声が主役なのだが、彼女が幸せの絶頂にあった時期のアルバムというのもあるし、音楽的にもキャリア的にも充実していた時期ってのもあるのだろう、以降で聴かれる哀しさ的なのはかなり鳴りを潜めていて、淡いセピア色の雰囲気程度、正しくアルバムジャケットの情景が目の前に広がってくる。更にWebでアレコレ見てるとね、この頃ライブに行った人のログがあって、ライブってもパブでやってるから普通にメンバーも客席で酒飲みながら会話してて、時間になればステージに上がって演奏する、みたいな感じのアットホームなアイルランド的な雰囲気でのライブで、もう全然日本じゃ味わえないだろうし、そういう時にこういうのが似合うんだよな、ってのが正しくそのまま。だからアルバムだけを聴いてどうのと言っているこちらの人間とは種類が全然違ってて「良い」というのは雰囲気も音楽も人柄も含めて、っていう所にあるワケだ。そりゃもうね、手の届かないトコロでああだこうだなんてこの手の音楽を語ってもしょうがないもん。そうやって楽しみたいトコロだよなぁ…。

 そんな事をマジマジと感じたのはやっぱりこの「Ballroom」というアルバムの持つジグ…、リールでの踊ろうよ的な音楽の成せるワザです。聴いてて心がウキウキするし、太ったおばちゃんと一緒にでも踊ろうか的なトコロがあるからさ、やっぱ好きなんだよね、こういうの。アイルランドのケルトのこういうのって凄く自分的には刺激的でロックでもこういうの来るとカッコ良いしさ。目の前で踊ってる姿とか情景が浮かぶんですよ、これ。キライな人はいないと思うけど好んで選んで聴く機会がないだけだろうと思うので、知らなかったらお試ししてください、ってね。Thin LIzzyが理解できるかも(笑)。静と動、ふんわりとした雰囲気をアルバム全体に漂わせるドロレス・ケーンのおおらかな歌声、どこを取っても傑作とした言えない音楽。そこに先のギグでの雰囲気が加わるんだから最高だ。そんなシーンに遭遇してみたいよなぁと思うけど日本じゃなかなかそうはならないし、自分がそういうバーにいたってなかなかそうはならない…、憧れでもある雰囲気かな。





Anne Briggs - Sing a song for you

Anne Briggs - Sing a song for you (1973)
シング・ア・ソング・フォー・ユー

 女性シンガーの歌い方にも様々な芸風があり、それは本人達が狙って出来るものでもなくって自然と歌っている中でそうなる、というのかな、歌い方による影響度合いってのは多少はあるだろうけど、声質によって変わってくるトコロも大きいから、例えば鋭い歌い方がしたい、と思っても実際の歌では柔らかく愛にあふれる歌声にしか聞こえない、なんてこともある。すると今度はそれを活かした歌になってくるのは当然で、そんな事を自然に取り込んでしまって出て来るのが個性ってモンだ。

 Anne Briggsの1973年録音ながらも90年代になってからのリリースとなったアルバム「Sing a song for you」。録音した当時は本人が全然満足出来ないレベルの作品だったようで、だから故にお蔵入りさせてしまい、そのまま引退同然の生活に戻り、育児に専念していたとの話だ。でもこの手の人ってそんなに稼げたワケでもないだろうから家庭に入っての生活ってのが一番幸せだったんだろうなぁとは思う。トラッドなんて歌いたい人が歌って、生活に密着したトコロにある音楽なんだから、そこで楽しんで歌うってのが一番自然なんだろうし。

 そんな背景の中、このお蔵入りアルバムをリリースしないかとの話が本人にも届き、改めて聴いてみれば当時思ったほどの出来の悪さでもなく、バリエーションに富んだ意欲作じゃないかってのもあってリリースされたアルバムが本作。それまでの悲壮感漂うアルバム郡とはちょいと異なり、かなりソフトで幅広いサウンドに載せた歌を聞かせてくれて、ブズーキもロクに弾けなくて…などと言ってたものの、どうしてどうして、しっかりとトラッドに仕上がっているじゃないですか。ジャケットの美貌もしっかりとその瑞々しさを醸し出しているし、何ら違和感ない素晴らしき作品。







June Tabor - Airs and Graces

June Tabor - Airs and Graces (1976)
Airs and Graces

 英国の歌姫たちは品のある女性が多い、と勝手に決めている。お転婆娘やドラッグまみれの歌姫もいるのだろうけど、総じて品のある女性たちが多いように見える。近年のはあまりカウントに入れてないけど、昔の70年代あたりのはそういう印象。もっともそこまで女性の進出が多かったワケじゃないから目立った女性がたまたまそうだった、ってことなのかもしれないけどね。

 June Taborの1976年リリースのファーストアルバム「Airs and Graces」。元々マディ・プライアとのデュエット作品「Silly Sisters」でシーンに登場してきた印象も強く、それを受けてのソロアルバムリリースというタイミングになったようだが、真っ直ぐで清らかで凛とした歌声は正にジューン・テイバーを言い得て妙な枕詞であろう。サンディ・デニーが持つ優しさや柔らかさはジューン・テイバーの歌声にはもっと硬質に表現されており、より一層まっすぐに前を見据えての歌になっている。ジャンルも時代も異なるけどシニード・オコナーなんかのスタイルも似ているかな。ジューン・テイバーの方がもっとピュアにまっすぐな雰囲気はあるか。

 アルバムはほとんどが無伴奏じゃないか、ってくらいに独唱で歌い上げている。バックが入ればそれはそれで聴きやすくなるのでちょこちょこと入ってくる分にはありがたくて、飽きない工夫がされている。やはりどんだけ凄くても歌声だけで聞かされると数曲が限界ですよ。そういうのも含めて作られているけど、その分一曲づつ聴くと息遣いから彼女の歌に込められた雰囲気空気みたいなのもしっかりと伝わってくるのは見事。アルバムジャケットの若くしてこの一歩も引かないと言わんばかりの女王様風な挑戦、レコードを手に取るリスナーは多分皆負けてしまうだろう。こういう作品もあるんだな、という意味でも、またこういう女性っているんだなという意味でも聴いておいて損しないのはあるか。





Maddy Prior - Woman In The Wings

Maddy Prior - Woman In The Wings (1978)
Woman In The Wings

 英国ロックの奥深さってのを実感している人も多数いるだろうし、これから入っていく人も多いだろう。そしてそういうのにお構いなしに普通にへぇ〜とかそうなんだ、的に見ている人も多いだろうし、単に眺めているだけの人もいるだろう。色々いるんで誰向けに、なんてのは大して考えていないけど、やっぱり英国ロックは深い。マーティン・バレかぁ…なんてアレコレしてたらココに行き着いた。

 Maddy Priorの1978年リリースのソロアルバムとしては初めての作品「Woman In The Wings」をリリース。タイミングとしてはSteelye Epanを解散した後にクリサリスからのリリースになったんだけど、そこには同じくタイミング的にトラッドに傾倒していたジェスロ・タルの面々が在籍していて、その関係からかマディ・プライアのこの「Woman In The Wings」もジェスロ・タルの面々が全面協力どころかプロデュースまでしている。はて、それはそれで実に楽しみな組み合わせなのだが、驚くことに見事な融合体としてのアルバムに仕上がっていると言わざるをえないだろう。それ程に完成度の高いアルバムが出来上がっている。

 ジェスロ・タルほどの器用なメンツがプロデュースに関わってくると当然アーティスト側は巻き込まれていってしまうものだが、マディ・プライアは全ての曲を自分自身で作詞作曲して、スタジオに持ち込み歌い上げている。タルの面々はコレをどうプロデュースするか、だけだったので、いつもの自分達のような作風で仕上げている。結果的にはストレートで抜けるようなマディ・プライアの歌がタルの複雑なアレンジと楽器群を背景に鳴るというシロモノで、これがまた見事。当然ながらイアン・アンダーソンの独特のフルートが鳴り響くし、マーティン・バレのナイスな独特のギターソロも聴かせてくれる。そして何といってもタル風味の味わいが醍醐味。

 作品としてはかなり地味なポジションにあるが、もっと英国ロックからトラッド、更にはタルのプロデュースのおかげでの幅広い歌を披露することになったマディ・プライアの底力の魅力。そんな美しき変態的な融合作品だと知ってもらいたく思う。深い作品とはこういうのを言うのだろう。素晴らしい。





Richard Thompson - Hand of Kindness

Richard Thompson - Hand of Kindness (1983)
Hand of Kindness

 英国メロディのセンスの面白さは脈々と玄人好みの世界に受け継がれている…と思いたいなぁ。近年でもこの手の良質なメロディーってのがきちんと受け継がれているのかどうかはよく知らないけど、多分こういうことやってる人はたくさんいるんだろうと思う。表現アレンジ変わっても本質的なメロディセンスは流れていて素朴にそういうのを出して受け入れられる土壌もあるだろうし、ちょっと話題になったりするだけで良いんだけどね、そういうの知りたいよね。ただ、このヘンってオリジナルプレイヤーがいたらそれで十分とも言えるからフォロワーが必要かどうかってのは時代が選ぶかも。

 Richard Thompsonの1983年リリースのソロアルバム3枚目となる「Hand of Kindness」。冒頭はノリノリのカントリーソングが出てきて、おいおい、それで良いのか?なんて思ったりもするけど、これもまたリチャード・トンプソンの特技の一つ、カントリーってのはケルトとルーツを共にする土着音楽でもあるし近似的資質は持ち合わせているんだからこういうのが出来上がってもまったくおかしくはないんだが、やっぱりどこか違和感あるのが本音。80年代ってのもあるからか音的には時代が反映されてしまっているけれど、よくよくクレジット眺めてみれば単純にFairport Conventionが揃っていると思ってもらえれば良い…どころか思い切りフェアポートじゃねぇか。プロデュースもジョー・ボイドだし、ボーカルが女性じゃないだけでモロです。だから故、色々と遊べると言うか、多様なスタイルに挑戦していてカントリーからポップ的ロック的、いわゆるエイティーズ的なのもいつものフェアポート的なのもあったりと実に多彩な楽曲が収録された作品になってる。これをどう聴くか、ってのはあるけど、そもそもリチャード・トンプソンのアルバムを聴こうなんて人はそれなりのバックボーンがある人だからこういうのいくら作ったってリスナーは離れないだろうし、ある種自由ではあるよな。その分、何作ってもそんなに売れないってのもあるんだろうが(笑)。

 相変わらずギターが目立ってるのは当たり前だけど、あのリチャード・トンプソン節な妙なギタースタイルがもうちょっと聴きたいかなぁ…、まぁ、聴けているといえば聴けてるからこういうモンなんだが、それにしてもいつ聴いても不思議な音色。ライブ映像見てると普通にストラト弾いてるだけなんだけど、どうしてこういう音色が出てくるんだろう、と毎回思う。こんな風にギター弾く人それこそいないだろうし、やっぱり個性的なプレイだ。何度となく聴いて楽しみそしてどんどんとその深みにハマっていく自分が楽しみです。





Judy Collins - Who Knows Where The Time Goes?

Judy Collins - Who Knows Where The Time Goes? (1968)
時の流れを誰が知る

 シンガーの声とか歌い方ってのはやっぱりロックなものとそうでないものがある。例えフォーク一本で歌うにしてもその違いは出て来るような気がしてて、聴いているとそれが分かる。カントリーとかブルーグラスの歌聞いててもやっぱり明るさや楽しさはあるけど、はまいれないし面白味も飽きてきてしまうな、という自分の好みだけど、そこで出てきたのがJudy Collinsのジャケット。これもまた聴いてなかった人の一人で、アメリカものはどうもブルース以外は後回しになってしまうので、こういうのを全然聴けていない。まだまだ人生長いから聴いていこう、と思う部分もあるのでジャケットの良さに惹かれて聴いてみました。

 Judy Collinsの1968年作「時の流れを誰が知る」。タイトルが「時の流れを誰が知る」だからね、実際Fairport Conventionよりも早くリリースされたとか…、なんでもその筋では有名なジョー・ボイド氏からライブのテープをもらって聴いて、これは素晴らしい、ってことで速攻でカバーした、のか制作側のよこしまな意向なのかは分からないけど、まぁ、普通に良かったから歌ってみた、なんだろうな。他にもカバー曲をいっぱい入れてるし、メジャー前のジョニ・ミッチェルの曲とかもあるようだし、歌手としての才能のある人だから誰の曲であれ自分の歌にしちゃっただろうし。んでさ、聴いてるととてもフォーク一本的なシンガーで、もちろんピアノとか色々入ってるけど、ガンガンなロックじゃないのは当たり前で、フォークシンガーみたいなもんよ、でもさ、ロック的な声質なのか歌い方なのか、深いんだな…、この深みとかが響きやすいというか、単なるシンガー的な位置ではないと言うのか、そう感じちゃう部分あるんですな。

 んでもって、期待の「時の流れを誰が知る」ですよ。もちろんFairport Convention含めて散々聴いているし、サンディ・デニーが大事に歌っていた曲だからさ、どんな風になるのかなぁ、と。でもね、聞く前からJudy Collinsの声だったら多分ぴったりハマるだろうし、何ら遜色ないカバーなんだろうというのは予想が付いたし、実際その通りだった。稀代の歌手二人がこの名曲を歌っているバージョンがあるってのは嬉しい贅沢です。サンディ・デニーの方が透明感あるかな。こっちはもうちょっと湿っぽい感じ。いやはや素晴らしい。






The Rails - Fair Warning

The Rails - Fair Warning (2014)
Fair Warning

 そっか、往年のアーティスト達からしたらもう子供、孫のいる世代にまで時代は進んでいるんだから、子供たちのバンドや孫達のバンドなんてのが出ててもおかしくないんだよな。とは言えども、それだけではなかなか世界レベルのミュージシャンになっていくってことも多くないようで、それほど2世や3世が音楽の世界を賑わせるようなことは実際にはないようだ。ロックの世界でも何人かはあるけど、そう多くはないし、当たり前と言えば当たり前なんだろうな。

 リチャード・トンプソンとリンダ・トンプソンの娘であるカミラ・トンプソンが夫と組んだバンドがこのThe Railsで2014年にアルバム「Fair Warning 」をリリースしている。あの親にしてこの娘あり、と言わんばかりの歌声に音楽スタイル、しっかりギターも弾いているし歌も母親ばりの歌声で、旦那のギターも冴えたもの、なかなか面白い方向に人生が進んでいるようだ。カミラはソロアルバムもリリースしていて、さすがにそっちはアコギ一本ってワケにもいかず、ポップス調の作品には仕上がっているけど、本質的にはこういうトラッドフォーク路線のままというのは興味深い。

 こちらのThe Railsはカミラだけが主役でもなく、旦那の方もかなり主役を張っているので、そのヘンはしっかりとしたバンド感を持っているみたい。今時の、と言えば今時のなんだろうけど、若者たちがこういう音楽を奏でているってのは面白いよなぁ…、どこかでリチャード・トンプソンあたりもライブに参加してたりするんだろうか、まったくおかしくないサウンドだからありうるだろう。新世代によるあの時代のサウンドのリバイバル、しかも血統書付きのバンドなんだから許されてしまうであろう所が見事。そしてその期待を裏切らない音が出てきてるからこれもまた素晴らしい。こういうのから入るのが良いかも。





Gay & Terry Woods - Backwoods

Gay & Terry Woods - Backwoods (1975)
バックウッズ (生産限定紙ジャケット仕様)

 英国フォークの深淵は底なし沼とも言われてて、確かにちょっと漁ってみてからはその深さをマジマジと実感することも多く、どこまで行っても底が見えずにどんどんと広がり続けていく。それは時代が新しくなって、新婦がリリースされるからと言う無限地獄ではなく、一定の時代の中だけでもどこまでも深く広く繋がっていってしまう懐の広さがあるからだ。どこからでも良いけど、ちょっと漁ってみて、そのメンバーの誰かのキャリアを木にしてみるとすぐに深い世界の一歩に入り込めるだろう。制覇するなんてことは考えるだけ無駄なので、手当たり次第に存分に楽しんで聴き漁り、気になる楽器のプレイヤーの名を記しておいて次に進む…、ジャズと似てるかもね。

 Gay & Terry Woodsという夫妻のユニットの1975年のファーストアルバム「Backwoods」。あの初期Steeleye Spanに参加していたけど、即離脱してこの夫妻ユニットでまた夜に出てきたという二人。その前は「Woods Band」ってのでもやってたからキャリアも十分な方々、このアルバムもそういう意味では豪華なゲスト陣営も含めて期待されていた一枚。完全にフォークだけでもなくしっかりとバンド形式での楽曲もあり、美しき歌声とアコギで聴かせるだけではなく、フォークバンドアンサンブルな曲も楽しめる。とは言え、今の気分はアコギだけの作品の方が好みだけどね。

 案外聴きやすい。ポップとは言わないけど、割とそれに近いメロディラインで出来上がっていたりするのでさほどの違和感は抱かないんじゃないかな。ギターにしても小難しいことしている訳でもないし、アコーディオンやらで柔らかいサウンドに仕上げてくれてるのもあるからね。ほんわかとした気分になり、日常から離れる意味ではとても良い作品だし、何かほっとする味わいを持っている。そこかしこで名盤扱いされてるので、疑いなく聴いてみて損はしないんじゃないかな。





Richard Thompson - Acoustic Classics

Richard Thompson - Acoustic Classics (2014)
Acoustic Classics

 今は昔ほどギタリストっていうのがクローズアップされなくなってて、ギターヒーローなる人がほとんど聞かれないのが今の時代。ここ最近でのギターヒーローって誰かいるか?ってな話で、それがロックとかならまだしも、アコースティックやフォーク含めての人ってなるともう全然聞く事がなくって、誰かいるのなら教えて、ってくらいに知らない。たくさんの人が出てきてるのはもちろんだけど、ヒーローになるまでの人ってのがいるのかどうか…。ウチのブログでもこりゃスゲェっての取り上げたりしてるけど、だからと言ってその方々がヒーローなのかってなるとちょいと違うのかな、って思うし。

 昔はヒーローがいた。リチャード・トンプソンなんかカルトヒーローみたいなモンだ。最近でこそ知名度がやや高まった部分あるけど、それでも玄人向けのヒーローだもんね。そのRichard Thompsonが2014年にリリースした作品が「Acoustic Classics」。この前作が「Electric」で、対になった一枚ってことで、そうだね、自身の過去の名曲郡をアコギ一本で歌っているというシンプルなコンセプトによる作品集、なんて低予算で出来上がった作品なんだろう、と思わざるをえないけど、そういうのを望んでいたリスナーも多かったに違いない。だから、このアルバムはホントに一人でオーバーダブも最低限にしてあって、大部分がギターを爪弾いて歌っているので、生々しいRTが楽しめる。もっとギターに偏った作品でも良かったんだけど、さすがにこの時代にそこまではなかったか。

 それでもしっかりとギターを聴かせる部分ではテクニカルなプレイを聞かせてくれているし、さすがの一言。いつものRT独特のエレキギターでのプレイとは違うけど、やっぱり軽やかなプレイは独特の個性だ。ホントにギター上手いんだよなぁ、こういうところ。ロックのギターヒーロー達には出来ないであろうプレイだし、英国の裏側を知らないと弾けないプレイだし、そういう個性が出てて現役でいられる人って少ないので頑張ってほしい人。じっくりと研究していくとホントに深くて面白いのも特徴的で、そろそろハマってかないとな…。







Bert Jansch - Avocet

Bert Jansch - Avocet (1980)
Avocet

 昔は全くもって謎のギタリスト達で、ジミー・ペイジが好きなギタリスト達なんてのに名前が出てても聴くことすらなく、レコード屋でどこ探したら見つかるかも分からず、結局まるで見かけることの無かったトラッドフォークの偉人たちのアルバム、今でこそCDやら何やらと簡単に手に入るけど、それはもう全然見ることなかったもん。中古レコ屋でもほとんど見なかったし、どういうコーナーに置いてあったのやら…、そもそもそんなに枚数出てなかっただろうから見なかったのかもしれないけどね。

 Bert Janschの1980年リリース作品「Avocet」、全曲インストモノと聞いて、これは期待できると思って聞いたアルバムのひとつ。もっともバート・ヤンシュの場合は歌心もひとつのパフォーマンスだったんで歌がないってのはどうかってのはあるけど、ギターだけで聞かせてくれるのも面白いだろうという期待感はあった。お馴染みの仲間たちのサポートは入っているからギターだけのアルバムじゃなくて、バンド形式でのインストアルバムってトコだけど、1980年にこの音で出すってのはなかなかレトロな作風で時代を超越しているとしか言えない(笑)。それでもこの時代になって聴き直してみれば、それはそれは見事なまでの大英帝国のトラッド、フォーク的な作品で田園風景そのままをイメージできる作品で、美しい情景が目の前に広がることだろう。タイトルは全て野鳥の名前で、イメージもそのまま自然な風景に溶け込むような音楽世界。

 ギターを弾きまくるってのがさほどないので、バンドアンサンブルと音楽世界そのものを追求している作品のためか、取り立ててバート・ヤンシュが際立つようなこともない点がちょいと物足りないけど、インストアルバムとして聴けばそりゃそうだ、こんだけバランス良く出来上がっている音楽をどこかに寄せて崩すこともなかろう、というのは分かる。ジョン・レンボーンのとはまた方向の違うインストアルバムで両雄の個性が現れ出ている作風が面白い。こういうのをじっくりと聴けるような時が来るとはな…、大人になったものです(笑)。



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物心付いた時からロックが好きでいつぞや何でも聴き漁るようになり、多趣味な生活を過ごしているロックマニア。


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