Richard Thompson - Sweet Warrior

Richard Thompson - Sweet Warrior (2007)
Sweet Warrior

 Apple IDって怖いわ〜、Appleサポセンにトラブル対策やるとApple IDで繋いで画面上を向こうで見られながらトラブル対処してくれるんだよ。そりゃさ、出来るのわかってるけど目の前でそれ見ると、何でも出来ちゃうんだな…とつくづく思った。FaceTimeの仕組みで繋がったIDの画面見るんだろうね。触るまでは出来ないんだろうけど、ちょこっといじればそれも出来ちゃうだろうから、なるほどよく出来た仕組みだ、と。ってことはもうかなりの人間を掌握しちゃってていつでも個人情報を見れる立ち位置になってるってことだ。同じことは多分Googleも出来ちゃうワケで、だから故のこの2大企業が世界を牛耳っていけるのだろう。いやはやそれもまたユーザー側が好んで提供している情報で、何ともロックらしからぬ…とは先日と同じお話(笑)。

 Richard Thompsonの2007年作「Sweet Warrior」。この人さ、21世紀になってからの活動も結構精力的で、しかも随分とロックやポップス界へ接近してきてて、それは時間の経過と共に名が知られていったことでポピュラーな世界に入っていったんだろうな、って感じだ。嫌らしさはないし、自然にその世界にいて、しかもしっかりと自分を持ったままその世界にいるのは見事。フォークの世界の中でのエレクトリックギタリストってところから独特のバグパイプギターと呼ばれるスタイルを作り出し、そのままロックの世界に接近してって、今じゃもうその筋の人だ。80年代からソロアルバムが盛んになっていって、吹っ切れてったのかな。そんな経緯からか此処のトコロのアルバムも実に聴き応えのある作品ばかりでどこから斬っても楽しめるのは嬉しい。しかも毎回刺激的なギターが必ず聴けて曲も勢いを増しているってなもんだ。

 この「Sweet Warrior」はタイトルからして攻めてる。実際は自分の生活って何事とも戦わないといけないし、って意味でのWarらしいんで深みはないんだけど、その分勢いある曲も多数入ってて、暗めなのが少なくて良い。フォーク出身らしい味わいとロック寄りへのギタープレイ、そして弾けた歌や哀愁の歌声、見事にひとりのアーティストとしてアルバムが出来上がっていて、ホントはギター弾いていたいんだろうけど、その中でも自身の作品ってのも出来ちゃう才能があるからこうなるのだろうか、サクッと作ってもこんだけの味わいある作品が出来ちゃうんだから凄いわ…、サクッてほど簡単じゃないだろうが。音が繊細で美しくて響くトーンなんだよねぇ…、あ、ギターの音ね。どの曲でも同じトーンは無くって、それぞれ違いながらもリチャード・トンプソン節…、ホント深いギタリストです。




Fairport Convention - What We Did on Our Holidays

Fairport Convention - What We Did on Our Holidays (1969)
What We Did on Our Holidays

 iPhoneの設定やらを見ていて思う。皆こんな設定が上手く使いこなせているのか?って。多分初期出荷時の設定そのままで概ね使われているのだろうなとは思うけど、それが故にネットワーク上へ様々な情報が流出してたりメールやら写真やらSNSはそもそもだけど全部見えてしまっていたりするんだろうな、とか。その辺はともかく当然ながら自分たちが見ているURL情報もダダ漏れなのでどんな傾向なのかとかはもちろん丸わかりだが、95%くらいの人は気にしていないだろう。知ってる人は楽しんでるか、しょうがないよな、だろう。常々恐ろしい世界だと思う。やれば個人まで全て判明してしまう情報なんだから余計に、だね。好んで監視社会に飛び込んで行ってるんだから始末に負えない。まるでロックとは正反対の方向性ですな。

 Fairport Conventionの1969年2作目のアルバム「What We Did on Our Holidays」。ご存知前作でのジュディ・ダイブルがバンドを去り、The Strawbsでの実績もあったサンディ・デニーがバンドに参加した最初のアルバムで、アルバム的にはそこまで出てきてはいないけど、相当衝撃的な才能の持ち主ってのはバンドと一緒になった頃から既にメンバーには判ったらしい。この頃のフェアポート・コンヴェンションってアシュリー・ハッチングスにリチャード・トンプソン、イアン・マシューズなんて才能達がいたんだから、そこで存在感を見せつけてしまった天才的才能ってのは相当なモンだったんだろうなぁ。今でも世間的にそう評価されてるんだから当然なんだけど、歌声だけ聞いててもそこまでサンディ・デニーの凄さってのはなかなか分からない。ただ、魅力的な声と歌い方だな、ってのがあるくらい。それが多分凄い事なんだろうけど。曲作りの才能もあるってのも言われるよね。でもさ、こんだけのメンツの中だからそりゃもうそのレベルが当たり前で…ってな話。そんな才能の持ち主たちが若気の至りながらも必死に作ったアルバムがこのセカンド。

 端的にはアメリカのフォークシーンに呼応した作品だし、英国らしさってのが出てるのはサンディ・デニーが凄いけど、いや、もちろん他のメンツもとっても英国らしいんでバンドの音で聴けばやっぱり英国フォークの世界です。ディランやらの曲がってカバーあるけど、全然実感しないしさ。ただ、重厚さってのはまだまだ出てきてないのかも。アシュリー・ハッチングスお得意の世界観なんだけどね、そこまででもない。そうだなぁ、単に静かなフォークアルバムで聴けば聴くほどに味わいは出てくるけど、そこまで聴けるか、ってのがあるくらいには静かでフォーキッシュ。自分もそこまで何度も続けては聴かないし。それでも色々な意味では重要な作品だし、何てったって二十歳前頃のリチャード・トンプソンの才能を味わえるってなモンだ。


Marc Ellington - Rains / Reigns of Changes

Marc Ellington - Rains / Reigns of Changes (1971)
Rains / Reigns of Changes

 自宅でのPC比率はどんどんと下がっているようだ。自分的にはそれはほぼあり得ないんだが、一般的にはそりゃそうかも、というのは頷ける。創作的なことを何かするならPCになるのだろうが、閲覧だけだったらiPadみたいな方がラクなのは確かだ。それがそのまま比率に反映しているってだけで、世間的には創作する方が圧倒的に少ないワケだからそうなるのは必然。やっぱりiPad向けなコンテンツを検討していかないとダメなんだろうな、などとも思うが、そもそもニッチな世界にしか意味のないウチのブログってのはこの一般概念に当てはまるのだろうか?という疑問も出てきたりして…。

 1971年にリリースされたMarc Ellingtonの2枚目のアルバム「Rains / Reigns of Changes」はこれもまたフェアポート・コンヴェンション勢が多数ゲスト参加していて上質のフォークロックが展開されていて実に聞きやすい。古くからの逸話で、実はこの時期に渡英してきていたアメリカ人だが、英国ミュージシャンとして認められている、なんてもっともらしい話が広がっていたが、近年のCDリマスター発売時に本人インタビューが実現していて、自分は英国生まれの生粋の英国人だよ、とさらりと言われていて、これまでのウワサなんてまるで意味のないものだったというのが判明したようだ。そりゃそうだろうなぁ、こんなのアメリカ人で出来るとは思えないもん。ジャケットだけ見てれば確かにアメリカ人的ではあるし、色々いるから全てそうだとも言えないけど音は出て来るだろ。

 んでこれまたリチャード・トンプソンとデイブ・マタックス、デイヴ・ペグの演奏が素晴らしくてねぇ…、いや、マーク・エリントン本人のもシックで良いんで、決してアルバム全編を食ってしまってるワケじゃないが、ロック好き視点から聴くと、このフェアポート組の戦士の高さは響きますね。挙句イアン・マシューズやサンディ・デニーもコーラスで参加しているんで、全くフェアポート色出てくるし、時代は名盤オンパレードの頃だからもうね、やっぱり素晴らしいんですよ。それが全員ノリノリで参加してるんだから主役もやる気になろうってもんで、傑作に仕上がってます。



Mike Heron - Smiling Men With Bad Reputations

Mike Heron - Smiling Men With Bad Reputations (1971)
Smiling Men With Bad Reputations

 電車に乗ってると周囲のスマホ中毒患者達の画面がやたら目に入る。以前は見てるのも悪いしなぁ…ってのもあったけどもうここまで広がってるとマーケティングリサーチしちゃうくらいで、ふ〜ん、なんて数秒くらいは見てることも多い。別に面白くはないから見てると言うか目に入るくらいなのだが、大抵はゲームでSNSもあるか。女性では通販多いなぁって思ったけどオトコでも結構その手の見てるの多いんだな。ほとんど皆さんイヤフォンしてるから何か聴いてるんだろう。あとはさ、YouTubeで何か見ながら聴きながらってのもそこそこいるけど、アレ、恥ずかしくないんかな。アニメらヘンとかお子様アイドルとかニヤニヤしながら見てるってさ。日本はそういう世界になっているんだろうけど、それでもやっぱり気持ち悪いわ。

 1971年リリースのIncredible String Bandのリーダー?Mike Heronの衝撃的なソロファーストアルバム「Smiling Men With Bad Reputations」。何が衝撃的かって、参加ミュージシャンの交流の広さの幅がロック的に衝撃で、それでいて全然ロック側には聴かれていない作品と言うか、無名な感じがある。英国でのミュージシャン仲間での評判と人気は合致しないのでこういうアルバムがいくつも隠れていたりするのだが、よくあるメジャーなプレイヤーの、例えばジミー・ペイジやピート・タウンジェンドなんかのゲスト参加アルバムなんてリストにもあまり出てくることのない作品だったりする。他にはキース・ムーンやロニー・レイン、エルトン・ジョン、リチャード・トンプソンやデイブ・マタックス、デイブ・ペグ、サイモン・ニコルなどのフェアポート勢はともかくながらDr.Stragely Strangeやジョン・ケイルあたりも参加してるという超豪華ゲスト陣。それを統率したのがジョー・ボイドで、さすがの交流枠。実に幅広く、如何に影響力を持った人かが分かるけど、そんなに知られてないでしょ?そういうモンなんだろうね。

 んで、このアルバム、基本フォークです。ゲスト陣営が参加ってもフェアポート勢は基本そっちに軸足あるしね、だからフォーク的作品。ややアシッド的だったり実験的だったり脳天気にしてみたりしてカラフル感があるけど、結構スタンダードにフォーク。The Who連中の絡んでる曲はさすがにロックそのもので、ってかThe Whoそのものだからなぁ、その辺はピートとキース、ロニー・レインの素晴らしきドライブ感が楽しめる。やっぱり目玉な一曲です。他の曲とのギャップがありすぎてロック好きなヤツがこのアルバム聴いてたらこの一曲だけで満足するんじゃないかってくらい。正にThe Who。

 んで、1991年のCDリリース時に発掘されてきたボートラの中ではジミー・ペイジとデイブ・マタックス、デイブ・ペグ組とのセッションが入ってて、これがまた圧倒的にフェアポート・コンヴェンションにジミー・ペイジが参加してたらって感じになってて実に魅惑的な仕上がりになっているのが興味深い。これ、テレキャスでの参加だろうなぁ…とか思ってしまうんだが、もっとヘンなギターの可能性もあるか。しかしこの手の曲調でこういうペイジ節弾かれるってなかなかチグハグ感あって面白い。そしてマタックスのドラムが見事にかっちりとハマっててどことなくボンゾスタイルなマタックスが実に美味しい。

 マイク・ヘロンのアルバムを聴いていたハズなんだが、結局ロック好きな二曲に集約して何度も聴いてしまったという始末…、そのフロントのマイク・ヘロンも力量見せてくれてるけど、やっぱり凄い連中は凄かった。素晴らしいアルバムをありがとうっ!



Pentangle - Reflection

Pentangle - Reflection (1971)
リフレクション(紙ジャケット仕様)

 美しい世界観は人それぞれにある。音楽だけでも千差万別、どころか自分の中だけでも様々な美学が存在しているし、それが他の人達とどう違うのか同じなのか個性的なのかはよく分からん。ただ、それぞれの世界に同じように美学を感じる人がいるってのはあるからそれはヘンなものでもないのだろう。それが同居するというのは人それぞれになるのだろうが。結局美学ってのが好きなんだろう。姿形が、ってんでもなくて様々なトコロでの美学、って意味になるけどね。

 Pentangleの1971年リリースの5枚目のアルバム「Reflection」。ギターの名手、ジョン・レンボーンとバート・ヤンシュを配する英国の王道フォークバンドの作品だ。この頃既にLed Zeppelinはアコースティックアルバムをリリースしていたワケで、それと比較してみると随分と牧歌的ではある。まぁ、当たり前の話ではあるが、ギタープレイにはジミー・ペイジの指使いが聴いて取れるのは言うまでもない。ちょいとスタイルが違えばこういうのやってた人だろうしね。もっとも逆はあり得ないので、ジミー・ペイジって人は奇特な存在ではある。そしてペンタングルの「Reflection」はこれまでのアルバムからしてもちょいとポップ寄り…ってのもヘンだけど、ストイックなフォークへの求道心からはもうちょっと浮上している感じすら受けるアルバムではある。言い換えれば割りと聞きやすい作品に仕上がっている。

 個人的にはジャッキー・マクシーの歌声をもうちょっとクローズアップしてくれても良い気がするのだが、そこはバート・ヤンシュも味ある歌い方するから作曲者であればしょうがないか。だから地味な感じは受けてしまうんだよね。かと言ってギターに専念してたらそこまで名前が売れてなかっただろうし、納得はする。そういえばこのアルバムではジョン・レンボーンなのかな、エレキで結構ソロを弾いていて、これまでのアコースティック三昧からはちょいと逸脱、バート・ヤンシュはバンジョーを用いていて、ちょいと新しい雰囲気出してるか。そういえば男性陣だけが出張ってる曲は雰囲気的にはディラン風味にすらなっているかも。じっくりと聴き込むと恐ろしくギターに引き込まれる作品、というかギタリスト達、だけどアルバムとして聴くとちょいと刺激不足かも。もちろん深いのは変わらないのだが。


Fairport Convention - Live In Finland 1971

Fairport Convention - Live In Finland 1971
Live In Finland 1971

 オカルトチックなB級ロック路線も面白いかと思ったが、割と英国のその辺って漁ってしまっているんであとは80年以降あたりになるのだろうけど、その辺ってのもあまりにもB級感あったりするし面白味もないんだろうな…って事でそっちの路線に走らないでガラリと変えてみようかなってことで、ここのトコロ実はずっと聴きたかったトラッド系の音へでも行こうかね、と。んでもいきなりフォークじゃしょうがないし、ならば実はロック以上にロックしているエレクトリックトラッドの最高峰から聴いていくか、ってことで登場です。

 Fairport Conventionの発掘ライブアルバム「Live In Finland 1971」なんてのがリリースされていた。実はフェアポート・コンベンションの1971年ってのは当時最もバンドがヤバいんじゃないか、って思ってた時期でもあって、それを反骨精神にしたのか、一番白熱したライブがひたすら繰り広げられていたというライブ的にはとんでもない時期というのも定説で、いくつものラジオ音源ライブなんてのもあったりしてオフィシャルなのかハーフオフィシャルなのかアングラなのかわからないけど結構発掘されているので、随分楽しませてもらっている。今回の「Live In Finland 1971」は多分ハーフオフィシャルなリリースなんだろうと思うんで出しておくけどね、いやはや相変わらずこの時期のフェアポート・コンベンションは凄まじい。歌姫と崇められたサンディ・デニーは勿論脱退しているし、その筋のギタリストとしては名高いリチャード・トンプソンも既に離脱していて、4人しかいないバンド体制でのチャレンジ、ただしここに強者が一人いたのだな。

 デイブ・スウォーブリックというフィドルの名手、これがサイモン・ニコルとひたすらにバトルを繰り広げてってそこにはZeppelinのドラマーにもなれたデイブ・マタックスとジェスロ・タルの活動で知られているデイブ・ペグが支えていくのだな。それがまた変拍子っつうか、トラッドだからそもそもリズム変わっていくし、伝承音楽の独特のメロディだったりするから一筋縄ではいかないのをガシガシやっちゃうもんだからとんでもない白熱した世界が出来上がっていくんですな…、凄いよ。



De Danann - Ballroom

De Danann - Ballroom (1987)


 大抵ここの記事を書く時はそのアルバムを聴きながら、Webでアレコレとそのアルバムの情報を幾つも読んで、色々な人が何を感じてるのかとか漠然と書いているものを見ている。それはもう情報が少ないバンドなんかだと英語しかなかったりするからそれも含めてなんだけど、今回もね、昔から傑作と言われていたけど自分では良いなぁ、レベルでしかなくてそこまでなのかな、なんてのがあったアルバムでさ。んでも、こうして記事に書いてみるかと漁っていると面白いレビューがあって、なるほど、と納得した。

 De Danannの1987年リリースの最高傑作と名高い「Ballroom」。ドロレス・ケーンの歌声が主役なのだが、彼女が幸せの絶頂にあった時期のアルバムというのもあるし、音楽的にもキャリア的にも充実していた時期ってのもあるのだろう、以降で聴かれる哀しさ的なのはかなり鳴りを潜めていて、淡いセピア色の雰囲気程度、正しくアルバムジャケットの情景が目の前に広がってくる。更にWebでアレコレ見てるとね、この頃ライブに行った人のログがあって、ライブってもパブでやってるから普通にメンバーも客席で酒飲みながら会話してて、時間になればステージに上がって演奏する、みたいな感じのアットホームなアイルランド的な雰囲気でのライブで、もう全然日本じゃ味わえないだろうし、そういう時にこういうのが似合うんだよな、ってのが正しくそのまま。だからアルバムだけを聴いてどうのと言っているこちらの人間とは種類が全然違ってて「良い」というのは雰囲気も音楽も人柄も含めて、っていう所にあるワケだ。そりゃもうね、手の届かないトコロでああだこうだなんてこの手の音楽を語ってもしょうがないもん。そうやって楽しみたいトコロだよなぁ…。

 そんな事をマジマジと感じたのはやっぱりこの「Ballroom」というアルバムの持つジグ…、リールでの踊ろうよ的な音楽の成せるワザです。聴いてて心がウキウキするし、太ったおばちゃんと一緒にでも踊ろうか的なトコロがあるからさ、やっぱ好きなんだよね、こういうの。アイルランドのケルトのこういうのって凄く自分的には刺激的でロックでもこういうの来るとカッコ良いしさ。目の前で踊ってる姿とか情景が浮かぶんですよ、これ。キライな人はいないと思うけど好んで選んで聴く機会がないだけだろうと思うので、知らなかったらお試ししてください、ってね。Thin LIzzyが理解できるかも(笑)。静と動、ふんわりとした雰囲気をアルバム全体に漂わせるドロレス・ケーンのおおらかな歌声、どこを取っても傑作とした言えない音楽。そこに先のギグでの雰囲気が加わるんだから最高だ。そんなシーンに遭遇してみたいよなぁと思うけど日本じゃなかなかそうはならないし、自分がそういうバーにいたってなかなかそうはならない…、憧れでもある雰囲気かな。





Anne Briggs - Sing a song for you

Anne Briggs - Sing a song for you (1973)
シング・ア・ソング・フォー・ユー

 女性シンガーの歌い方にも様々な芸風があり、それは本人達が狙って出来るものでもなくって自然と歌っている中でそうなる、というのかな、歌い方による影響度合いってのは多少はあるだろうけど、声質によって変わってくるトコロも大きいから、例えば鋭い歌い方がしたい、と思っても実際の歌では柔らかく愛にあふれる歌声にしか聞こえない、なんてこともある。すると今度はそれを活かした歌になってくるのは当然で、そんな事を自然に取り込んでしまって出て来るのが個性ってモンだ。

 Anne Briggsの1973年録音ながらも90年代になってからのリリースとなったアルバム「Sing a song for you」。録音した当時は本人が全然満足出来ないレベルの作品だったようで、だから故にお蔵入りさせてしまい、そのまま引退同然の生活に戻り、育児に専念していたとの話だ。でもこの手の人ってそんなに稼げたワケでもないだろうから家庭に入っての生活ってのが一番幸せだったんだろうなぁとは思う。トラッドなんて歌いたい人が歌って、生活に密着したトコロにある音楽なんだから、そこで楽しんで歌うってのが一番自然なんだろうし。

 そんな背景の中、このお蔵入りアルバムをリリースしないかとの話が本人にも届き、改めて聴いてみれば当時思ったほどの出来の悪さでもなく、バリエーションに富んだ意欲作じゃないかってのもあってリリースされたアルバムが本作。それまでの悲壮感漂うアルバム郡とはちょいと異なり、かなりソフトで幅広いサウンドに載せた歌を聞かせてくれて、ブズーキもロクに弾けなくて…などと言ってたものの、どうしてどうして、しっかりとトラッドに仕上がっているじゃないですか。ジャケットの美貌もしっかりとその瑞々しさを醸し出しているし、何ら違和感ない素晴らしき作品。







June Tabor - Airs and Graces

June Tabor - Airs and Graces (1976)
Airs and Graces

 英国の歌姫たちは品のある女性が多い、と勝手に決めている。お転婆娘やドラッグまみれの歌姫もいるのだろうけど、総じて品のある女性たちが多いように見える。近年のはあまりカウントに入れてないけど、昔の70年代あたりのはそういう印象。もっともそこまで女性の進出が多かったワケじゃないから目立った女性がたまたまそうだった、ってことなのかもしれないけどね。

 June Taborの1976年リリースのファーストアルバム「Airs and Graces」。元々マディ・プライアとのデュエット作品「Silly Sisters」でシーンに登場してきた印象も強く、それを受けてのソロアルバムリリースというタイミングになったようだが、真っ直ぐで清らかで凛とした歌声は正にジューン・テイバーを言い得て妙な枕詞であろう。サンディ・デニーが持つ優しさや柔らかさはジューン・テイバーの歌声にはもっと硬質に表現されており、より一層まっすぐに前を見据えての歌になっている。ジャンルも時代も異なるけどシニード・オコナーなんかのスタイルも似ているかな。ジューン・テイバーの方がもっとピュアにまっすぐな雰囲気はあるか。

 アルバムはほとんどが無伴奏じゃないか、ってくらいに独唱で歌い上げている。バックが入ればそれはそれで聴きやすくなるのでちょこちょこと入ってくる分にはありがたくて、飽きない工夫がされている。やはりどんだけ凄くても歌声だけで聞かされると数曲が限界ですよ。そういうのも含めて作られているけど、その分一曲づつ聴くと息遣いから彼女の歌に込められた雰囲気空気みたいなのもしっかりと伝わってくるのは見事。アルバムジャケットの若くしてこの一歩も引かないと言わんばかりの女王様風な挑戦、レコードを手に取るリスナーは多分皆負けてしまうだろう。こういう作品もあるんだな、という意味でも、またこういう女性っているんだなという意味でも聴いておいて損しないのはあるか。





Maddy Prior - Woman In The Wings

Maddy Prior - Woman In The Wings (1978)
Woman In The Wings

 英国ロックの奥深さってのを実感している人も多数いるだろうし、これから入っていく人も多いだろう。そしてそういうのにお構いなしに普通にへぇ〜とかそうなんだ、的に見ている人も多いだろうし、単に眺めているだけの人もいるだろう。色々いるんで誰向けに、なんてのは大して考えていないけど、やっぱり英国ロックは深い。マーティン・バレかぁ…なんてアレコレしてたらココに行き着いた。

 Maddy Priorの1978年リリースのソロアルバムとしては初めての作品「Woman In The Wings」をリリース。タイミングとしてはSteelye Epanを解散した後にクリサリスからのリリースになったんだけど、そこには同じくタイミング的にトラッドに傾倒していたジェスロ・タルの面々が在籍していて、その関係からかマディ・プライアのこの「Woman In The Wings」もジェスロ・タルの面々が全面協力どころかプロデュースまでしている。はて、それはそれで実に楽しみな組み合わせなのだが、驚くことに見事な融合体としてのアルバムに仕上がっていると言わざるをえないだろう。それ程に完成度の高いアルバムが出来上がっている。

 ジェスロ・タルほどの器用なメンツがプロデュースに関わってくると当然アーティスト側は巻き込まれていってしまうものだが、マディ・プライアは全ての曲を自分自身で作詞作曲して、スタジオに持ち込み歌い上げている。タルの面々はコレをどうプロデュースするか、だけだったので、いつもの自分達のような作風で仕上げている。結果的にはストレートで抜けるようなマディ・プライアの歌がタルの複雑なアレンジと楽器群を背景に鳴るというシロモノで、これがまた見事。当然ながらイアン・アンダーソンの独特のフルートが鳴り響くし、マーティン・バレのナイスな独特のギターソロも聴かせてくれる。そして何といってもタル風味の味わいが醍醐味。

 作品としてはかなり地味なポジションにあるが、もっと英国ロックからトラッド、更にはタルのプロデュースのおかげでの幅広い歌を披露することになったマディ・プライアの底力の魅力。そんな美しき変態的な融合作品だと知ってもらいたく思う。深い作品とはこういうのを言うのだろう。素晴らしい。





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物心付いた時からロックが好きでいつぞや何でも聴き漁るようになり、多趣味な生活を過ごしているロックマニア。


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