ロック好きの行き着く先は…

60年代のブリティッシュロックから70年代黄金期を聴きまくり、行き着く先はマニアへの細くて深い道のみか。それでも楽しいロックこそ我が人生。 by フレ

Soft Machine - Breda Reactor

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Soft Machine - Breda Reactor
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 プログレッシブ・ロックと言えばクリムゾンやEL&P、ジェネシスやイエス、フロイドの名が挙がり、ちょっと深掘りしてもムーディー・ブルースやプロコル・ハルムあたりが出てくる程度が一般的な範疇だろうと思っているが、もうちょっと入ってみてもソフト・マシーンやキャラバンのようなカンタベリー系は出てこないように思う。やはり何かのきっかけがないと進みにくい世界だろうし、それは何なのかとなるとこれも難しく、今となっては道標が何処にあるのかすら不明な状況な気がするがしっかりと若い世代にも聴かれているのだろうか。知ってるリスナー向けに幾つもの発掘音源が続々とリリースされてそれはそれで喜ばれていたが、最近の状況までは把握仕切れていない。

 Soft Machine発掘ライブ名盤、迫力のライブアルバムとして語られる事の多い1970年1月のオランダ公演がメンバーか関係者によって録音されていたらしく、ブライアン・ホッパーの手元にあったテープから2005年になりCD「Breda Reactor」としてリリースされて陽の目を浴びている。音質は決して良い状態とは言えないが、音が揺れる事はなく固定的なバランスで聴けるのでリリースに踏み切れたのだろう。その分ヒュー・ホッパーの歪んだベースが凄まじく、ラトリッジのクールに見えるくせにとんでもなく目立つ鍵盤と共に大いにソフツのアグレッシブなライブの姿を楽しめる、どころか迫力に息を呑む白熱のライブに出会える素晴らしきライブ盤。その分ロバート・ワイアットのドラムや歌が引っ込み気味になってしまっているが、この時点で既にボーカルパートの不要さが顕著になり、ワイアットのドラミングも他の楽器陣営のインプロビゼーションとは異なり勝手なプレイに始終しているようにも聴こえてくるので、バンドの方向性には疑問を抱いていたり、悩ましげな部分もあって叩いていたのだろうかとも思える。

 時期的にはセカンドの「Volume 2」とサード「Third」の間のライブで、リン・ドブソンがフルートでも参加している貴重なカルテット時期のライブで、数年前までカンタベリーのジャズポップシーンで、などと書いていた面々がここまでフリージャズに舵を切ってプレイしている姿は想像も付かなかっただろうし、メンバーもそう思ってなかっただろう。それでもこの音だ。更にバンドはアルバムの音から随分とかけ離れた音楽をプレイしているからクリームあたりよりもぶっ飛んだ世界を進めているとも言えるか。ものすごい才能と熱気とセンスが詰め込まれた恐るべきライブの記録。テープはチョコチョコとぶった切れているから作品としてはどうしようもないが、これだけの迫力が残されている事の方が貴重で歴史的だ。古いロックバンドのインプロビゼーションを少しでもかっこ良いと思うならばこの演奏は是非とも聴いておきたい。曲を知っている知らない、バンドを知っているという次元を超えてロックとはこういうものだ、と叩きつけてくれる、が、彼らはロックを演奏している気はサラサラないだろうところが面白い。ジャズメンになりたくて電子楽器で遊び始めてバンドを結成してフリーに演奏していたらここまでの熱気になってしまって、やってるスタンスはジャズだが出てくる音がロックになってる。しかし凄まじい記録としか言えない。





The Wilde Flowers - Tales of Canterbury

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The Wilde Flowers - Tales of Canterbury (1994)
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 久々にカンタベリーシーンの音に触れたが、やはり心地良い音のソフトさを味わえた。プログレバンドとして知られているからなかなか手が出せてなかったり、カンタベリーの意味不明な世界に触れるのをためらっているならその偏見は全て捨て去ってCaravanの中期の傑作あたりにどんどんと手を出すべきだろうし、マッチング・モウルやロバート・ワイアットのソロ作品でも良い。その辺りなら手を出して聴けなかったと言う事もなかろうし、ともすればカンタベリーの傑作が良く分かるかもしれない。やや演奏に比重を置いた傑作ならハットフィールド・アンド・ザ・ノースあたりに手を出すのも分かりやすいような気もするがそれ言うと何でもありになるので、軽快な歌ものとして聴ける範囲からが良い気がする。そのカンタベリーシーンの源流とも呼ばれるバンドにワイルド・フラワーズがあり、カンタベリーシーンの全てのルーツはここに集約されるのでご紹介。

 The Wilde Flowersは1963年にホッパー兄弟が組んだバンドで、そこにはロバート・ワイアットがボーカルで、ケビン・エアーズも参加していて、歌う時にはロバート・ワイアットがドラムに回っている。ロバート・ワイアットが歌専門の時はロバート・コフランが在籍していた。ブライアン・ホッパーはギターからサックスに回ってしまったり、ヒュー・ホッパーはここでベースに馴染んだという話だが、そこに絡んだのがパイ・ヘイスティングで、その後リチャード・シンクレアも加わっているが、後年にはマイク・ラトリッジも参加しているから見事にCaravanとソフト・マシーンの初期のメンツが全て関わったバンドになっている。面白いのは60年代中期前後のバンドなので、英国ではいわゆるビートバンド=ビートルズやストーンズ、キンクスやフー、初期のムーディーズなどが出揃った頃に出てきているが、見事なまでにブルースに影響は受けておらず、下手したらR&Rにも影響を受けていないのかもしれない。もっともカバーしてるからそれは無いが、人によっては多分あまり絡んでない気もする。どちらかと言えばそれよりもジャズに親しんでいたような節も大きく、その辺りはカンタベリー周辺でそれなりにミュージシャン気質やセンスある連中が集まったからそれぞれの好みは別として一緒にやっているような雰囲気か。故に実に多彩なバリエーションに富んだ作風が立ち並び、いわゆるマージービート系のサウンドとは全く異なる。同時代でこの差は凄く、明らかにThe Wilde Flowersの連中のセンスはキレキレに感じる。

 そんな初期のデモテープ集が纏められて、日本でもその伝説のバンドの音源が発掘されたとばかりに話題になって1994年にリリースされた「Tales of Canterbury」が自分もワイルド・フラワーズとの最初の出会いで、今ではその拡張盤がリリースされてもっとディープなソースが収録されているらしいがそれはまだ未聴。まずはこちらを改めて聴いているが上記に書いた通りにマージービートとは全く異なり、それよりもロバート・ワイアットのあの哀愁漂うボーカルも若い頃からそのまま。明るい曲を歌っているのにモノ悲しく聞こえるのもどうかとは思うが個性的な歌声なのは確か。その意味ではポップソング+サイケシーン風味を漂わせた曲が多いが、音色やアレンジあたりには後のカンタベリーシーンの姿をチラホラと垣間見れる部分もあるのである程度カンタベリーに慣れてから耳にすると面白さが増すだろう。




Caravan - The Album

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Caravan - The Album (1980)
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 何かのきっかけでロックが好きになり、その周辺から色々と聴き漁る幅が広がっていくが、いつでも新鮮な刺激があるとそれに夢中になって進んでいく。当然気になるフレーズやかっこ良い曲、フレーズに痺れて何度も聴き込み、ふとまた新たな刺激を何かで聴いてしまうと今度はそれはコンセプトアルバムとしての出来映えだったり、妙な楽曲の組み立て方だったりと常に聴いた事のないような組み合わせや歌声やアレンジ、曲構成やリズム、または楽器のテクニカルさ加減に刺激を受けたりもする。そんな色々な楽しみ方があるのに、まだ他の人と話したりすると面白い角度で聴いていたり、見えてなかった点を話されたりするから深くて、名盤として知られるアルバムですら、自分でも何度も聴いたアルバムですらそういう発見がある。

 カンタベリーシーンの雄、Caravanは1978年にレコード会社との契約を切られて一旦バンドも解体しているが、翌年にはまたメンバーが再結集してライブを行い、そのライブアルバムを持って契約を果たそうとしていたらしいが、その合間にリチャード・シンクレアがまたしても離脱してしまったのでそのライブアルバムはお蔵入りにして、スタジオ制作に入ったらしい。ここではデイブ・シンクレアも戻ってきているのでほぼ全盛期メンバーによる再結集だったが、リチャード・シンクレアもこの後また戻ってきているからその夢は次作「Back to Front」で叶っているが、今回はその境目となった1980年リリースの「The Album」。リチャード・シンクレアは居ないが、パイ・ヘイスティングの秀逸なソングライティングは相変わらず、と言いつつもデイブ・シンクレアとパイ・ヘイスティング、更にジェフ・リチャードソンも加わっての作曲陣営となっているから割と民主主義的なアルバム、言い換えれば統一性が無いアルバムになるはずなのが、見事にキャラバンというバンドの味付けに包まれての傑作に仕上がっているから面白い。だからこそ「The Album」とのタイトルにしたのか、とある種の自信の現れが見える気がする。

 この浮遊するポップセンスは果たして誰のものなのか、歌メロはパイ・ヘイスティングが創っているとするならばこの統一性のあるメロディセンスは納得するが、そこまでは傍から聴いていてもよく分からない。ただ、曲によってのセンスのバラツキは感じるのでそれをパイ・ヘイスティングが纏め上げてしまっているのだろう、と勝手な解釈で聴いている。その意味では一貫してあのキャラバンの作風、雰囲気、独特のジャズ風味ポップス的エッセンスを含むロック、カンタベリーシーンからちょいと上にあるセンスは傑出している作品で、アルバムジャケットのダサさが音の秀逸さを台無しにしている気がするが、中身は素晴らしい。自分も1980年リリースでこのジャケットなら入手するのは後回しでも良いかと聴くのは結構経ってからだった気がする。それでも聴いてみれば一旦解散した影響など皆無、どころかそれによってリフレッシュして作り直せたのじゃないかと思われる程に抜けきっている作品。



Gong - You

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Gong - You (1974)
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 スペイシー=宇宙的な雰囲気を感じる楽曲を奏でるバンドや曲は数多い。60年代からテーマとして取り上げられているし、その夢的な世界の象徴として宇宙はモチーフになるし、それでいて現実的でもあり各国がこぞって取り敢えずの月探索に精を出して開発力を競っていたが、いつしかそれは当たり前に出来るだろうとの技術力の向上から月そのものへの探索は下火になっていったし、そもそもそこまで探索すべきモノも無かったのかもしれない。そこから先の火星や金星、木星への探索は難しいし、結局地球圏の外に多少出れるかというレベルでしかなったのが今の時代のオチとも思う。それでも70年代頃までは宇宙に対する憧れも大きく、音楽の世界でも宇宙をイメージするサウンドが多数模索されて今では何となくスペイシーなサウンドと言うとああいうのだろうとのイメージが共通する程度にはなっている。

 Gongは正に宇宙空間の音を出していたバンドだとの認識も強く、その意味ではジミヘンやホークウィンドと並んで言われる事もあるかもしれない。それはデビッド・アレンとジリ・スミスの妙な物語「ラジオ・ノーム・インヴィジブル」の世界観に繋がっているが、アルバム3枚使っての壮大なストーリーは音楽との相性もあって、ゴングがもっとも充実していた時期、音楽的にもかなり実験しながら、面子に恵まれた事も手伝って見事に音を具現化出来たバンドだ。1974年にリリースされた「You」はその三部作の最終作となり、クライマックスがいくつも訪れる傑作になってて、正にスペイシーと言われる音楽世界がこれでもかとばかりに散りばめられてて、なるほどこれぞ宇宙か、と納得する。それは偏にティム・ブレイクのシンセサイザー音に尽きるが、物語はアレン・スミス夫妻の賜物、そこに後のフュージョンゴングを制覇するピエール・ムーランのドラムが重なっているから音的なセンスの良さは伺えるだろう。

 ゴングもバンド遍歴が複雑化しているし、正体は何なのかもよく分からないバンドで、初期のアレン調のクレイジーさが宇宙観に流れ、そこで本作を機にゴングを辞めてしまったが、バンドはその後見事にテクニカルなフュージョンバンドへと進化し、一方のアレンも自身の名を冠してのゴングを復活させていてメンバーが流動的と言うかカンタベリー系列のバンドは皆が皆そうだが、友人たちが何となく集まってバンド組んでアルバム出してるからその都度名前が変わり、また昔の名前も引っ張ってきたり忙しい。ジャズ界のようにリーダーアルバムとして名前で認識していく方が分かりやすいのかもしれない。ここではスティーブ・ヒレッジが一旦脱退したのにゲスト参加しているし、何でもありで楽しそうだ。そしてアルバムは強烈なインパクトは放つ事なくそのままほんわかと作品を終えていく。もしかしたらここで終わりとも決めてなかったのかもしれないし、特に物語を止める、続けるなども考えてなかったのかもしれない、そんなエンディングを迎えている。



Massacre - Killing Time

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Massacre - Killing Time (1981)
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 そもそも才能あるミュージシャンなのに、それに加えて他の才能も開花させる事から次なる事業や商売を始めてそれなりに成功もする場合もあるから面白い。単なるリスナーとしてはその他の、と言う点はさほど興味も持たなくて良いだろうが、来歴を漁ったり調べたりすると当然その辺の事も出てくるから詳細を把握するまでには至らないものの、サイドビジネス活動やその人の取り組み、思想や思考がどことなく見えてくる。それによって心理的に嫌いになる場合も実は数多くあるが、それはまたそれで個人のお話だからアルバムや音楽性とは切り離して捉えておこう。そんな真意から自身の熱意がそのまま商売になり、かなりの成功を収めたとも言えるいわゆるレコメン系の創始者クリス・カトラーは元々がヘンリー・カウのドラマーだった事はよく知られているが、今回はその手前のお話。

 ヘンリー・カウからアート・ベアーズへと流れどちらも積極的な活動がままならなくなった時にクリス・カトラーはレコメンレーベルを立ち上げて自身達の不遇な環境打破のために他のアーティストや意思を持った活動を支援する方向に向いたが、前衛芸術家思想の強かったフレッド・フリスはニューヨークに渡り、今では名が通っているビル・ラズウェルとフレッド・マーと共にトリオ編成でのMassacreなるバンドを結成して1981年にアルバム「Killing Time」をリリースしている。ニューヨークに渡って2年してからのアルバムリリースなだけあって、スタジオ音源とライブ音源が混ざっているアルバムだが、冒頭のスタジオ音源を聴いた瞬間から正に80年代の音、と笑ってしまうのは今ならではの話。こんな前衛的なバンドの音でも80年代のあのドラムの音が出されている事に驚きとその影響の大きさを感じ、更にその音からしたら実にマッチしない前衛的なハードでアグレッシブなインプロプレイが炸裂する楽曲に戸惑いを感じた。鋭角的なギタースタイルは相変わらず、そこにビル・ラズウェルのこちらも積極的に攻めてくるベースプレイが見事にマッチして、若干18歳のフレッド・マーの食いついていくドラミングも合わせてのテンションの高さが売りの目を離せないスタイルはファーストアルバムならではの気合かもしれない。

 スタジオ音源での妙なバランスとは変わり、数多く収録されているライブ音源の方が当然ながら緊張感も高く、インプロビゼーションそのままを楽しめるが、どこか間延びした雰囲気が出てしまうのは即興だからこその味わいだろう。良くも悪くもその緊張感を作品として聴くかライブ感として捉えるかの違いはあるが、このテンションなら勢いでライブ感を味わえるのは間違いなく、全編インストに近く、スリリングな演奏性は当然ながら、当時流行していたフュージョンの流れは皆無、ロック側ではこういうインスト演奏ものはさほど多くもなかったから随分新鮮で刺激的なセッションだったと思われる。ある種、キング・クリムゾンの歌なしでジャムりまくっている姿に近く、更にテンション高くぶつかりあっている、言うならば60年代末期〜70年代のロックが持っていた音のぶつけ合いそのままが聴けるとも言える。この後90年後半になってからはレコメン系では知られているThis Heatのチャールズ・ヘイワースが参加してこのユニット自体は継続しているが、この辺りからレコメン系のメンバーとバンド名のワケの分からなさが深くなり探求するには相当の労力が必要となっていく。





Art Bears - Winter Songs

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Art Bears - Winter Songs (1979)
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 人々の記憶に残る青春の一ページのようなポップミュージックもあればその人の人生のBGM的に寄り添っているヒット曲もある。ロックの世界でも同じような背景や自分の年齢や環境、背景にリンクするサウンドが伴うから結局はポップミュージックと同じく人生の時間軸に付きまとうアルバムや音楽がある。それはリアルタイムの作品もあればアルバムリリース年とは関係なく、自分が聴いていた時期とのリンクもあるので、既に一概にリリースされた年が年齢と一致しない場合も多いから面白い。若くても親の影響で古い音楽知ってる、昔よく聴いたなどと時間軸が定まらない会話も増えてきているし、自分自身もそう感じる事が増えてきた。それだけ時代が経ても残される音楽はやはり素晴らしいのだろうし、一般的に認知度が低くても素晴らしいアルバムはしっかりと残っている、残されている、と思いたい。更に再発見される場合もあるからいつまで経っても楽しめてしまう世界。

 アルバム「悲しみのヨーロッパ」でHenry CowとSlapp Happyの意外な融合劇が彼ら自身を刺激し、そのままライブや次なるアルバムに向けての活動を開始したが、その不思議な蜜月は一瞬で崩れ去り、ダグマー・クラウゼとフレッド・フリス、クリス・カトラーを除くと皆が皆前向きには捉えられなかったようだ。その結果Henry Cowは停滞し、同時にSlapp Happyも崩壊していったが、その賜物として上記三名が組んだ素晴らしいバンドがArt Bears。1978年にアルバム「ホープス・アンド・フィアーズ」をリリースしてその前衛的なサウンドを聴かせてくれたが今回は1979年リリースのセカンドアルバム「Winter Songs」を聴いてみた。これまでよりも更に研ぎ澄まされた緊迫感溢れる中でのダグマー・クラウゼの浮遊するボーカルが宙を舞い、そのボーカルスタイル自体もより一層複雑化しているからか単純にポップなメロディが、とも言えないムード。面白い試みがいくつも施されてて、ひとつのボーカル旋律に対して囁く歌声や低音での歌声などひとりで多重の歌声を被せていると書くと実にイージーだが、複数人が同じメロディを異なる世界で歌っているかのような複雑怪奇な、もっと言えば不協和音を心地良く組み上げている歌が印象的で、実にアーティスティック。そこにこれまでから更に一層鋭角的に刺さりまくってくるフレッド・フリスのギタープレイやクリス・カトラーのドラムが入ってくる。これほどの鋭さは果たしてどのように出来上がるのか、またこの緊張感の高さをどうやって作り上げていけるのか、そこにはフレッド・フリスならではのセンスが織り込まれまくっている。

 そんな自身のスタイルを極めていった挙げ句のダグマー・クラウゼの起用、彼女は彼女で実験精神旺盛に取り組んでいく事でバンドとしての、ユニットとしての実験性は高まり結果的に音楽的にかなりの高みに昇り詰めていった快作だろう。同じ時期にケイト・ブッシュがシーンに登場し、話題をさらっていた姿を横目に見ていてどう思った事だろうか。あちらはもっとポップな世界で超個性を発揮していたから意識していなかったかもしれないが、後の時代アート・ベアーズを聴いているとパッと聴いてみるだけなら似た雰囲気あるとは思う。ちょっと聴けばそれは表面上の、ダグマー・クラウゼの歌声だけが相通じる世界で音楽的な面ではまるで異なる事に気づくが、もっとアート・ベアーズを耳にしてもらう広がりの例えとしては有用だろう。この手の音はハマるとずっとハマる中毒性が高いので、存分に味わえるが、本作は軽快な面もあるが鋭角的に刺さる側面が強く、更にテンションの高さも武器にしている美しい作品。彼らのアルバムは自分自身に多少なりともゆとりがあり、じっくりと聴ける時に聴く事をオススメするし、そうじゃなければ苦痛にすら感じるかもしれない。ただ、本当に美しいアートセンス溢れる素晴らしきアルバムだと自分では思う。