ロック好きの行き着く先は…

60年代のブリティッシュロックから70年代黄金期を聴きまくり、行き着く先はマニアへの細くて深い道のみか。それでも楽しいロックこそ我が人生。 by フレ

「note」マガジン発刊

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Peter Green - The End of The Game (1970):

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 一向に自分の趣味の解釈が先に進まなくて未来永劫この辺をウロウロしているのだろうか?それはちょっと勿体無い。いくつかは近代的なアルバムもつまみ食いしてるからそれだけではないけど、この辺の時代は今聴くとまた違う面白さが分かってきて、またじっくり聴こうと思うアルバムも多い。音楽は不思議だ。そのものは変わっていないから自分の耳の成長故になるが、それを知ってればCDもレコードもそんなに売らなかった。

 Peter Greenのソロデビューアルバム「The End of The Game」は1970年にリリースされて、自分がピーター・グリーンの名前を知った10代の頃はこのアルバムが名盤とロック名鑑に載ってた。Fleetwood Macの初期作品もあって、ちょこっと説明も書いてあったけど、ジャケットがそれらしくてカッコ良いからきっとハードなブルースに近い音が入ってると思って当時聴いた。そしたらいきなりサイケな世界が繰り広げられて、まだその頃はブルースはああいうモンとしか認識してないし、それですらきちんと判ってない頃にいきなりこんな世界が出てきて、まるで理解不能なアルバムだった。ジャケットの迫力とピーター・グリーンのブルースメンのイメージが最初から崩れ去った感覚。

 今にして思えば、かなりヤバい時期の作品だからこういう方向はあった。そのおかげで明らかに独自解釈による世界観を打ち出しているので、やはりドラッグの力は凄いと知らされた。ブルースギターを弾けてしまう人だから、それを拡大解釈して異なる世界に持ち込んでみたらどうなるのか、サイケデリックや精神世界への実験サウンドとしてトライしてみたら、ヒステリックなギタープレイがぴったりと当て嵌まった事例の作品。ノンスケールのフリースタイルのプレイ、そしてリズムにも縛られずに音を出しまくって異世界との融合を果たした意味で、とてつもない名盤、傑作と言える。ただし、それはピーター・グリーンの名前を意識しない場合だ。無知から聴いてこのギター誰だ、ピーター・グリーンだ、それは凄いとなるなら良いけど逆はない。

 改めてこんなアルバムだったんだ。ガキには聴けないのも納得。自分はこれを良いと言えるセンスの持ち主でもなかった普通のロック好きな少年だった。プログレにしては中途半端だしアバンギャルドには整合性取れ過ぎてるからフリーフォームのジャムセッションに近い。でもある程度決めてるからその中間くらいか、ピーター・グリーンの異質なアルバムとして輝き続ける。





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Fleetwood Mac - Peter Green's Fleetwood Mac (1967):

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 ゲイリー・ムーアが所有していたピーター・グリーンの59年製のレスポールは生前にはバリバリに使っていて、名器だから良い音がするなら当たり前ではある。まだピーター・グリーンが自分でそのギターを使っていた頃のアルバムがフリートウッド・マックの初期の作品群で、中でもやはり最初のアルバムが一番雰囲気出てるし、モロにブルースばかりで興味深い。

 「ピーター・グリーンズ・フリートウッド・マック」は1967年のリリースで、メンバーはミック・フリートウッドとジョン・マクヴィー、ピーター・グリーンの三人に加えてジェレミー・スペンサーと器用なギタリストの四人組。モロに黒人ブルースをカバーしているというかモチーフにしているというかそのままと言うか、雰囲気を出している点では凄いけど音楽的個性面から見ると、少々物足りない。だが時代も時代なので英国三大ブルースバンドと数えられるが、それでもこれだけのブルース作品をオリジナルも混ぜて作れるのは相当好きじゃないと無理だろうから、才能は凄くある人達。

 昔なかなかこのファーストアルバムが見つからなくて、あまり注目された時期じゃないから再発もされてなくて入手に苦労した。入手したらこんなにチープなブルースかと思ったが、ジェレミー・スペンサーの派手な音を聴かせるギターと噂のピーター・グリーンのレスポールサウンドは結構痺れたし、レスポールはやはり良い音がする。「Shake Your Moneymaker」のカバーはバターフィールド・ブルース・バンドもやってたので選曲のセンスが似てたのか面白く、あれだけ色々なブルースの曲がある中で似たような曲を選んでくるのは、ロックミュージシャン的にやりたくなる曲調があるのだろう。

 それとこのアルバムのジャケットは、縮小されてる時もあって、多分これがオリジナルのサイズと思う。なかなかうらぶれた雰囲気が良い。ヘヴィー過ぎないブルースを奏でていた最初期のマック、ボーナストラック付きの限定盤は更に迫力あるのが聴けて楽しめる。





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Ten Years After - Ssssh (1969):

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 1969年ウッドストックに出演して一躍ヒーローの座を獲得した若き英雄アルヴィン・リー。もちろんそれ以前にアルバムデビューしており、ファーストアルバム「Ten Years After」ではまだサイケデリックな雰囲気も残したサウンドだったが、セカンドアルバム「Undead」ではいきなりライブアルバムとしてリリースし、「I'm Going Home」を収録している事で有名。まだサイケデリック的な印象を残したままではあるが、ジャジーに展開する秀作。その後「Stonedhenge」も1969年にリリースして、かなりブルースロックの原点の良い作品。

 ウッドストックが宣伝となったアルバム「Ssssh」はウッドストック後にリリースされ、ロック名盤一覧には必ず挙がるくらい定番化された傑作。初っ端の「Bad Scene」から意表を突く曲展開が繰り広げられ、バンドの一体感と曲のアグレッシヴさが目立つ入魂の一曲。ともすれば単なるキワモノバンド扱いされてもおかしくない曲ではあるが、フォーカスみたいなおちゃらけさではないと認識されているのでマシではある。その分ギターソロが滅茶苦茶カッコ良い。ブルース一辺倒でもなくメロディをなぞっている部分もあって円やかに弾かれている。そしてバックのオルガンとベースとドラムとの一体感が熱くて素晴らしい。燃えてくる。その分二曲目はアコースティックに展開した曲で、なかなか趣がある小曲。「Stoned Woman」はリフ一発で時代の産物か、もちろんギター弾きまくりなので悪くない。そして入魂の一曲「Good Morning Little Scoolgirl」。ヤードバーズもカバーしていた有名曲だが、圧倒的にTYAのこのバージョンの方がカッコ良いし、演奏力も違う。クラプトンを向こうに回してそれは言い過ぎかもしれないが、そう思えるプレイぶりだからしょうがない。アレンジ力の差だろうけど、それよりもアルヴィン・リーの技量の凄さが全面に出せているのが強くて、ここでのギタープレイこそがブルースロックのお手本みたいな面も大きい。静と動、バンドとのバランス、心地良いところでリフレインに戻るなどZep好きの自分にはツボにハマる。

 以降はアルバムB面で、A面ほどのアグレッシヴさがなく少々テンションダウン。悪くないけど実験的な面が大きいのでちょっと求めてるのと違う。しかし、最後の「夜明けのない朝」はもう王道ブルースロックで、カッコ良いです。リフはともかくギターのフレージングや歌の絡みやハモンドもひっくるめてTYAの最高作の最後を飾るに相応しい曲。スタンダードなところで期待するフレージングが必ず出てくる裏切られない曲だから余計に良い英国ブルースロックの象徴。

 この人達はライブに尽きる。「Live at the Fillmore East」とウッドストックから半年後のライブ盤がリリースされていて、これがかなり熱くてよろしいライブです。「Recorded Live」だとちょっと大人しいから70年前後が良い。





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Cream - Fresh Cream (1966):

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 クラプトンの若かりし頃の迸るギタープレイを久々に耳にすると、艶やかで味のある音色とトーン、更に感情の起伏が表れたプレイに驚く。こういうプレイがあったからこそ神と崇められ、白人ブルースギタリストの地位を確立したと思い出した。最近のクラプトンを聴いても全然感じないので耳にしないけど、60年代のクラプトンは見事なギタープレイヤー。そんなことを感じたので、一気に王道路線へと突き進む事に。

 クリームが1966年に発表したファーストアルバム「Fresh Cream」。以降クリームは1968年暮れには解散してしまうので、スタジオアルバム数枚程度、そして本領発揮のライブ盤が何枚かしかリリースされていないが、2年半の活動の割には数多いリリース状況とも云える。

 それぞれ華麗なる経歴を持つ三人が新たな野望を持って組んだクリームで、セッションではライブとほぼ同じような構図でプレイされていたと予測されるが、いざスタジオ録音によるアルバムデビューとなると無茶も出来ないので落ち着いた、ファーストアルバム「Fresh Cream」。後のクリームの経歴を考えると地味な音と思ったが久々に聴いたら全然十二分にヘヴィーなクリームの世界だった。

 曲自体はどれも2分から4分で押さえているからポップなバンドに聞こえてしまう感じがあった。「Spoonful」はスタジオテイクでも十分に長いけど他はそうでもない。ところが今聴くと全員自己主張したアルバムで迫力満点。ジンジャー・ベイカーのドラムはドタバタとうるさいし、ジャック・ブルースのベースも縦横無尽に走り回ってるし、クラプトンも気合いの入った熱いプレイをたっぷりとカマしている。どの曲も決して曲の長さとは関係のない、それぞれの自己主張をガッツリと聞かせている熱いアルバム。「 Rollin' And Tublin'」の強烈なハープとギターとドラムの掛け合いはスタジオアルバムの域を完全に超えてます。ベースレスでこういう曲が成り立つ事も凄いけど、それもこの三人でしかできない。

 後のライブ盤でも出てくるような基本的なライブ楽曲がいくつか収録され、「Fresh Cream」はクリームにとっても原点だ。ブルースの枠組みをハズした音作りを意識した、ブルースから発展させた音を目指している。それがバトルとなったけど、不思議な曲も多いから、60年末の何でもあり状態が刺激になっている。曲だけ取ったら個性的とも云えないが、あの演奏だから他英国B級バンドとの大きな違い。テクニックではない発想と取り組みもある。

 この辺をリマスター盤でデカいスピーカーで鳴らしたらもの凄く生々しく聞こえる音だろうとやってみたくなった。そういう音こそがロックだし、体で感じるロックの音もそうそうない。





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Free - Free (1969):

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 ブルースロックと一括りで語られることの多いクリームやフリーだが、その実ブルースエッセンスを多分に含みながらも独自の解釈により楽曲としてはかなりオリジナリティを発揮していたところがその他大勢のブルースの模倣バンドとの違いではないかと。もちろん本人達はブルース大好きだし、しっかりと吸収してしまっているのでそこから離れることも難しいだろうが、そういう基本を押さえながらも独自のグルーブとフレーズでファンを虜にしていた。それがロックだ。

 フリーの1969年のセカンドアルバム「Free」。クリームが解散する前後くらいに録音していてリリースされたアルバムだが、これがまたセカンドアルバムにしてかなり進化した渋めのロックになっている。バンドとしてはフリーも68年から71年で一旦解散してるし。もっとも20歳前後の若者集団だったのはあるだろうけど、その分残された音源には若さと気合いと熱気と才能に満ち溢れた音楽が詰め込まれている。このセカンドアルバム「Free」では既に最初期のブルースカバー的な作品から独自の解釈と新機軸となる音楽が聴ける。「I'll Be Creepin」はライブ向けのフリーらしいリズムとプレイによるもので、各人が遺憾なく才能を発揮した秀作。以降のライブでも定番的にプレイされるロックチューンだ。「Songs of Yesterday」はアンディ・フレイザーの軽快な、そしてユニークなノリのベースラインにメンバーが絡み、ポール・ロジャースのタメの聴いた歌が響き渡るこれも特徴的な曲だ。それで三曲目の「Lying in the Sunshine」が曲者で、一般的なフリーに対する感覚からしたらこれ何?誰?ってなモンだ。美しきアコギは多分アンディ・フレイザーが弾いているものとポール・ロジャースの哀しげな歌声で展開されるバラードと言うか、フォークソングでもないし、淡々とアコギと歌で迫ってくるだけで、感情的に揺れるものでもなくフラットに響く。フリーにはこの後もいくつかこういう楽曲が出てくるけど、アンディ・フレイザー独特の持ち味のひとつでつくづくこの人多才だと感じる。そして「Trouble On Double Time」はまたノリの良い、それでもアンディ・フレイザーのベースリズムがグイグイと曲を引っ張っていく曲で、コゾフの活躍がイマイチ少ないのがちょいと物足りないけどしょうがない。更にまたまた美しいフリーの一面が聴ける「Mouthfull of Glass」はベースとクリーンなギターとアコギの絡みにゴスペルのような鍵盤の音色が効果を演出したもので、途中のちょっとズレていくようなコード進行が心地良い。コゾフの違った側面が聴いて取れるギタープレイも聴く価値が高くて、激しくブルージーに弾くだけのギタリストではない事がよくわかる曲です。

 ここまでがアナログA面。意外とブルースに根ざした曲はほとんど出てこなくて、聴けてもコソフのフレーズくらいで、新境地に達している。ただ、ポール・ロジャースの歌声がアレだからどうしてもソウルフルなブルースに聞こえてしまうのはあるけど、アンディ・フレイザーがかなり才能を発揮した作品だから故にバラエティに富んだ作品。ジャケットは大胆な構図だ。あまり調べてないけどどんな意味だったんだろ?そしてセカンドアルバムにしてタイトルにバンド名「Free」を持ってくるのも面白い。ここで新たに自分達の音楽性を誇示できたってことかもしれない。

 さて、B面一発目を飾るのはこれまたフリーらしい名曲の「Woman」。これはもうポール・ロジャースが絶叫できる曲だし、コソフも割と見せ場がある方だし、楽曲的にはA面の「I'll Be Creepin」と同様にライブ受けするロックチューン。すると「Free Me」のようにどこか宗教的にワンパターンなリフで展開する曲へと続く。こういう曲が成り立つのはポール・ロジャースの歌唱力によるところが大きいが、楽曲センスはアンディ・フレイザーによるものだ。と言うか、このアルバムのクレジット見ると全部「Fraser, Rodgers」だから当たり前か。アンディ・フレイザーはどこか境地に達している人だと思う。そこに頑張ってコソフがナイスなソロを入れるけど、ミュージシャンとして優れたソロを入れているだけで、ギタリスト的に発揮しているモンでもない。だからコソフはこの頃も含めてセッション活動が割と多くて、弾きまくっている傾向が強かった。そしてちょっと明るめに「Broad Daylight」も聴かせる曲で、かなりシンプルに作られた様子。凝ったことが何もできていない感じで、悪くない曲だけど、少々飽きる感ある。光る部分があまりないのかもしれない。妙なのはコーラスワークが入っているのでフリーらしく聞こえない点。そして最後は「Mourning Sad Morning」とこれもまたアコギによるバラード。ただしフルートなどで色を付けてくるのでフリーらしさはあまり感じられないけど、こういうのもフリーだと伝わってくる。これもコーラスが被ってくるけど、やはり起伏がなくてフラットなバラードになってる。何だろね、この不思議さは。英国のトラッド的な影響ではあると思うけど、ここまでフラットじゃないから、通常のロックに対するフリー独特のリズムと同じようにトラッドに対するフリー独特のリズムか。

 昔からアナログで聴いていたアルバムで、全然リマスター盤やボーナストラック付きがリリースされなくて安心してたけど、5枚組のボックスセットが出た辺りからにわかに活気付いて、一気に紙ジャケ、リマスター、ボーナストラック付きと最も買い換える回数の少ないパターンでCDが出たので良かった。そのボーナストラックもとんでもなくたっぷり詰め込まれているので楽しめた。このセカンドアルバム「Free」ではいくつかのシングルバージョンと、未発表だった「Sugar For Mr.Morrison」というこれもまたヘンなベースラインから始まる楽曲に感動したし、コソフもワウペダル使いまくって弾いている曲だから、確かにこのアルバムにはマッチしなかっただろう。その他のバージョン違いも面白いけど、所詮はオマケで、本編をきちんと聴いていないと楽しめないものだ。例えばアンディ・フレイザーによるアコギだと知った「Mouthfull of Glass」とか。「Trouble on Double time」なんて初期バージョンはまったく別の曲みたいなアレンジでコソフが弾きまくってるけど過程を知ると面白い。

 まだまだ何度も楽しめるフリーの深い世界。衝撃的なファーストアルバム「Tons of Sobs」と世界的ヒットを放った「Fire and Water」の間に挟み込まれた形で残されているセカンドアルバム「Free」な、それだけに野心と実験がいくつも詰め込まれたミュージシャン的に楽しめるアルバムに仕上がってます。アーティストの成長はこういう風に進んでいくのかな、と。





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