ロック好きの行き着く先は…

60年代のブリティッシュロックから70年代黄金期を聴きまくり、行き着く先はマニアへの細くて深い道のみか。それでも楽しいロックこそ我が人生。 by フレ

Roger Daltrey - Who's "Tommy" Orchestral

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Roger Daltrey - Who's "Tommy" Orchestral (2019)
ザ・フー『トミー』オーケストラル

 これでもか、と言わんばかりにまだまだリリースされ続ける「Tommy」。ロックオペラという戯曲が故に様々な形でアレンジされ、演奏され展開され、まさかそこまで続けられるなどと思いもしなかったであろうものの、完全にクラシックの域に入りつつある作品になっている。そして仕掛け人でもあったピート・タウンゼントの手から離れ、ひとつの作品として引き継がれつつある所もまたクラシック化への布石、果たしてどこまで残されていく作品になるのか…などと知ることは出来ないのだろうが、興味深い所だ。

 2018年に同じThe Whoのボーカリストであるロジャー・ダルトリーがオーケストラ帯同での「Who's "Tommy" Orchestral 」ツアーを実施、その際の音源が2019年になってリリースされた。パッと聴くとこれはスタジオ盤だと言われても何ら疑う事の無いレベルでの完璧な作品ぶり。オーケストラの演奏だから当然そうなるのだが、それにしても素晴らしい。バンドの方はサイモン・タウンゼントやフランク・シムズと言ったいつもの面々も参加している。しかし効果音もかなり再現されているし、新たに加えられているオーケストラサウンドもあったりと新鮮味はそれなりに数多い場面で聴ける。昔はこの「Tommy」というアルバムを聴くのって割と苦痛な部分もあったりしたが、徐々にそれは薄れていき、愛聴盤へと進化したが、その後サントラや映画、そしてミュージカルバージョンに加えての数多くのパッケージライブのリリース、と同じ楽曲同じ構成同じ時間数で演奏されているにも拘わらず、どんどんと一般化してきている。面白いものだ。普通にこんなの皆ちゃんと聴いてるのか?聴けてるのか?と不思議に思うが、どうなんだろ。これまで「Tommy」をそんなに何度も聴ける、聴いてるって人はさほど出会った事はないが。

 どこからどう斬っても知ってるどころ耳に染み付いているくらいに聴いているんで、それの音色違いの作品としか聴けないが、ロジャー・ダルトリーの声もやはり老けたよな。そりゃもう70歳超えてるし、歌えている方を称賛すべきなのだろう。彼ももうロックだ、と言うよりも歌い続ける人生を選択しているし、ここまで来たらThe Whoをまっとうする、と決めているし、それはピートも同じだろう。だからこそこの「Tommy」を歴史に残す活動を熱心にしているのもあるだろうし、やはり好きなんだろうね、この作品を。年齢と共に判ってきた事もあるのかもしれない。そういう作品だし、それを一緒に創り上げた自負もあるだろう。そんなキャリア的な想いも含めて聴いているとその深みが分かる。普通に聴いてもこんだけの素晴らしい完成されたオーケストラライブもそうそう無いだろうから、存分に楽しめる作品でもある。やっぱカッコ良いわ。



Peter Frampton - All Blues

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Peter Frampton - All Blues (2019)
All Blues

 ピーター・フランプトンの新作にして最後のアルバムと宣言しての作品「All Blues」がリリースされた。その前からリリース情報は聞いていたので、気にしてたから早めにチェック出来たのは良かったが、どうも病気のために本作を最後に引退するらしい。そして今はUSツアー中、それがまたジェイソン・ボーナムのZeppelinカバーバンドが前座をやってるって事で、Mr.Jimmyの桜井氏がツアー帯同中と、何かと話題満載なツアー、これもまたTwittterで色々流れてくるから面白い。70年代のヒーロー、ピーター・フランプトンと一緒にツアー、あのギターにも触れて会話してるなんてね、どういう気分なのか、って思うトコ多し。

 さてそのピーター・フランプトンの最後の作品「All Blues」はタイトル通りに全曲カバー曲で、基本ブルースのカバーだけどジャズなマイルス・デイヴィスのタイトル曲もあるのでちょいと味わいが異なる。そしてこの人、やっぱりフレディ・キング好きだったんだな、ってのがカバー曲の多さから分かる。マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフよりもちょいと後なのかね、その辺の微妙な違いがこういうカバー集で現れてきているのかも。冒頭から聴いてると、知った曲が並ぶのでアレンジやギタープレイがどういう風に料理されているのかを意識する。すると、当然ではあるが、スタンダードに今風の音でアレンジも特に施されず、普通に自分のバンドでプレイしてみましたっていう、そのままな姿で飛び出してくるので面食らう、と言うか当たり前すぎて普通に流れてくる。

 ギタープレイの方はと言えば、そりゃもう70年代のヒーローですからね、って言いつつも、これもまたスタンダードにブルースフレーズをなぞっているプレイで、本物のブルースメンのプレイとは当然異なるし、感激のブルースギタープレイ!ってのとはちょいと違う。言うならば昔のフリートウッド・マックのピーター・グリーンあたりのギタープレイに近い…、十分じゃないかって話ではあるか。これぞ英国ブルースギターなんだろうなぁ…、そういう軽やかさと言うか流れが強くて引っ掛かりがちょいと弱い。ただ、音色は明らかにあのレスポール。派手なプレイは無いけど味わい深い英国風プレイで、ボーカルの渋さも磨かれていて味わい深く聴ける。あ、そうか、ギター歪みすぎてるからモノホンらしいブルースギタープレイじゃなくてロックギタープレイに近いのか。当たり前だよな。

 ゲスト陣営とのギタープレイの差は割と分かりやすいので、それぞれを楽しむのも十分だし、何よりもアルバム全体が聴きやすい。ブルースだぜ、なんて気負って聴く必要もなくサラリと聞けちゃうし、何気なく流れているとカッコ良くて気になっちゃうという感じで、程良いバランス。何回か聴いているとそのリラックスなブルーススタイルが心地良くなる。どこか終わり感を感じる終焉に相応しい作品。





The Devil's Blood - III: Tabula Rasa Or Death & the Seven Pillars

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The Devil's Blood - III: Tabula Rasa Or Death & the Seven Pillars (2013)
III: Tabula Rasa Or Death & the Seven Pillars

 バンドの音だけでオカルト的、聴いている者をどこか恐怖感味わせる雰囲気を出すというのもある種見事な音楽家の狙いとも言える。それもある程度の数の人間を、即ち一般的に「怖い」と思わせる雰囲気なのだから恐怖感というのは音で表せるという事になるのだろう。人間の感覚って面白いな。絵画でもそうだし、高等動物ならではの感覚。そこを突いたサウンドを出していけるロックバンドなんだから、普通にメタルやるぜ、ってレベル以上ではないと厳しい気もするが、それでもシーンに残り続けるってのは難しい。

 The Devil's Bloodの2013年リリース3枚目のアルバムにして今の所最終作となっている「III: Tabula Rasa Or Death & the Seven Pillars」。これがまた凄い作品で、本作にてこの手のロックの完成型を創り上げてしまったとも言える程の名盤、傑作となっているからか、バンドは以降活動していない。解散しちゃったのかな。女性ボーカルのヴィンテージロックでオカルトエッセンスたっぷりのストーナー系バンドとして出てきて、コンセプトもしっかりしていて雰囲気も演奏力も持ったオランダのバンド。ここに来て正にオカルト的なスタンスでの大作志向を打ち出した暗黒プログレ的組曲も取り入れながらの冒頭からの20分超えの楽曲。いやはや見事なまでに世界観を出していて、どんどんと暗黒面に落ちていくムードを出してくれる。3つの組曲から成り立っているようで、聴いているとその境目も展開も分かりやすいが、ユニークなのはプログレとは異なり、普通にロック的展開、サバス的展開で構成されているところ。即ち妙な変拍子やスピードチェンジで組曲を構成はしていない。多分物語的起承転結を曲調で変えていってるのだろう。

 反復する旋律がひたすら繰り返される、それがどこか恐怖心をソソる部分もあり、また狂酔しつつあるミニマル的な効果もあり、更に心臓の鼓動に近いゆったりとしたリズムを中心にしているから人間的に同期しやすいというあたりも見抜いているのだろう。そこにこの手のサウンドでは珍しく、ギターの音色がストラト的な線の細さでの歪み系で、重さが無い聴きやすい音で仕上げている。そこに効果的なディレイ音が重なってきて幻想的に…と、自分的に判る範囲ではそんなところだけど、根本的にコード進行やムーディな部分など相当研究しているはず。重すぎず、恐怖すぎず、適度な雰囲気で仕上げているあたりがそのプロさ加減。活動停止はちょいと残念な気がする実力派バンド。



Black Mirror - Look Into The Black Mirror

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Black Mirror - Look Into The Black Mirror (2018)
Look Into The Black Mirror

 遠いヨーロッパの国のアルバムの話を書いているので、実感が無いのかもしれないが、世界的にどうなんだろ?って思うのがアルバムをリリースしました、って言うそもそものお話。アーティストやプロデューサーが作品を一生懸命作り込んで、それを売る、知らしめる、というのは売る人たちのお話になるが、そもそも作り手もその作品を大事に、育てて知らしめていく、みたいなのって必要だし、多分そうしているんだと思う。ただ、どうしても飽きられる、忘れられるというところからリリースのペースが早くなっていって、結局バンドが疲弊してしまうみたいなのが多い。もったいないと思う反面、そこをクリアできるレベルに無ければこの世界やってられないよ、ってのもあるのか…。

 今度はベルギーのブリュッセル出身のBlack Mirrorというバンドの2018年リリースのファーストフルレンスアルバム「Look Into The Black Mirror」。その前に4曲入りEPってのをリリースしていたようだが、ここで本格的にシーン登場。謳い文句を見るとヴィンテージブルースハードロックとあったんで、どれどれ、って思ったんだが、そんなにブルース・ロックは入っていない、どころかほぼ無い。ただ、70年代ロックの雰囲気が強いから後ろ側にブルース・ロックが透けて見えるという話で本人達の演奏にブルースそのものは見当たらない気がする。背景にあっても出してないのかもしれないね。ボーカルのマルセラ姫の歌声がかなり突出していて、正直彼女の歌で持っている部分は大きい。そこに追随するかのようなバックのサウンドは見事にドゥーミーでムード満点。ただ、70年代オマージュではあるけど、ギターの音そのものは今どきのヘヴィサウンドだったりするので、面白く融合している。

 ベルギーでこのレベル…、メタルの世界だとブルース・ロックの影響下という定義からは外れている。即ち、いきなり世界レベルが出てきてもおかしくないから、そんな類とすればこのレベル感と取り組みは有り得る。見事なレベルでアルバム丸ごと聴かせてくれるので楽しめるけど、ちょっと飽きたりかったるい部分もあるから次作の弾け具合に期待です。しかしジャケット見ても見事にその世界を訴えているし、70年代ロックへのオマージュはあちこちで聴ける快作。









Jess And The Ancient Ones - The Horse & Other Weird Tales

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Jess And The Ancient Ones - The Horse & Other Weird Tales (2017)
The Horse & Other Weird Tales

 実際変化しているのだろうか、自分の感覚的にそう思っているだけなのだろうか、ロックのアルバムという価値が下がってきている気がする。それは昔はアルバム一枚を何度も聞いたものだし、そんなに次々と消耗していくという類じゃなかった。CD時代を経た今、デジタルになり作る側も簡単になったからかもしれないが、聴く側もイージーに聴けちゃって単なる消耗品になってる気がするもん。そこで残されていくアルバムというのはどれだけあるのだろう。ライブラリとしては全部残っていくのだろうけど、こんだけの情報過剰時代に後から探して体系化して認識できるレベルになるのだろうか?そんなのは不要で検索一発で対応だからOKとか?それでも探す単語が分からないからAIでの予測検索?もう分からん…。

 メタル大国フィンランド出身のJess And The Ancient Onesの2017年リリース作品「The Horse & Other Weird Tales」。3枚目のアルバムだからよく出してる方だと思う。この路線この流れでこのバンドを取り上げているけど、実際の音はかなりこなれていてメタル色はほぼ無く、普通に疾走感のあるロックバンド、しかもオールドタイプな感触があるのはオルガンのおかげだろう。ギターにしてもチープサウンドでどこからどう聞いてもこのバンドは70年代の録音物に聞こえる。当然ながら音の方もそういう雰囲気だが、何のバンドをモチーフにしているんだ?となると…、何も見当たらない。完全に個性的なサウンドを自己流に創出して組み上げている。プログレ色は特に見当たらず、普通にサイケ風味の漂うロック。Pursonあたりと近いサウンドだけど、Jess And The Ancient Onesの方が息長そうな気がする。

 自分的にはそこまで解明した事ないけど、どうやら歌詞にしても相当の黒魔術的な作品になっているのがJess And The Ancient Onesの特徴のひとつでもあるようだ。趣味レベルなのか売りレベルなのか、ホントにそうなのか、っていうレベルで言えば多分ホントに突っ込んでいってるのだろうと。北欧やヨーロッパだと魔術ってのは割と身近なものなのかな。日本だと普通にお寺があって仏壇あって、みたいなさ。だから案外魔術系オカルト系ってのは想像するよりも近いのかと思う。じゃなきゃ、そうそうハタチ過ぎくらいでそこまで近づかないんじゃないかなぁ…。そこはともかく、音的にはさすがのフィンランド、素晴らしく聴き心地の良いそしてロック的で勢いのあるアルバムが出てきてくれました。



Avatarium - Hurricanes And Halos

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Avatarium - Hurricanes And Halos (2017)
アヴァタリアム『ハリケーンズ・アンド・ヘイローズ』【CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付き)】

 ヴィンテージロックってのは今の時代ならではの出現だろう。ネット時代になって全ての歴史が2次元で並べられる事で、時代を超えた同じ土俵からチョイスして聴ける、見れる、そして新しい出会いに広がる、みたいなところがあって、そりゃ70年代のロックに若者が惹かれるのは当然だろ。熱気が違うし、実験的で野心的、更にギラギラした連中がそこに多数存在していたんだし。そして今の時代にもなるとB級バンドだろうが何だろうが、それこそ同じ土俵に乗ってるから普通に2次元で見れる。つまりB級も何も関係なく並べられているんだから、音の良し悪し、好みでリスナーが判断してくれるのだ。ある種音楽性だけでファンが付くフェアな時代。故に70年代のマイナーなバンドでも人気があったりするのだろうし、影響を与える事もある。

 Avatariumというスウェーデンのバンドの2017年リリースのセカンド・アルバム「Hurricanes And Halos」。恒例Candlemassのベーシストのソロプロジェクト的にスタートしたものの、本作以前に本人は離脱、残されたメンツでバンドコンセプトともなっていた70年代ハードロックの踏襲というスタンスで作られているようだ。これもまた不思議なモノで、どこから聴いてもいつもの70年代ロックで知ってるような音なのだが、具体的に挙げてみろ、となると何も言えないというオリジナリティがある。底辺にあるバンドはZeppelinやUriah Heep、Deep Purpleなんてのが挙げられるのだが、それが直接的に出てきているのか、となるとそうでもない。Black Sabbathあたりにしても雰囲気の側面はあるが、指摘できる部分があるワケじゃないし。面白いよなぁ、そういう作り。

 ただ、このバンドのひとつの特徴としてはただヴィンテージなだけでもなく、きちんと歌メロを持っているというのがあって、オカルトなロック方向だけに舵を切っているのでもない辺り。更に言えばバンドらしい面が強い、というのもヘンだけど、どうしても女性ボーカルが中心になった作品だとそこをプッシュしてしまいがちなところが、もっとバンドっぽいってのかね、一体感ある。それに雰囲気作りが見事と言うのもあるみたい。どれもこれもレベル高いし、ハマったらホント、癒やされると言うかどっぷりと浸かれる世界を持つバンド。見事です。