ロック好きの行き着く先は…

60年代のブリティッシュロックから70年代黄金期を聴きまくり、行き着く先はマニアへの細くて深い道のみか。それでも楽しいロックこそ我が人生。 by フレ

「note」マガジン発刊

-

Elmer Gantry's Velvet Opera - Elmer Gantry's Velvet Opera (1967):

0 Comments
B0002HUXSU

コージー・パウエルのアルバム「サンダーストーム」で歌っていたエルマー・ガントリーという名が懐かしくてついつい漁ってしまったが、随分昔にひたすらレコードを漁り続けていた頃に出合った名前のバンドで、その頃は60年代後半のサイケデリック系を模索していた時だった。多種多様のバンドを漁ってたが、どれもこれも好きになるでもなく、ただひたすら聴いているだけで印象に残るものも多くなかったけど、それでもTomorrowとかAppleやOrange BycicleやJulyなどそれなりに引っ掛かるものはあった。

 その時にこの「Elmer Gantry's Velvet Opera」に出会って、確か一緒に買ったのはPrincipal Edward's Magic Theatreの「Soundtrack」だったが、どっちもグチャグチャなポップサイケでいつも頭の中で整理付かなくなってた記憶があって、まとめ買いした時はきちんとジャンルの異なるものを整理して聴く方がよろしいです。そんなことで名前を見て久々に、今ならきちんと独立した音として聴けるので聴きました。軽やかなポップと妙なリズムチェンジが駆使されて、やっぱりサイケデリックな空気を醸し出した時代の成せる業とも云えるアルバム。後に聞かれるエルマー・ガントリーのあの歌声をもっと軽く若くしたものか。

 歌を聴いているつもりがいつしかベースが凄く面白いフレージングを弾いているのに耳が向いてしまって、このベースがジョン・フォードという人だが、気になって調べてみると、ストローヴスに入った人と知って納得。納得と言うかなるほど、と。ストローブスのベースもここまで動いてた印象もないがこれもまた自分の宿題。それはともかくこの「Elmer Gantry's Velvet Opera」でのベースラインの派手さは見事な楽しさで、ヘタしたらジャック・ブルースのベースライン並みに動いているかもしれない。もちろん出しゃばっていない弾き方で。

 面白い事にそんな好調な作品をリリースしたにもかかわらず、エルマー・ガントリーは自らのバンド名を配したバンドを脱退してしまい、残された面々でヴェルヴェット・オペラとしてセカンドアルバム「Ride a Hustlers Dream」をリリースしてて、こちらは聴いたことないがフォーキーなサイケアルバムらしい。





60sUKRock

The Artwoods - Art Gallery (1966):

0 Comments
B01IHN61UE

 昔聴きたいと思っててもなかなか見つけられなくて、そのままになってるアルバムやバンドがたくさんある。今は自宅のMacの前でアレコレと何かのインスピレーションからアルバムやバンドを探したり発掘したり、しかも試聴と言いつつ聴き漁ったり、必要であればDLしてiPhoneに入れたりと、何とも便利な音楽生活が当たり前になってしまったが、その分過去ものをどんどん捨ててる感じ。CDやレコードのライブラリを何かないとわざわざ見なくなったし。Macの中に大抵入れ込んでるし、そこに無ければネットを漁るし、自分でCDを持っててもネットで漁ってる。だからライブラリは自分の記憶の形でしかなく、音として機能しているケースが減っている。よろしくないのかだからこそ記憶の中にあるのか。そういえばコレ、持ってたっけ?みたいなのもあるけどあまり問題なく聴いてみよう、って聴けちゃう環境。

 Artwoodsという1966年のバンドの唯一作「Art Gallery」は話題的にはいくつもあって、知ってる人は知ってるけど、鍵盤にジョン・ロード、ドラムにキーフ・ハートレー、ボーカルでバンドリーダーにはロン・ウッドの実兄のアーサー・ウッドが組んでいたバンドで、しかもプロデュースはマイク・ヴァーノンという布陣。この後のロック史からすると黄金の面々が揃ったアルバムだが全く売れなかったらしい。1966年だからモッズムーブメントもあってジョン・ロードのオルガンもあるし、モロにモッズなサウンドに近くて重宝したらしく、ライブもいつも満員だったようだ。確かにドロドロとしたアーシーな雰囲気が漂っているのが特徴的で、それがまたDeep Purpleに繋がるから面白いのが英国ロックの人脈。

 当時も今もクールにグリグリして腰で踊れるサウンドだからカッコ良いと思う。ジャケットもこの時代から標的マークだし、The Whoの戦略とは違って本物のモッズだったバンドだし、それにしてもジョン・ロードのオルガンが目立つ。





60sUKRock

High Tide - High Tide (1970):

0 Comments
B000FBH2PK

 サイモン・ハウスの名前を最初に知ったのはDavid Bowieのライブ盤「Stage」だった。もっともその前にサイモン・ハウスの名前を何かで見かけたから「ん?」って思ったのかもしれないので何が最初だったかは分からないが、それでも、Bowieのバンドに入るくらいだから腕は確かだろうし、あまり超メジャーなバンドやアーティストとB級系のバンドの面々がクロスオーバーすることも多くないだろうから、その中では珍しい経歴を辿った人だと思う。B級のままでいてはいけなかった人か。それに特技がバイオリンと鍵盤と言うのもロック界では割と希少な人材で大いに発揮する場はあったと思うが、それでもフロントにバイオリンを持ってきたバンドではなく、サポートメンバーに甘んじたのは本人の性格か、そのサイモン・ハウスと言えば自分的には今はHigh Tideになる。

 1970年にリリースされたセカンドアルバム「High Tide」ではファースト「Sea Shanties」に比べれば圧倒的にバイオリンが全面に出てくる印象が強く、ファースト「Sea Shanties」の超絶ヘヴィ圧巻バンドの音からはかなり知性を持った集合体として進化しているけど、凄く久々に聴いてるな、これ。High Tideそのものも久々だから、ファースト「Sea Shanties」も印象だけで書いてるけど、最初に聴いた時は怒涛のヘヴィロックの洪水が流れこんできたようなバンドで、しかも60年代末にこんなバンドがあったのかと言うくらいの衝撃だったし、立て続けにセカンドの「High Tide」も聴いていた。当時CDを漁ってた頃は怪しい海賊盤紛いのCDで「Sea Shanties」「High Tide」の二枚とも1CDに入ってて、アナログ落としの音もあったからかヘヴィに聴こえた。その後何度かCDがリリースされたりボーナストラックが追加されたりとそれなりに需要があったようで、今でもきちんとCDで手に入るバンドだから素晴らしい。

 さて、ヘヴィさが衰退したワケなく、相変わらずダークで重苦しい音を出し続けているバンドで、音楽性の底辺はサイケとブルースになるのだろうか、ドラムもドタバタしててハネることのないノリ、またハネることのないバイオリンがあってベタにベースが這いつくばっているバンドの音。しかも4曲しか入ってないアルバムで、とにかくフリーインプロビゼーションが中心の音作り。構築美は皆無だけど臨場感はかなりのテンションがある。ここに若干の展開と構築美があればかなり驚くべきバンドだが、そうはならない。それでも「The Joke」で突如としてほのぼのとした牧歌的なサウンドが出てくるとやはり英国の性だな、と感じてしまう曲もあるので捨てられない。ちょいとクセになる音ではある。





60sUKRock

Please - 1968/69

0 Comments
B076JYRZFY

 1960年代末期にどういう経緯で、またアルバムも存在したのかよく分からない。恐らくオリジナルアルバムは出てないと思うが、それなりに曲があるので全部シングルでもないかもしれないPleaseはドラマー兼ボーカルのピーター・ダントンがいるのでT2の前身バンドとして捉えられるが、Gunのエイドリアン・ガーヴィッツも参加している。ベースのバーニー・ジンクスから見るとブルドッグ・ブルードも絡んで、そこにはT2のギタリストキース・クロスもいるので、要するに仲間内であれこれ試しに色々な音をやってみたバンドのひとつで、このヘンの背景はアルバム単位で線引けないので音で判断するか。

 CDで手に入るのは「Please 1968-69」と「Seeing Stars」で、「Please 1968-69」の方が面白く、どちらも似たようなサイケ調のハードロックでフワフワしてアシッド的感覚が散りばめられた曲が多い。未熟なアレンジでも浮游感が堪らないし、ピーター・ダントンの歌声でやたらカッコ良いハードロックもあるので、実験的要素が強いがアングラな世界じゃなく本気でやってるからポップな側面もあるが、驚いたことにそんなメンバーの背景だから当然だけどT2のアルバムの3曲目に入っている「No More White Horses」はPleaseバージョンがオリジナルで3分半のお茶目な良い曲として入っているけどT2になってクローズアップしてアレンジしてあんな楽曲に仕上げたらしい。他の曲も同様の手法を用いたら全く別のハードロックバンドとして生まれ変わっただろうから素晴らしいセンス。おかげで自分のコレクションにあった理由が判明したし、また、「Strange Way」も本気でアレンジしてT2でプレイしてたらカッコ良かっただろうと妄想もしてしまう。

 背景もあるけどプリーズはかっこ良い英国らしいバンドで、明るい曲調が多いが、どこか湿ってるしセンスが抜群でブルドッグ・ブルードの方も合わせて聴いてアングラなバンドのファミリートゥリーを解明して音を聴くのも面白いし、その価値は十分にあるバンドだからこの手のバンドでは久々に何度も聴いてハマりまくった。



60sUKRock

Tomorrow - Tomorrow (1968)

0 Comments
B00000IBDY

 トゥモロウと言うバンドは実に英国的で、当時のサイケデリックロックシーンの中でも突出したハイレベルなサイケ感を出していたバンドで、実に素晴らしいアルバム「Tomorrow」を発表している。もっとも今ではCD一枚に全ての楽曲を収めた超ボーナストラック収録のディスコグラフィー盤とも呼べるアイテムが簡単に入手できるから良いし、オリジナルアルバムでは12曲だったのに今やCD一枚で25曲も入ってるんだからお得で今でもサイケのオムニバスでは収録されていることの多い「My White Bicycle」を筆頭とする全編サイケ、効果音の使い方や逆回転、もちろんインド系のシタールチックな音もたっぷりと入ってて、要するにそういう表現力やアイディアが上手い。シングルヒット曲の「My White Bicycle」は素晴らしい出来映えで、音の定位が途中で渦巻くのも正にサイケだし、ベルの音やら何やらと意表を突く音が万華鏡のように表れてくるのでトリップするが基本的に軽快なリズムと軽いメロディーで淡々と進められるポップさが豊富で聴きやすいサイケなので英国的で良い。

 後付けの説明にしかならないけど、トゥモロウには後のイエスで有名になるスパニッシュギターの名手スティーヴ・ハウがギターで参加しているけど、その片鱗も見られないところが面白く、音を効果的に鳴らす役割に徹底しているのでそれも彼のセンスかもしれない。あとは「S.F.Sorrow」からプリティ・シングスにドラムで参加することとなるサイケの達人、トゥインクもこのバンドからメジャーなキャリアがスタートしてて、ピンク・フェアリーズもサイケパンクの王道だが、このバンドでは一応キース・ウェストがフューチャリングアーティストになっているのが頼もしく、彼は早く才能を開花させすぎて、大いなるメジャーアーティストになれなかった人。でもこのアルバムのほとんどの曲はキース・ウェストが作曲してるしバンドのアレンジ力ももちろん、プロデュースもその筋のサイケマニアでは有名なマーク・ワッツなので面白く、バンド各人の後の有名度よりもこの時のキース・ウェストとマーク・ワッツの才能も素晴らしい傑作。



60sUKRock