
完璧な暗さを表現したアーティストとして
ニコ
を挙げておきたい。いや、別に他に何人か思い付くんだけど、どことなく混沌としていて且つ激情的でもあるが、やたらと暗く、更に言うならば独自の世界とサウンドを打ち出した人でもあるから。もちろんヴェルベット・アンダーグラウンドのファーストアルバム「
The Velvet Underground & Nico」に参加した歌姫としての
ニコ
は一番有名な時代なのだろうが、そこに取り憑かれた人は多分以降のソロアルバム収集に走っているのではないだろうか。最初のソロアルバム「
Chelsea Girl」はもちろん素晴らしい
ニコ
の世界を築き上げてくれたし、そのポップな歌メロと淡々としたバックのサウンドは新たな世界でもあった。しかし初期のソロ作品から離れていき、
ニコ
の人生も波瀾万丈あった頃になると
ニコ
の作品にはかなりの変化が生じてきた。またセールス的にもこだわることなく独自性の強いアルバムが続々とリリースされていたのだった。
中でも名盤と呼ばれる「
The End」は以降の
ニコ
の作品全体に通じるシンセサイザー音に乗せた地下の水道管とも呼ばれた歌声がハーモニウムと共に鳴り響くもので実験的アルバムにしてはかなり成功した作品じゃないかな。シンセサイザーってもかなり初期型なのでそんなに多彩な使われ方じゃないけど、一般的な使い方ではなく鍵盤を押しっぱなしにして一方ではミニマル的に音がリフレインしている中
ニコ
のメロディだけが淡々と変わっていく、みたいな感じでこれまではこういったサウンドを聴いたことはなかったなぁ。そしてタイトル曲はもちろんThe Doorsの「
The End」のカバーで、ある意味ジム・モリソンの歌う「
The End」の本質だけをひんむいて裸にして歌われているのが
ニコ
のバージョンかもしれない。こっちのほうが赤裸々というのか生々しい印象がある。それは
ニコ
の人生観がしっかりと出ているものだろうし、ジム・モリソンがハタチそこそこの頃に歌う「
The End」よりも人生経験を積んだ
ニコ
が歌う「
The End」の方が切実だということだろう。恐ろしくもハマりまくっている凄い選曲。
う~ん、やっぱり全編通してドーンと重くて暗い。シンセの音自体はそれほど暗いモノじゃなくて明るめの音色なのだが、音使いなのか声なのかひたすら暗くハマれる人のアルバム。80年代に入ってからもず~っとこの調子でアルバムがリリースされていくのでダメな人はダメかもね。結構面白かったりするので「
Desertshore」とか「
Camera Obscura」とかいくつか聴いてみるとハマるよ。他にもライブとかあってそれはそれでまたどよーんってなるんだけど、迫力は凄い。始めて映像見たときとかやっぱ驚いたしね。鍵盤向かって一人でやってる、みたいな感じでさ、客なんてどうでもいい、っていうか…、うん、凄い人だ。
DVDも今ではいくつかリリースされてるみたいで幸せな時代♪
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