Deep Purple - Come Taste The Band

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Deep Purple - Come Taste The Band (1975)
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 Deep Purpleの音楽性の進化は今となれば常に変わっていくバンドの認識もあるが、70年代ではそれは許されない、またはあってはいけない、リスナーを裏切る行為とまで思われていた面も強く、バンド側も大変だったと思う。一時代を築いたバンドであればより一層変化が難しかったとは歴史が証明している。デヴィッド・ボウイのようなカメレオン性を武器にした人もいればストーンズのようにうまく変化を取り込んだバンドもあるが、多くは一辺倒なバンドのサウンドを貫き通して崩壊していった。Led Zeppelinはその意味ではかなり奇跡的に存在し続けたバンドかもしれない。Deep Purpleはオルガンハードの時代からリッチー全盛期へと時代を築き上げ、イアン・ギランが脱退してもリッチーさえいれば大丈夫の神話が続いていた。ところが遂に音楽性の不一致からリッチーが離脱するとファンはリッチーのレインボウに着いていき、本家のDeep Purpleは蛻の殻となった状態と見ていた。そこへトミー・ボーリンの参加とファンキーな音楽性への進化は往年のリスナーからは許されない背信行為にも映ったようだ。

 1975年リリースの名盤「Come Taste The Band」。自分が一番好きなDeep Purpleのアルバムとも言えてしまう程に分かりやすいロックバンドの姿。当然ながら「Machine Head」を代表とするリッチー時代のDeep Purpleのカッコ良さは痺れるが、まるで別のバンドとして捉えたこのアルバムのサウンドは英国ハードロックバンド多数あれどもかなり上位に位置する出来映えの作品で、トミー・ボーリンのギタープレイの幅広さもグレン・ヒューズのファンキーベースプレイも素晴らしく、更にデヴィッド・カヴァデールのブルージーな歌声ががっつりとハマった作品と感じている。初期ホワイトスネイクに通じるサウンドとも言えるし、もっとアメリカ寄りの風味もあるが、実験的なスタイルも数多くキャッチーさも兼ね添えた傑作。イアン・ペイスとジョン・ロードの音楽家ぶりはこの音楽性の変化もいとも簡単に取り込み、個性をそのままにして新たなサウンドに進化させている素晴らしさ。だからDeep Purpleらしい音色は残しつつ、表層の音楽が変化しただけとも聴ける。ただ、これまではアリ得なかった幅広いサウンドとギタープレイが批判を浴びてしまい、前任のリッチーの存在の大きさが仇となっている。その意味でトミー・ボーリンは不運過ぎた。テクニックも才能も力量も明らかに突出したギタリスト、音楽家だったにも関わらずその不遇は本人もどうしようもなかっただろう。

 アルバム冒頭から大英帝国ハードロックが投げ込まれてくるが、どこか乾いた感じがあるのはトミー・ボーリンのアメリカ人的サウンドが出ているからか。疾走感を捨てた往年のドライブするリズムをベースに作り上げた曲が多く、途中の展開で大きく変化をもたらす場面も数多い。そこではデヴィッド・カヴァデールがここぞとばかりにあの歌声を披露してくれるし、グレン・ヒューズの歌声の通り具合も素晴らしい。全く致命的だったのはDeep Purpleというバンド名だけだ。どこか異なる名義で出していれば傑作と褒め称えられ、トミー・ボーリンはまだ存命でギターを弾いていたかもしれない。リフ作りにしてもアレンジにしても新たな息吹をバンドに持ち込み、メンバーのやりたかった音を具現化している。その意味では真の音楽家集団と化しているバンドだったが残念。後の時代のレビューでは概ね好意的で評価も高いが、今言われてもしょうがない。





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フレ
Posted byフレ

Comments 4

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おっさん  

私は初めて聴いた時はかっこいいと思いましたよ。
来日でトミー・ボーリンが不調だったので
評価が低いのかも。
「ラスト・コンサート・イン・ジャパン」は
出してほしくなかった。

2021/06/08 (Tue) 06:07 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>おっさん

来日公演の酷さが祟っているんでしょうねぇ。

2021/06/13 (Sun) 00:51 | EDIT | REPLY |   
akakad  

パープルは最終作かこれです
こっちはファンクっぽいのが好きで向こうはコンパクトでプログレっぽい曲
例えばThe Long Way RoundなんかはコンセプトがAsiaの曲に近くていいなと
余り共通点はないですけど次点でPurpendicularも含めた3枚が自分の中でのトップ3です

2021/06/13 (Sun) 23:47 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>akakadさん

なるほど、そういう方もいらっしゃるとは(笑)。

※失礼しました。

2021/06/22 (Tue) 15:09 | EDIT | REPLY |   

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