Jethro Tull - Thick As A Brick (Remastered)
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Jethro Tull - Thick As A Brick (Remastered) (1972)

音楽家の奏でる音楽と単なるロック好きの出す音とはそれこそ全く異なるセンスから成るものだし、似たようなテクニックを持っていても出てくる音階そのものが異なる。普通に聴いているだけではそれは分からないが、何枚もの作品を聴いていると分かるし、もっと感性豊かな人なら聴いてすぐに分かるレベルだろう。ロック好きで音楽を勉強した、理論を知り尽くしていった人もいるだろうし、元々音楽教育を受けていたが、そこからロックのパワーにハマった人もいるし、いずれにしても音楽と言うものを奏でて作品をリリースする方々なので、素人やリスナーから見ればどちらもミュージシャンとなる。ところがロックの世界でも楽譜読めないけどセンスでやってる人もいるし、逆に全部知ってるけど出てこない人もいるし、何が良くて何がどうなのか分からない。ただ、音楽家として生計を立てている人たちは長くなればなるほど音楽家でなければ成り立たなくなっているような気がするので、どれだけアホそうに見えても実はものすごくセンスある、学のある人もいるだろう。じゃなきゃ、プロ中のプロのミュージシャンと一緒にプレイするなど恐ろしくて出来ないはず。
Jethro Tullの1972年リリースの5枚目のアルバムにして金字塔ともなった「Thick As A Brick」は、プログレッシブ・ロックの名盤としても語られるが、そもそもプログレッシブ・ロックという概念で制作されてもいないだろうし、普通にロックの概念だけで出来ているものでもなく、もっとシンプルにやってみたい音楽を狙って作っただけで、そこに話題性や創作物としてのジェラルド少年の話を創り上げ、あまりにも幅広い音楽性を持つサウンドに彩って紡ぎ上げた作品。その歴史的名盤も数週間もかからずに作詞作曲して録音したらしく、もっとも時間がかかったのは新聞状に仕立てられたアルバムジャケットの中の記事の作り込みだったと言うから面白い。得てしてミュージシャンからしたら音楽を作る事は、普通に出来る事だから苦労とも思わないだろうし、やればやるだけハマり込んで創り上げてしまうのも自然だが、一方でそこまで天才的な才能の無い分野、例えば今回のアルバムジャケットやもしかしたら絵を書いたり構成を組み立てたりという方には時間がかかるのかもしれない。自分自身と比較するものでもないが、ブログをこれだけ書いているので文書をそこそこ書き上げる事についてはそれなりに出来てしまうだろうと自分でも思うが、さほど苦にもしないで書けているのは訓練の賜物だが、それではこのブログを仮に本にするとしてその本の表紙を作ろうとなると途端に時間がかかって大した表紙のデザインも出来ないのが目に見えている。きっとミュージシャンにとっての音楽とその他については芸術センスはともかくながらまるで異なる苦労なのだろうと思う。
そしてこの「Thick As A Brick」は実は自分的にはホントに何度も何度も聴いては悩み、どこがそれほどに凄い名盤と称されるのか、また聴いては自分でその凄みが良く理解出来ないまままた時間を空け、次の機会にはまた悩んで聴くという事を繰り返していた。このアルバムのみならずジェスロ・タルの70年代のアルバムは大抵そんな感じに取り組んでいたので、アルバム全部持ってて聴いてた割に馴染めていない作品ばかり。このアルバムは中でもとにかく攻略したかったので、結構な回数取り組んでいたし、それでもイヤにならなくてどこが何が凄いのか、を探求したくなったのだから不思議だ。今回も久々に2012年のスティーブ・ウィルソンリマスター盤を聴いているが、さすがに音の分離が良くてクリアーに楽器が鳴って聴けるのでモヤが晴れたかのように聞こえてくるから素晴らしい。今まで何をそんなに悩んだりしていたのか、と思うくらいに突き抜けたジェスロ・タルの音楽の才能の豊かさやバンドメンバーの技量の高さ、演奏の上手さとあまりにも出来上がり過ぎているサウンドに慄きながら聴いている。自分の知っている範囲のロックの概念に当て嵌めて聴こうとしていたからこそ分からない、理解出来ない面が強かったが、普通に音楽として取り組んでみれば、何とも素晴らしくカラフルな音楽が次々と怒涛のように溢れてきて、その一瞬一瞬の音のセンスに惚れ惚れして聴ける。それがハードロックだプログレッシブだ、ブルースだと何かに形付ける事は全くナンセンスで無理な相談だ。譜面があって、それを演奏している、つまりロックをバンドでせーの、と演奏しているような代物ではないし、白熱のプレイを狙ったバンドの熱気を伝えるものでもない。歌詞と音楽、楽器と音色、それらを組み合わせてやりたい音をそのまま奏でているだけ。もちろんバンドの成熟度からして結果的にそれでも迫力のある熱気を持ったバンドの演奏が聴けるし、力みすぎないバンドの自然体ながらも一体感を演奏から聴ける。これこそプロの音楽集団。それでいて世間的に評価されるに相応しい、自分はまるで理解していない歌詞も称賛され、今までも何度もリマスタリングされてのリリースもその人気を表している。ホント、演奏が上手くて凄い。そういう曲を元々書いていたからこういう演奏なのか、シンプルな楽曲をこのメンツで演奏するとこういう音数とアレンジとテクニックになっての音なのか、おそらくは後者だろうと思うがとんでもなく素晴らしい。それでいての印象的なメロディがあちこちで鳴らされて43分一曲として聴いても全く飽きることなく、聴きどころ満載で味わえる楽しみ。これまでも全く不慣れで取り組めなかったリスナーも多いと思うが、今一度音の良いリマスター盤で、ただただ出てくる音をそのまま味わうと言う聴き方で取り組んでみればこのアルバムの凄まじさや素晴らしさは分かると思う。固定概念なしに純粋に聴けるかどうか、そう出来なければそもそも音楽が好き、ともならないのかもしれない。そんな自分の奢りに気づいたアルバム、そして今またここでこれだけの作品を聴けるありがたさ。
1997年にリマスタリングされて再発された時にはボーナス・トラックとして1978年のマジソン・スクェア・ガーデンの同曲の12分弱のライブ演奏と、メンバーのインタビューが収録されていた。その後2012年になり、ジェスロ・タル自身が本アルバムの再演を果たした事から40周年記念盤「Thick As a Brick: 40th Anniversary Edition」としてスティーブ・ウィルソンによるリマスタリングとDVDオーディオのデラックス・エディション盤がリリース、そこには僅か1分弱ながらのラジオコマーシャル音源も収録された。しかし、ホントに名盤名盤と呼ばれるだけあって、聴いてすぐカッコ良い、凄い、という風に取り組めるアルバムではないが、ものすごく奥の深い、もっと言えば聴く人のセンスが問われるとすら言えるアルバムで、そもそもジェスロ・タル自体がそんな試験石なバンドかもしれない。英国では相当に人気があったようだし、もっと不思議なのはこのアルバムもアメリカでも人気があったというあたり。そこまでアメリカ人にセンスのある人が多かったのか、そういうリスナーが数多く付いていたバンドなのか、言葉の違いもあるだろうが、なかなか当時のリスナーのセンスは不思議。オペラや喜劇を見ているかのような感覚で聴くのが良いのかもしれない。

音楽家の奏でる音楽と単なるロック好きの出す音とはそれこそ全く異なるセンスから成るものだし、似たようなテクニックを持っていても出てくる音階そのものが異なる。普通に聴いているだけではそれは分からないが、何枚もの作品を聴いていると分かるし、もっと感性豊かな人なら聴いてすぐに分かるレベルだろう。ロック好きで音楽を勉強した、理論を知り尽くしていった人もいるだろうし、元々音楽教育を受けていたが、そこからロックのパワーにハマった人もいるし、いずれにしても音楽と言うものを奏でて作品をリリースする方々なので、素人やリスナーから見ればどちらもミュージシャンとなる。ところがロックの世界でも楽譜読めないけどセンスでやってる人もいるし、逆に全部知ってるけど出てこない人もいるし、何が良くて何がどうなのか分からない。ただ、音楽家として生計を立てている人たちは長くなればなるほど音楽家でなければ成り立たなくなっているような気がするので、どれだけアホそうに見えても実はものすごくセンスある、学のある人もいるだろう。じゃなきゃ、プロ中のプロのミュージシャンと一緒にプレイするなど恐ろしくて出来ないはず。
Jethro Tullの1972年リリースの5枚目のアルバムにして金字塔ともなった「Thick As A Brick」は、プログレッシブ・ロックの名盤としても語られるが、そもそもプログレッシブ・ロックという概念で制作されてもいないだろうし、普通にロックの概念だけで出来ているものでもなく、もっとシンプルにやってみたい音楽を狙って作っただけで、そこに話題性や創作物としてのジェラルド少年の話を創り上げ、あまりにも幅広い音楽性を持つサウンドに彩って紡ぎ上げた作品。その歴史的名盤も数週間もかからずに作詞作曲して録音したらしく、もっとも時間がかかったのは新聞状に仕立てられたアルバムジャケットの中の記事の作り込みだったと言うから面白い。得てしてミュージシャンからしたら音楽を作る事は、普通に出来る事だから苦労とも思わないだろうし、やればやるだけハマり込んで創り上げてしまうのも自然だが、一方でそこまで天才的な才能の無い分野、例えば今回のアルバムジャケットやもしかしたら絵を書いたり構成を組み立てたりという方には時間がかかるのかもしれない。自分自身と比較するものでもないが、ブログをこれだけ書いているので文書をそこそこ書き上げる事についてはそれなりに出来てしまうだろうと自分でも思うが、さほど苦にもしないで書けているのは訓練の賜物だが、それではこのブログを仮に本にするとしてその本の表紙を作ろうとなると途端に時間がかかって大した表紙のデザインも出来ないのが目に見えている。きっとミュージシャンにとっての音楽とその他については芸術センスはともかくながらまるで異なる苦労なのだろうと思う。
そしてこの「Thick As A Brick」は実は自分的にはホントに何度も何度も聴いては悩み、どこがそれほどに凄い名盤と称されるのか、また聴いては自分でその凄みが良く理解出来ないまままた時間を空け、次の機会にはまた悩んで聴くという事を繰り返していた。このアルバムのみならずジェスロ・タルの70年代のアルバムは大抵そんな感じに取り組んでいたので、アルバム全部持ってて聴いてた割に馴染めていない作品ばかり。このアルバムは中でもとにかく攻略したかったので、結構な回数取り組んでいたし、それでもイヤにならなくてどこが何が凄いのか、を探求したくなったのだから不思議だ。今回も久々に2012年のスティーブ・ウィルソンリマスター盤を聴いているが、さすがに音の分離が良くてクリアーに楽器が鳴って聴けるのでモヤが晴れたかのように聞こえてくるから素晴らしい。今まで何をそんなに悩んだりしていたのか、と思うくらいに突き抜けたジェスロ・タルの音楽の才能の豊かさやバンドメンバーの技量の高さ、演奏の上手さとあまりにも出来上がり過ぎているサウンドに慄きながら聴いている。自分の知っている範囲のロックの概念に当て嵌めて聴こうとしていたからこそ分からない、理解出来ない面が強かったが、普通に音楽として取り組んでみれば、何とも素晴らしくカラフルな音楽が次々と怒涛のように溢れてきて、その一瞬一瞬の音のセンスに惚れ惚れして聴ける。それがハードロックだプログレッシブだ、ブルースだと何かに形付ける事は全くナンセンスで無理な相談だ。譜面があって、それを演奏している、つまりロックをバンドでせーの、と演奏しているような代物ではないし、白熱のプレイを狙ったバンドの熱気を伝えるものでもない。歌詞と音楽、楽器と音色、それらを組み合わせてやりたい音をそのまま奏でているだけ。もちろんバンドの成熟度からして結果的にそれでも迫力のある熱気を持ったバンドの演奏が聴けるし、力みすぎないバンドの自然体ながらも一体感を演奏から聴ける。これこそプロの音楽集団。それでいて世間的に評価されるに相応しい、自分はまるで理解していない歌詞も称賛され、今までも何度もリマスタリングされてのリリースもその人気を表している。ホント、演奏が上手くて凄い。そういう曲を元々書いていたからこういう演奏なのか、シンプルな楽曲をこのメンツで演奏するとこういう音数とアレンジとテクニックになっての音なのか、おそらくは後者だろうと思うがとんでもなく素晴らしい。それでいての印象的なメロディがあちこちで鳴らされて43分一曲として聴いても全く飽きることなく、聴きどころ満載で味わえる楽しみ。これまでも全く不慣れで取り組めなかったリスナーも多いと思うが、今一度音の良いリマスター盤で、ただただ出てくる音をそのまま味わうと言う聴き方で取り組んでみればこのアルバムの凄まじさや素晴らしさは分かると思う。固定概念なしに純粋に聴けるかどうか、そう出来なければそもそも音楽が好き、ともならないのかもしれない。そんな自分の奢りに気づいたアルバム、そして今またここでこれだけの作品を聴けるありがたさ。
1997年にリマスタリングされて再発された時にはボーナス・トラックとして1978年のマジソン・スクェア・ガーデンの同曲の12分弱のライブ演奏と、メンバーのインタビューが収録されていた。その後2012年になり、ジェスロ・タル自身が本アルバムの再演を果たした事から40周年記念盤「Thick As a Brick: 40th Anniversary Edition」としてスティーブ・ウィルソンによるリマスタリングとDVDオーディオのデラックス・エディション盤がリリース、そこには僅か1分弱ながらのラジオコマーシャル音源も収録された。しかし、ホントに名盤名盤と呼ばれるだけあって、聴いてすぐカッコ良い、凄い、という風に取り組めるアルバムではないが、ものすごく奥の深い、もっと言えば聴く人のセンスが問われるとすら言えるアルバムで、そもそもジェスロ・タル自体がそんな試験石なバンドかもしれない。英国では相当に人気があったようだし、もっと不思議なのはこのアルバムもアメリカでも人気があったというあたり。そこまでアメリカ人にセンスのある人が多かったのか、そういうリスナーが数多く付いていたバンドなのか、言葉の違いもあるだろうが、なかなか当時のリスナーのセンスは不思議。オペラや喜劇を見ているかのような感覚で聴くのが良いのかもしれない。
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