The Sweet - Very Best of The Sweet (Single Hits Collection)

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The Sweet - Very Best of The Sweet (Single Hits Collection)
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 1972〜74年頃の英国のヒットチャートには見事にグラム・ロックと呼ばれるバンドが幾つも顔を出していて、興味深く眺めていると色々と発見もあり楽しめる。参考までにこんな感じ→1972年英国ヒットチャート。この辺りは日本と同じでいわゆるロックバンドがチャートの上位を飾る事はほぼないし、結局はポップチャートでしかない、売れるのはアイドル優先、一般ポップス優先の構図だが、それでもその中に登場するのだからよほど売れたのは分かるだろう。一方でそこまで売れてしまうとロックリスナーからはカネ目当ての作られた虚構バンドとも揶揄され、冷めた目線で見られるのも常。そこで更にバンドメンバー自身が作った曲ならそのバンドの指向性や方向性の話なので、見切りも付くが、プロの作詞作曲陣が付いてそれをバンドが演奏してヒットを放っているとなると、アイドルと大して変わらない扱いになり、ただのお人形さん的に見られてしまい、ロックファンはほぼ相手にしない。それでも売れる事でそれらを気にしないリスナーを獲得出来るし、実際売れてカネは入るので悪い話でもないが、この時代はまだそういうこだわりが強かった時代だろうし、ロックリスナーは頑固なものだ。その意味でSladeは自分たち自身でああいうパワーポップスタイルを編み出して売れていったがThe Sweetは初期売れなかった時代からの反省も含めて売れるために他人に依存した、との印象が強く、随分と軽んじられたバンドだったらしい。事実自分でもThe Sweetはどこか作られた感があるように捉えていたし、曲の方向性があまりにもポップすぎて、ロック目線から入った割には取っ付きにくかった気がする。恐らくそれは後追いだからだったとは思うが。

 自分とThe Sweetの出会いは80年代半ば頃にSladeをひたすら探していた時期、同時にThe Sweetも何かあれば、と同じ「S」のコーナーを見ていればチェックできたので気にしてたが、The Sweetの場合はいとも簡単に見つかった。それもこれも70年代前半のヒット曲がやたらとあったおかげで妙な編集盤がやたらとリリースされていたので、その手のレコードがいくつかあったからそのヘン、何が良いか分からなかったし、たくさん曲が入っているCastleからの2枚組編集盤が安かったのもあって入手。今思えばそれは見事にそのヒットチャートに顔を出しまくっていた時期のベスト盤に近い曲が網羅されていたので、普通は懐かしんだり、良い曲だ、と喜んで聴いたのだろうが、ひたすらハードロックや骨のあるロックを求めていた当時の自分的にはこれがThe Sweetか、と逆にあまりにもあまりにもなパワーポップさにうんざりして封印したレコードとなった。これがもうちょい後のオリジナルアルバム群だったら違ったかもしれないが、最初の出会いと印象は重要だ。今聴けばそれでも十二分にハードロック的ギターの歪み具合や重さ、ドライブ感など何ら他と変わらないバンドの良さを持っていたので、もっと熱を入れて聴けば良かったとは思うが、どこかそのキャッチーさが気に入らなかったのだろう、バンドの音そのものまで耳が付いていかなかったようだ。それから何年も経ち、色々とロックを知るようになってくるとまたThe Sweetの名に出会う事もあり、どこか苦手感を持ちながら徐々にチャレンジしていき、なるほどそういう事情か、後のアルバムの良さもあったり、バンドの浮き沈みも納得して、今ではどちらかと言えば70年代中期以降の作品は結構好きな部類になる。

 The Sweetのオリジナルアルバムは1971年の「FUNNY, HOW SWEET CO CO」の次はもう1974年の「SWEET FUNNY ADAMS」となり、最も売れまくっていた1972〜74年頃まではアルバムで稼ぐ気が無かったのか、このあたりがアイドルバンドの悲しい性で、自分たちのやりたいようにアルバムを作れず、ひたすらシングル曲を録音しては売ってテレビやラジオに出てライブやってまたシングル出しての繰り返し、結果的にアルバムはリリースされていない。その代わりシングルがやたらとリリースされていて、それがまたどれもこれもヒットチャートの上位に進むからそれだけでレコードが作れてしまうくらい。この活動からThe Sweetの編集盤は山のようにリリースされる事になり、どれもこれもがこの頃のシングル曲をやたらと並べたベスト盤としてリリースされている。自分が最初に買ったのもそうだし、今現在でもそう言った編集盤が常に市場に溢れているのできちんと聴こうと思ったりコレクションしようと思うとかなり大変。まず情報が掴み切れない。オリジナルアルバムのリマスターは2005年頃に行われたようで、その際にシングル曲もボーナストラックで収録されているので同じくリマスタリングされているが、それがすべてでもないので、そこから漏れたようなシングル曲は果たして纏めてリマスタリングされた編集盤が存在するのか、聴けるのか、調べている途中でうんざりしてきたので最後まで突き詰めていないが、取り敢えず日本のBGMから2005年にリリースされた「Very Best of The Sweet」あたりで単純に楽曲を楽しんでみようと。

 全てでもないがマイク・チャップマンとニッキー・チンの作詞作曲デュオが送り込んだ楽曲群の塊で、どれもこれも見事なまでにキャッチーでポップで、一皮剥けばかなり実験的な意欲作とも思える節もあり、これだけのポップソングをThe Sweetの演奏力、元々のバンドの持つハードロック路線のエッセンスを取り入れてのチャレンジが見られる。特に1973年頃の作品、「Hell Raiser」や「The Ballroom Blitz」「Teenage Rampage」では目一杯ハードロックサウンドを全面に出しつつのキャッチーなメロディで後にパワーポップと呼ばれるスタイルを確立している。その手前ではここまでのハードロックサウンドでもなく、少々歪んだ音が鳴っているレベルに近かった。更に良くも悪くもコーラスワークが武器のひとつでもあったから随所に散りばめられポップさを増しているのも特徴的。ただ、そのコーラスワークの品の無さがクィーンのコーラスワークとは大きく異なり、センスの違いをまざまざと感じてしまう。これがメンバーが作った「Action」になるとかなり曲はキャッチーでハード路線の黄金期の影響そのままだが、コーラスワークはセンス良く持ち込まれているので、バンドのセンスもかなりのモノと分かる。だからこそ後のアルバムである程度成功したのだろう。ユニークな事にThe Sweetと言うバンドは自分たちのセンスはありながら曲作りやアレンジや売るための仕掛けをヒットメイカーの二人から学んでまた自分たち自身に回帰したと捉えられる。それでも後になればあの時代にあれだけ売りまくり、バンドとしては不本意さもあろうが、代表曲は概ねこのベスト盤に入っている楽曲群として捉えられたままだ。リアルタイム世代には無茶苦茶受けるのは間違いないが、後追い世代には少々誤解をしたまま聴いてしまうバンド。それでも割り切って聴けばかなりカッコ良いのは確かだ。







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フレ
Posted byフレ

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おーぐろ  

The Sweet、良いですねぇ
なんというかびみょ〜にあざとい感が良いです(笑
ポップなのありハードなのありでどこをどう聴いても楽しめる感じ 

あっしは最初に聴いた The Sweet の曲は Fox On The Run ですね
Make Upがカヴァーした版で10代の頃にバンドでもやってました
次はSteve StevensがカヴァーしたAction 
Pat Benatorの No You Don't、Vince Nielの Set Me Free
カヴァーが多いのはやっぱファンが多いんでしょうねぇ 
ちなみに一番多くカヴァーされてるのは The Ballroom Blitz だそうで

2021/02/03 (Wed) 08:41 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>おーぐろさん

後追い世代の自分だとどこか偽物感あったんですが…(笑)。
それでも売れてたのはカバー多いので分かりますね。
Make Upもやってたんですか…、ちょっと興味ありw

2021/02/06 (Sat) 09:36 | EDIT | REPLY |   

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