Guns N' Roses - Appetite for Destruction (Deluxe Edition)

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Guns N' Roses - Appetite for Destruction (Deluxe Edition) (1987)
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 地球に落ちて来た男を演じていた頃のデヴィッド・ボウイの美しさと言うか中性的な雰囲気は他に類を見ない姿で、その後シン・ホワイト・デューク時代へと突入しながら最も妖しくやせ細った姿が知られている。その頃のボウイは有名な奥方アンジーと疎遠な状態になり、当時衣装デザインを担っていた黒人女性のオーラ・ハドソンと良い仲だったのは知られているが、確かAva Cherryもこの頃だった気がするが、それはさておき、ボウイの黒人好きもこの頃から変わらずでユニークな好みもあったものだと思う。そして、更に面白いのはそのオーラ・ハドソンの方も子供二人を抱えて別居してデザインの世界で成功を収めていったが、その頃は英国のストーク・オン・トレントに住んでいたらしく、その後更なる成功を求めてロサンゼルスへと子供を連れて渡米している。その子供からするとボウイは母の愛人、なのか義理の父なのか、妙なオジサマなのかと説明に困る関係性だったようだが、その子供の長男坊が後にスラッシュとして知られるギタリストに成長するとは事実は小説よりも明らかに面白い。ボウイからしてみたらその頃の愛人の子供だから、まさか後々それほど大それた大物ギタリストになるなど夢にも思わなかっただろうし、事実そうなってからのボウイのスラッシュ評は聞いた事がないので、果たしてどうだったのか、ミーハー的に興味深い。すなわちGuns N' Rosesのギタリスト、スラッシュは英国人とアフロ系アメリカ人のハーフで、幼少の頃までは英国育ち、その後L.A育ちのミュージシャン、とはその辺りの事実を知ってようやく気づいた次第。だからと言って英国的な云々はさほどないが、ワイルドそうに見えながらも緻密なプレイスタイルや計算された音の作り方は英国気質からかもしれない。

 Guns N' Rosesが1987年にリリースした最初のスタジオ録音アルバム「Appetite for Destruction」は今となってはほぼこの一枚で世界を制し、一躍スーパースターに持ち上げたアルバムで、ロック界でも珍しい存在を放つ作品。デビューアルバム一枚で後々の全てのステータス、勲章、影響など世界を変えた、とまでは言わないがそれらしい影響を放った作品はSex Pistolsの「NEVER MIND THE BOLLOCKS」や後のNirvanaの「NEVERMIND」くらいだろう。逆に書けば他の作品の出来が最初のアルバムを超えられなかった、とも言えるが、そこは後の話として、リリースされてから三十数年、HR/HMの世界はますます広がり、そして深まる中、燦然と輝く一枚として君臨しているし、色々あったが2016年からアクセル、スラッシュ、ダフとオリジナルメインメンバーが再結集して伝説を更新している。その影響も大きかったからか2018年になり、期を満たして遂にリリースされた「Appetite for Destruction (Deluxe Edition)」のデラックス・エディション盤。しかもスーパー・デラックス・エディション盤やとんでもない金額のボックスセットもリリースされ、とことんまで荒稼ぎするかのように売り出された。当然リマスタリングも施されているので往年のアルバムのサウンドもくっきりはっきりと迫力と音圧を増した音に仕上がり、より一層各楽器が際立っているように感じる。更に2CD盤では1987年にリリースされた「Appetite for Destruction」が丸ごと、それに加えて「Gn'R Lies」の大部分も収録された正に拡充盤として存在感を放っている。スーパー・デラックス・エディションでは更に2CDが追加され、1986年のスタジオセッションが多数収められているので、デビューアルバムに向けてのセッションも聴けるし、この頃未発表だった「November Rain」なども収録されているので、元々の様相が分かるし、ファンには興味深い事だろう。もっとも知られすぎているセッションなのでアンダーグランドでは随分以前から流出してはいたが、音質アップの意味でもオフィシャルからのリリースとしても貴重なアイテム。

 アルバム収録曲について今更どうのこうのもなく、1987年から89年の何と3年間に渡り、このアルバムから続々とシングルがリリースされ、そのどれもがヒットを放っていたのは、要するにアルバムはアルバムで売れ、半数くらいはシングルになり、倍売れて、とゲフィンもウハウハ状態になり、商売の上手さが今にして分かる。一方のバンドはドラッグと酒にまみれ、メンバー仲は、と言うかアクセルが王様気分になっていき、崩壊に向かっていったようだが、それでもこの頃のGuns N' Rosesの勢いは凄かった。最初のシングル「Welcom To The Jungle」のPVでまず全てのロックキッズの度肝を抜いた。これまでのチャラいLAメタル系とは違う毒々しさやトンガリ具合に本格的でオーソドックスな地に足着けたギタープレイとスタイルがロックらしさを戻している。そして出てきた曲のカッコ良さ、アクセルのパワーと歌声が圧倒的で人気急上昇、納得。機が熟して今度は「Sweet Child O' Mine」でレスポールの音のマイルドさカッコ良さ、ワウ・ペダルの強烈さ、イントロのギターの斬新さと綺麗さ、そして楽曲そのもののドラマティックさに加えてのPVのカッコ良さで人気爆発の全米一位獲得。これで1年持たせたとも言えるくらいに凄い年だった。そしてその間にどれだけ凄いバンドになったかを証明するかのように翌年には「Paradise City」を壮大なスタジアムライブでの模様をPVとして採用し、余裕綽々にステージを走り回り、メンバーにしても堂々とそのバカでかい会場を掌に載せたようなライブパフォーマンスが板に付き、とんでもないスケール感を漂わせていた。これにて正にスタジアムクラスのバンドとしてリスナー全てに印象付けた強烈な楽曲となった。アルバムだけで聴いている時はそこまで思わなかったが、PV見てたらここまで凄い曲だったかと思い直した記憶すらある。とは言え、ここで自分的には頭打ち感があって、「Patience」が出た時はまるで興味失くなっていたが、世間的にはまだまだ絶頂期だった。

 今回アルバムを改めて聞き直していると、昔聴いていた頃の懐かしさが思い浮かび、案外オーソドックスなハードロックに仕上がっていた事もイメージとは違っていた。そしてやはりアクセル・ローズのボーカルの凄さが圧倒的で、グイグイとアルバム全体を引っ張っているし、この時点では世界に類を見ないボーカリストだったのも確かに分かる。ギタープレイはそこまで革新的ではなく、スタンダードなプレイに始終しているが、ロックらしい頑固さがビシビシと伝わってくるのはやはり好きだからか。ハチャメチャなバンドの印象も強いが、音としては当然ながらしっかりと作られているので今の時代でも古さを感じずに定番ハードロックアルバムとして君臨するのも分かる、なるほどのアルバム。しかし最後の「Rocket Queen」はよくやったモンだ。







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フレ
Posted byフレ

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Zitada  

このアルバムが出た時、丁度エアロスミス再評価ブームみたいのがあってエアロスミスに影響を受けたバンドが割と出ててガンズもその一つみたいな見方をされてました。友人が持ってきたショッキングなオリジナルジャケットもさることながらLA出でモトリークルーと仲が良かったりHR/HMの文脈で紹介された影響もあってパンク要素を持ったハードロックバンドという認識はなかったでしたが、歌詞は社会問題(DVや政治)をテーマにしてたり後に出てくるグランジ勢と被るものがあるんじゃないかと思ったりするんですが当のグランジ勢からは思いっきり嫌われてましたねーしかし…今のアルバムジャケットってそんな感じなんですねぇ

2021/01/22 (Fri) 20:45 | EDIT | REPLY |   
おーぐろ  

アクセルの「七色の声」は前評判から凄かったからですねぇ
その上、曲は良いし各パートもカッコイイしで
挙げ句にPVも巧く作って売れないワケがない、と 
PV無しのNightrainもラジオのオンエアで大人気 

しかし、やっぱ次が微妙すぎだった
そのおかげでこのアルバムの良さが引き立ったけど(笑 

2021/01/22 (Fri) 21:16 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>Guns

>Zitadaさん
エアロスミスも復活して、みたいな時期でしたね。LAメタルとは一線を画したと言うか。
まぁ、アクセルも言いたい放題だし、他と仲良くとは想像出来ないですよ。

>おーぐろさん
ホント、凄かったけど、後が…(笑)。
それでも食えるんだからアメリカで一発当たると凄いんでしょうね。

2021/01/23 (Sat) 18:31 | EDIT | REPLY |   

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