Alice Cooper - Billion Dollar Babies (Deluxe Reissue)
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Alice Cooper - Billion Dollar Babies (Deluxe Reissue) (1973)

デトロイトの誇るロックバンド、と言えばイギー・ポップが思い浮かぶ、かもしれない。しかし数多くの勘違いした印象では「Detroit Rock City」だからKISSだろ、と脳内連鎖する気がしている。MC5も有名だが、おそらくそこでアリス・クーパーの名は出てこないだろう。特にデトロイトらしさがある、売りにしているというモノでもないが、アメリカくらい広い国になると異なる州、もしくは地域の出自だと同じ国とは思えない程文化文明に差があるし、音楽的エッセンスにも表現方法にも常識感にも差があるので一概にアメリカの音楽とも括れない事もある。ただ、自分的にはどうしたってアメリカ的だ、というロックの概念はあって、特にそれは70年代だと顕著にそのままな気がしているので、そこまで深く探求はしてなかったし、今でもあまり深く突っ込んでいない。好みが英国ロックだからなのもあるが、そこまでの深みが感じられず、やはりエンターティンメント中心の国なので受けるか受けないか、それもその時限りでも良いし作品としての完成度云々よりもそういう目線が重要で、当然商品だから売れなければ意味ないとも思うので真っ当な考え方の元にロックも生産されている。バンド側も分かり切った上で独特の路線や個性を打ち出して市場で目立とうとするし、そうして生き残ってきているバンドが多い。故に上手い下手で言えばまず下手なバンドやアーティストはいない。一定レベルがクリア出来ていなければどれだけインパクトがあっても商品にはならないからだ。ここは凄い。だから妙なインパクトのが出てきにくいが、それでも出てきた音の安心感と完成度は常にハイレベルで、音楽が良い悪いではなく、出来上がった音の完成度そのものの話。音圧もミックスもしっかりしているし、下手ならとことん練習させるか別のスタジオミュージシャンの音に差し替えてでも出す。アルバムジャケットもその意味ではセンスが全く理解出来ないが、顔写真こそがアルバムだ、的概念が強い気もする。
Alice Cooperの1973年リリースバンドとして6枚目となる「Billion Dollar Babies」も前作「SCHOOL'S OUT」のように売れた。決して凄いアルバムと言うワケでもないような気がするが、この辺でアリス・クーパーがメジャーシーンに躍り出てきたのだから、大衆の思惑に合ったのだろう。自分も若い頃にアリス・クーパーを知って、70年代の作品は名盤だと言われていたのもあってどこへ行っても売ってなかったのをひたすら探し歩いて輸入盤屋でようやくカセットテープを見つけて買ってきた記憶が生々しく残っているが、その時はその苦労もあったからか、とても良いアルバムでさすがアリス・クーパーの作品だ、と何度も聴き直していた。当然誰も話す人はおらず、ひとりで黙々と聴いては思案し、聴いては思案し、の繰り返しでしかなかったが。ところが歳を重ねるにつれて聴く回数はどんどん減っていき、挙げ句いつ聴いたか思い出せない程以前に聴いたキリでお蔵入りとなっている状態のひとつがアリス・クーパーのアルバム群ともなっていた。アルバムジャケットを見て、懐かしくもあったが、そんな苦労した記憶はあるもののほとんど曲を覚えていないという始末。この辺りがアメリカのロックの凄い所で、とにかく最初は凄いと思えるのが、いつしか記憶から消えてしまい、また聴いた時には何が良かったんだろうか、と自問するパターンが多い。決してそんな作品ばかりではないが、自分的には割とよくあるパターンで、まさか本作もその調子とは思わなかった。
それでも聴いていれば思い出してくるのは当然だが、難しいのは良いアルバムに聴こえるワケでもないとのギャップ。おかしいなと感じつつも正直にそこまで自分的に感激するアルバムとは思えていない。冒頭から喜劇的に始まり、キャッチーでこの頃にしてはハードに歪んだ音でソリッドなロックが鳴らされ、「アリスは大統領」のポップさもよく出来てると口づさみながら続いてのタイトル曲「Billion Dollar Babies」ではドノヴァンとの話し手と歌い手セッションも良い曲に仕上がっているひとつの目玉だろうし、続いての「Unfinished Sweet」はこのアルバムのハイライトだろう。一大組曲とも言わんばかりのアルバムの要素が全て詰め込まれているかのような作品だ。そして「No More Mr. Nice Guy」も口づさんで歌っていられるくらいだ。そしてアルバムB面のラスト「I Love The Dead」でひとつの物語を終える完成度の高さ。トータルコンセプトアルバムではないが、アリス・クーパーらしいテーマが立ち並び、ハードロックとまでは言えないほどの歪んだギターが重ねられたバンドとしてのアリス・クーパーの最高峰サウンドだろう。ギターも特に凄い所はないが、楽曲の旋律を奏でたロックらしいギターで味わいがある。
2001年にデラックス・リイッシューバージョン「Billion Dollar Babies (Deluxe Reissue)」がリリースされており、この時の2CD盤ではオリジナルアルバム部分がリマスタリングされているようだが、今回サブスクで聴いていても音の薄っぺらさはそのままで迫力の無さを感じてしまって少々残念。しかしボーナスディスクには1973年4月終盤のダラス近辺でのライブからの抜粋版が追加されており、割と気になってたのもあってじっくりと聴いていたが、ギタリストはゲストに一人、タートルズ、フロー&エディ関連の人脈からMick Mashbirが参加しており、これがまたグレン・バクストンと二人のギターとして良い味を出しててかなりスタジオ盤に忠実ながらも心地の良いライブサウンドが聴ける。特にアレンジは変わらないのでそのままに近いがやはりライブは良い、が、もう少し迫力を出した音の処理をしてもらえればありがたいとは感じたがサブスクのせいだろう。ユニークなのはところどころメドレーだから切り離せなかった「Eighteen」や「My Stars」「Dead Babies」がそのまま収録されていて、なかなか最高潮のアリス・クーパーライブ的で良い感じ。ボーナストラックは「Coal Black Model T (Outtake)」が英国のNMEが当時雑誌に付録で付けたソノシートにしか収録されていなかった「Slick Black Limousine」のアウトテイクバージョンで、その「Slick Black Limousine」も当然収録してあるが、エルヴィス・プレスリーの模倣を狙ったかのような渋めのロカビリー的サウンドでアルバム「Billion Dollar Babies」の宣伝に効いたかどうかはよく分からない。「Son Of Billion Dollar Babies (Generation Landslide) (Outtake)」はそのまま「Generation Landslide」のアウトテイクで楽器の鳴りも違うし最終前バージョンかと思われるサウンドが聴ける。
確かに凄く良い、とは特に感じなかったが、良く出来てるしやはりユニークなアルバムだったというのが今回聴いた印象で、ライブバージョンもチープさはあるが一方ではライブ感もあるので、少しだけその時代を覗き見れた感じがした。他のこの時代のライブだとかなり迫力も感じられるのに本作はどうしたのだろうとも思うが、概ねそういうものだ。それでもこれほどのボーナス曲が詰め込まれて古くからのリスナーには驚きと感動の一枚として仕上げられている。

デトロイトの誇るロックバンド、と言えばイギー・ポップが思い浮かぶ、かもしれない。しかし数多くの勘違いした印象では「Detroit Rock City」だからKISSだろ、と脳内連鎖する気がしている。MC5も有名だが、おそらくそこでアリス・クーパーの名は出てこないだろう。特にデトロイトらしさがある、売りにしているというモノでもないが、アメリカくらい広い国になると異なる州、もしくは地域の出自だと同じ国とは思えない程文化文明に差があるし、音楽的エッセンスにも表現方法にも常識感にも差があるので一概にアメリカの音楽とも括れない事もある。ただ、自分的にはどうしたってアメリカ的だ、というロックの概念はあって、特にそれは70年代だと顕著にそのままな気がしているので、そこまで深く探求はしてなかったし、今でもあまり深く突っ込んでいない。好みが英国ロックだからなのもあるが、そこまでの深みが感じられず、やはりエンターティンメント中心の国なので受けるか受けないか、それもその時限りでも良いし作品としての完成度云々よりもそういう目線が重要で、当然商品だから売れなければ意味ないとも思うので真っ当な考え方の元にロックも生産されている。バンド側も分かり切った上で独特の路線や個性を打ち出して市場で目立とうとするし、そうして生き残ってきているバンドが多い。故に上手い下手で言えばまず下手なバンドやアーティストはいない。一定レベルがクリア出来ていなければどれだけインパクトがあっても商品にはならないからだ。ここは凄い。だから妙なインパクトのが出てきにくいが、それでも出てきた音の安心感と完成度は常にハイレベルで、音楽が良い悪いではなく、出来上がった音の完成度そのものの話。音圧もミックスもしっかりしているし、下手ならとことん練習させるか別のスタジオミュージシャンの音に差し替えてでも出す。アルバムジャケットもその意味ではセンスが全く理解出来ないが、顔写真こそがアルバムだ、的概念が強い気もする。
Alice Cooperの1973年リリースバンドとして6枚目となる「Billion Dollar Babies」も前作「SCHOOL'S OUT」のように売れた。決して凄いアルバムと言うワケでもないような気がするが、この辺でアリス・クーパーがメジャーシーンに躍り出てきたのだから、大衆の思惑に合ったのだろう。自分も若い頃にアリス・クーパーを知って、70年代の作品は名盤だと言われていたのもあってどこへ行っても売ってなかったのをひたすら探し歩いて輸入盤屋でようやくカセットテープを見つけて買ってきた記憶が生々しく残っているが、その時はその苦労もあったからか、とても良いアルバムでさすがアリス・クーパーの作品だ、と何度も聴き直していた。当然誰も話す人はおらず、ひとりで黙々と聴いては思案し、聴いては思案し、の繰り返しでしかなかったが。ところが歳を重ねるにつれて聴く回数はどんどん減っていき、挙げ句いつ聴いたか思い出せない程以前に聴いたキリでお蔵入りとなっている状態のひとつがアリス・クーパーのアルバム群ともなっていた。アルバムジャケットを見て、懐かしくもあったが、そんな苦労した記憶はあるもののほとんど曲を覚えていないという始末。この辺りがアメリカのロックの凄い所で、とにかく最初は凄いと思えるのが、いつしか記憶から消えてしまい、また聴いた時には何が良かったんだろうか、と自問するパターンが多い。決してそんな作品ばかりではないが、自分的には割とよくあるパターンで、まさか本作もその調子とは思わなかった。
それでも聴いていれば思い出してくるのは当然だが、難しいのは良いアルバムに聴こえるワケでもないとのギャップ。おかしいなと感じつつも正直にそこまで自分的に感激するアルバムとは思えていない。冒頭から喜劇的に始まり、キャッチーでこの頃にしてはハードに歪んだ音でソリッドなロックが鳴らされ、「アリスは大統領」のポップさもよく出来てると口づさみながら続いてのタイトル曲「Billion Dollar Babies」ではドノヴァンとの話し手と歌い手セッションも良い曲に仕上がっているひとつの目玉だろうし、続いての「Unfinished Sweet」はこのアルバムのハイライトだろう。一大組曲とも言わんばかりのアルバムの要素が全て詰め込まれているかのような作品だ。そして「No More Mr. Nice Guy」も口づさんで歌っていられるくらいだ。そしてアルバムB面のラスト「I Love The Dead」でひとつの物語を終える完成度の高さ。トータルコンセプトアルバムではないが、アリス・クーパーらしいテーマが立ち並び、ハードロックとまでは言えないほどの歪んだギターが重ねられたバンドとしてのアリス・クーパーの最高峰サウンドだろう。ギターも特に凄い所はないが、楽曲の旋律を奏でたロックらしいギターで味わいがある。
2001年にデラックス・リイッシューバージョン「Billion Dollar Babies (Deluxe Reissue)」がリリースされており、この時の2CD盤ではオリジナルアルバム部分がリマスタリングされているようだが、今回サブスクで聴いていても音の薄っぺらさはそのままで迫力の無さを感じてしまって少々残念。しかしボーナスディスクには1973年4月終盤のダラス近辺でのライブからの抜粋版が追加されており、割と気になってたのもあってじっくりと聴いていたが、ギタリストはゲストに一人、タートルズ、フロー&エディ関連の人脈からMick Mashbirが参加しており、これがまたグレン・バクストンと二人のギターとして良い味を出しててかなりスタジオ盤に忠実ながらも心地の良いライブサウンドが聴ける。特にアレンジは変わらないのでそのままに近いがやはりライブは良い、が、もう少し迫力を出した音の処理をしてもらえればありがたいとは感じたがサブスクのせいだろう。ユニークなのはところどころメドレーだから切り離せなかった「Eighteen」や「My Stars」「Dead Babies」がそのまま収録されていて、なかなか最高潮のアリス・クーパーライブ的で良い感じ。ボーナストラックは「Coal Black Model T (Outtake)」が英国のNMEが当時雑誌に付録で付けたソノシートにしか収録されていなかった「Slick Black Limousine」のアウトテイクバージョンで、その「Slick Black Limousine」も当然収録してあるが、エルヴィス・プレスリーの模倣を狙ったかのような渋めのロカビリー的サウンドでアルバム「Billion Dollar Babies」の宣伝に効いたかどうかはよく分からない。「Son Of Billion Dollar Babies (Generation Landslide) (Outtake)」はそのまま「Generation Landslide」のアウトテイクで楽器の鳴りも違うし最終前バージョンかと思われるサウンドが聴ける。
確かに凄く良い、とは特に感じなかったが、良く出来てるしやはりユニークなアルバムだったというのが今回聴いた印象で、ライブバージョンもチープさはあるが一方ではライブ感もあるので、少しだけその時代を覗き見れた感じがした。他のこの時代のライブだとかなり迫力も感じられるのに本作はどうしたのだろうとも思うが、概ねそういうものだ。それでもこれほどのボーナス曲が詰め込まれて古くからのリスナーには驚きと感動の一枚として仕上げられている。
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