Van Halen - 1984 (2015 Remaster)

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Van Halen - 1984 (2015 Remaster) (1983)
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 先日のエディの訃報から時が経つのは早いものだが、実生活にはもちろん影響のがあるはずもなく、ただ、やたらとアチコチでロック話する時にエディの話が入ってくる機会が増えた。しかもロックマニアでなく一般の同世代連中と話してて出てくるのだから、それだけお茶の間にも浸透した人物だったとつくづく実感する。自分的にもそこまでひたすらエディのギターを追いかけてた事はなく、当然あんなの弾けるハズもないしギターで挑戦しようなどと思った事もない、と言うかちょこっとコピーしてみた事あった程度で、全く歯が立たないので世界が違う人のプレイと認識していつも聴くだけだった。フレーズ単発やある程度のプレイはそりゃ弾ける部分もあるが、曲全体でなどは到底人間業ではないので無理で、それをひたすらにやってYouTubeにアップしている某氏のプレイは実に素晴らしいと思うし、昔はどうやって弾いているのか分からなかった部分も解説してくれているのでタメになる。そのおかげで再度ギターを片手に何となくチャレンジして曲が多少は見えるようになったりもしてきて楽しんでいる。改めて、カッコ良さとトリッキーさと凄さとセンスに脱帽するばかりだ。

 Van Halenの1983年末にリリースされた「1984」こそ彼らの最大のヒットアルバムとは疑いようもなく万人の認めるところ。「Jump」「Panama」「Hot For Teacher」と続々とチャートインさせたお茶の間のハードロック、そしてエディの常に笑顔でアレをプレイする超人技、そこにデイヴ・リー・ロスの正にアメリカンなエンターティメント精神溢れるパフォーマンスの高さが加わり、一般受けが加速して、キャッチーで覚えやすく、そしてハードロックながらもポップな曲が並ぶ傑作。売れないハズないとばかりにアルバムジャケットの天使の赤ん坊がタバコ吸ってるのか、とのセンスもアメリカではなかなか見られない見事な絵。あまり言われないが両上に「MCMLXXXIV」と書かれてて、実はローマ数字で「1984」となっているが、こういうのは勉強しないと分からないものだ。そんなのをティーンの頃に何だろこれ、と調べていると妙な知識がやたらと付いてくるのがロックからのお勉強。ローマ数字でよくあるのが「IV=4」、Zeppelinの4thアルバムもよく「IV」と書かれるが、これと同じ。5だと「V」、10は「X」と表記され、知られるところではiPhone 10=iPhone XやOS X(テン)と呼ばれるあたり。同じように「M=1000、C=100」なので最初の「M」=1000、「CM」=(IVの概念を用いれば5-1=4なので)「M-C=1000-100=900」となり、これで1900。「L=50でX=10」で3つ並んでいるから「50+10+10+10=80」、最後はそのまま「IV」で並べると「1984」となる仕掛け。仕掛けと言うか日本では馴染みがない表記なだけで西洋文化では普通にコレが読めるのかどうかは知らないが、そこまで一般的でもないような気がする。Van Halenの数奇暗号的アルバムはこの後も続くのでそれなりに毎回意味があるのだろう。

 Van Halenのアルバムの逸話にエディがやる気ない時は鍵盤が大抵クローズアップされ、それはアルバム1枚おきになっている、と言われたが、さほど長いスパンでもなく、実際はそういう話でもないだろう。ただ、それくらい鍵盤がクローズアップされるアルバムの時にリスナーは面白味を覚えなかったのもエディに対する期待が大きかったからか。実際ギターを聴いていればその一瞬一瞬で聴けるプレイのとんでもなさはどのアルバムもぶっ飛んでるが、そこまで聞き取れなかったリスナーの未熟さから出てきた逸話かもしれない。そして本作「1984」は「Jump」に代表されるようにシンセサイザーをクローズアップしたアルバムとなり、「Jump」も少々前からアイディアはあったようだが、デイブが軟弱なシンセを中心とした曲を嫌がって拒絶していたから完成させなかったらしい。やはりデイブはそのあたり天性のロックンローラー的なところあるから納得。エディはギターはギターでこだわりつつも音そのものの可能性を探求するのが好きな人なのでシンセサイザーも面白そうに映った事だろう。その「Jump」は曲が出来た時点でプロデューサーのテッド・テンプルマンがデイブを説き伏せたらしく、おかげであの大ヒット。タイミングも良かったが、曲の秀逸さとPVの印象、ワイルドで凄くてキャッチーでとにかく大胆。続いての「Panama」は真逆にギターリフで攻め立てるハードロックそのままのクレイジーなサウンドと独特のノリ、雰囲気が超A級バンドの証明。こういう垢抜けた感はハードロックではなかなか出し切れてこない。エアロやキッスやボン・ジョヴィのアメリカンさとは異なる抜け感がヒットチャートに送り込めたバンドの凄さ、センスの高さだと思う。それに加えてどこを斬っても探求したくなる凝り具合。これはもうエディの曲作りのクセと言うか、そのまま弾いたら面白くないから必ずどこかにトリッキーさや普通じゃないプレイを入れてくる。次の「Top Jimmy」にしても冒頭のハーモニックスの複雑なプレイの美しさからして尋常じゃないし、続いて出てくるギタープレイ全てが何やってるのかさっぱり分からない構成。自分的にはどうしてもギターを中心に聴いてしまうので、このワケの分からなさで頭混乱してくるし、そこにトリッキーなギターソロが加わり、もう宇宙へ旅立ってる状況。やはり凄いの一言。A面最後はミドルテンポでアレックスの深胴ドラムが響く「Drop Dead Legs」だが、これもヘヴィなギター中心でキメが妙なフレーズ連発で相変わらず天才そのままの曲。キャッチーさがやや欠けるからか地味な印象は強いがソロプレイにしても実験色強くギターという楽器は何が出来るかを教えてくれるかのようなプレイが連発。

 ここで息継ぎしながらB面に行くとドコドコドコとロールしたドラムが鳴り響く「Hot For Theacher」はPVの印象も強く、あんなフレーズを笑いながら学校の机の上を這いずり回って弾いている異常さ。某氏の解説で初めて気づいたが、この曲はテンポを無茶苦茶遅くしてそれらしく弾き直すと実は単なるオールドブルースシャッフルになる不思議。これは目からウロコだったが、自分で実際にギター弾いてみると、フレーズもリズムもそのままなので驚いた。そういうところがエディの天才的なセンスで、曲の作り方も常人とは異なる捉え方発想力だし、時にギターソロも単純にペンタトニックです的な場合もあるから凄い。そしてシンセ活用のもう一つの代表曲「I'll Wait」もアレックスのドラムが目立つが展開に乏しいところがこれまでの楽曲と比べると少々物足りない。それでもシングルカットしてそれなりに売れたからよく分からん。そしてまたハーモニックスプレイの妙技から始まる超人的な、いやこれは超絶バンド的なキメから始まる「Girl Gone Band」。地味ながら強烈なギターリフとヘヴィなサウンドと心地良い疾走感を味わえるシングルにしても良さそうな曲だと思う。これ、エディがステージでギター弾いてる姿を想像するだけで随分カッコ良いだろうと思うが実際今の時代はYouTubeで幾つか見られるから堪能してほしい。全く超人技とばかりにプレイしまくってる姿と曲の勢いがマッチしてもっともっと知られておかしくないナンバー。アルバム最後を締め括るのは実は1978年頃からデモが存在しているヘヴィさを打ち出した「House of Pain」でドタバタ感が強い楽曲ながらもギターのフレーズだけはストレートに抜けてくる面白さを誇る。デモと比べればそりゃ洗練された時代に合わせたサウンドが明白だが、その分勢いがやや落ち着いている感じ。

 ちなみに今回は2015年リマスター盤を聴いていたが、昔々聴いていたレコード、そしてCD初期時代の聴き慣れた音と比べてみると、音像の立ち方は明らかにクリアに感じられて、楽器の分離もしっかりしているし何よりも音圧が増したから際立ったサウンドになっている。ただ、ヴァン・ヘイレンはあまり楽器そのものの数が多くないので、音の際立ちは高かったからかリマスターだから凄く良いサウンドに生まれ変わったと思えるほどではなかった。ただ、ギターの音は元々良く録れてたのだろうし、だからこそ今回のリマスターでも凄く良い音が鳴り響く。重ねまくらない人なのでそもそものギターの音がスコーンと抜けて出てくるのも気持ち良い。改めて久々に聴いてみれば、キャッチーなシンセを使ったポップアルバムとの印象から、実はヘヴィなギターサウンドをより一層探求追求して好きにやれてるアルバム、これまでよりももっとトリッキーなフレーズにチャレンジして難易度も上げているアルバムとして、シングルヒットから離れた楽曲の充実さを味わえた。そう聴いているとやはり名盤に相応しいアルバム。凄い。







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フレ
Posted byフレ

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おーぐろ  

このアルバムの前にもベストヒットUSAの特集とかSony Music TVで見て
VH自体は知ってたんですけど、アルバム出てすぐ買って聴いて
それからハマりまくりになりました
もう言いたいコトは全て書かれちゃってるんでアレですが(笑 
ほんと捨て曲も無い完全なアルバムですねぇ 

CDは変なタイミングで買ったんでLPのままの音ですけど
リマスターも聴いてみたいですねぇ

2020/12/02 (Wed) 20:55 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>おーぐろさん

US Festivalのライブをテレビで先に見たんですが、あまりカッコ良く見えなくて…
「1984」の後も遡ったんですが、イマイチで、そしたらデイブ抜けちゃったんでダメで、割ときちんと聴くのに時間掛かったんですよ。

2020/12/05 (Sat) 20:49 | EDIT | REPLY |   

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