Joe Strummer & The Mescaleros - Global a Go-Go

2 Comments
Joe Strummer & The Mescaleros - Global a Go-Go (2001)
B008KEA75Q

 2001年夏、どこかのCDショップで見かけたJoe Stummerの新作を試聴コーナーで興味深く聴いてかなりの衝撃を受けて当然その場で買ってとことんまで聴きまくっていた。これは一体どういうサウンドと言えば良いのか、聴いた事ない音楽がたくさん詰め込まれているし、所詮パンクスのジョー・ストラマーがこれほどの作品を創り上げるなど考えもしなかったし想像もしなかったが、ところがとんでもない才能とセンスでこんな名盤「Global a Go-Go」をリリースしてきた。パンクやレゲエ、スカの世界からは大きく逸脱した今でも言葉を知らない自分からしたら書きようもない世界感が繰り広げられている。一体どこの何をどういう影響を受けて聴いていったらこういう音楽が出来上がるのか、ケルトやサルサとも言われるがそれらとも違うからそういったルーツ・ミュージックが全てジョー・ストラマーの中で消化されて独特の感覚で出てきているとしか思えない。知ってる人が聴けば全て何かをモチーフにした作風だから、と一蹴されるのかもしれないが、とてもそうは思えないし、正に新たな扉を開いたメスカレロスオリジナルのロックそのものと今でも思ってる。だからかなり頻度高く回数も多く、そして長期に渡り聴いている作品で、いつしかこのアルバムは夏の時期の方が似合う作品と気づいて相変わらず車にも入れっぱなしで心地良く聴いている事が多いアルバム。ここの所聴いていなかったので今回ちょっと久しぶりにアルバム冒頭からじっくりと腰を落ち着けて聴いているが、やはり素晴らしい作品でThe Clashのファーストのインパクトは作品の良し悪し以上のパワーを持っているので比較出来ないが、音楽的なミクスチュア度やオリジナル感覚ではジョー・ストラマーの絡んだ作品の中ではダントツに最高の作品と信じている。

 改めて「Global a Go-Go」はどうなってるのだろうかと調べているとタイトル曲「Global a Go-Go」にはThe Whoのロジャー・ダルトリーがコーラスで参加しているとあって、今更ながら改めてその声を探しながら聴いていると、モロに出てくる叫び声が正にロジャー・ダルトリーのあの歌声だった事に気づいてまた驚いた。驚いた理由はThe WhoとThe Clashの邂逅は1982年のThe WhoのUSフェアウェルツアーでThe Clashが前座を務めていた時が一番濃厚だと推測しながらも、それが約20年経過したこの時点でゲスト参加している関係性。そこかしこで付き合いがあったのか、ここで呼び出したのか不明だが、恐らくジョー・ストラマーがソロ作でランシドのレーベルから復帰するまではまともに仕事している形跡が残っていないのだから、そんな風来坊的なジョー・ストラマーが突然ロジャー・ダルトリーを呼びつけるとも思えず、一方のロジャー・ダルトリーはこの頃The Who再活動充実期だったから結構な仕事量だったはずで、それでも参加しているのだからやはり友人的な関係性があったのだろう。それもまた夢のある話で、噂レベルでは本作の最後に収録されている傑作「Minstrel Boy」でピート・タウンジェンドまでもが参加しているとかいないとかもあり、活動再開していたThe Whoの連中がどこかでジョー・ストラマーと久々に出会っての参加だったのかもしれない。こちらはさすがに音を聴いても分からないので真相不明。

 そしてアルバムは実に多彩で様々な作風が立ち並び、どれもこれもが過去のジョー・ストラマーの作品からはかけ離れているし、一説にはThe Clashの「London Calling」から微妙に参加し始めている弦楽器奏者のタイモン・ドッグのセンスがそのままメスカレロスのサウンドに活かされているらしく、そのルーツを漁っていけば何か見えてくるのかもしれない。ライブでは幾つかのThe Clashナンバーも挟み込まれて、終盤は当然そのあたりで盛り上がっていくが、本作収録曲の熱の入り方もハンパじゃなく、どこか宗教的儀式的、ドラッグサイケデリック的民族的にのめり込んでしまう呪術要素すら持ち合わせての迫力を体感できるのも新鮮だった。確か数回以上は日本公演にも行って体験しているので、そんな記憶が蘇ってきた。これも凄くカッコ良かったし、正にロック、カリスマジョー・ストラマーをしっかりと身近で体験した貴重な瞬間だった。基本的に本アルバムの楽曲中心だったし、それもタイモン・ドッグが確かにバンドの音楽面を仕切っていた感じで、重要な人物だったのだろうとは容易に想像できた。それをジョー・ストラマーの魂で発散させて惹き付けていく作品に仕上げているから魅力的なアルバム。何処で聴いてもリラックスするサウンド、聴けば聴くほどに深みに溺れる素晴らしき楽曲郡。唯一馴染みがありそうな曲は最期の17分以上にもなる「Minstrel Boy」で、アイルランド、ケルトのトラッドソングが悲しみに包まれたバイオリンを中心に流れるインストだ。映画「ブラックホーク・ダウン」では短縮歌入りバージョンが用いられていたが、この映画もなかなか凄まじい傑作だった。そんなところによりによってジョー・ストラマーの「Minstrel Boy」が使われた事にも驚く。この曲は他にもそのスジのバンドやアーティストが普通に録音しているし、自分も幾つかのバージョンを持っているくらいだが、ジョー・ストラマーのこのバージョンはどこか琴線に触れる所があったのだろうか、納得するレベルで素晴らしいと思うのは同じだ。

 「Global a Go-Go」を言うならば、ジョー・ストラマーの成功と挫折、失敗を踏まえた上での境地を音で描いた作品。誰かの真似でもない媚るワケでもない、かと言って自分でそこまで出来るほどの天才じゃない、それでも、みたいな労働者階級の叫びがそのままこういうリラックスしたサウンドで表現され、そして哀しみとも諦めともつかないメロディで歌われ、その心の叫び声だけがきちんとリスナーに響いてくる、正に「Punk is Attitude」なジョー・ストラマーのスタイル。その儚さに惹かれる素晴らしい作品で人生のベストアルバムいくつかの中に必ず挙げられるくらいのアルバム。ジョー・ストラマーに感謝。








関連記事
フレ
Posted byフレ

Comments 2

There are no comments yet.
背中合わせ  

今思い出して引っ張り出して来たジョーストラマーの伝記によると、メスカレロスがフーのサポートとしてツアーを回った時にロジャーと親しくなったそうです。後日ロジャーがスタジオに訪ねて来て参加を申し出たとか。ホントだといいのですが。
生でお聴きになったとはうらやましい…

2020/10/29 (Thu) 21:37 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>背中合わせさん

The Whoの2000年のツアーの英国で一緒だったみたいですね。なるほど、そんな邂逅があったのか。二人共気さくだし、懐かしい出会いだったでしょうから大いに有り得る話ですね。夢広がります。

ライブは目の前だったんでホント、カッコ良かったです。

2020/10/30 (Fri) 17:59 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply