Gentle Giant - Playing the Fool

プログレッシブ・ロックはロックと名が付く中ではもっともテクニシャンなミュージシャンが演奏する音楽というイメージが有る。それ以上になるとジャズやフュージョン、もしくはポップス畑に進むだろうと。自身達の才能をフルに発揮して楽器のテクニックも、楽曲制作の知識も構築性も全てを混ぜ合わせて芸術的な域にまで進めていけるのはある種ロックだけとも言えるか。そういう意味でプログレッシブ・ロックは盛り上がった。そしてプログレッシブ・ロックを好むリスナーもまた音楽センスが良かったと言えるだろう。今でもああいう難解なサウンドを好んで聴いたり、覚えて楽器で演奏したり、そもそもその構築美の骨格を追求したりと知識欲に目覚め、自身の本能と秤にかけて日夜楽しむのだから。
1975〜76年頃のライブを収録したGentle Giantの傑作アルバム「Playing the Fool」。そもそもあの変なおじさんのシンボルが有名なバンドなのにこのジャケットのカッコ良さ。センスの良さ。そして英国人らしく人を食ったタイトル「道化を演じているのさ」と。どこまで本気でジェントル・ジャイアントってバンドがやっているのか、いや、当然音楽的には本気なの当然だが、出来ちゃうのだからそれが本気、ではなく、出来る以上の事を楽しみながら誰も挑戦しない領域にまで自分たちを高めてパフォーマンスしていくと言う代物か。楽器の演奏が上手くて当然、しかも自ら専門の楽器プレイヤーではなく、楽曲に必要な音があればそれも含めて自分たちで演奏して楽曲を完成させていくスタンス。故に同じ楽器でも異なるメンバーが演奏していたりもする。始めベースだったが、途中異なる楽器弾いてて、その間のベースは他のプレイヤーで…と、想像しないような楽器の演奏の仕方。音楽的に見ればそれが正しい。それを実践出来ちゃうバンド。更にそれはコーラスワークでも同じく、完璧なコーラスワークをも聴かせてくれ、当然ながら楽器演奏の方も完璧、どころか相当ヘンで難しい拍なのにサラリと全員こなしている。多分何事も無かったように、だと思う。
そんな様相は聴いてたし、既に知られている事実だから今更と思うが、それでもこうしてライブアルバム「Playing the Fool」でマジマジと聴いていると一体どうなってるんだ?と驚く。楽曲が良い悪い、好みだそうじゃない、という次元が音楽を選ぶリスナーの側面としたら本アルバムはどうやって演奏している、そして誰がどこで何をプレイしててこの音楽はどうなっているのだ?という側面から聴く作品かもしれない。作品と言ってもライブアルバムだから、そういうバンドなのだ。感動を味わうと言う視点ではなく、後のフュージョンなども同じだが、演奏を味わう、というバンド。その意味ではホントにプログレッシブなバンド。そしてこの「Playing the Fool」は中でも傑作に挙げられる素晴らしき作品。
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