Arcadium - Breath Awhile
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英国マイナー系の作品群にも実は更に細分化される文化があって、このブログでは敢えてごちゃ混ぜにして書いてきたんだけどここの読者は凄いなぁ、と思う。見事にその細分化された最も頼もしいひとつの領域に反応する数が多いんだよね。逆に言えばそれ以外の領域の部分ってのはまだまだ宙ぶらりんな状態で辿り着いている人が少ないのかもしれないなぁ、などと深読みしてしまう。最も頼もしい領域のひとつにはもちろんあちこちで話題になっているキーフ、ヒプノシス、ロジャー・ディーンなんて名が並ぶジャケットのものやヴァーティゴ、ネオン、デラム/デッカ、などレーベルで特色が出ているものの部類だろう。この手のサウンドはやはり1970年代前後のなんでもあり的なプログレッシヴな音を中心に栄えているものが多く、またマニアックな視点になりがちな面も多いので人気が高いし、もちろん音もやっぱり楽しいし、正に英国ロックの象徴を語るにはこの辺を漁るべし。しかし一方ではCBSやマーキュリーなどのメジャーレーベルも似たようなバンド、もしくは全くそれらとは異なるバンドを発掘してきてデビューさせているものもあり、それらはどちらかと言うと王道路線に失敗したバンド、というようなものも数多くある。大物ミュージシャンの前身バンド、とかね。まぁ、この辺はどちらかと言うと調べにくくひとつの1970年代英国ロックというカテゴリだけに属さないでいるため、なかなか発掘されにくいもののようだ。
…と、まぁ、ここのところのレビューに対する反応を見ているとそんなトコかなぁ、と思う次第で、その前に知らねぇよ、こんなバンドなんて、ってのばっかりってのはあるので絶対数が下がるのは必至なんだけど(笑)…。それはそれとして、本日はそんな英国ロックシーンが混沌としていた1969年、あまりにもマニアックでリリース枚数が少なすぎたために今では逆にそれが有名になってしまっているミドルアースレーベルからリリースされた不思議なバンド、アルカディウムで進めよう~。
とにかく、ヘタ、だ(笑)。だがしかし、これほどに繊細でそれぞれの楽器の音色が生々しく聞こえてくるってアルバムはそうそうないんじゃないかと思うくらい、言い換えると稚拙なレコーディングでもあるんだが、それこそが空気感を出していて良いのだ。バンド自体は5人編成で、ビートルズの影響からかそのうちの4人が歌を歌うようだ。メインボーカルは非常にパンチもなく弱々しく絶対にボーカリスト的な才があるわけではないこと一目瞭然の歌い方なのだが、バンドってのは不思議なもので、そんな歌でも妙にマッチしているものなのだ。そしてサウンドそのものはかなり変化に富んでいてオルガンがメインかと重茂がファズが掛かりまくってるはずなのにマイルドっぽい音のするギターが前面に出てきたり、繊細な透き通るような音だったりフワフワ感が心地良い。プログレって言う程プログレにはならず、もちろんハードロックでもなく、初期パープルに近いと揶揄されることも多いみたいだけど、どっちかっつうとWarhorseかな。いつものことだがこれぞ英国ロックの味。過度期に変化に埋もれていったバンドの記念作にしてはピュアな音が詰め込まれている秀作、だね。
同時代のブルースを採り入れたバンドや新たにプログレッシヴの道を開くバンド、Zepに続けとばかりにハード路線に進むバンド、実に多くのモデルが巣立っていった時期に、英国風ごちゃまぜサウンドを切り開いていたバンドのひとつとは言い過ぎだけど、アルバム一枚で当然オシマイ、それこそが美学だよ。
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