Black Sabbath - Master of Reality



1971年、本当に英国ロックは数多くの名盤を世に出している。プログレッシヴロックの始まりもあるのだが、それよりも先に成熟してきたハードロックという波の中、まだまだ名盤と呼ばれるタイトルも多数リリースされている。その中でも異質なインパクトを放ったのがブラック・サバスの「Master of Reality」だね。サバス史の中でも最も重くて暗い作品として位置付けられているアルバムだけど、聴いてみるとわかるようにそれは単にそういう曲が半数を占めているからというだけで決して全てがそうではない。どちらかというと最も美しく繊細な曲を含むヘヴィなアルバムという言い方になるね。ま、聴いてみればいいんだけど、この頃のは良い、実に良い。今のHMも敵わないアルバム。
初っ端の「Sweet Leaf」からこれぞサバスと言わんばかりのダークな重さをぶちかましてくれるんだけど、最初の咳のディレイ音からしてヘン。ん??って思わせる始まりはいつものことながら面白いユーモアセンスを持っている。それも英国ならではか。いや、それはともかくこの曲、そんな重い展開から始まるくせに曲中ではいきなり派手なスピードを持ったリフに展開していき、そこでアイオミ入魂のギターソロに突入するという強引な曲調は驚きの一曲だ。オジーはもちろんいつも通りの調子で歌っているが、この頃のオジーってホントにハイトーンでサバスのカリスマだよなぁ。この曲で結構ヤラれちゃうとこある。んでもって、今でもHM界に於いて定番的になっているヘヴィーな曲の序章としてアコースティックの美しい小曲を入れるというパターンだが、それもこのサバスのアルバムでは「Embryo」~「Children of The Grave」という流れの中で既に確立されているのだ。「Embryo」が綺麗でねぇ、こういうトコってやっぱ英国的というかヨーロッパ的な文化だな。んで、ヘヴィーな「Children...」でしょ?曲調そのものは割と単調なんだけどサバスらしい展開を持ったコード進行で不気味な中間パート、これがヘンで良いのだ(笑)。で、更にこれもまたギターソロに展開するところで何故かガラリとバンドの音が変わるっつうか、バッキングギターが入ってないからいきなり軽くなるんだよ。そのくせにツインギターはちゃんと入っているし、ラストは更に効果的なものを狙って妙~な雰囲気になってるし、いいなぁ、オドロオドロしい~って雰囲気がよく出てる。名曲だ。
アナログだとここからB面に入るんだけど、アコースティックな素晴らしく美しい、先ほどの「Embryo」が序章ならばこちらは第二章の始まりとも云えるような綺麗な音色の「Orchid」。この後に出てくる「Solitude」もそうだけどやっぱりこういう綺麗な曲が本当に綺麗に聞こえるようにできるってのは凄いし、やっぱ英国的。一概に元祖ヘヴィメタバンドとして捉えるのは大きな勘違いで、それはこういった曲でよく現れるね。「Solitude」も綺麗だもんなぁ。これはギーザーのベースも凄く歌ってるから余計に良い。田園風景とは言わないけど、安心する曲。そういえば初回盤云々って話にはここに「Step Up」って曲は「Deathmask」っていうクレジットがあったようで…、現行CDはどうなってるのか知らないけど、そういうアルバムに賭ける作品的気質もこの頃のバンドならでは、か。
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