Roger Waters - Pros & Cons of Hitchhiking


ピンク・フロイドのメンバーのソロ作品で一番好きなのはやっぱりロジャー・ウォーターズのもので、それはピンク・フロイド的という理由ではなくて、逆にロジャー・ウォーターズの醸し出す雰囲気と独創的な音やリズムが好きなのでピンク・フロイドが先ではあったけど、到達した世界=「The Wall」や「Final Cut」という特殊性の強い音が良くてさ。ロジャー・ウォーターズのソロ作品はもちろんこの路線の継承なので、一般的には「The Wall」とか「Final Cut」はロジャー・ウォーターズのソロ作品とも言える、みたいなこともあるのだが、いずれにしてもロジャー・ウォーターズの独創的な世界観は興味深いものだ。
アルバム「The Wall」のデモを制作し、更に本作「ヒッチハイクの賛否両論」のデモも同時に制作してメンバーにどちらを選択する?と訊いたところメンバーは「The Wall」を選んだと言うことで「The Wall」はピンク・フロイドの名盤として名を馳せることとなったが、一方の「ヒッチハイクの賛否両論」のコンセプトも更に飛翔させてロジャー・ウォーターズはソロ作品として発表することとなった。ピンク・フロイドでやれることはやり尽くした後となったアルバム「Final Cut」をリリースしてから一年後にこの「ヒッチハイクの賛否両論」がリリースされ、何とも驚くことにギタリストにはエリック・クラプトンを配した作品で、ここまでクラプトンが全面的に参加したアルバムってのも珍しい。しかもロジャー・ウォーターズの言いなりでのギタープレイなのだからクラプトンも新たな仕事の仕方だったんじゃないだろうか。
もちろんそのクラプトンのギターによるアルバムの緊張感の高さという功績は大きく、元来ロジャー・ウォーターズの頑ななコンセプトと重苦しいサウンドで飽きが来るような代物に、ドライなブルースギターが入ることで聴き込みたくなる要素に仕上がっている。しかしここでのクラプトンのソロはギタリスト的にすごく良い。こんなソロ弾けるんならソロアルバムでデビューすれば良いのに…なんて思ってしまうんだが(笑)。そしてアルバム「ヒッチハイクの賛否両論」の楽曲そのものはさすがに「The Wall」と同時期のデモから引っ張ってきただけあって「The Wall」を彷彿とさせるリフやメロディがそこかしこで聴けるのも面白い。アルバムとしては全然違うものなのに音が被るんだよね。
コンセプトとしては悪夢を見ていた人のお話そのものらしくて、内容自体にはさほど興味を抱かないのだが作風とか曲の持ってき方とか曲そのものとか女性コーラスの使い方などもうロジャー・ウォーターズの世界が既に構築されている一枚で、冒頭からず~っと悪夢を語っているようだが、最後の数曲でのクラプトンのギターの激しさと美しさと感情の開放感が素晴らしく、また楽曲のクオリティも圧倒的に優れたナンバーが収められているのも凄い。やっぱり名盤の域に入ってくる代物で、まだまだ市場では軽んじられている作品なのが勿体無い。明らかに評価不足でしょ。クラプトンのスライド・ギターを味わう意味でもさ(笑)。そんなクラプトンの引き出しをしっかりと引っ張り出したロジャー・ウォーターズの才能とこだわり。そして何と言ってもピンク・フロイドに対する敵対心の強さも出ていた頃、とにかく「The Wall」「Final Cut」と聴いたら次は「欝」じゃなくて「ヒッチハイクの賛否両論」を聴くべきな一枚。
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