Kiss - Dressed To Kill

ロックが市民権を得たのはエルビスの登場からってのはあるが、それでも以降完全に受け入れられているバンドってのは少ないような気がする。ロックの世界では黄金期と呼ばれる70年代に市民権を得たロックバンドが果たしてどれだけあったかと言うと結構疑問。ま、それが30年以上も経つと明らかに境界線が引かれてくるワケで、特に若い世代のロックファンにしてみると名前が残っているバンドから入るだろうし、名前の残っていないバンドが如何に多いかと思う。一方では極端化が進んで大物は圧倒的大物、伝説的な大物になるとかね、そうなってる。ボン・ジョヴィやエアロやキッスなど。ま、スーパーボウルの休憩タイムでやるようなのは市民権得てるんだろう。しかしキッスが市民権を得るとはねぇ…。キワモノ扱いだったハズなんだが…。
そんなキッスががむしゃらに売れることを望み続けていた時代の産物「地獄への接吻」。デビューから1年強で三枚のアルバムをリリースしたキッスだが、その三枚目、1975年リリース作品。多分ね、こういう時代で、しかもエンターティナー性の強いキッスというバンドで、市民権を得ているバンド、更にアルバムリリース枚数も相当なものとなると一枚一枚のアルバムの重要性というものが薄れてくるもんだ。だから手軽な廉価版ベストCDを乱発するようになる。特にアメリカのバンドやアーティストはそういう売り方をされることが多くて、またそれで需要も十分に満たされてしまうことが多いのも事実。だからここでアルバム一枚づつ語っても結構しょうがないのかなという向きはある(笑)。ま、なんだ、エルビスとかチャック・ベリーのアルバム全部聴くか?みたいなもんだ(笑)。
話を戻して…「地獄への接吻」、時代背景はまだキッスが売れる前の産物だが「Rock'n Roll All Nite」が収録されていて、ヒットし始めた頃の作品。ファーストから一貫してポップさを持ったちょっとヘヴィーなバンド、でも全員歌えるし、見たらインパクト絶大のパフォーマンスとメイクという奇抜さで世に出てきたが、このアルバムでもそれはもちろん変わらない。この後、キッスを有名にした「アライヴ!~地獄の狂獣」と言うアルバムは初期三枚のアルバムの集大成だったが、「地獄への接吻」からチョイスされていたのは4曲。だからその4曲は馴染み深いが、その実このアルバムの冒頭からの楽曲群も忘れられがちではあるがキッスフレイヴァー満載のR&Rです。ちょっとキャッチーさが不足しているかもしれないけど、それでも歌詞にしてもサビにしても分かりやすいんで、ベスト盤やライブ盤ばかり聴いてしまうリスナーにもちょっとした深みを味わえる作品として初期はオススメしたい。
今もキッスは活動しているが既に懐メロバンドになっていて、もちろん新しい試みもあるけれど、それは決してこのアルバムなどから埋もれた曲を取り上げてやることもないだろう。新作が過去の作品ほど浸透することもないだろうから、やっぱり忘れ去られていく楽曲群になっちゃうんだろう。勿体無いからアルバム単位で聴いてほしい。ただ、彼等自身もそういう状況を認識しているようで、しっかりと過去の作品の再録作品「地獄烈伝」をこないだリリースしてくれている。
そういえば懐かしい話だけど、自分はアナログ時代にキッスに出逢ってる。当時手軽に聴けたのが初期三枚がセットになった「The Originals」で、中古で買って聴いてた。思えばこれも商魂魂溢れるレコードのセットだった…。
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