ロック好きの行き着く先は…

60年代のブリティッシュロックから70年代黄金期を聴きまくり、行き着く先はマニアへの細くて深い道のみか。それでも楽しいロックこそ我が人生。 by フレ

Van Der Graaf Generator - Trisector

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Van Der Graaf Generator - Trisector (2008)
トライセクター

 不思議なものだ。70年代にプログレッシブ・ロックの騎手と呼ばれたバンドが21世紀になってオリジナルメンバーで再結成して新作をリリースします、と。その作品がどういうワケか70年代の鬼気迫るアルバム郡の出来映えとさほど変わらず、ドコロかより一層深化した作品として出来上がってくる。今出てくるバンドにはその雰囲気が同じように出て来る事はさほど見当たらず、やはり往年のバンドの持つ重さや鋭利さは一聴して分かる違いがある。だから不思議なものだ、と。

 Van Der Graaf Generatorの2008年リリース作品「Trisector」。21世紀に入ってから再結成、今回のアルバムは再結成後2枚目となるが、ここでオリジナルメンバーからサックス、フルート奏者のデヴィッド・ジャクソンが離脱。そこにメンバーを補充するでもなく、トリオ編成でのバンド継続によりアルバムをリリースしてきたVDGGの意気込み。再結成そのものもやはりあのメンバーでなければ出来ないサウンドをまた目指したいという思いからのハズで、だからこそメンバー離脱時にマイナス1を選択したのだろう。他のメンバーを入れるとあの魔法は続かない=バンド内に於ける不思議な化学反応によるテンション高い演奏。そんな中、トリオ編成となってのアルバムが本作だが、これがまたその選択が正解だったと言わざるを得ないクォリティに仕上がってて、文句なしのテンションとサウンドの作品。冒頭から不思議な、これまでのVDGGでは聴かれなかった作風がなり、重さはそのまま、そしてそれ以上にありながらも緊張感高い楽曲に繋がっていく。

 ハミルの歌声も重さと鋭さが増し、圧倒的な雰囲気を作り上げているヒュー・バントンの鍵盤が見事に調和して楽曲を高尚な世界に持ち上げている。ロジャー・ウォーターズやジム・モリソンのようなカリスマ性をここでも見せつけながら孤高の存在へとなっていくピーター・ハミルの世界観が正に70年代以上のスタンスでアルバムに刻まれている。21世紀にこんなアルバムかよ、と呆れ果ててしまう程にはテンション高く、素晴らしいアルバムに仕上がっているので、出会えて良かった作品。どころか聴いておかないと損するレベルのアルバム。じっくりと時間を取って取り組んでその世界に浸るのが良い。





Jethro Tull - This Was

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Jethro Tull - This Was (1968)
This Was (50th Anniversary Edition)

 とっつきにくいバンドのひとつとして良く挙げられるジェスロ・タル、それは日本だけだろうか。コレと言った方向性や知られるジャンルの中に収まらない音楽性が故に形容し難く、何みたい、とも言えず、独自の方向性を展開しているバンド。ところが欧米諸国へ行くとZeppelin並みの人気を誇ったと云うから如何に音楽センスが異なるかが分かる。自分でも同じように、さほど得意とするバンドではないが、そういう背景を知っているからきちんとチャレンジして取り組まないと、ってのもあって割と事ある毎に聴いている。ただ、今でもなかなかきちんと理解はしていないし、アレがコレが好きという話が出来るレベルにはないので、難しい。音楽だから楽しけりゃ良いだけなのに、どうしてもそういう取り組みしてしまう時点でダメかもな。

 Jethro Tullの1968年デビューアルバム「This Was 」。このアルバムだけミック・エイブラハムとイアン・アンダーソンの双璧バンドとして成り立っている作品。次作からはミック・エイブラハムは脱退してマーティン・ベレにギターが交代しているし、イアン・アンダーソンの天下となっているから、その意味で唯一、イアン・アンダーソンが支配していないジェスロ・タルのアルバムにもなる。その成果はアルバムを聴けば一目瞭然で、ミック・エイブラハムのブルース好きなギタープレイが存分に発揮されているからイアン・アンダーソンの作風に泥臭さが残される。一方のイアン・アンダーソンはフルートで色付けをして個性豊かに楽曲を彩っているのと、ボーカルスタイルも何気に個性的でソフトな歌い方で聴きやすい。そんな両者の融合が見事に放たれている作品として聴けば、このファーストアルバムはかなりの傑作として聴ける。

 今でもこのバンドの音を語るのは難しい。ブリティッシュ・ロックそのまま、とは云われるが、それがどういう類なのだ?となるし、ブルースもジャズも、そしてフルートによる旋律もあるし、英国トラッド的側面も流れているし、まったく今に至るまでこんなバンドは他には居ない。ただ、奥深い音が詰め込まれているから自ずときちんと聴きたくなるし、聴き込みたくもなる。アルバム単位で進化を追う場合はその作風の変化が分かりやすいが、本作はやはり異質。ずっと聴いて、そしてまたここに戻ってくるとその違いが何となく分かるかも。ミック・エイブラハムのギターがかなりの職人芸なので、ギター好きにも聴いていると楽しめる傑作アルバム。






Gentle Giant - Playing the Fool

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Gentle Giant - Playing the Fool (1976)
Playing the Fool: The Official Live

 プログレッシブ・ロックはロックと名が付く中ではもっともテクニシャンなミュージシャンが演奏する音楽というイメージが有る。それ以上になるとジャズやフュージョン、もしくはポップス畑に進むだろうと。自身達の才能をフルに発揮して楽器のテクニックも、楽曲制作の知識も構築性も全てを混ぜ合わせて芸術的な域にまで進めていけるのはある種ロックだけとも言えるか。そういう意味でプログレッシブ・ロックは盛り上がった。そしてプログレッシブ・ロックを好むリスナーもまた音楽センスが良かったと言えるだろう。今でもああいう難解なサウンドを好んで聴いたり、覚えて楽器で演奏したり、そもそもその構築美の骨格を追求したりと知識欲に目覚め、自身の本能と秤にかけて日夜楽しむのだから。

 1975〜76年頃のライブを収録したGentle Giantの傑作アルバム「Playing the Fool」。そもそもあの変なおじさんのシンボルが有名なバンドなのにこのジャケットのカッコ良さ。センスの良さ。そして英国人らしく人を食ったタイトル「道化を演じているのさ」と。どこまで本気でジェントル・ジャイアントってバンドがやっているのか、いや、当然音楽的には本気なの当然だが、出来ちゃうのだからそれが本気、ではなく、出来る以上の事を楽しみながら誰も挑戦しない領域にまで自分たちを高めてパフォーマンスしていくと言う代物か。楽器の演奏が上手くて当然、しかも自ら専門の楽器プレイヤーではなく、楽曲に必要な音があればそれも含めて自分たちで演奏して楽曲を完成させていくスタンス。故に同じ楽器でも異なるメンバーが演奏していたりもする。始めベースだったが、途中異なる楽器弾いてて、その間のベースは他のプレイヤーで…と、想像しないような楽器の演奏の仕方。音楽的に見ればそれが正しい。それを実践出来ちゃうバンド。更にそれはコーラスワークでも同じく、完璧なコーラスワークをも聴かせてくれ、当然ながら楽器演奏の方も完璧、どころか相当ヘンで難しい拍なのにサラリと全員こなしている。多分何事も無かったように、だと思う。

 そんな様相は聴いてたし、既に知られている事実だから今更と思うが、それでもこうしてライブアルバム「Playing the Fool」でマジマジと聴いていると一体どうなってるんだ?と驚く。楽曲が良い悪い、好みだそうじゃない、という次元が音楽を選ぶリスナーの側面としたら本アルバムはどうやって演奏している、そして誰がどこで何をプレイしててこの音楽はどうなっているのだ?という側面から聴く作品かもしれない。作品と言ってもライブアルバムだから、そういうバンドなのだ。感動を味わうと言う視点ではなく、後のフュージョンなども同じだが、演奏を味わう、というバンド。その意味ではホントにプログレッシブなバンド。そしてこの「Playing the Fool」は中でも傑作に挙げられる素晴らしき作品。





Genesis - Seconds Out

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Genesis - Seconds Out (1977)
Seconds Out

 フィル・コリンズの音楽的な幅の広さと才能の豊かさはBrand Xのドラマーの座も含め、当然ながらジェネシスのドラマーでもあったが、この70年後半にはボーカリストとソングライターとしてもジェネシスで機能していて、惜しむ事なくその才能を発揮しまくって仕事していた時期。Brand Xではドラムそのものに集中していれば良かったが、ジェネシスではドラム叩きながら歌わないといけないハメになってて、そりゃ難しいだろうとの事から1977年ツアーあたりではドラムにチェスター・トンプソンを迎えてライブを行っていた。フィル・コリンズもちょこちょことドラム叩いていたので、ツインドラムバンドにもなっていた点がこの頃のジェネシスの見どころ聞き所となる。

 その模様が聴けるライブアルバムが1977年にリリースされた「Seconds Out」。更に一曲はドラムにビル・ブラッフォードを迎えての10分強の大作「The Cinema Show」でチェスター・トンプソンとは異なる、正にビル・ブラッフォードらしいパーカッション的なドラミングとフィル・コリンズの躍動感溢れるドラムが鳴っていて、あまり聴ける事のないツインドラムの迫力を楽しめる。両人共プログレ界を代表するドラマーで、そのテクニックには定評あるから、そんな二人がこうして共演している事にまず驚くし、それがこの時代に既にリリースされていたと言うのもまた楽しめる。いやはや素晴らしいライブアルバム。そもそもチェスター・トンプソンとのダブルドラムですらその迫力が楽しめるものなのに、ブラッフォードとの共演まであって、それが名前はともかくとして、音を聴いているだけでも十二分に楽しめる迫力なのだから言う事なし。

 そもそもジェネシスのライブ、しかも古い曲も新しい曲も関係なしにこの頃のメンツでライブやりまくってて、ピーガブの歌からフィル・コリンズへとチェンジしているものの、それも今じゃ何も悪くないスタイル。見事にバンドの危機をメンバー全員で乗り切っている証。そして驚く事にここで聴けるフィル・コリンズの歌はピーガブ時代と比較しても特に見劣りする事なくバンドの看板役を勤め上げている。これまで自分的にジェネシスはさほど好みじゃなかったが、歳を取る毎にそれなりに聴けるようになってきてる。ファンタジックさが分かってきたのかもしれないが、この柔軟性が聴きやすくて良いな、とも思うからこれから聴いていける気がしてる。昔じゃ考えられなかった進歩だ。このライブアルバム聴いててその面白さを実感してて、そうか、やはり深みがあるサウンドだな、と認識。ライブが良いのかもしれないね。素晴らしい。





Brand X - Livestock

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Brand X - Livestock (1977)
Livestock by BRAND X (2012-08-10)

 英国ジャズ・ロックとして名高いバンドのひとつでもあり、フィル・コリンズ在籍も話題のひとつとなっていたBrand Xは、割と安定的な活動を行っていたし、アメリカでフュージョンが出て来た頃に英国のフュージョンバンド的な位置できちんとシーンに存在していた。さすがにフィル・コリンズがジェネシスで忙しくなってくると脱退してしまったが、このバンド的には話題性に欠ける事になった程度でドラムとしては新たな血を入れての活動で頑張っていた。主役はパーシー・ジョーンズのベース…ではなく、ジョン・グッドソールのギターのハズだ。楽曲によって異なるが、バンドアンサンブルが見事なのでついついアルバム丸ごと聞き入ってしまうバンド。

 Brand Xの1977年リリースのライブアルバム「Livestock」。初期二枚作品から選曲、と言いたいところだが、全5曲中2曲は未発表曲と言うから面白い。ライブで曲を鍛え上げていたバンドだったのか、セッション活動から生まれてきた作品が多かったのか、バンドが上り調子にあった証明でもある。緻密な音色の組み合わせにそれぞれが絡み、緊張感を高めたライブを眼の前で聴いているかのような作品。やはりパーシー・ジョーンズのベースが凄い。ドラムもギターも素晴らしいが、フィル・コリンズのドラムはロールするってのかな、躍動感による表現力が実に豊か。この手のバンドのドラムは割とかっちりタイトに、というタイプが多い気もするが、フィル・コリンズやロバート・ワイアットは躍動感ある柔軟性の高いドラムを聴かせてくれる。抑揚溢れる、と言うのかな。面白いのはパーシー・ジョーンズのベースが妙にクールだからその組み合わせの妙も味わえる点。

 ジャケットはどっからどう見ても、そして誰が見てもヒプノシスって分かるでしょ。ライブアルバムという印象をまるで与えない、ひとつの作品として見てしまう摩訶不思議なアート。その中にこんなに素敵で軽快でクールなインストジャズ・ロックサウンドが収められているなんて、普通は思わないだろう。爽やかではないフュージョン、クールなフュージョン、テクニカルなフュージョン、それも実はロックバンド、という不思議を表現するのには良いアートか。



Isotope - Illusion

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Isotope - Illusion (1976)
Illusion

 英国ジャズ・ロックの流れは60年代から70年代にかけて様々なミュージシャンが取り組み、幾つもその実験的なアルバムを聴ける。それでもカンタベリー一派と呼ばれる連中の融合作はひとつのシーンを形成していて、ここを経由するファミリーツリーだけで相当のバンドが生み出されている。実際には友人集めてのセッションによるバンドで、一人メンバーが替わっただけでバンド名変えたりほぼ同じメンツでもやる方向性をちょいと変えたからバンド名変えたりと自由自在。それに追随していったレーベル側も大したものだ。ご存知ヒュー・ホッパーはソフト・マシーンの一員として活躍してて、その後フリーのセッション活動に身を転じている。その一環にこのアイソトープへの参加作品があった。

 1976年リリース作品「Illusion」。アイソトープの二枚目となるアルバムながらも英国ジャズ・ロックの素晴らしさ美しさを楽しませてくれる作品。ゲイリー・ボイルというギタリストの執念によりバンドが出来上がっているとも言えるが、先日カッコ良いドラミングを披露してくれてたナイジェル・モリスもこのバンドの一人。このセカンドアルバムだけ、ヒュー・ホッパーが参加してて、あとは鍵盤奏者を加えての4人組で活動。音を聴いて明らかなる存在感を放つヒュー・ホッパー、実に起用なプレイヤーだと納得する自由自在さ、そこにゲイリー・ボイルのギターが妙に絡みまくる。フュージョンチックに進むちょいと手前辺りの音色とプレイで、ロックとは明らかに異なるプレイスタイル。ホールズワースとも異なるし、どういうんだろうな、ユニークなプレイスタイルがある種ロックに留めてくれているとも言えるか。この手のサウンドはどうにも表し難い。

 アルバムはクールに白熱するジャズロック、当然インストものではあるものの、メロディアスかという作品でもない。インタープレイが激しいものでもなく、音楽を聞かせる音、当たり前か。スリリングで緊張感のある雰囲気はどうして出来上がるのだろう?そう思わせるサウンドもシーンも多く、そこをゲイリー・ボイルのギターが舞う、鍵盤がムードを出す。ドラムも軽やかに激しく繊細に楽しめるし、ホッパーは正に縁の下の力持ち的に大活躍。この辺全部性はしとかないとダメだな。