ロック好きの行き着く先は…

60年代のブリティッシュロックから70年代黄金期を聴きまくり、行き着く先はマニアへの細くて深い道のみか。それでも楽しいロックこそ我が人生。 by フレ

「note」マガジン発刊

-

Taste - Live At Isle of Wight (1970):

0 Comments
B0000074CU

 ワイト島フェスティバルの評判は音楽以外のトコロで芳しくないイメージがつきまとっているが、ここで登場したアーティストは以降のロック史に残るバンドも多く侮れない。そんな中のひとつにこのフェスティバルへの出演をきっかけにステップアップしたアイルランドの英雄ギタリスト、ロリー・ギャラガーがいる。この時はまだクリームと時を同じくして同じようなことをアイルランドでやっていたテイストで、真似でもなく、感性が同じだっただけと見るのが正しい解釈。もっともメンバーの力量に差がありすぎたので、時代を担うバンドにはならなかった。それでもロリーのギターを中心にバンドが演奏するライブならではの様子をまざまざと記録した「Live At Isle of Wight」は全6曲の収録ながらもブルースを基調としたアドリブプレイの模様は痛いほど伝わってくる。

 基本的にオールドブルースの焼き直し、ロック的解釈による手法でギタリストが歌うバンドで、ギターと歌がシンクロ、もしくは絡み合いがあって、その分ワンマン的に聞こえるが、この辺はジミヘンが一番バランス良い。クリームはクラプトンがメインボーカルではないからシンクロはないし。敢えて言うならジョニー・ウィンターはこういう感じになるか。若い頃のロリーだからもある。後にいくつも名盤をリリースしているけど、それらはやはりライブ盤だ。「Live In Europe」や「Stage Struck」、「Irish Tour '74」のように、エクストラトラックがいっぱい入ったCDもリリースされた。どれも熱いプレイでアルヴィン・リーと通じるものはあるが、更に「Irish Tour '74」のDVDもリリースされている。

 この人のスタイルは赤いタータンチェックのシャツにボロボロのストラトで、「Live At Isle of Wight」のジャケットでも見れるけど、死ぬまでこのスタイルで通したアイリッシュらしい頑固さ。ギタープレイは器用なフレージングをキメてブルースの香りがするけど、ロリーフレーズがはっきりしないのが少々勿体無い。でも、ラジオで流れてもロリーのギターは分かるトーンなので、フレーズの問題はもったいない。一般的にはギターを弾く人でないとこの人の作品は入り込みにくいけど、ホントに熱いオトコで熱いギターを弾くプレイヤーです。



UKbluesrock

Savoy Brown - Getting The Point (1968):

0 Comments
B073V4HV3S

 英国三大ブルースバンドと呼ばれるフリートウッド・マック、チキン・シャック、続けてサヴォイ・ブラウンが挙げられる。そういう意味ではピーター・グリーン、ジェレミー・スペンサー、スタン・ウェッブに並び称されるキム・シモンズ。本来の意味のファーストアルバムは別にあるが、結局メンバー全員総入れ替えして、脱退したメンバーは後のフォガットを結成する。今回それは置いといてサヴォイ・ブラウンの実質上のファーストアルバム「Getting The Point」。常に代表作として挙げられるけど、昔から先入観でイマイチ聴く気にはならなかったアルバム。理由はいつも通り単純で、ジャケットが意味不明だったから。やはりジャケットの持つインパクトは重要で、こんなに渋いブルースバンドと言われてもなかなか手を出せない。

 一方、中味は渋いモロのブルースで悪く言えば全くオリジナリティがなく、いくつかの楽曲は凄く個性的なリズムやリフだが、基本的にはモロのブルース。ギタリストには凄くタメになるし、コピーしてフレーズを確認すべきアルバムでオススメしたいし、この時期の英国ブルースを志す若者達からの絶対の支持者はフレディ・キングとヒシヒシと感じるフレーズが散りばめられている。BBキング的なプレイもあるけど、やはりフレディ・キングの影響が大きく素直に聴けるけどフェイドアウトの早い曲が多くて物足りない。もっと弾きまくって感動させてくれれば良いがクラプトンとのこだわりの違いか。凄く良いフレーズをビシバシ決めるけど熱いバトルにはならなくて、英国的、本場ブルースを好きな人からすると物足りない。その背景に、1968年リリースだからまだ3分間ポップスの概念も残っていて、売れるために短めの曲をとフェイドアウトでメンバーが納得してたら魂売ってるかと深読み。ちょっと意地汚く見てるけど、サウンドと内容はモロ黒人ブルースで興味深いが、土着ブルースとは大きく異なっている。





UKbluesrock

Chicken Shack - 40 Blue Fingers, Freshly Packed and Ready to Serve (1968):

0 Comments
B07DV8WTCW

 後のフリートウッド・マックで活躍するクリスティン・パーフェクトはマックのジョン・マクヴィーと結婚してクリスティン・マクヴィーとして有名だが最初は同じ英国ブルースロックバンドのチキン・シャックに参加しており、その才能を開花させていた。それにしてもこのバンド=チキン・シャックは実に認知度が低い。普通に英国ロックが好きでもあまりこのバンドをきちんと聴いている人も多くはないと思う。その理由は大きく、と言うよりも単純にアルバムが手に入らなかった、ただそれだけ。初期の作品はブリティッシュブルースレーベルで有名なマイク・ヴァーノン氏率いるブルーホライズンからのリリースだが、そのマニアックぶりからかこのレーベルのアルバムはほとんど手に入らなかった。英国B級バンドの方がまだよっぽど見かけたように思うし、実際再発もあったけどチキンシャックはなかなか出なかったし、そうこうしているウチに聴かないまま終わったのが現実。

 昨年紙ジャケでリリースされたらしく、今なら簡単に手に入るようなので早いウチに聴いておく必要があると手を出して、どうせ聴くならファーストからで「40 Blue Fingers, Freshly Packed and Ready to Serve」に挑戦。しかし、このアルバムジャケットを見ると以前は万単位の値札が付いていた事を思い出してしまうし、「O.K.Ken」はついぞアナログを見かけなかった事も良き思い出。それだけにこの二枚への期待感は凄いかった。「40 Blue Fingers, Freshly Packed and Ready to Serve」は、驚くまでにシンプルなブルースロックで、ギターのスタン・ウェッブがフレディ・キングばりのギター弾きとは知っていたが、ここまで見事にブルースなファーストアルバムと思わなかった。ちょっとはオリジナリティあると思ってたけど、それはほとんどがクリスティン・パーフェクトの手がけたモノらしいのでちょっと違う。これじゃ売れないと思うが当時の英国では評価されたアルバム。セカンドアルバムも出せるからそこそこ売れたのだろう。

 まんまブルースで、歌もモロに黒人のモノマネ、ピアノの入りやブラスもモロで評価できない部分はあるけど、英国らしさは線が細い事。まったく同じようにやってもその辺は出てきてしまう。その分スタン・ウェッブのバリバリのギターが楽しめ、クラプトンと大差ないギタリストとも思えるが、何かが違うのだろう。その辺のブルース好きな人にはお勧めできるけどヘヴィーブルースが好きな人には軽く、個人的にはフレディ・キングも好きだからこういう模倣を聴くのも好き。




UKbluesrock

Peter Green - The End of The Game (1970):

0 Comments
B082PQKBZF

 一向に自分の趣味の解釈が先に進まなくて未来永劫この辺をウロウロしているのだろうか?それはちょっと勿体無い。いくつかは近代的なアルバムもつまみ食いしてるからそれだけではないけど、この辺の時代は今聴くとまた違う面白さが分かってきて、またじっくり聴こうと思うアルバムも多い。音楽は不思議だ。そのものは変わっていないから自分の耳の成長故になるが、それを知ってればCDもレコードもそんなに売らなかった。

 Peter Greenのソロデビューアルバム「The End of The Game」は1970年にリリースされて、自分がピーター・グリーンの名前を知った10代の頃はこのアルバムが名盤とロック名鑑に載ってた。Fleetwood Macの初期作品もあって、ちょこっと説明も書いてあったけど、ジャケットがそれらしくてカッコ良いからきっとハードなブルースに近い音が入ってると思って当時聴いた。そしたらいきなりサイケな世界が繰り広げられて、まだその頃はブルースはああいうモンとしか認識してないし、それですらきちんと判ってない頃にいきなりこんな世界が出てきて、まるで理解不能なアルバムだった。ジャケットの迫力とピーター・グリーンのブルースメンのイメージが最初から崩れ去った感覚。

 今にして思えば、かなりヤバい時期の作品だからこういう方向はあった。そのおかげで明らかに独自解釈による世界観を打ち出しているので、やはりドラッグの力は凄いと知らされた。ブルースギターを弾けてしまう人だから、それを拡大解釈して異なる世界に持ち込んでみたらどうなるのか、サイケデリックや精神世界への実験サウンドとしてトライしてみたら、ヒステリックなギタープレイがぴったりと当て嵌まった事例の作品。ノンスケールのフリースタイルのプレイ、そしてリズムにも縛られずに音を出しまくって異世界との融合を果たした意味で、とてつもない名盤、傑作と言える。ただし、それはピーター・グリーンの名前を意識しない場合だ。無知から聴いてこのギター誰だ、ピーター・グリーンだ、それは凄いとなるなら良いけど逆はない。

 改めてこんなアルバムだったんだ。ガキには聴けないのも納得。自分はこれを良いと言えるセンスの持ち主でもなかった普通のロック好きな少年だった。プログレにしては中途半端だしアバンギャルドには整合性取れ過ぎてるからフリーフォームのジャムセッションに近い。でもある程度決めてるからその中間くらいか、ピーター・グリーンの異質なアルバムとして輝き続ける。





UKbluesrock

Fleetwood Mac - Peter Green's Fleetwood Mac (1967):

0 Comments
B0001ZXLTQ

 ゲイリー・ムーアが所有していたピーター・グリーンの59年製のレスポールは生前にはバリバリに使っていて、名器だから良い音がするなら当たり前ではある。まだピーター・グリーンが自分でそのギターを使っていた頃のアルバムがフリートウッド・マックの初期の作品群で、中でもやはり最初のアルバムが一番雰囲気出てるし、モロにブルースばかりで興味深い。

 「ピーター・グリーンズ・フリートウッド・マック」は1967年のリリースで、メンバーはミック・フリートウッドとジョン・マクヴィー、ピーター・グリーンの三人に加えてジェレミー・スペンサーと器用なギタリストの四人組。モロに黒人ブルースをカバーしているというかモチーフにしているというかそのままと言うか、雰囲気を出している点では凄いけど音楽的個性面から見ると、少々物足りない。だが時代も時代なので英国三大ブルースバンドと数えられるが、それでもこれだけのブルース作品をオリジナルも混ぜて作れるのは相当好きじゃないと無理だろうから、才能は凄くある人達。

 昔なかなかこのファーストアルバムが見つからなくて、あまり注目された時期じゃないから再発もされてなくて入手に苦労した。入手したらこんなにチープなブルースかと思ったが、ジェレミー・スペンサーの派手な音を聴かせるギターと噂のピーター・グリーンのレスポールサウンドは結構痺れたし、レスポールはやはり良い音がする。「Shake Your Moneymaker」のカバーはバターフィールド・ブルース・バンドもやってたので選曲のセンスが似てたのか面白く、あれだけ色々なブルースの曲がある中で似たような曲を選んでくるのは、ロックミュージシャン的にやりたくなる曲調があるのだろう。

 それとこのアルバムのジャケットは、縮小されてる時もあって、多分これがオリジナルのサイズと思う。なかなかうらぶれた雰囲気が良い。ヘヴィー過ぎないブルースを奏でていた最初期のマック、ボーナストラック付きの限定盤は更に迫力あるのが聴けて楽しめる。





UKbluesrock