「note」マガジン発刊
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Prince - The Recording of Purple Rain Live (1983)
アルバム「Purple Rain」に収録の「Purple Rain」がまさかライブ一発録りの音源だとは初めて知った。
1983年に地元のミネアポリスで初めて「Purple Rain」を演奏した際のライブ映像が発掘され、その一部始終が広く知れ渡ったが、この時は13分以上の長さで演奏されているし、途中いくつかのヴァースや歌詞が存在していたが、それらもキレイにカットされている事もよく分かる。
圧巻なのはギターソロプレイで、なんと後半のあろ印象的なリフレインはこの時、このライブの最中に編み出してフレーズを決めた、正にその瞬間が記録されているから驚くばかり。数多い貴重なソースの中でも、アーティストが正にアイディアを紡ぎ出して生み出している瞬間を捉えた映像はほとんどないだろうから、実に貴重な記録だし、しかもそれがプリンスの「Purple Rain」なのだから恐れ入る。
いくつかのYouTube映像ではオフィシャルリリースされた音源と重ねて、正にこの部分がカットされている、採用されていると分かるようになっているものもあるので、存分に楽しめるし英語ながらも字幕でその一部始終が書かれているのも貴重な映像。全く色々な驚きがあるものだ。
ついでに下はプリンスのとんでもないギタリストぶりが発揮されている勇姿が見られる最強のライブ。
Nujabes - Metaphorical Music (2003)
Stanley Clarke - Journey to Love (1975):

スタンリー・クラークはバキバキのベースを弾く事で知られてただけど実際はよく判ってない…、とりあえずソロ作三枚目の「Journey to Love」が1975年にリリースされてて、ゲストギタリストはジェフ・ベックやジョン・マクラフリンでロックファンにも知られているアルバムで、ジェフ・ベックの技巧的な部分を発散できる世界がエレキジャズの走りだったフュージョンの世界で、ジャンルの区別なく取り組んでいたとは想像に難くない。実際ベックのための曲「Hello Jeff」は単なるセッションだが、スタンリー・クラークがソロアルバムでやらなくても良い程のベック節で尖ってるし、スタンリー・クラークのベースはアルバム冒頭からバキバキで良い。
一方ジョン・マクラフリン参加の方は壮大な楽曲で、ジョン・コルトレーンに捧ぐタイトルで、美しいな音世界にハマるジョン・マクラフリンのギターだから、いつも通りなフレーズでスタンリー・クラークは普通に音楽好きなミュージシャンでプレイヤー気質よりアンサンブル重視な人と思う。更にプロデューサーがジョージ・デュークと出来た面々が出会ってクロスオーヴァーなアルバムに仕上がっているが、このヘンの境目もプレイヤー目線で見れればジャズ感あって美しく聞けるから面白く、明らかに玄人向けな作品として楽しめる一枚。
Tony Williams Lifetime - Turn It Over/lifetime (1970):

革新的な試みを常に実験するために色々なメンバーとセッションを繰り返し、純粋にエネルギッシュでパワフルなサウンドを追い求めていた時代がロック黎明期で、当時はロックのみならずジャズの世界でも同じような試みを常に繰り返している連中がいて、新たな世界に飛び出したがっていた連中が一緒にやろうって思う事は自然だった。ロックもジャズもなくただ天性のプレイヤーだから一緒にやったら何か起きるとの確信の元に集まってやったアルバム。
Tony Williamsのソロアルバム「Turn It Over/lifetime」は名義こそTony Williamsだが、メンツはジョン・マクラフリンにジャック・ブルースにラリー・ヤングと猛者の集まりで、トニー・ウィリアムスの歌だけは残念だが、その他は白熱のプレイのぶつかり合いによる熱気が聴ける作品。ジャック・ブルースもCream辞めてすぐの時期だからあの熱気のプレイを披露したくて、申し分ない面々とプレイしており、スタジオ・アルバムだけど、全員やりたい放題で有機的に機能したこの時代でしか成り立たない迫力が聴ける。テーマを決めてプレイをぶつけあっているから明らかにジャズな作品で、ジャズから見たら本作はかなり邪道な作品になるだろう。
ロック側から見ればぶっ飛ぶアルバムと評価されているし、これで上手いボーカリストが入ってたらそれなりのバンドになったが、ジャズ発想のアルバムリリースが残念だが、ともあれ、後年に至る今までこうしてアルバムの存在が忘れ去られる事なく伝えられているからアルバムの価値は高かった。ドラマーのソロアルバムでこの音はあり得ないし、ジミヘンの影響が大きく、この後の英国ジャズロックバンドへの影響も大きく与えていたグループのアルバムとしてぜひおすすめな作品。
Mahavishnu Orchestra - The Birds of Fire (1973):

ジャズ畑からロックへアプローチをかけて、そのまま英国的プログレッシヴロックの一環に組み込まれた珍しくもボーダーレスな時代を象徴する傑作を生み出したマハビシュヌ・オーケストラは、ジョン・マクラフリンが在籍してテクニックを存分に見せつけた重要なアルバム「火の鳥」は、コレだけでも鳥肌モンだし、タイトル曲「火の鳥」のアグレッシブなプレイは素晴らしく、ギターも当然ながらハードなプレイのバイオリンとヤン・ハマーの鍵盤は英国ロックファンを唸らせる。
他の曲もバイオリンの音色は新鮮に響き渡っていて、インスト作品と忘れさせてしまうくらいのバンドの演奏力の高さに驚く。楽曲のレベルの高さも相当なので、じっくりと聞き込んでしまう高尚な作品で、完全にこの時代のプログレバンドでクリムゾンの「太陽と戦慄」以降と似ているが、このクロスオーバーな風潮からヤン・ハマーとジェフ・ベックが一緒にやる事も当然の流れ。マクラフリンは全く器用な人で、ジャズの巨匠マイルス・デイヴィスが実験的サウンドに進んだ頃の片腕を担ぎ、以降はとんでもないギタートリオをフライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ?スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!で見せてくれるが、ちなみにこれはアル・ディ・メオラとパコ・デ・ルシアと三人で弾きまくり。マハビシュヌ・オーケストラの「火の鳥」のアルバムにもマクラフリンの多彩を示すスパニッシュ調の雰囲気の「Thousand Island Park」もあるのでおかしくない方向性。
マクラフリンの才能はギターに限らず、このバンドでは多彩な音楽性と時代がマッチしてロック側からの名作に挙げられる一枚になった美しく激しく巧いぶっ飛ぶ作品。