ロック好きの行き着く先は…

60年代のブリティッシュロックから70年代黄金期を聴きまくり、行き着く先はマニアへの細くて深い道のみか。それでも楽しいロックこそ我が人生。 by フレ

Dr.Strangely Strange - Kip of the Serenes

0 Comments
Dr.Strangely Strange - Kip of the Serenes (1970)
Kip of the Serenes

 70年代の英国にはフォークともロックとも区別の付かないバンド郡もあって、今度はその境目に悩まされる事もしばしば。プログレ範疇からすると鍵盤にフルートやオーボエのような楽器が用いられ、フォークに入ってもそれらの楽器は使われているからリンクしてくるサウンドも出て来る。その意味でプログレフォークなどと呼ばれるバンドもあるくらいだ。一方フォーク側からすればトラッドだけでなく、アシッド調のフォークロック野郎達だと一刀両断する場合もあって、その狭間はなかなか難しい。

 Dr.Strangely Strangeの1970年リリースのデビューアルバム「Kip of the Serenes」。アルバムジャケットが見事にアルバムを表していて、まさにこんな雰囲気がそのまま流れ出てくる。ともすればもっと牧歌的でのんびりとした雰囲気に包まれたアコースティック楽器での魅惑的な曲が並べられてて、妙なオルガンもあったりするからアシッド的と言われるのも分かる。そもそもほんわかした雰囲気が圧倒的にアルバムを覆っているから誰が聴いてもトリップしてると思うだろう。音楽的にはそんな雰囲気でそこかしこでツボにハマる音が出て来る使い方が見事。かなり独自路線での作風が並ぶのである種天才的な集団。

 本作はアイランドレーベルからのリリースで、次作「ヘヴィー・ペッティング」はVertigoからのリリースなので、普通と逆のパターンとも言えるが、そのVertigo盤が名盤の誉れも高く知られている作品。一方本ファーストアルバム「Kip of the Serenes」はそこまでの作品でもないとの評だったが、どうしてどうしてかなりヤバい雰囲気が立ち込めた傑作だ。これもロックの世界か、と問われるとちょいと違うとは思うが、フォークとも言えない音楽性は正に70年代英国。





Byzantium - Byzantium

0 Comments
Byzantium - Byzantium (1972)
ビザンチウム

 60年代のカラフルさはサイケデリックの波を生み、一方ではプログレッシブ・ロックへと進んだがカラフルでキャッチーなスタイルからはポップ路線のロックをも生み出している。ピンク・フロイドとELOの違いと書けば分かりやすいだろうか、似て非なる方向性へのシフトとその後のバンドの出すサウンドと印象の違いは歴然としている。いわゆるポップ・ロックの全盛期は70年代も過ぎてしばらくしてからと思っていたが、その前にByzantiumなるバンドがあったのでちょいとご紹介。

 Byzantiumは1972年にアルバム「Byzantium」でデビュー、有名なトコロではピーター・バラカン氏の弟さんが在籍していたらしいが、それはともかく、Byzantiumはいわゆる普通のロックの部類で、何が普通のロックかと問われれば、変拍子でもなくストレートにハードでもなく、キャッチーなメロディを配してちょいと意気込んだ作品もあったりコーラスワークもしっかりしているロック調な作品だ。クイーンほどでもなく、BCRみたいにハードでもなく、ブルースが入っているワケでもなく、単純に音楽、ロック。

 昔々入手して聴いて、さらりと聴けてしまったからかさほど印象に残っていないアルバムだった。この手のが好みじゃないのはあるが、それでも美しく流れすぎている楽曲が多く、アコギ・コーラス中心の楽曲もあれど、フォーク調でもなくポップ調に仕上げているのはこのバンドの面白さ。何が残るか分からない当時の英国ロックシーンではかなりポップに寄っていたので、売りやすい面は大きかっただろう。ビートルズ的とも言える部分も大きいが、さりとて何が特性なバンドだと目立つ部分が難しかったか。



Beggar's Opera - Waters Of Change

0 Comments
Beggar's Opera - Waters Of Change (1971)
Waters Of Change

 メジャーに成り切れなかった70年代プログレバンドは数多し。そもそもこの頃の英国ロックはすべてがプログレッシブな取り組みを図ったバンド郡でもあり、どこからどこまでがプログレとも言えないし、ハードロックとも言えるし、今や普通にブリティッシュロックと呼ばれている方が多い。自分も色々と整理整頓していると、どうにも整理が付かない事が多いので同じように70年代英国ロック、とカテゴライズされる。プログレやハードロックはどことなく境目はあるが。

 Beggar's Operaの1971年リリースセカンドアルバム「Waters Of Change」は歴史に埋もれてしまっているが、かなりのプログレッシブな名盤で、そもそもベガーズ・オペラ自体が優良なプログレバンドでもあるが、それすらもさほど知られていない。勿体ない事だ。3枚目のアルバムまでは割とその筋では語られる事も多いので知られていてほしいが、今はどうだろう、1975年の第一次解散までのアルバムは知られているだろうか?自分はやはり初期3枚でしっかりとベガーズ・オペラのプログレ度合いにハマったクチです。ハマったと言ってもプログレ的に、でもなく英国ロック的に、だろう。本作は初っ端からメロトロンの大洪水にアコースティックギターとなかなかプログレ好きにはツボに入る音色で攻め込んでくるので悪い印象を持つ筈もない。

 アルバム全体感で言えばそこまでプログレッシブな印象では無いが、随所で聴かれるメロトロンやフルートがそれらしく聞こえるだろう。メジャーに成り切れなかったのはやはりチープな印象が漂うリズム隊に鍵盤、そしてボーカルの弱さに尽きるか。ギターだけ良いのかと言われてもそこまででもないからバンドの線が細いとも言える。それでもユニークなスタイルを貫いているバンドだし、アルバムは結構な作品ばかりだ。最近まで再結成の繰り返しからワンマンバンドとして活動しているのも知らなかった。生で聴ける可能性もあったのかと思うとかなり不思議な感じ。



Delain - Apocalypse & Chill

2 Comments
Delain - Apocalypse & Chill (2020)
アポカリプス・アンド・チル[CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付)]

 ふと、オランダのDelainの新作がリリースされていたな、と思い出してチェックしている最中。これがまたなかなかユニークな作品だったので、流れをぶった切っての登場。ディレインの始まりは2002年なので、その頃十代の少女の歌い手として話題になったシャルロット姫も既に良い年齢の歌姫に成長し、オランダを代表するバンドのフロントウーマンを担っている。コンポーザーで鍵盤奏者のマタイン・ウェスターホルトと二人で着実に歩みを進めているバンドの6枚目のオリジナルアルバム「Apocalypse & Chill」がリリースされた。

 果たしてこのジャケットの意味は?ヨーロッパのバンドで、しかも歌謡ゴシック・メタルバンドでこのジャケットとは?意味深でもあるが、単純にダブルミーニング的なシニカルな意味合いかもしれない。深読みも出来るが、そのヘンはともかくながら、ミニアルバムなどを間に挟んでのフルアルバムリリースで、パッと聴いた限りでは、ものすごく充実していて、練り上げてじっくりと詰め込んで作り上げた作品との印象。時代の変化もあるが、それでも自身達のスタイルをそのまま貫き、途中歌謡メタル的にも進んだが、本作ではちょいと昔のメタル風味路線に戻りつつあるか。歌謡路線は相変わらず聴けるが、もうちょっと落ち着いた路線にも感じ、起伏の激しいキャッチーなメロディラインは抑え気味。これくらいが良い。

 そしてヘヴィにメタリックな作風はしっかりとその路線で走り、男性野獣ボーカルも絡み合わせての古き良きゴシック風味も味付けで出てくる。その味付けの役割にBeast in Blackのヤニスもゲスト参加しており、新世代から更に新たな世代へとバトンが渡されようとしている。ヨーロッパのシーンはその意味で面白い。国も違うのに普通にアレコレと交流が広がっていて、ヨーロッパがひとつの母体となっているようだ。更にシンフォニックさを強調したパートでの旋律の美しさに加えてのバンドの重さもこれまでの歌謡路線からちょいとヘヴィ路線に戻ってきた要素のひとつだろうか。シャルロット姫の歌は安定しているし、着実にWithin Temptationの後を付いていってる。兄弟で別のバンドでこうして世界を制していくなど、なかなか出来ることでもないので、相当の才能の兄弟だ。





Arthur Brown's Kingdom Come - Kingdom Come

0 Comments
Arthur Brown's Kingdom Come - Kingdom Come (1972)
キングダム・カム

 60年代のミュージシャンが70年代を生き抜くのもなかなか難しかっただろう。そもそもミュージシャンが長々とシーンに君臨する事自体が多くなかった頃なので、音楽シーンの変化など想像もしなかっただろうし、実際そうなった時に追随できるほどのミュージシャンが残っていたかどうか。いくつかのバンドはその変化を楽しんで進化したが、大半は一過性の波から逃れられずにシーンから消え去った。所詮はポップミュージックなど流行り物だから、と。ところがしつこくもその変化を楽しんで自身の個性を活かしきった一人にアーサー・ブラウンがいる。これもまた超絶個性的な人だったので70年代も普通に渡っていった。

 Arthur Brown's Kingdom Come名義での1972年リリースの2作目「Kingdom Come」。元々がサイケデリック時代から出てきているからその手のものはお得意だがメンツが替わりに替わり、その間ではアンディ・マッカロックやカール・パーマーも参加し、音楽性の幅の広さを物語っているが、本作は超絶アヴァンギャルドとも言えるし、喜劇そのままを音楽で表した作品とも言える。簡単に言えばザッパの世界をもっと拡大解釈した狂気すらを孕むアルバム。ただこれが聞き辛いかと言うと、案外そうでもない。楽しみがあるから割と聴けてしまう作品で、単純に面白い。意味分からないが楽しめる。プログレみたいに暗さや重さを持った作品ではなく、軽やかに音楽が進行と共に変化して物語を紡いでいるような作品だ。

 劇場向けの音楽とでも言うべきだろう。ジェスロ・タルの世界でもこういった作品があるが、アーサー・ブラウンはもっと演劇度合いが強い。当人の「Fire」の映像を知る人ならば彼のエンターティナー性は十二分に理解できるだろう。あの性格はこの作品でも出ていて、アルバムそのものがハチャメチャなサイケデリックアヴァンギャルド演劇音楽集になっている。そんな書き方しつつも、正直、天才でしか作り上げられない作品じゃないか、と思える。しかもこの時代にこれだけのパワーを込めたアルバムが作れるのは凄い。



Gravy Train - Second Birth

0 Comments
Gravy Train - Second Birth (1973)
Second Birth

 奔放なロックはカッコ良い。B級色がプンプン香るバンドのロックはそのカッコ良さの部類が少々異なるので、アルバムに数曲カッコ良い曲があれば御の字。それが多くなると奇跡のアルバム、発掘された名盤、などと様々な謳い文句を付けられて世に流れてくるので、大抵のアルバムは知ることが出来る。それなりにアンテナは必要だし、情報取りにもいかないとダメだろうが、今なら何かしらロックの名盤的なトコロで出て来る作品を聴いていけば良いだろう。ただ、一回聴いただけじゃどうしようもないアルバムも多いので、最低でも3回は聞かないとピンと来ないかもしれない。

 Gravy Trainの1973年リリース3枚目のアルバム「Second Birth」。この後はVartigoからDawnレーベルに移ってあの有名なジャケットのアルバムをリリースするので、Dawn時代最初のアルバムだが、これがまた名盤。自分がこの手の音が大好きなのはあるが、ショボいながらもハードなギターロックを聴かせてくれたりアコースティックでしっとりとプレイしてコーラスワークまで入れて聴かせてくれたりとバリエーションが豊か。面白いのはマルチプレイヤーなのか、J.D.Hughesと言う鍵盤も吹奏楽器も奏でる人がいて、この人が楽曲のバリエーションをとてつもなく広げている。ボーカルのノーマン・バレットの歌声も実にロック的に熱唱していて暑苦しいがかなりカッコ良いので、バンドのショボさをロック的に引き上げている。楽曲はこの時代ならではの、そしてグレイヴィ・トレインらしくパーツそれぞれをくっつけて展開させている事が多いからやや無節操。

 面白いのはいくつかの曲では超絶ハードロックなくせに音がショボかったり、やたらとフルートやサックスが目立つ曲があったり、叙情的とすら言えるアコギバラードが加わったりと頼もしい作品。これぞ自由な時代のロックバンドのアルバム。それに加えてVertigo風味がまぶされているから魅力的。こんなの今じゃ誰も出来ないだろうし、そのレベルはアマチュアですら超えているだろう。だが、この熱気とチャレンジとプレイがあったからこそ王道バンドが王道として君臨出来た面も否めないはずだ。いやはやカッコ良いリフだらけ。